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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
弓花無双編

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第百七十二話 襲撃をかけよう

 その話が弓花の下に届いたのは、朝食の後のことだ。


「ふへ、レインボーハートが狙われてるんですか?」


 弓花は風音たちがクエストに行っている間はバーンズ家の館で居候になっていた。これはライルとエミリィの母親のマーリスからの提案であった。

 どうせ一日中道場にいるのだしと言って夕食、風呂と外堀を埋めた後にそのままどうぞと告げられた。宿泊しているホテルはバーンズ家に宿泊費を出してもらって泊まっている上にルイーズもティアラのお母さんの実家に行ってしまい、現在ひとりだったのだ。ボッチだったのだ。断る理由はなかった。

 そして早朝稽古を終え、お風呂をいただき汗を流し、食堂で朝食を終えた弓花はその場でメイドさんに声をかけられてシンディの部屋へと案内された。

 そして、そこでアウターがレインボーハートを、それを持っている風音を狙っているという話を聞かされたのだ。


「ゴンドルの街で派手に見せびらかせていたらしいから、遅かれ早かれではあったのでしょうけどね」

「ああー、あれですか」

 弓花が頭を抱える。確かに風音はレインボーハートをヒッポーくんクリアに咥えさせて飾っていた。

「ま、カザネさんのことは気にしていないのだけれどね」

 シンディは『ジライドとは比較にならぬ』レベルでジンライの情報を独自に集めていたし、弓花自身からも風音のことは聞いていた。アウターにどうにかできるとは思えないというのがシンディの結論だった。だが問題はある。

「でも孫たちは結構微妙だと思うの」

 そうシンディが口にする。シンディの座っている椅子の左右にジライドと人化したゴードがそれぞれ立っていたが、どちらもピクリと反応した。ジライドは父親であり、ゴードもふたりを子供の頃から見ている。心配だったのだろう。

 確かにライルとエミリィはあの年頃では突出した実力を持っている。だが、だからといってアウター……というよりも大人数で攻められて対抗できる力量はないとシンディは考えていた。

「なので、ちょっと行ってちゃちゃっと片付けてきてくれないかしら?」

「はあ……誰がですか?」

「あなたが」

 シンディの言葉に弓花が溜め息を吐いた。

 ジライドの奥さんのマーリスはおっとりした人で弓花に親切で優しい人だ。ジライドも融通の利かないところもあるが見た目以上に気配りのできる男だ。だがバーンズ家の実質的なボス(家長はジライドだ)、シンディというクォーターエルフのロリ婆さまは結構厳しい。最初のジンライを前にしたときとは違い、キビキビとしている。そして他の人にもそうなのだが、特に自分に対しての接し方が厳しいように弓花は感じていた。

 さばけた感じで悪意は感じないが、例えば稽古中にもやってきて「あの人の愛弟子ならできるわよね?」的な言い回しで無理難題を押し付けていく。

 それに対してすべてこなした弓花も弓花だが、このシンディが自分をどう思っているのかが弓花にはどうにも掴めないという印象だった。

(嫌われてはいないと思うんだよね。どっちかっていうとレギュラー争いしてる部活の先輩みたいな感じかなぁ)

 稽古中の難題もなんだかんだでこなせている以上、弓花の実力を把握した上での課題だったのかも知れない。ちなみにシンディも槍使いとしては相当な腕前である。

「まあ、こっちでまいた種ですしね。やりますよ」

 弓花は渋々ではあるが頷いた。

「さすがはあの人の愛弟子ね」

 うんうんと笑って頷くロリ婆さまである。顔にわずかに刻まれた皺がなければ十代でも通じそうな気もしたが、さすがにエルフの血もクォーターとなると少し老化が早いそうだ。耳もほとんど尖っていない。なおジライドは人族の年相応だしライルとエミリィにはエルフの面影は全くなかった。

「それで一昨日渡した腕輪はどうかしら?」

「はい。お陰様でなんとか使えました。さっきフォルネシアさんに竜気も分けてもらいましたし」

 牙炎竜フォルネシア。何故か弓花を気に入ったようで、毎日遊びに来ていた。

「なるほど。あの人が弟子にするだけのことはあるわね」

 弓花の言葉に若干呆気にとられているシンディ。さすがの彼女もわずか2日で竜結の腕輪を使えるようになるとは思っていなかった。すでにジンライから頼まれた弓花への課題も終えられてしまった。

 無理難題と弓花は口にしていたが、本来2〜3日くらい悩ませて身につけさせるはずだった課題を与えた当日中にクリアされてしまった。しかも2日続けてだ。なので現時点でジンライが設定していた課題を弓花はすべて完了していた。ここしばらくはジンライから教わったモノを突き詰めていく訓練ばかりで目立ってはいなかったが、新しいものを覚える速度が異常に早いのは『天賦の才:槍』のスキルの力の一端だ。

 シンディはそうした状況に舌を巻きながらも、平静になるように努めて弓花に話しかける。

「その竜結の腕輪は、私のお古だからちょっと古くさいかもしれないから申し訳ないのだけれどね」

 そのシンディの言葉に弓花が首を横に振る。

「いえ。シンディさんのお気持ちは分かっています。代わりが私だというのはご不満でしょうけど、でもきっと師匠はシンディさんの腕輪と共にお守りしますので」

 フンスっと鼻息荒くして応える弓花。

 その竜結の腕輪というのは竜騎士が竜気が暴走しないために竜気を一度プールして経由し、過剰供給分を放出する安全装置である。そしてシンディのものは通常の腕輪よりも竜気をプールできる許容量が高い。

 シンディはさらにこの腕輪を複数身につけており、今は弓花に渡した分の代わりに新しい腕輪をはめている。それほどまでにシンディに注がれる竜気は多いのだ。

 そしてシンディの身につけていた竜結の腕輪だが、長年の使用により竜気が腕輪内部で結晶化し、竜気を長時間蓄積できる効果が生まれていた。それにより竜騎士が騎竜の竜気を受けてブーストする『竜人化』を腕輪に補充した竜気で行うことが出来るのだ。

 そして弓花はその腕輪をシンディから2日前に譲り受けていた。その際ハイヴァーンを離れられない自分の代わりに夫を助けてくれるようにシンディは頼みながら弓花に腕輪を手渡していた。その件もあって弓花はシンディから厳しく当たられても嫌われてはいないのだろうと思えていたわけだ。

「それじゃあジライド、あなたが送ってあげなさい」

 話はまとまったのでシンディは横にいるジライドにそう告げた。

「はい、母上」

 そう返したジライドだが、少し考えた後。シンディの方を向いて尋ねる。

「それで、その、私も参加してもよろしいですか?」

 ジライドの言葉にシンディは少し考え込む。その仕草がジライドと似ていて(やっぱり親子なんだなあ)と弓花は思ったとか。

「必要ないとは思うけど」

 シンディはジライドにそう返すが、ジライドの表情には重いものがあった。

「凶刃イジカがいるという情報もあります」

 その言葉にシンディも眼を細める。ここ数年、各地方で惨殺事件を起こしているアウターの用心棒で、その名はシンディも知っている。竜騎士も何人か殺されている。なのでシンディはジライドを見てこう告げた。

「あなたの判断に任せます」

「ありがとうございます。母上」

 ジライドは母に頭を垂れ、弓花を連れて部屋を出て愛竜であるモルドの下へと向かう。


 そして騎竜モルドに乗り、弓花とジライドはクリオミネの街までたどり着き、目的の倉庫街の建物に弓花は竜人化の姿で降り立っていた。

 その屋上に立つ弓花の姿だが、髪は赤く、爪が伸び、牙が生え、目は金色だ。それは腕輪に竜気を補充してくれた牙炎竜フォルネシアの姿に似ていた。

「よしよし。これなら行ける」

 ギュッと槍を握る。竜気が全身を巡るのが分かる。現在の出力は攻撃力、防御力、素早さが1.5倍程度といったところだろう。竜気による他者を圧倒する威圧感も備えているが、神狼化に比べると能力アップの幅は狭い。ただし、竜気の出力を調整することで一時的に能力をさらに増大させることができることと、与えられた竜気によって属性と能力が変わるのは利点だ。ただし持続時間は竜気の消費量によって変わる。何もしなければ30分。戦闘なら15分。全力なら5分が良いところだろう。

(あとは風音が竜気をチャージできるかだよねえ)

 それも問題だった。風音の竜体化を見込んで腕輪をもらったのだが、どれだけ使えるアイテムでも竜気を補充できる当てがなければ無用の長物である。帰ってきたらさっそく試してもらおうと思っていた。


 そして弓花は、竜の鋭敏な感覚を使い、気配を読む。弓花の降りた音に気付いたのか、バタバタと下から足音が聞こえてくる。そして屋上の扉に中の人間が手をかけたところで弓花は思いっきり、ドアに向けて蹴りを放った。

 ドアが破壊され、そのまま押し出されるように後ろに飛ばされた男たちが悲鳴をあげながら階段から転げていく姿が見えた。

「……痛そう」

 扉の中に入ると弓花はそう言って、階段の踊り場に固まってのびている男たちを飛び越えて下へと降りていく。この建物は倉庫を改造したもので4階建てだが一階から3階までは吹き抜けており中身は広々とした空間が広がっている。

 そこには60人ほどのアウターが待機していた。

 いずれもこの近隣では武闘派で通っているアウターたちだ。レインボーハートという大物を前にして街の中で問題を起こさぬようにここに集められていたのだ。

 そして何人かが屋上から聞こえた不審な物音に気付き、調べにいったが、その後金属をブッ叩かれた音と何かがバタバタと転げる音が聞こえたと思えば、吹き抜けの3階に赤い髪の女がいたのである。ただ赤いのではない。燃えるように輝く赤、それはまるで炎のようだった。


 弓花は三階から吹き抜けにフワッと飛び降りると、竜の飛行術の応用で、風の力を使って自由に滑空する。そしてアウターたちのもっとも固まった中心へと突き進み、


「スキル・大震!」


 そう口にしてスキルを放った。槍の先からは練られた球状の気ができ、それがアウターたちの下へとたどり着くと弾けて爆発し、その場の人間を吹き飛ばす。

(まだ実戦で『自力』で使えるほどじゃあないからね)

 バーンズ流槍術・奥義『大震』。大型魔獣を一撃で弾き飛ばす両腕を用いる槍技。ジンライのこれまで教えていたのは片手だけで気を練り放つ技。だが今の弓花の技は両腕から気を練ることでより強力な威力を生み出す。

 その大技が密集した人の塊にぶつかったのだ。死人こそでていないが、すでに10人は戦闘不能に、その倍の数がダメージを受けて膝をついている。


「竜騎士!? 竜騎士がきやがったーーー!!」


 竜人化を知っているアウターのひとりが取り乱してそう叫んだ。

 ざわめくアウターたちだが、弓花はそんなノイズに気を取られず周囲を観察する。今の状態ならばジンライのように強さを正確に測ることが可能だ。めぼしい実力者に目を付け、先に倒そうと動き出した弓花だったが……


「なっ!?」


 突然目の前のアウターの胸から剣が『生えた』。それを弾き返す弓花だったが剣を生やされたアウターは弾かれた後、その場で切り捨てられ血をまき散らしながら絶命して崩れ落ちた。

「……アンタ」

 弓花が青い顔をしてその崩れ落ちたアウターの『後ろ』にいる男を見る。

「くっく、なるほど。温い顔つきだとは思ったが、それだけで崩せるほどヤワではないか」

 くぐもった笑いで男が弓花を見る。凶刃イジカ、狂った用心棒がそこに立っていた。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:31

体力:114

魔力:205+420

筋力:55+10

俊敏力:48+4

持久力:31

知力:62

器用さ:39

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『より頑丈な歯[竜系統]』『水晶化[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム』『空間拡張』


風音「オチがないよ弓花」

弓花「そんなものないわよ!なんでよ!!」

風音「あまり活躍してなかったキャラが急に活躍し始めたら死亡フラグなんだよ。はやくボケないと弓花が死んじゃう。だからボケて。ボケちゃってよー!!」

弓花「死亡フラグじゃないから。その本気で心配している目は止めて!?」

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