表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
ベビーダンジョン編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

177/1136

第百七十話 人形を渡そう

◎ブルーリフォン要塞 入り口前 翌朝


 風音たちが要塞から戻って祝いの祭りが行われた翌日。三日後にはジンライも退院する予定であるため、風音たちも早々にクリミオナの街を経由してディアサウスに戻ることを決めていた。


「昨晩のあれはすごかったですね。いきなりおうちができましたから」

 ユズが興奮して風音に話している。

 風音達の見送りにはオーリングのメンバーたち全員が来ていた。

 風音たちとは違い、オーリたちはこの後にダンジョン内の魔物を掃討することになるそうだ。ダンジョン自体は10階層クラスなら一ヶ月ほどは残り続けるらしい。そして心臓球の消えたダンジョンの魔物からは階層という概念が消え、一斉に地上に出てくるようになるとのこと。それを倒すクエストも現在ギルドが発注しており、オーリたちもそのクエストを受けて後始末をするとのことだった。

「あれもゴーレムの技なんですか?」

 ユズの問いに風音が頷く。

「そうだよ。えーと、固定の常態化は分かるよね?」

「うん。最近覚えたばかりだけど」

 ユズが自信なさげにそう返す。固定自体はゴーレムを扱う必須要素だが固定の常態化はエンチャント魔術の領域だ。それを使えること自体がユズがゴーレム使いとしては優秀な部類であることを示していた。今回は活躍できなかったがランクBの冒険者だけはあるのだ。

「あのコテージはそれの応用だから。積み木みたいにブロック化して積み上げるイメージかな」

「なるほど」

 風音の言葉にユズが頷く。トゥーレ王国ではあくまでゴーレムはゴーレムとして扱う。禁止こそされていないが、他の用途に使うことははしたない行為として考えられていた。なので風音のようにコテージ的な使い方をしている人がいないわけではないが、技術としては広がっていないため、当然ユズもそうした使い方は教えられていない。

「難しい構造体はできるだけ考えずに単純構造を心掛けて分割して作成すれば簡易コテージぐらいならユズさんもすぐに作れると思うよ」

「うん。やってみる」

 ユズはそう素直に頷いた。

 一昨日はゴーレム使いとしての常識のない風音の考えに対してユズも取り乱していた。だが一度頭を冷やしてから風音の魔術を観察し、その精緻なゴーレム制御能力に触れたとき、ユズの中で何かが変わった。

 そして風音に対する認識にも大きく変化が生じていた。実際トゥーレでもあれほどの使い手など存在しない。規格外と決めつけて考えることを放棄していた自分がどうしようもなく愚かだったとユズは思い始めていた。ゴーレム使いとして遥か高みにいる風音に対し畏敬の念を持って見れるようになっていた。

 風音としてはその変わりように、やや「???」という状態だったが直樹の友達と仲良くなれたのならば良しとすべきだろうと考えていた。そして同じゴーレム使いとしてできることをしようと考えて、風音はユズにおみやげを用意していた。

「ユズさんにこいつをあげる」

 そう言って風音はアイテムボックスから十分の一風音ちゃん人形を取り出した。コーティングにより簡単な色付けがされており、後ろにいた直樹が超絶に欲しそうな顔をしていた。無論風音はガン無視である。

「これは……自分を写し身の術で再現して、色を付けたの?」

 写し身はゴーレム使いの中でも基礎的なものだが、自分の姿を土や岩で模す術である。またコーティングはユズも知識としてはあるがまだ未知の領域だ。もっとも色付け目的でコーティングを使うような例をユズは知らないが。

「そうだよ。そんで動く」

 そう言いながら風音が手をかざして魔力を注ぐと人形が動き出した。直樹大興奮である。状況の分からぬライルとエミリィが「大丈夫か?」「どうしたのナオキ?」と心配そうに声をかけているが、残念ながら頭の病気である。治らない。

「綺麗に動くものだねえ」

 ユズはユズで想い人の奇怪な様子よりも、目の前のそれに魅せられていた。そのなめらかな動きはユズのゴーレムでは出せないものだ。

 だがその人形が普通の土から作られたものではないことを魔術師としての目で見てユズは気付いた。どうにも使用されている材質自体が術にダイレクトに反応しているようにも思える。ユズはその人形を手にとって見てみるが、内部にベビーコアの欠片が入っていてわずかだが魔力生成されていた。そしてそれを受けた人形の素材の魔力変換効率が異常に高いことも分かった。そしてその素材をユズは知っている。

「もしかしてこれ、マッスルクレイ?」

「そうそう、それ」

 風音が即答するが、国宝と定められた素材のマッスルクレイを直触りしていることを察したユズが固まった。

 ちなみに風音はマッスルクレイが生産されていないこととトゥーレでは希少なものであることは聞いていたが、国宝指定であるのもトゥーレにはユズに渡した量の三倍程度しか現存してたマッスルクレイがないことは知らない。

「あっと、落とさないでよ。けっこう脆いんだから」

「わたたたた、うん。ご、ごめ、ごめんなさい」

 思わず人形を落としそうになったが風音の言葉でユズも正気を取り戻し、落とさぬよう人形を抱き締めた。マッスルクレイはゴーレム魔術によって高出力のパワーを発揮する素材だが、その材質は決して硬くはない。なのでタツヨシくんもヒポ丸くんも外骨格を身に纏うようにできている。

「で、でもなんでこんなものを?」

 驚きの表情でユズは風音を見るが、だがこのユズの反応も動揺しすぎとは言えない。なにせ国宝級のものを自分という一個人が持っているのである。その様子に少しやりすぎたかとは風音も思ったが、風音の意図したことを伝えるにはこれが一番良い素材だったのでそのまま説明を続ける。

「で、こいつはね。一応私の使ってるゴーレム制御を簡易的にはパターン化したものなんだよ。術式は可視化してるから、ユズさんならこれを解析して自分のゴーレム魔術に取り込めると思うんだ」

「そんな、貴重なものを」

 可視化とは術式を自分以外でも確認できるようにしたものであり、第三者がその魔術を見ても構造の把握が容易にできるようになるものだ。有り体に言って自分の魔術の秘密をバラす行為である。それを生業としている者にとってはありえない話だろう。

「まあ、聞いてよ。私自身もね。この能力自体は偶然身につけただけで在る程度しか把握出来てないんだよね。だからユズさんで調べてみて、それを後でフィードバックして欲しいなって思うわけさ」

 そう風音は言うがユズはなおも躊躇いがちに言葉を返す。

「でも、これ。カザネさんには分からないかも知れないけど私たちトゥーレのゴーレム使いにとってはホントに凄いものなんだよ。きっとすっごく問題になるかもしれないんだよ」

 ユズ涙目である。だが、そこに後ろで成り行きを見守っていた魔術師のオルトヴァが声をかけてきた。

「これを使えばユズは強くなれるのか?」

 突然の質問に風音も目をぱちくりさせたが、だがオルトヴァに向かって頷いた。

「ゴーレムの戦闘力が強化されるのは間違いないね。消費量の軽減と動作の機敏化と出力アップは確実だと思う」

 有り体に言ってこの人形はより深くゴーレムという魔術を知るための教材に近いものだ。それが分かるからユズには恐ろしい。そしてそれを聞いて、オルトヴァがユズを見た。

「もらっておけ」

「……オルトヴァさん」

 情けない声を出すユズにはオルトヴァが横に首を振る。

「ユズ、分かっているはずだ。このダンジョンで学んだはずだ。私たちに力があれば失わずに済んだはずだと」

 そのオルトヴァの言わんとすることはユズにも分かる。もう話すことのできない仲間の亡骸が自分たちの野営地にはある。力さえあれば、或いは今もユズたちオーリングのメンバーとしてここにいたかもしれない存在をユズは知っているのだ。

「う……ん」

 仲間にそう言われてはユズも躊躇いがちだが頷くしかない。

「分かったよ。カザネさん、これお借りするね」

 ユズはそう言って人形を握りしめる。風音ちゃん人形は苦しそうにジタバタしている。無駄に芸が細かかった。

「ま、あげるつもりなんだけどね。ユズさんがそう言うならそれでも良いよ」

「うん。ありがとう」

「それじゃあ次に会うのはゴルディオスの街かな」

 ユズの横にいたオーリがそう口にする。

「そっか。オーリさんもやっぱり挑戦するつもりなんだ?」

 風音がにやりと笑ってオーリに尋ねる。

「俺の血は半分、ニホンのものなんだ。行く権利はあるだろう?」

 オーリの言葉に風音は苦笑する。日本に行く権利、それは風音が今まで意識したこともない考えだったからだ。


 そして風音たちはオーリたちや、後から挨拶に来たセラたちとも別れを告げて、クリミオナの街へと向かう。さし当たっての問題はアウターたちだろう。

 彼らの動向が気になるところだと風音は考えていたが、だが状況はすでに動いていた。風音の与り知らぬところで事態は進行していたのである。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:31

体力:114

魔力:205+420

筋力:55+10

俊敏力:48+4

持久力:31

知力:62

器用さ:39

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『より頑丈な歯[竜系統]』『水晶化[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム』『空間拡張』


弓花「キュッキュ、キュキュっと」

風音「槍を磨いておる、なぜ?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ