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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
ベビーダンジョン編

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第百六十六話 元凶を倒そう

 それはまさにギリギリの状況だった。

 オルトヴァが心臓球の間の封印を慎重に探査していなければ、或いは風音がすぐさまダンジョンに入らなければ、或いはヒポ丸くんたちの足がなければ、或いは風音たちがストーンミノタウロスにもっと手こずっていたら、或いはオーリ達がキュクロープスに持ちこたえていなかったら、どれをしくじっても今の状況はあり得なかった。オーリたちはここにきて最大の幸運を手にしていた。


 だが戦いは続いている。その光景をユズはヒッポーくんクリアに乗りながら見ていた。

(それにしてもなんて凄いんだろう)

 戦況はこちらに分があった。風音を始めとする白き一団はまだ体力があったし、タツヨシくんドラグーン、ノーマルも戦闘に参加し、今は量産型も投擲を行なって目からの光線攻撃を牽制している。そして白き一団の攻撃により一時的に下がっていたオーリングのメンバーもアグイの回復魔術を受けて今は戦線に復帰している。

 防壁が張られ封印された状態のベビーコアの前で闘いは続いている。

 だがユズが驚愕して見ているのは、そうしたところではない。ユズが見ていたのは風音のゴーレム『ストーンミノタウロス』だ。見た目はあのユズたちを襲ってきた魔物そのもの。風音の言葉によれば性能はまったく同一のものだそうだ。調整が効かず性能も固定されてる分、実力以上の強力なゴーレムが生成できたのだという。

「凄いものだなあ、高位のゴーレム使いってのは」

 魔力切れで今はヒッポーくんクリアに乗っているアグイが感心して見ている。それをユズがジト目で見た。

「な、なんだ?」

 今まで見たこともないユズの反応にアグイが驚く。

「いえ、なんでもないです」

 そう言ってユズは溜息をいた。その様子をアグイが首を傾げて見ている。

(ああ、そうなんだ。世間ではゴーレムなんて滅多にみないからあの異常さが分からないんだ)

 だから他の人たちもまったく気にせずに戦えているのだろう。ゴーレム使いという存在は認知されていても使い手が希少すぎてその能力を把握できている冒険者は少ないのだ。

 それに、このユズが乗っているヒッポーくんクリアだって異常だ。これがゴーレムだと真っ当なゴーレム使いならば認識できるはずがない。ゴーレムというのはもっと大ざっぱに、人や獣の形に辛うじて合わせて作るものなのだ。

 簡易的な思考を植え付けることはできてもこんなダンジョン内のデコボコした場所を馬よりも機敏に走れるわけもない。そんな思考パターンを生み出せるわけがない。それが現在のゴーレム使いの常識だ。

 そしてもっとも驚くべきことはあのタツヨシくんシリーズとそれに使われているマッスルクレイだが、マッスルクレイ自体はトーレ王国では国宝として保管されている。それもあるのは両手で持ち上げられる程度の塊ひとつだ。

 そんな貴重なものをあんな大量に所有して自由自在に動かしている。その姿は既に存在自体が消滅した伝説の『人形使い』そのものだった。千年前、ゴーレム使いがもっとも活躍していた時代が再び甦ったような、そんな光景が目の前に広がっていた。



 **********



「いっけぇええ、ミノくん」

 風音の指示とともにストーンミノタウロスが走り、4メートルはある巨体で3メートルの魔剣を振りながらフルメタルキュクロープスと応戦している。フルメタルキュクロープスも鎧を着込んだ分でかくはなったが、そのサイズはストーンミノタウロスと同じくらい。もっとも力の方はフルメタルキュクロープスの方が上だ。機敏さも技量も同じくストーンミノタウロスの上を行く。

 だがストーンミノタウロスは一体で戦っているわけではない。その周囲には風音を始め、白き一団とオーリングの精鋭が隙を見てはフルメタルキュクロープスに攻撃を加えている。

(呼び出したときの魔力馬鹿喰い具合にビビったけどこいつは当たり引いたね)

 スキル『ストーンミノタウロス』はつい先ほど風音たちが倒したストーンミノタウロスとまったく同じ能力を持つゴーレムだ。

 強力ではあるが能力の調整はできず、使用時間も10分ほどで複数同時は作れない。そして魔力も180ほど消費させられた。普通の魔術師ならば一度喚んだら意識を失いかねない消費量だ。また武器の生成まではできないので、ここ最近やけに使用頻度の高い3メートル魔剣を持たせておいた。

 なおタツヨシくんドラグーンは不滅のスコップで戦っている。決して壊れない頑丈さなので武器としての性能も当然高い。戦闘力にも不安はない。最近では斬剛閃という技も覚えた。突き刺すのをそう呼んでるだけだが。

(しかし硬いし、再生力もある)

 風音が目の前の敵を見る。

 敵もこの布陣を相手にまったく動きを衰えさせていない。もはや鎧の中のダメージは相当なものだろうに、鎧を直接動かしているのか、まるで疲れを感じぬかのように機敏に動く。寧ろこちらのメンツが相手の運動量に圧されてバテ始めた。風音たちはともかくオーリたちは前日から戦闘続きなのだ。そう時間はかけられない。

 だが、戦いの均衡はフルメタルキュクロープスの一撃でストーンミノタウロスの右腕が割れたことで崩れてしまう。

「ミノくんッ!?」

 風音が叫ぶ。ストーンミノタウロスはゴーレムだ。例え腕が崩れても痛みは感じない。だがもうストーンミノタウロス一体でフルメタルキュクロープスを抑えきるのは無理だろう。

(むう、結構ピンチかも)

 さきほども『インビジブル』と『光学迷彩』で回り込んでのネオバズーカを再度かまそうともしたのだが、あの巨大な一つ目にはどちらのスキルも通用しないらしい。横切ろうとしてすぐにバレた。


「うぉっと!?」


 そんな考え込んでいる風音に向かって唐突に投げつけられる巨大な剣。風音は『直感』でかろうじてよけるが当たれば即死である。これも厄介だ。剣を投げ飛ばした右腕にはもうハルバードが握られている。フルメタルキュクロープスの能力の『武具創造』は瞬時に武器や防具を生成する。

 そして片腕のストーンミノタウロスが次々と単眼巨人に打ち込まれて崩れていく。

(『這い寄る稲妻』は助走距離も足りないし、あの武器を投げつけられれば危ないしで使えない。だったらどうする?)

 いざとなれば、と風音は指にはめた英霊召喚の指輪を見る。

 だが風音が判断する前に別のところから声がかかった。

「オーリッ、氷のあれをやる。全員下がらせろ」

 今の状況を分水嶺と見た直樹がオーリに声をあげる。

「あれか? だが決め手には欠けるぞ」

「そいつは問題ない」

 そう言いながら直樹は風音の方を向いた。

「姉貴、ネオバズーカの準備をッ」

 直樹の言葉に風音が頷く。キモイがかわいい弟の頼みだ。聞かねばなるまいと風音は魔法短剣を取り出し、準備にかかった。

「というか今さらだが、姉なのか。あのこが?」

「かわいいだろ。ちょっかいだしたら殺すから」

「姉バカめ」

 オーリはそう言ってフッと笑った。久方ぶりに再会した友人からの軽いジョークだとでも思ったのだろう。勿論直樹は本気である。

 そして仲間への指示をオーリに頼んだ直樹は操者の魔剣の他に4本の魔剣を選別して、宙に投げた。

 そのうちの一本の名は氷魔剣ザッシュ、それは氷の魔神より奪った無数の氷の刃を生み出す魔剣。

 その周囲を鎌鼬を起こす斬風の魔剣シエラと風属性の魔力で速度を上げる風翼の魔剣フォースが舞い、氷魔剣の生み出す氷の刃を氷刃の嵐へと変えていく。

 それらを魔法を増幅する増魔剣ザッハで増大させ、巨大な氷の竜巻が誕生する。


「うぉぉおおお!!」


 そして直樹のスキル『魔剣の操者』によって限界まで能力を引き出された魔剣達が主の魔力を吸収しながら巨大な氷の牙となってフルメタルキュクロープスを襲う。

「凍れぇえ!!」

 直樹の叫びとともに氷の竜巻は鉄の巨人を飲み込み、その体を氷漬けに変えてゆく。だがフルメタルキュクロープスとて、黙って食らっているわけもない。鎧の隙間に入って凍結していく氷を砕きながら体を震わせ前進する。

「ミノくん、最後のお勤めッ!」

 だがフルメタルキュクロープスの歩みはストーンミノタウロスの最後の力によって阻まれた。ストーンミノタウロスは一つ目の巨人を残された左腕で掴みかかり、共に凍りついていく。フルメタルキュクロープスの鎧部の関節部分が凍り、内部の肉体もここまでの戦いの損傷により動きが鈍っている。腕に至っては切り落とされて存在していない。直樹の氷結攻撃に耐える力は今のフルメタルキュクロープスにはなかった。


 そして空に舞い上がる少女がひとり。

「スキル・チャージ!」

 風音は左手にある魔法短剣からファイア・ブーストを発動させ一気に加速する。チャージされた脚が赤く光り、風音は錐揉みしながらまるで赤い流星のようにフルメタルキュクロープスへと突撃する。

 それを『直感』で危機を察知したフルメタルキュクロープスの瞳が光るが、

「やらせるかぁああ!!」

 直樹が最後の力を振り絞り、氷の竜巻による拘束力を強めて、その視線を横に逸らす。


 交差する赤い光と赤い光。それは僅かばかり外れ接触はない。そして、


「キリングレェエエエエッグ!!」


 風音の『カザネ・ネオバズーカ』がストーンミノタウロス諸共フルメタルキュクロープスへと突き刺さり、そのコアを破壊し、


「あああああああ、姉貴いぃいい。そっちは駄目だぁあ!!」


 直樹の叫びに風音が「へ?」という顔をしたがもう遅かった。フルメタルキュクロープスのコア部分を打ち抜くよう発射したネオバズーカはそのまま巨人を貫通しその後ろヘと突進する。


 そこにあったのはベビーコア。ダンジョンの心臓だった。それもたった今、門番を倒したことで封印が解かれ、むき出しの状態であった。


「しぃまったぁああああああああ!!」


 そして必殺の蹴りを食らったベビーコアは、その衝撃に耐えきれず粉々に砕け散った。元凶は滅びたのである。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:31

体力:114

魔力:205+420

筋力:55+10

俊敏力:48+4

持久力:31

知力:62

器用さ:39

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『より頑丈な歯』『水晶化』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム』『空間拡張』


風音「うわぁあああああああああああ!!!!」

弓花「やっちゃったねえ」

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