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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
ベビーダンジョン編

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第百六十二話 素材を採ろう

◎ブルーリフォン要塞 入り口前


 白き一団の参戦により一気に戦闘が終息した要塞入り口前。そこは今は冒険者たちが総出で魔物の素材取りタイムに入っていた。血生ぐさい臭いが辺りを立ちこめているがまあ解体処理場と化しているのでこれは仕方のない話だろうしこれは風音たちも既に慣れた光景だった。

 そして風音たちはであるが今は地核竜から素材剥ぎ中であった。地核竜の後もかなりの数の魔物を討伐したのだが、そちらは他の冒険者と取り分を何割か渡すことを交渉して対応してもらっている。

 なお、今回倒したのはダンジョン製の地核竜であるため、コアは竜の心臓ではなくチャイルドストーンである。40階層クラスのシロモノなので魔力生成能力も今まで所持しているチャイルドストーンの中ではもっとも大きい。これはタツヨシくんドラグーンに回しておこうと風音は考えていた。

 ちなみに群れに隠れていたモンスターテイマーも40階層クラスのチャイルドストーン持ちであったりする。魔物単体としての戦闘能力は低いが擬似モンスターハウスを生み出す能力は非常に危険なものだったのだ。そして、これはスキンヘッドの男ブルーシーが現在所持している。今回の戦闘でもっともラッキーな男かもしれないその彼は今風音に謝辞を述べていた。


「ホント、危なかったぜ。『鬼殺し姫』に『魔剣の操者』が来てくれるとはな」

「いや、助かったわ。正直、あのドラゴンが出てきたときにはもうだめかと思ったし」

「さすがにご高名な白き一団です」


 風音も先ほどまでは地核竜から素材を採っていたが呼び止められたので今は対応している。そして風音の前には三人の人物が立っていた。

 このブルーリフォン要塞のパーティの中でも最大手のパーティ『黒鴨団』のリーダーのセラと、二番手のパーティ『スクラルキラー』のリーダーであるブルーシー、そして派遣ギルド職員のロイである。

「いや、こっちも大物を討伐できたし別にそんなに気にしなくてもいいと思うけど」

 そう答える風音だが、対する三人はまるで高ランクの冒険者のごとき対応で風音に接していた。子供の姿ではあるが、その実力はすでにこの場にいる全員が見せつけられている。地核竜の首を蹴りだけではね飛ばす人間を侮る人物などはここにはいなかったのだ。

「ロイさん、とりあえずこちらで必要な分を採ったら後は換金したいんだけど、そのままお願いしても大丈夫かな?」

「はい。すでに手配はしています。何せこれだけの量ですからね」

 そういってロイは周囲を見回した。魔物の数は併せて150はいただろう。どこもかしこも素材取りで忙しいようだった。

「クリミオナの街から今荷馬車を呼んでいるところです。夕方には到着するでしょうし、ギルドには氷術系の魔術師もおります。私も冷凍魔術は使えますから保存にも問題はありませんよ」

「了解。それじゃあお任せするね」

 ここで言う冷凍魔術とは魔物の素材を保存するために生み出された魔術だ。これは素材保管人やギルド職員になるつもりならば覚えておくことを推奨されている魔術である。今回のようなケースがないとも限らないし、人出が多く必要なことはままある。

 なお保存という点では実は風音の水晶化がもっとも保存能力が高かったりする。何しろ数十年後に解除しても普通に人間が生きたまま元に戻るのである。もっとも生身では効果範囲が狭いので地核竜クラスを水晶化するには竜になる必要があるが、今はそこまでする必要性はなかった。それにこれ以上怖がられても問題だ。


「それにしてもやけに酷い状況だったみたいだけど、ここっていつもこんななの?」

「いやいや。んなわきゃねえだろ」

 風音の問いにブルーシーがツッコミを入れる。こんなのばかりだったらとっくに全滅、というよりも風音たちがこなければ今回だけで全滅していた可能性もあった。

「ブルーシー。カザネさんは来たばかりでこちらの状況など何も聞いてはいないのよ」

「ああ、そうだった。すまねえ」

 セラの言葉にブルーシーが頭を下げる。

「いや、いいんだけどさ。じゃあ普段はもっと穏やかってこと?」

「まあそうだな。そもそも魔物が要塞から出てきたのが初めてなんだよ。あのクラスの魔物自体は地核竜とモンスターテイマーを除けばダンジョン内で階層を無視して時々遭遇することはあったがよ」

 おかげでランクの低いパーティはあまり奥まで進めない状況になっている。うっかり高レベルの魔物に囲まれれば全滅しかねないためだ。

「とはいえ普段であればオーリングというパーティの方々が先頭に立って戦ってくださっていたんですよ。先ほどだって彼らがいればあんな苦戦することもなかったでしょうしね」

 ロイの言葉にブルーシーが反応する。

「そうだよ、それ。オーリングはどうしたんだよ? まだ戻ってきてねえのか?」

 ブルーシーの問いにロイは渋い顔で言葉を返した。

「ええ、昨日に要塞内に突入したっきり、戻ってきていません。今回の魔物の出現を考えると最悪の状況も考えた方がよいかもしれませんね」

「そのオーリングってのは強いの?」

「ええ、そうよ。リーダーのオーリがランクA、他に6人いるけどいずれもランクB揃いでね。リーダーのオーリはそちらのナオキともお友達よ」

「……直樹?」

 セラの言葉に風音が後ろを振り向いた。そこには呆然と立っている直樹がいた。

「今の話って本当かセラ?」

 直樹が青ざめた顔でセラに尋ねる。どうやらふたりは知り合いのようだった。

「ええ、残念ながらそのようね」

「直樹、そのオーリさんって知り合いなの?」

 風音の質問に直樹はしっかりと頷いた。

「ああ、面倒見の良いヤツでさ。パーティにも誘われたことがある」

 その直樹の様子を見て風音が少し考え込んだ後、直樹に尋ねる。

「うーん。直樹、まだ頑張れるよね?」

「姉貴?」

 直樹は風音の質問の意図が分からず首を傾げる。

「ライルとエミリィにも確認しておいて。小休止を挟んだら要塞に突入するけど、無理がありそうならそれに併せて出発する時間をズラすから」

 その言葉に直樹の顔が明るくなっていく。

「あの、大丈夫ですか?」

 ロイが心配そうな顔で風音に尋ねた。今の戦闘からまだほとんど経っていないのだ。

「まあ今なら中の魔物の数も少ないだろうしね。途中参戦で体力も余ってる私らが行くしかないんじゃないの?」

 ロイの心配を跳ね除けるように事も無げに風音がそう言うが、風音の心中からすれば弟がお世話になった人ならば当然助けねばならぬだろうと考えていた。

「だったら私もいくわ」

 その様子を見ていたセラが挙手してそう口を出した。

「要塞内を知ってる人間がいた方がいいだろうし、オーリには借りもあることだしね」

「うん。それは助かるよ」 

 風音は素直にそう言って「お願いします」と頭を下げた。礼儀を知る少女風音である。

 そして直樹同様にオーリとは知り合いであるライルとエミリィも当然のごとく行こうと口にした。その後風音たちは少し遅い昼食を取り、全員の準備が整ったところでそのまま要塞へと入ることとなったのである。



◎ブルーリフォン要塞 第二階層


「中は普通に要塞なのに、キチンと迷路みたいになってるんだなあ」

 ダンジョンはまだオルドロックの洞窟しか入ったことのない風音はそんなことを口にしながらヒポ丸くんを走らせている。周辺の壁は外で見た要塞そのものだが、内部構造は明らかに外から見た要塞とは違っている。にもかかわらず、その壁や扉などは要塞のものなのである。

(オルドロックは洞窟だったから気付かなかったけど、確かにあっちも最初の階層から迷路になってたし、異界化はしてたってことだよねえ)

 オルドロックの時は見た目の変化の多い下の階層でようやく異界化を実感できたが、元々の建築物であるブルーリフォン要塞では、それが早くも分かるようだった。

「異界化が思ったよりも進んでいるのよ」

 そう風音の後ろに座っているセラが口にする。

 現在、風音たちはヒポ丸くんに風音とセラ、ヒッポーくんハイに直樹とドラグーン、ヒッポーくんクリアにバーンズ兄妹を乗せ、それらの馬体から先行してユッコネエも走っている状態である。元々デコイ用の小型ヒッポーくんを風音は開発していたのだが、魔力増量により余裕が出たこととユッコネエのスキル『直感』の探知能力も考慮し、ユッコネエを斥候として扱うようにしていた。現在の速度は時速20キロほど、ダンジョンの中であることを考えればかなりのハイペースで進んでいる。

「それにしてもこの馬がダンジョン内を走る用だったとはな」

「確かに馬車もあるのになんで連れてるんだろうとは思ってたのよね」

 ライルとエミリィがそう話しながら乗っているヒッポーくんクリアを見た。最初はダンジョン内で馬に乗ることに風音以外の全員が驚いたが、普通の馬とは違いヒポ丸くんたちは段差などもものともせずに器用に進んでいけるのだ。二階層に降りるときにも階段を難なく歩いていた。

「それにしても便利な馬ね、これ」

「自慢の一品だよ」

 ぽんぽんとヒポ丸くんを叩くセラに風音がニヒッと笑って答える。現状はダンジョン内に潜っているため、不滅の水晶灯を解放して目が光っている。その威圧感に最初はセラも若干引いていたが今では乗り心地も含めてお気に入りといった感じになっていた。

「それで目的地は最下層の心臓球の間だよね」

「うん、10階層までは攻略済みだしオーリたちもその辺りにいると思う」

 コンプリートはされていないが10階層までの地図ももらっている。しかし入ってみると魔物の数が想定していたよりも多い。これは……と風音はいやな予感がした。


「にゃっ」


 と、そのときユッコネエの鳴き声が届いた。風音も臭いで敵が来たのが分かった。風音は臭いから敵がオーク3匹のようだと認識すると、パーティに合図を送り戦闘準備に入らせる。今回、風音は戦闘に関してはなるべく三人で行ってもらおうと考えていたので、そのままオークの対応は3人に任せることにした。


「ふーむ」


 そして戦闘開始。風音も観戦開始である。

 見たところでは直樹達は直樹を前衛として、エミリィが後衛、ライルがエミリィの護衛を務めるフォーメーションを組んでいるようだった。確かにライルの実力は一歩見劣りするものがあるが、後衛の護衛として考えるならば悪くはない。弓を扱うエミリィも後衛の火力増強としてはよい人材である。

 元々風音たちは風音が前衛で、弓花かジンライのどちらかが前衛と後衛組護衛に分けて戦っていることが多い。ライルに護衛を任せられれば弓花とジンライの両方を前線にあげることができ、火力も拡大する。

(いっそ、護衛向けにライルにタツヨシくんノーマルを譲っちゃうか?)

 チャイルドストーン動力であればノーマルも普通に動く。地核竜の40階層クラスのチャイルドストーンであれば不自由なく戦闘にも参加できるだろう……などと風音が考えているウチに戦闘が終了していた。勿論直樹達の勝利である。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:30

体力:107

魔力:181+420

筋力:52+10

俊敏力:43+4

持久力:29

知力:57

器用さ:38

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『より頑丈な歯』『水晶化』


風音「タツヨシくんを譲る……か」

弓花「悩んでいるわね」


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