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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
ベビーダンジョン編

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第百六十話 戦いに参加しよう

 男女四人で一つの部屋というのはどうなんだろうか……というようなことは風音ぐらいしか考えていなかったようで、エミリィの一声でクリミオナの街のトイトイの宿屋の部屋をひとつ借りて4人で宿泊することとなった。

 元々直樹たちは三人でパーティを組んでいたし、極貧ではないがお金を大切に……という至極真っ当な冒険者生活を送っていた。風音たちのようなやたら生活水準の高い毎日ではなかったのだという。だから無駄なお金は使わない。

 そんな馬鹿なと風音は思ったがそれが普通なのである。まったくもって正常な話なのである。もっとも、それが正しいかというと状況次第でもあったりする。

 そして案の定というべきか、夜中に突然物音がして風音が飛び起きた。

「姉貴?」

 音に気付いた直樹と続けて起き出すライルとエミリィだが、風音はすでに『情報連携』で接続したタツヨシくんドラグーンから何が起きたのかを把握し、そして窓を開けて外を見ていた。

(うーん、もうちょっと良い宿にしとくべきだったかなぁ)

 風音がやれやれという顔で窓の外を見ていた。何人か逃げ出していく様子が見れる。

「何かあったの?」

 エミリィの問いに風音が頷く。

「馬泥棒だね。ミンシアナでも一回あったなあ」

 どうやら物音の正体は馬泥棒だったようである。狙いはヒポ丸くんかヒッポーくんハイ、あるいはヒッポーくんクリアだったのだろう。あの馬たちはサンダーチャリオットなしでも非常に目立つ。特にヒッポーくんクリアは竜の心臓の輝きもあってまるで走る宝石のようでもあり、人の目を惹くのも仕方がなかった。であればもう少し馬小屋の管理もしっかりしたセキュリティの高い宿にするべきだったと風音が考えるのもやむを得ないだろう。

 持てる私財を見せている以上はセキュリティの面も考えなければならないのは当然のこと。貴族が安宿に泊まらないのは贅沢ができないからだけではない。自分の身を守ることを考えれば金のかかる設備の整った施設を選ぶのは当然のことなのだ。そうすることで、今回のような騒動そのものの発生も抑えられる。犯罪者をわざわざ生み出す必要もなくなる。

 ……というような反省もあるが、だがまずは目の前の状況の対処であろう。

「追うならいくけど?」

 直樹が風音にそう尋ねる。それを風音が少し考えた後、首を横に振った。

「いんや。ドラグーンが3人ほど倒してるから、そいつら捕まえるだけでいいよ」

 そう言って風音は直樹を連れて馬小屋に向かい、ライルとエミリィは宿屋の主人に連絡に行くことにした。そして警護隊に3人を突きだしてその夜は終わりを迎えた。

 実際のところ、昨日尾行していたのは彼らではないと風音は考えていたが、だがその尾行者を捕まえるにしても捕まえる名目がない。なのでひとまずはその件は保留とすることにした。どのみちヒポ丸くんに追いつける移動手段など限られている。街を出てしまえば追いつかれることはないのだ。

 そして風音たちはその翌朝には何事もなくクリミオナの街を出立し、昼には目的のブルーリフォン要塞の前に着いたのだが、風音たちがたどり着いたときにはその場は魔物が大量に押し寄せる戦場と化していた。



◎ブルーリフォン要塞 入り口


 ブルーシー・ゲイボックはその日、唐突に現れた魔物の群れを唖然として見ていた。


 年に3回か4回か行われるブルーリフォン要塞内に住み着いた魔物の大掃除、そのクエストのためにここに来たのが半月前。だが状況はブルーシーたちが当初考えていたものとは大きく違っていた。心臓球の前身であるベビーコアの出現が感知されたためである。

 それにより大掃除はいったん中断。この地がダンジョン化するならばベビーコアを成長させ運営する必要がある。不用意に入ってベビーコアを破壊させるわけにはいかなかった。

 そしてベビーコア発見から一週間が経ち、国とギルドが下した結論はブルーリフォン要塞の奪還であった。この地域には他にもダンジョンが存在し、魔物の発生は抑えられている。そのため魔物発生の管理という点で新たなるダンジョンは必要ないという判断が下ったようだった。

 またここがダンジョン化した場合、魔力の流れであるナーガラインを多く吸収し、この土地が痩せてしまう可能性もあった。そうなれば周辺の農業を営んでいる村々に深刻な被害が出てしまう。


 もっともそうした事情は冒険者であるブルーシーたちには関係のない話ではある。要はダンジョン化させるのかさせないかの二択で『させない』が選ばれたのであれば、早々にブルーリフォン要塞に潜ってベビーコアを手に入れるべく動くのが冒険者だ。そのためにブルーシーたちはここで待っていた。

 また冒険者ギルドも周辺の街にブルーリフォン要塞奪還の依頼を多く発注しているようだった。なおさら急がないと自分たちの取り分がなくなるかもしれない……と、当初はみな考えていたのだが、想像以上に魔物の数が増え、要塞内のダンジョン化もかなり進んでいた。

 冒険者たちは50人はいたが、何せ出てくる魔物のレベルがバラバラで時折妙に強力な魔物も出没し、結果として当時の戦力では状況は一進一退となっていた。そしてもう一週間が経ち、ランクBの冒険者なども到着し、さらにランクAのオーリ・ハルダーをリーダーとするパーティ『オーリング』が来たことでようやくブルーリフォン要塞の攻略が進み始めた。そしてもうまもなくブルーリフォン要塞奪還完了と思われていた時、突然要塞の奥から魔物が大量に発生してきたのだ。


「ちくしょう。どうなってやがるんだ!」

 ようやくショック状態から抜け出したブルーシーはそう叫びながら、鎧を着込んでバスタードソードを持って要塞の前まで走った。そこはまさに戦場だった。

 オーガとオーク、トロールなどのパワータイプの魔物が暴れ狂い、バロウタイガーや地竜モドキなども姿を見せていた。

「おい、オーリングはどうした? こういう時こそ連中の出番じゃねえのかよ?」

 横から声をかける男にブルーシーは「知らねえよ」と答えながら、狙いを定めて走り出す。

 そしてブルーシーは一緒にテントから出てきた仲間とともにバロウタイガーに切りかかった。バロウタイガーはオーガ達に比べて耐久力はないが、すばしっこく攻撃力が高い。早々に倒しておかないと後々の戦闘に響いてくるはずだ。

「つーか、なんで魔物同士が争いもせずに人間だけを襲ってるんだよ。話がチゲーだろ」

 そうブルーシーが泣き言を口にするのも無理はない。同種でもない魔物たちが組むことなど普通はない。モンスターハウス発生時の短期間でならあり得るが、この場はそもそもダンジョン内ではないのだ。だが現実に魔物達は協力体制とはいかないがそれぞれが人間だけを襲っている。明らかにおかしい状況だった。

「つぅっ」

 バロウタイガーの爪が使い古された鎧の肩部を剥ぎブルーシーの肩をも切り裂く。

「いってええだろうがっ」

 だがブルーシーもカウンターでバロウタイガーの喉に剣を押し込み、そのまま突き刺した。そしてバロウタイガーは即死した。

「くそったれ」

 悪態をつくブルーシーだが、肩の傷を気にしている余裕もない。敵はまだまだいるのだ。戦力の上では互角くらいだが、このままダンジョンから魔物が増えてくれば非常に危険な状態だ。 

(そういやオーリングって確か昨日は戻ってきてねえよな)

 そうブルーシーは思い出す。確か攻略までもう少しとはブルーシーは聞いていた。もしかすると最下層(10階層まで確認されている)までたどり着いてそこでドジッたのではないかとブルーシーが考えたところで悲鳴が上がった。

「なんだってんだ?」

 ブルーシーが悲鳴の方を見ると目を見開いて驚愕した。

「馬鹿な、地核竜だと!?」

 そうブルーシーが驚くのも無理はない。地核竜とはハイヴァーン一帯に生息する地竜を率いるボス格的な魔物。全長8メートルに達し、その力は中級竜に匹敵する。

「これをオーリングなしで俺らだけでやれってのか」

 ブルーシーが声を荒らげる。元々この地方の魔物はそれほど強くはない。最初に集められた冒険者たちは今も多く残っているがそのほとんどがCかD、ブルーシーももうじきBに昇格するか否かというランクCの冒険者だ。ただでさえ魔物の数が多いのに、それに加えてあんな化け物が出てきた。全滅という言葉が現実味を帯びたのを確信したブルーシーはこの場を引くことを考えた。


「そこ、どいてろぉぉおお!」

「デカいの一発来るからねぇええ!!」


 そのときである。白い石の馬に乗った少年と、水晶の馬に乗った少女が戦場を駆け抜けたのは。

 突然現れた少年等にブルーシーを始め、冒険者達が不審な目で一度は見て、そしてその乗っていた馬の姿を見て度肝を抜かれる。だが、少年が魔剣を飛ばし、少女が黒い魔道弓で応戦し、要塞の入り口から地核竜までの道のりで苦戦している冒険者の相手の魔物を撃退していくのを見ると、次々に彼らに同調し地核竜までの道を空け始めた。


「おいあれ、魔剣の操者のナオキだろ」


 そんな声も聞こえてきた。『魔剣の操者』のあざなを持つナオキという少年の噂はブルーシーも聞いたことがあった。まだ若く冒険者として3年目だというのにもうじきランクAに届くのではないかと噂される有望株。ブルーシーはまだ会ったことはなかったが、しかし驚くのはこれからが本番だった。

「なんだ?」

 光が見えた。ブルーリフォン要塞の入り口の外から紫の稲光のようなものがこちらに向かってくるのが見えたのである。いったい何かとブルーシーらが見ているウチにとてつもない速度でその光は要塞の入口を越え、直進しながらその先にいる地核竜へとブチ当たった。


 そして地核竜の悲鳴が響き渡ったのである。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:30

体力:107

魔力:181+420

筋力:52+10

俊敏力:43+4

持久力:29

知力:57

器用さ:38

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『頑丈な歯』『水晶化』


弓花「地核竜って確かこの間倒したクリスタルドラゴンの元になったドラゴンだっけ?」

風音「そうだね。クリスタルドラゴン自体は素体となる竜によって姿形が変わるから空を飛べるタイプもいるみたいだよ」

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