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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
老兵散華編

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第百五十二話 竜騎士を語ろう

 首都に向かう旅の途中で竜騎士とは何か……という話が風音から上がった。

 実は竜騎士はゼクシア・ハーツには存在していない職種である。竜に乗って移動したり、竜を使役して戦わせることはあっても、竜をパートナーとして戦うというシステムはなかった。ジライドが竜騎士らしく、愛竜に乗ってシロディエの街に来たのは聞いていた。だがジライドを乗せてきた飛雷竜モルドは街の外に待機していて、ジライドもそのまますぐに首都に戻ったため姿を見る機会もなかった。

 そして風音が知っているのは竜騎士とは竜に乗って戦う騎士であることと、竜の発する竜気を身に纏うことで己の力をブースト出来ること、ハイヴァーンには竜騎士が多くいるらしいということぐらいだった。


「まあ、ハイヴァーンに住んでる人間でも大体の認識は同じ感じかなぁあ」

 風音の言葉にエミリィが頷く。なお女子組は馬車の中、男子組は御者席と分けられている。

「基本的にハイヴァーンの竜騎士は竜の里から譲り受けた竜と契約して竜騎士となるのよね。竜騎士契約っていって人と竜の間にパスを作るの。契約といっても魂を代償にするとか悪魔みたいなものではないんだけど」

 そう言うエミリィの説明にルイーズが口を出す。

「もっとも、魂ではないけれど見方によってはかなり大きなモノを竜達は人間から手に入れているのだけれどね」

「どういうこと?」

 風音が首を傾げる。

「そうね。まず竜騎士契約の発端ってのは600年ほど前に竜を使役する魔王と人間達の間で起こった戦争なんだけど」

 風音の問いにルイーズがそう答えた。

「竜帝戦争だったっけ?」

 風音もそのことは知っている。なぜならばその竜を使役する魔王『竜帝ガイエル』を倒したのが達良だったからだ。そのへんの歴史については一通り書物を読んで風音も知識として得ていた。

「よく知ってるわね。ま、その戦争のおかげで人語も話せるような知性ある竜たちも激減しちゃってね。とても里を維持できる状態じゃあなくなってたんだって」

「ああ、それはアオ様の話ですわね」

 ティアラが横から口を出した。ツヴァーラ王国の顧問と言われているアオの逸話についてはティアラも詳しい。

「アオさんって、あの蒼焔のアオさんのこと?」

 風音の問いにルイーズが首を縦に振って肯定する。ミンシアナで出会った竜になっていたプレイヤーのアオ。彼は彼でこの世界に大きく影響を与えているようだった。

「ええ、あのミンシアナで会ったアオ様よ。彼は竜の里再建のために、知性が身につくまで仲間の成長を待つのではなく、手っ取り早く知性を植え付けさせる方法を考案して実践したのよ」

「それが竜騎士契約ってわけ?」

 風音が首を傾げるがルイーズは言葉を続ける。

「竜騎士契約ってのは一般的には、ちょうどカザネの情報連携と同じような感じで竜騎士が竜と意思疎通ができるようになるものと考えられているわ。それはそれで間違いではないんだけど、他の機能もあってね。竜は竜騎士を通じて人の知性や知識を学習できるようになっているのよ。だからそこらの野良竜と違って、竜騎士の竜達は頭が良いし人語だって話せるわけなのよね」

「へえ、そうなんだ」

 ハイヴァーン出身のエミリィが感心してルイーズを見ていた。あまり知られていない話らしい。

(……人間を学習装置にしてるってことか)

 つまりは竜という種に人の知恵を与えることを代償として、竜の力を人が借り受けているということなのだろう。であれば確かに竜は大きなモノを得ているとも言えると風音は納得した。

(それに如何にも異世界人の考えたモノって感じの仕組みだねえ)

 などと風音は思ったがルイーズの説明は続いている。

「だから竜騎士ってのは一般的に飛竜便などをしている飛竜使いって言われてるものとは違うものなのよね。あっちは普通に飛んでる飛竜をテイムして飼い馴らしたものだからただの野生竜で当然喋れないし。ま、個人的に竜の里と親交がある人間がフリーの竜騎士になることもあるらしいけど、これは国家帰属の竜騎士に比べてダンチで数が少ないわね」

「そうなんだ」

 つまり数は少ないが存在はしているということでもある。

「ちなみに竜騎士は竜に知恵を与えるわけだから、当然竜騎士の性格は竜に影響を与えやすいわ。なので竜騎士ってのは基本的にバカ正直で真っ当な人格者的な人物が選ばれることが多いのよ。あのジンライくんの息子ぐらいの年までいくと頑固って呼ばれるおっさんになっちゃうけど」

「なるほど」

 風音が頷いた。竜騎士ってあまり頭良くはなさそうだなと失礼なことを考えながら。

「バカ正直といえば、うちの兄も竜騎士試験を受けてましたけど落とされたみたいですね。我が兄ながら結構馬鹿だと思うんですが」

 失礼な妹だった。

「うーん。あのこはハイヴァーンの男子にしては少し砕けすぎてるのが悪かったのかしらね。馬鹿は馬鹿でも馬鹿正直というか誠実な人が望まれるのよ」

 エミリィの言葉にルイーズが苦笑する。そして、そこまで話をした後でルイーズはにやりと笑ってさらに言葉を続ける。

「ちなみに竜騎士以外にも似たような契約をしてる人たちがいるのだけれど。これはエミリィなら分かるわよね?」

 そう言って振られたエミリィだが、ルイーズの言葉通り、エミリィにはその答えが分かる。

「ええと、竜の巫女ですね」

「そういうこと。竜騎士契約とは違って、こっちは軽くパスを通すだけなんだけど、まあ、普段の竜の世話係ってことよね。竜騎士は男性が多いから、騎竜も男性的な性格になっていくの。だからお世話係も自然と女性であることが求められるようになるわけ。ちなみに竜騎士と竜の巫女ってそのまま結婚することが多いのよね。そうよね、エミリィ?」

「あーはい。父さんと母さんがそうでした」

 エミリィが肯定する。 

「そうね。あなたのお母さんは竜の巫女、お婆さんのシンディはその巫女の長ね。そういえばその魔力量ならあなたも巫女にはなれたと思うけど、そうはしなかったのね?」

「ええ。好きにしなさいって言われてましたし」

 エミリィは独立志向が高く、自分自身の力で……という傾向が強い。女性でも竜騎士になることもできるはずだが、そちらの道にも進まなかったようだ。

「そういう自分で選んで決められる人って私は好きよ」

「あ、ありがとうございます」

 艶のある笑みにエミリィがドキッとしつつ、礼を言う。ルイーズの見たところ、バーンズの家の人間で芯の部分が一番ジンライに近いのはこのエミリィだった。男だったら喰っていただろう。惜しいわねとルイーズは思った。

「ま、それでね。カザネ、ユミカ、ティアラ。あなたたちには知っていてほしいのだけれどね。ハイヴァーンには決して怒らせてはいけない人物が3人いるわ」

 突然名前を呼ばれた三人が身を乗り出す。ルイーズが大切なことを言おうとしているのが分かったからだ。

「まずひとり目はハイヴァーン大公ライノクス、もちろん国のトップだからね。この国最高の槍術の使い手で、一声でこの国の竜騎士を束ねて自ら戦場に駆り出ることもある剛の者よ」

 弓花は以前ジンライより聞いたことがある。その公王を槍術で超えることがジンライの目標の一つなのだと。

「そしてふたり目は人ではないけど東の竜の里の長『神竜帝ナーガ』。最古竜の一体で本人の能力もさることながら、このハイヴァーンを含んだヴェゼル東域一帯の竜を統率している竜族の王様よ」

 風音が頷く。風音たちはその竜に届け物をしに、遙々この地にやってきたのだ。

「そしてもうひとりが竜の巫女長シンディ・バーンズ。彼女は竜騎士たちの騎竜の母のような存在だからね。竜に愛され竜と共に生き続ける、いわば騎竜達の精神の支柱」

「それ、ジンライさんの奥さんだよね?」

 風音の問いにルイーズは笑って続きを口にする。

「彼女を敵に回すってことはこの国の騎竜のすべてを敵に回すと言っても過言ではないわね。多くの竜の竜気を身に纏う彼女はディアサウス内限定でならば最強ともいえる存在よ」

 そこまで聞いて、エミリィを除く3人はルイーズの言葉の意味を知った。

 そして全員が御者席のジンライをチラ見する。ヒポ丸くんの手綱を握っていて若干は落ち着いているが力なく俯く老人がそこにいた。

「師匠、大ピンチじゃないですか!?」

 弓花の言葉にルイーズは爆笑する。

「そうなのよ。ジンライくんはそう言う人物を嫁にしちゃって、そして今怒らせてしまったというわけなのね」

「ルイーズさん、嬉しそうだねえ」

 今の話の流れならばルイーズも相当にヤバいのではと風音は思うのだが、ルイーズはまったく気にした素振りはなかった。


 まったく平常運転のルイーズにため息をつきながら風音は道の先にやけに鳥が多いな……と思って見ていた。もうじきハイヴァーン首都ディアサウスのはずである。そして風音はその鳥たちのようなものの正体を叡智のサークレットの遠隔視で見ていれば気付けていただろうが、残念ながらそれは行われなかった。


 あれが荒ぶる竜達が飛び回っている姿だと気付いたのは、ディアサウスに着く少し前のことだったのだ。


名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:30

体力:107

魔力:181+420

筋力:52+10

俊敏力:43+4

持久力:29

知力:57

器用さ:38

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『頑丈な歯』『水晶化』


弓花「物理最強お婆ちゃんか」

風音「強そうな。あーそれにしても鳥が多いね」

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