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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
老兵散華編

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第百五十話 再会をしよう

 弓花との戦いの後、ジンライは土下座しながらルイーズと二度ほど夜の稽古をしてしまったことを告げた。ちなみに風音が証人である。あっけにとられていたジライドだがそのことについては何も言わなかった。さきほどの弓花との戦いで毒気が抜かれてしまったということもあるが、何よりもまずは自分の頭を冷やすことが先決だと考えていたようである。

 そしてジライドは父親と同様に風音と弓花に土下座して謝罪をした。父親も土下座中だったので親子土下座だった。孫、もしくは子供たちが非常に気まずい思いをしたのは間違いなかった。風音たちも苦笑いである。

 そしてジライドはひとまずは首都に戻って母のシンディに報告するとだけ伝えてその場を去っていった。その際、シンディの名が出た時に土下座をしていたジンライの肩が震えたのを風音は見ていた。



◎シロディエ湖 シロディエの街方面


「すまなかった」

 そしてジンライは土下座続行中である。それを弓花は困った顔で相対している。

「それじゃあ私が戦った意味って。いや、もう分かりましたから。頭下げるの止めてくださいってばぁ。ほら奥さんにはちゃんと言うつもりだったんですよね」

 弓花は弓花で先ほどの大立ち回りを思い出すとかなり恥ずかしいのだ。師匠とて人間なのだ。神聖視しすぎるのはよくないと自己反省中でもある。

 なお孫達だが、

「まあ爺さんも男ってことだな。うん、しゃーないって」

 と、ライルはバーンズ家としては軽いノリの少年なので、あまり気にしないというかちょっと羨ましげというか、思春期丸出しである。

「私的にはどうかって思うけど……お婆さまとのことに私たちが口を出せるものではないしね。というか兄さん、なんで羨ましげなのよ」

 エミリィはさすがにどうかと思っていたが、まあ大人のことは大人のことと割り切っていた。時折家に訪ねてきては厳格ながらも子供にはウルサく言わないジンライを2人はとても好いていた。女癖はどうあれ良いお爺ちゃんなのだ。


「それで風音は知ってたんでしょ。そのこと」

「まあね」

 どうにかジンライの土下座を解除させた弓花は風音に恨めしげな視線を送る。ちなみにジンライは今度は孫達に土下座モードである。土下座好きである。ドゲザーの称号を贈りたい。

「教えてくれてもーとか言わないでよね。私だって知りたくて知ったわけじゃないんだから」

「んー。そりゃあ、そうだけど」

 実際風音の言うとおりである。何が悲しくて親友に「お前の師匠、浮気してるぞ」と言わねばならぬのか。とはいえ、弓花が恨みがましい気持ちになってしまうのも仕方のないことではある。感情はままならない。

「ま、ジンライさんの問題はジンライさんの問題だし、首都に行っても私らが関与する問題じゃあないと思うけどね」

 とりあえず『誤解』は解けたのだ。あとは誤解じゃない方面は自分で解決するしかないと風音は割り切っていた。

(そういえばジライドさん、ジンライさんのハーレム話をやたら確信をもって言ってたな。誰かから聞いたんだろか?)

 とりあえず首都に着いたらジライドにはその件について聞いてみようと風音は思った。なおどこぞの獣人が同時間帯にクシャミをしたかどうかは定かではない。

「ま、そんな大人の事情よりも今のことを考えないとね」

 そう言いながら風音はライル達の方を見た。釣られて弓花も兄妹を見た。

「師匠の孫ってことはあの人たちが直樹の仲間ってことだよね」

「そういうことだね」

(ということはあの女の子がエミリィか。うーんと、つまり)

 話を聞く限り、弓花の乙女センサーはエミリィが直樹を好いていると出ていた。

(今の私と直樹がなんでもないってのは伝えといた方がいいのかなぁ)

 その辺の加減は難しい。嫌われたくはないものだと思っているが、相手がまずはどう考えるかということもある。あとティアラのこともあるのだ。

「なんか面白いサプライズとかないかねえ」

「もうサプライズはたっぷりあったじゃない」

 弓花はノホホンとしている風音にため息をく。この親友は心の底から弟がモテるわけがないと考えているのでティアラとエミリィの気持ちなど気付いてもいない。もっとも弓花が恋人となったときには「直樹に彼女ができるなんて……本当に良かったねえ」と目を潤ませて喜んでいたのでどちらが彼女になっても風音は歓迎するだろうとは弓花は考えていた。

「あ、直樹。めっけ」

 と、弓花が考えにふけっていると風音の口からそんな言葉が漏れた。

「見つかったんだ?」

「ティアラも一緒だね」

 風音はさきほど掃除していたタツヨシくんノーマルに情報連携をかけて直樹たちを探しに行かせていたのである。

「とりあえず直樹たちをこっちに誘導する?」

「うーん。いや、それはやめとこ」

 風音の質問に弓花はうなり、そして首を横に振った。直樹とティアラが二人きりのところをエミリィに目撃させるのはあまり良いサプライズではなさそうだと思った弓花は直樹たちをルイーズ家に誘導するように伝える。お昼がまだだったのでサプライズパーティでも開こうと弓花は提案した。

 風音もそれに同意し、ライルたちにもそのことを話した。当然風音の口から直樹の名前が挙がったときにはふたりも驚いたが、風音が自分を直樹の姉だと名乗るとさらに二人は驚いたようだった。当たり前である。

 まあ、なんだかんだとあって、バーンズ家で何事もなく直樹と兄妹は再会し、テラスでの立食パーティが開かれた。そして食事の後、しばらくしてから当然のように温泉タイムとなったのである。



◎シロディエの街 特別区 ルイーズの別荘 室内温泉 朝


「……何事もなかった」

 弓花が湯船に浸かりながらそう口にした。このパーティはトラブルに愛されている……と弓花は考えている。今回もエミリィが直樹とティアラと一緒のところを目撃してキーっとなったり、ルイーズが直樹にちょっかいを出してエミリィがキーっとなったりするような気がしたのだがそんなことはなかった。

「昨日はごめんねえ。本当に冗談のつもりだったのよ」

「もういいですってば。私だって人様のお家をじろじろ見てたのが悪かったんですし」

 どうも弓花の知らないところで起きた誤解も解けていたようである。争いのない日常万歳であろう。

「それで、エミリィちゃんってナオキと組んでもう二年なんでしょう? あれも結構な活躍だったって聞いてるけどどうだったのかしら?」

「えと、そうですね。魔剣の繰者ってあざなで呼ばれてるのは知ってるとは思うんですけど、剣士としても相当なものですし、クエスト達成率も高くて、みんなナオキには一目おいていました」

 そう嬉しそうに話すエミリィにルイーズはうんうんと頷く。弓花はそのルイーズの顔を面白そうなものを見つけたーという笑顔だと思った。

「でも時折故郷を思い出すみたいで、以前にもユミカって名前を寝言で口にしたのを聞いたことがあって。あ、寝言って言っても夜営してたときなんですけど」

 そう言いながらもエミリィの視線は弓花に突き刺さっていた。目が笑っていない。

「へ、へえ」

 無論弓花は冷や汗混じりにそう返す。

(あんのバカ、よけいなことを口走って)

 と弓花は思いながらいやな予感がしたのでルイーズを見るとニヤッとした顔で当然のごとく「元彼女としてはそこらへんどうなの?」と爆弾を落としてきた。

 そしてエミリィが彼女という言葉に反応し、ティアラもビクッと肩を震わせた。弓花は「くっ」とルイーズを睨むが、ルイーズの表情は「あれー、言っちゃマズかったー?」という感じの非常に白々しいものだった。殴りたい。

「え、いや、私は元だしねえ。今はなんでもないよ?」

 さすがに弓花も「あんな姉フェチの気持ち悪いの相手にしたくないし」とは直樹に憧憬の眼差しを送っているエミリィの前では言えない。だがその横でちんちくりんがさらなる爆弾を落としてきた。

「弓花ってたしかベロチューまでしたんだっけ?」

「ちょっとそういうの今言うんじゃないわよ、アンタは!?」

 弓花の焦り声にエミリィが「べ、ベロチュー?」と衝撃を受けている。ティアラは意味が分からず首を傾げているとルイーズがやってきて耳元でボソボソと何かを告げていた。そしてルイーズの言葉が終わったとたんにティアラがボッと顔を赤くする。

「いやもう、昔のことだからね。ぜんっぜん今はそういうんじゃないからさあ」

 そう弓花が言うものの、エミリィはその言葉を真に受けることはなかった。何故ならエミリィは直樹が故郷に想い人がいるのに気付いている。そして直樹の寝言に出てきた名前こそがそうだと考えていたが、その考えをここで確信に変えていたのだから。

(この人が直樹の想い人なんだ)

 エミリィは弓花を見る。自分と同年代でありながらエミリィの父親と戦って勝つほどの少女だ。そして祖父が愛弟子として選ぶほどの力を持ったスゴい人なのだとエミリィは素直に感じていた。顔は突出して良いわけではないが美人の類ではある。大きさはさほどではないが張りがあってツンッとした胸もある。エミリィは控えめな自分の胸を見る。胸と言えばルイーズもティアラも恐ろしいボリュームである。何を食べたらあれほど大きくなるのか。そして……


「なに?」


 風音はエミリィから向けられた視線に反応して尋ねるが、エミリィは慌てて「なんでもないですっ」と言って風音の胸から目をそらした。つるんとぺたんとしていた。

(ま、まあ……ナオキの姉さんは除外すると私が一番貧弱なものをお持ちなのね)

 そう思うとエミリィは悲しくなった。と、まあ随分と横道にそれた感はあるが、ともあれ自分にとっての恋敵は弓花であろうとエミリィは考えていたのだ。彼女と言っても元ではあるが、だが直樹は弓花を忘れられない。まだ好きなんだろうと予想していた。


名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:30

体力:107

魔力:181+420

筋力:52

俊敏力:43+4

持久力:29

知力:57

器用さ:38

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『頑丈な歯』『水晶化』


風音「今回は直樹とライルたちの感動の再会よりもおっぱい話とベロチュー話を優先したのであった」

弓花「ヒドい話ね。それにヒドい誤解もあるようだわ」


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