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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
老兵散華編

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第百四十七話 父親を飛ばそう

 牙の槍兵ジンライ・バーンズと竜の巫女長シンディ・バーンズの息子にして、ハイヴァーン軍飛竜戦団の将軍を務めるジライド・バーンズがシロディエの街にやってきたのは子供たちがこの街に滞在しているとの連絡を受けたためだった。

 彼は子供たちが首都に辿り着いた時に自分が伝える前に別口で真相を知ってはショックが大きすぎるだろうと考え、早朝に相棒の飛雷竜モルドに乗ってシロディエの街までやってきたのだった。

 そして愛竜から降りたジライドは子供たちに会いに別荘へと向かい、娘のエミリィに迎え入れられた。兄のライルは買いだしに行っているとのことだった。

 エミリィは当然ジライドが訪ねてきたことを不審に思い理由を尋ねるが、しかし事が事なのだ。ライルが戻ってきたときに話すとエミリィには告げてジライドは部屋で待つことにした。久しぶりに会う息子と娘に対し、これから告げる内容のことを思って緊張しながら待ち続けた。

 しかし、そんな思いで待っていたのにいざ息子が戻ってきたと思えば、見知らぬ小さな女の子を連れてきていた。


(こんな子供をナンパして家に連れ込んだだと……これも、あの男の血がそうさせているというのか)


 青筋を立てながらジライドはライルを見ていた。

「かわいいガールフレンドだな。ライル?」

「え、ちが」

「かわいいだなんて、やだなあ」

 慌てるライルの横で風音は照れていた。このちんちくりんは女の子扱いされることに弱い。

「そうか。私が公務に勤しんでいる間に、お前はこうしてこんな小さな女の子を妹がいるにもかかわらず連れ込み、一夏のアバンチュールでも満喫しようとしていたのか」

「そんなわけねえだろ、親父!」

 ライルはバーンズ家のツッコミ担当のようだった。

「この娘に関係があるのは俺というかエミリィの方だっての。昨日世話になったから昼飯に招待しようと思って連れてきたんだよ」

「あ、そうなんだ」

「ザッツライト!」

 エミリィが兄の言葉に納得し、風音がブイサインで肯定する。ものをもらったということに関しては伏せていた。親というものはそうしたものに過敏だ……とライルは考えていたからだ。ジライドもライルの言葉というかエミリィと風音の反応で納得した。

「なるほどな。それはすまなかったな。そちらのお嬢さんも」

「いえいえ。お気になさらずー」

 と風音は返した。そして誤解も解けてホッとしたライルはジライドに向き合う。

「それで久しぶりだけどさ。親父がここに来てるってのはどういうこと?」

 ライルは、ジライドと、そしてエミリィの方を見る。だがエミリィはジライドからまだ何も聞かされていないのでとりあえず「私は知らない」という意志を込めて首を横に振る。それを見たライルが再びジライドを見ると、ジライドはようやくその口を開いた。

「お前たちの祖父ジンライ・バーンズが死んだ。そのことを先に伝えておくべきだと思って先んじて会いに来た」

 そのジライドの言葉にライルとエミリィは目を見開き、衝撃を受けたが、風音は思いっきり吹いた。多分その死んだ男は、この時間帯なら朝の特訓も完了して今は100メートル先の屋敷の中にいるはずである。おそらくは茶でもすすっているはずだ。

「ちょっと、ジンライさんなら生きてるけど」

 どういった経緯でそんな話になったのかは分からないが、朝の段階では生きていたのでさっき殺されたのでなければ生きてるだろう……と風音は考え反論する。

「部外者は黙っていてくれないか」

 だがジライドはピシャリと風音の言葉を拒絶する。実はそうした事情があるので、と風音にはお引き取り願おうと考えていたジライドだったが予想外の風音の食いつきに内心面食らっていた。またジライドが風音の言葉を否定する風でもなかったので、その様子にライルとエミリィはさらに困惑することとなった。

「どういうことだよ親父?」

「……ふむ」

 ライルとエミリィの眼差しにジライドが考え込む。その様子がジンライに似ているなぁと風音は感じた。

「確かに死んだというのは拙速な言い方であったかもしれない……が、バーンズ家のジンライ・バーンズが死んだというのは紛れもない事実なのだ」

 その言葉はライルたちの混乱を助長することはあっても止めることはできない。だがジライドはそのまま続けて話す。

「つまり、あの男はもはや死んだも同然だということだ。ジンライという男は女に狂い、我がバーンズ家の名を地に落とそうとしている。それを私は許容することはできない」

「女に狂ったって……なによ、それ?」

 父の言葉の意味の分からないエミリィが非難の声をあげるが、ライルはその意味を察した。それは鬼殺し姫パーティと双璧をなすハーレムパーティの噂のことだろうと。

「親父、まさか爺さんがハーレムパーティを結成して温泉三昧の毎日を送ってるって噂のことを言ってるのか? あんなデマ信じてるのかよ。くだらない!」

「くだらないことでも噂でもない。私は実際に聞いてきたのだ!」

 ライルの言葉にジライドが怒号する。


(毎日女連れで温泉三昧……)

 否定はできないなと横で風音は頷いていた。

「昔の女や弟子と称して若い娘を連れ回し、どこの貴族の娘にも手を出す始末だと聞いている」

 風音は酷い噂になっているなあ……と思いながら耳を傾けていた。 

「特にあの男を女漬けにしたカザネとか名乗る大淫婦の色情狂いの化け物女のミンシアナでの悪評はヒドいと聞く。母や私たちを置いて、そんなのとパーティを組んで淫蕩を繰り返していたのだ、あの男は!」

(だいいんぷかざね、それは酷い言葉だねえ、、酷い酷い……ん?)

 他人事のように聞いていた風音が「あれ?」という顔をした。


「ちょっと待てやこら」


 そこにはさしもの風音も抗議の声をあげた。少し涙目である。


(カザネ?)

 それをライルは驚きの目で見る。風音が声をあげただけではない。その名前が一致していることにも気付いたからだ。

「部外者は黙っててもらおうか」

 叫んだ風音をジライドは再度冷たく突き放す。だが会話の内容からしてもはや部外者ではない風音は抗議の声を緩める気はなかった。

「みんなの風音ちゃんはそんなヒドいビッチさんじゃありません。いったいどこで聞いたか分かんないけど。ミンシアナでも人気者なんだからね」

「人気?悪評の類だろう。現にハイヴァーンのアウターたちでさえその名を口にするのを躊躇うと聞くぞ」

 ジライドの反論は事実であった。

「ぬう、それは不幸な誤解の連鎖なんだよ。本当のあのこはとっても良い子なんだからね。あんたになにがわかるのさ」

 風音の言葉にジライドはやれやれという顔をする。

「その年頃ならば白き一団の英雄譚に憧れるのも仕方なしとは思うが、だが事実と虚構を一緒にするべきではないぞ少女よ」

「どういう意味さ?」

 風音が訝しげな視線でジライドを見る。

「所詮吟遊詩人どものさえずる物語など面白おかしく、都合の良いことしか伝えていないということだ。実際には老人と淫売のホラ話に過ぎんのだ。まったく私が伝え聞いた『ジローくん英雄譚』とはエラい違いのとんだ創作だ」

 ちなみに『ジローくん英雄譚』とは風音がコンラッドで吹いたホラ話を元にした物語である。そして、このジライドの言葉は根拠のないものではなかった。元より吟遊詩人や冒険者たちの話など事実よりも虚飾を混ぜ合わせた面白おかしいものの方が好まれるのは事実なのだ。

 問題なのはコンラッドの酒場で風音が語った『ジローくん英雄譚』が、大元となる『狂鬼群討伐』と呼ばれているオーガ討伐の実話と食い違っていることなのである。そのふたつを混ぜて考えると話の整合性がとれなくなるため、どちらが真実なのかをボカしてしまっていた。そして当然鬼殺し姫に悪印象を持つジライドは『ジローくん英雄譚』の支持派に回ってしまったわけだ。

 なお、風音の語った嘘話が余りにも熱い内容だったため、それを聞いたジライドは「ジローとはなんと高潔な戦士であろうか」とまで感じ、聞いたその話を酒の席で同僚や部下などに涙を流しながら語っていた。それはこの大陸内で毎夜繰り広げられている現象であり、今現在もパンデミック状態でジローくん英雄譚は広がっていた。恐ろしい。

「『ジローくん英雄譚』なんて嘘話を信じちゃうなんて、そんなむっつり中年の妄想話こそ毒そのものだよ」

 作者の言葉は重みが違う……ということは当然なかった。ジライドはそんなことは知らないのだから。だからジライドは己の愛する『ジローくん英雄譚』を馬鹿にした風音を、ひいては己の英雄ジローを否定した風音を許すことはできなかった。ジローが聞いたら顔を真っ青にして首を横に振っていたに違いない。というか、実際に言ったこともあるのだが「謙虚なお方だ」と勘違いされてたようだった。手の施しようがない。

「言うたな。こんなことを子供に言うべきではないと思っていたが止むを得まい。私は聞いたぞ。あの淫婦が親父を交えた50人の男どもと大乱交パーティを開いたと。確かな情報だ。間違いない」


「間違いだらけだーーー!!」


 その言葉とともにジライドが吹き飛ぶ。

 風音の怒りが頂天に達したとき、ついにキリングレッグ:Lv3が開眼したのである。パッシブスキルとして竜鬼の甲冑靴なしでも強化された脚力が、恐るべき威力で以てバーンズ家の玄関を破壊し外へとジライドの体を弾き飛ばした。そして、それはルイーズの別荘のテラスでのんきに茶をすすっていたジンライの目にも入ることとなる。

「息子が飛んでいる?」

 ジンライが自らの目を疑ったのも止むを得まい。まさしくジンライの息子がぶっ飛ばされていたのである。自分と違い、国の重鎮となり、家庭を顧みる良き父の、そして年老いた父に贈り物をくれるという立派な息子であるところのジライド・バーンズが空を舞っていた。


 そしてジンライはお茶を噴き出した。茶柱も空を舞った。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:30

体力:107

魔力:181+420

筋力:52

俊敏力:43+4

持久力:29

知力:57

器用さ:38

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『頑丈な歯』『水晶化』


風音「キリングレッグのLv2は蹴りの威力だけがパッシブ化されてたんだけど、Lv3だと脚力そのものが強化されてより格闘性能が上がった感じだね。ちなみに全力蹴りは今まで通りスキルを発動させる必要はあるよ」

弓花「でも今までも鍛えてないのに、それっぽいことは出来てたよね?」

風音「そこらへんは『身軽』と『戦士の記憶』のおかげだね。ゲーム的に言えば重複効果はあるから近接戦闘がもっとやれるようになった感じかなぁ」

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[一言] 私も最後笑っちゃった
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