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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
水晶竜編

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第百三十九話 火山を登ろう

 風音が依頼書をギルドに提出し、正式にクエストを受領したのはクリスタルドラゴンの討伐を決めた翌朝だった。討伐メンバーは風音、弓花、ジンライ、ティアラ、ルイーズ、直樹の6人での申請だが、ギルドからの要請で他にドラゴンハンターたち4名とヨークも参加することとなった。

 その4名とは前回の討伐メンバーの生き残りだ。仲間を助けるために参加したいと言ってきた冒険者たちだそうだ。どことなく荒っぽい雰囲気の男たちだったが、風音の見る限り風音の想定する戦闘に耐えうる技量の持ち主はリーダーのエイブラがギリギリアウトという感じで残りは完全に戦力外である。それはジンライも同じ評価だった。故にそのメンバーに対し、風音は戦闘参加は見合わせてもらうよう話をしている。端的に言って能力不足なのだ。

 俗に言う対竜50人体制という話は彼らぐらいのランクの戦闘を前提としているが、前述したとおりの4人という数ではそれもほとんど意味を成さない。下手に場をかき回されても仲間を危険にさらすだけだと風音は考え、彼らには直樹とタツヨシくんノーマルを付けさせてクリスタル化した冒険者の救出の指示をした。その説明にリーダーのエイブラという男が憮然としていたが特に反対意見は出てこなかった。

 察するに彼らは風音たちに仲間を救うための囮役を望んでいるようだった。風音としてもその認識でいてくれれば無駄に戦闘で死人を出さなくて良いとは思ったので特に口には出さなかったが、敵愾心とも言えない妙な視線が向けられていることが若干気にはなっていた。そんなモヤモヤした相手だったのでギルドを出て外のヒポ丸くんとサンダーチャリオットを見たドラゴンハンターたちが絶句したときにはちょっと胸がスッとした。さすがヒポ丸くん!さすがサンダーチャリオット!!とさらなる信仰を深めていった。


 そして一行はクリスタルドラゴン討伐のためにモロゴ山へと出発したのである。



◎モロゴ山 山道


「なんだか空気が悪い」

 風音たちはヒポ丸くんとサンダーチャリオットに乗って進んでいる。その後ろに付いてきている冒険者たちを見て、風音がそう呟いた。エイブラたちは風音たちに何か言ってくることはないのだが、だが妙に余所余所しい、距離をとろうという雰囲気で接してくるのだ。そして仲介役らしいヨークに対してエイブラが事あるごとに怒鳴り返していた。

 風音としてはヨークとは、バカで変態で友達のひとりもいなさそうなかわいそうな弟にできた貴重なお友達である。それを不当に虐めていることに憤ったがヨークは「まあまあ」と言いながら風音をなだめた。普段はそこまでの横暴な人物ではないからと言いながら。

「やっぱり昨日の地竜からして今回のクリスタルドラゴンと続いて私たちが手を出しちゃって怒ってるのかな?」

「ま、その可能性もあるが、それだけではないだろうな」

 エイブラたちの反応に対する風音の推測にジンライはそう返しながら馬車を走らせている。風音は御者席の横に座って後ろを見ていたが、ジンライのように何かしらを察することはできなかった。そしてジンライがエイブラたちの中に見えていたものとは罪悪感だ。

 彼らはおそらくジンライたちがクリスタルドラゴンに勝つとは微塵も思っていないのだろうとジンライは推測していた。理由は彼らはクリスタルドラゴンに一度打ち負かされているからだ。恐らくはセオリーに沿って50人体制で挑んだのだろう。そして負けた。それに彼らはジンライたちの力を知らない。精々が噂で聞いた程度の話だろう。そして彼らは自分の娘ほどの少女を囮にして仲間を救おうと考えていることに罪悪感を感じている。だからこそ風音たちに距離を置き、情を交えないようにしているのだろうとジンライは予測していた。この推測は当たっているかもしれないし、風音の言うとおり外の人間に狩り場を荒らされて苛立っているだけかも知れない。その答えがでるのは戦いが終わった後だろう。そしてジンライは自分の推測が当たっていることを祈った。当たっていれば共に戦場を駆けた戦友たちとうまい酒が飲めるかも知れないのだ。

 ともあれ、そんな不確かな考えまでジンライは横で悩む少女には言うつもりはない。結果はすぐに出る。だから当たり障りのない言葉を選んで答えた。

「まあクリスタル化した冒険者は最大7名。その数を運ぶには、連中の二台の馬車が必要だからな。持ちつ持たれつ、あまり気にすることはない。自分たちの仕事をすればいいだけだ」

 訝しげに後ろを見ている風音にジンライはそう言い含める。

「まあね」

 そして風音もそれは分かっていた。風音たちのサンダーチャリオットでは確かに全員を運び出すことはできない。運び出す足と人員が必要だ。報酬についてもエイブラたちに渡すのはクリスタル化した冒険者の救出報酬分のみで話は通しているし、風音としてもエイブラたちにはそちらに全力で当たってもらいたいと考えていた。



◎モロゴ山 山頂付近


 そして風音たちが山道に入ってから5時間。周囲が岩場だらけとなり、地図の通りならばもうじきクリスタルドラゴンの生息地にたどり着くはずだった。

 ここまで来ると、下手をするとすぐさまクリスタルドラゴンと遭遇するかもしれない危険も考えたエイブラたちの口数は減り、周囲の警戒を強めていた。さすがにドラゴン退治を生業としている冒険者であるとは言える。

 そしてエイブラはさすがに戦闘に対しての打ち合わせもせずに行動するわけにもいかぬと思い風音の下へ馬を走らせた。

「おい、もうじきクリスタルドラゴンのいる場所なんだがっ……て寝てるのかよ」

 エイブラが風音の座る御者席の横まで来たのだが、風音はアイマスクをして座っていた。

「ん、なんなの?」

 風音としては突然かけられた声に非難の声を上げるが、ジンライは「気にするな。それで敵はどうだ?」と尋ねた。風音はジンライの言葉に「そうだねぇ」と返す。

「クリスタルドラゴンは動いてないけど首がこっちに向いてるね。多分、気付いてるよ。結構離れてるのに」

 そう言う風音にエイブラが状況を察し、口を閉じる。魔術でクリスタルドラゴンを見ているのだろうと思ったのだが、まあ大体正解で叡智のサークレットの遠隔視で見ているのである。アイマスクは自分自身の視覚を遮断して遠隔視に集中するために用意しているものだ。

「動かないのはクリスタル化したものを守ってるっぽいね」

 その言葉にはエイブラがピクっと反応する。

「ドラゴンを動かせそうか?」

「動かないなら動かないで良いよ。そのまま倒すから」

 アイマスクをしたままの風音の言葉にエイブラが「倒す?」と口にするが、風音は気にせずアイマスクを取ると「戦闘準備!」と口にした。

 馬車からはゾロゾロと仲間たちが降り、タツヨシくんシリーズも総て起動する。

 フォワードは風音、弓花、ジンライ、ユッコネエ、タツヨシくんドラグーン(魔剣装備)、這い寄る稲妻(ヒポ丸くん+サンダーチャリオット)、フレイムナイト×10。バッカーはルイーズ、ティアラ、量産型タツヨシくんA・B。直樹とタツヨシくんノーマルは今回はヒッポーくんハイに乗っての回収班である。

 その戦闘参加数は20を超え、弓花が神狼化すればさらに銀狼も二匹参加といつの間にやら大所帯である。炎の騎士が半分と水増し要員多めだがデコイとしての役割は大きい。ヨークやエイブラたちがその数に呆気にとられていると、直樹がエイブラとヨークの下にやってきて話し掛ける。

「そんじゃあ、姉貴が仕掛けたら俺達はクリスタルドラゴンの進行ルートを迂回して冒険者たちを助ける。準備はいいよな?」

「あ、ああ、なんだか凄いな。あれは」

 ヨークが呆然と答えている横で、エイブラがさきほどとは違う顔つきで仲間たちに指示を飛ばし始めた。勝手に囮役などという役割を風音たちに抱いていたエイブラはここにきて、この白き一団の実力に気付き始めたという事だろう。少なくとも彼らが風音たちにようやく真剣に向き合ったのは確かだった。


「よーし、やるよー」

 そして風音のかけ声にエイブラたちも含めた全員が声を上げた。



  **********



 その日、かつて地核竜と呼ばれていた8メートルある竜を元に生まれた魔物『クリスタルドラゴン』は己に近付く不審な存在をその目に捉えていた。クリスタルドラゴンの瞳は水晶眼と呼ばれ、遠くの気配まで見ることができるものだ。魔法具に使うレア素材としては有名で叡智のサークレットの材料のひとつでもある。

 数日前に来た連中とはどうにも気配が違うようだが、所詮は小さき者たちなど自分の敵ではないと考える。それよりも目の前の餌を奪われることを恐れた。あの小さき者共はひ弱だが数がいる。ここを動けば別の小さき者共が自分の餌を奪いに来るかも知れぬ。そう考えてクリスタルドラゴンはその場から動かぬ事を決めた。餌はまだある。地竜を結晶化したものがまだ存分にあるのだ。今数を増やす必要性はないのだ。だがある程度の距離まで近付かれたところで、ついに小さき者たちからの攻撃が始まった。


 それがタツヨシくん量産型A・Bの投石攻撃であることは当然クリスタルドラゴンには分からない。風音の叡智のサークレットと情報連携による連動で正確無比な命中力を得て投げつけられる岩石の攻撃にクリスタルドラゴンが呻いた。さすがにクリスタルドラゴンの肌がそこいらの岩よりも柔いわけはないが、あの質量の物体をあの勢いで投げられれば当然ダメージも受けるし竜の矢除けの魔法では防げない。加えて黒岩竜でも使用した投擲槍を使っての『雷神槍』もジンライと弓花の師弟コンビによって投げつけられていた。これではここで餌を守るどころではない。今すぐというわけでもないだろうが、このまま攻撃を受け続ければやがては倒される。そう考えたクリスタルドラゴンはついに重い腰を上げ、ジンライたちに向かって走り出した。同時に小さき者共の一部が離れていったのを水晶眼で確認するが今は攻撃手を倒さねばならぬとクリスタルドラゴンは駆けた。近付けばあんな弱くて脆いものなど容易に壊せる。そう考えた。

 だが一方で小さき者側からも同様に駆け始めたものもあった。それは光り輝く何か、上位の竜の臭いを放つソレが突進しクリスタルドラゴンと正面からぶつかり合う。


 凄まじい激突の音が響き渡った。


 その衝撃にクリスタルドラゴンは呻き、動きが止まった。相手がいったい何なのかはクリスタルドラゴンには分からなかったが、確かに自分と同じ力を持つ何かがぶつかってきたのだ。ここにきてクリスタルドラゴンはようやく自らの状況に危機であると理解したのである。


 そしてその感覚は正しい。クリスタルドラゴンの前にいる冒険者たちはドラゴンスレイヤーの称号を持つ白き一団。たとえ竜であろうとも容易ではない連中が襲いかかってきたことをクリスタルドラゴンは本能で悟ったのである。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:30

体力:107

魔力:181+420

筋力:52+10

俊敏力:43+4

持久力:29

知力:57

器用さ:38

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv2』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『頑丈な歯』


弓花「投石と投擲槍の連打は効くなぁ」

風音「それによる初手でのダメージは黒岩竜戦でも大きかったしこのパーティのパターンでもあるよね」

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