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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
悪魔契約編

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第百十九話 試合を見よう

◎リザレクトの街 東闘技場


「てやぁああ!」

 弓花が愛槍シルキィを突き出す。

「っと、うおっ?」

 その槍の速度に相手はついていけていない。

「こいつっ」

 だが対戦相手のハルバード使いは力任せに弓花に向かい、そしてハルバードを上から振り下ろす。

(遅いっ)

 だがその攻撃は弓花にはまるであくびがでるような速度だ……というのは言い過ぎだがまるで脅威にならない速度だったのは確かだ。

 弓花はそのまま一撃を避けて前へと進み、槍の柄を足にかけ一気に寝転ばせた。槍術の『柳』からの『転』である。そして倒れた相手に弓花が槍を突き付けると、審判から弓花の勝利を叫ぶ声が響きわたった。そして歓声が起こる。


 その歓声の中を弓花がペコペコとお辞儀をして闘技場を出て控え室の中に入ると風音とジンライ、そしてティアラとメフィルスがいた。

「今度こそ見た」

「おっそいわよ」

 そう言いながらも風音は右手に挙げる。それに弓花がニッと笑って自分の右手も挙げて、手のひらとひらをパーンと叩き合った。

「なんですの?」

「まあ、勝利のお祝いみたいなの?」

 ティアラの問いかけに風音はそう答える。元の世界では体育の時なんかはこうして喜び合ったものだった。

「それで手応えはどうだ?」

 ジンライの問いかけに弓花はウーンと唸る。

「正直ないですね。ちょっと拍子抜けしてる感じの」

「まあ、そうだろうな。実際、ただの闘技会であればその感じのままで終わった可能性もある」

 ジンライの言葉に「そうなんですか?」と弓花は呟いた。

「お前は強い。今のお前の実力はランクAの冒険者にも届くだろう。ワシとしかやってないので分からんだろうがな」

 実際のところ、ジンライがこの闘技会で弓花に求めていたのは自信をつけることである。普段ジンライとしか手合わせをしていない弓花は己の技量を過小評価する傾向にある。しかも若干卑屈気味に。

 調子に乗りすぎるのは考えものだ。だが、そうしたものに乗ることも時には戦士には必要だとジンライは考えている。己に自信を持つ戦士は芯のところが強い。

「とはいえ、このままいけば準々決勝でミナカ、準決勝はあの老人剣士、決勝で直樹か、白銀の鎧の戦士とはち合わせるだろうな」

 ジンライの言葉に弓花が緊張気味に頷く。共に練習をして分かったことだがミナカは強い。剣速が異常に速く間合いへの飛び込み方も上手い。訓練試合では3勝3敗と互角。そしてまだ奥の手を隠しているようだった。

「ミナカとはやり合いたくないなあ。あっちが奥の手を隠して出してきても神狼化は出すのは厳しいし」

 弓花の言葉にジンライも頷く。

「あの老人、ゲンゾーと言ったか。あれと戦う気ならば温存しておくしかないだろうな」

 ミナカはまだ弓花と対等に近い相手だがあのゲンゾーという男は違う。神狼化でも危ういと思われる相手なのだ。

 そのゲンゾーのことが風音はどうにも引っかかる。

(ゲンゾー・アイダ。日本人みたいな名前だけどジャパネス人にも多いみたいだしなあ)

 それに相手は悪魔使いである可能性が高い。不用意に近づいて尋ねるのは危険だろうとルイーズには言われている。風音も無用な危険を冒そうという気はなかった。

「でも直樹の方は危ないかな」

 そして風音は風音で別の心配がある。順当に行けば直樹は明日の対戦で白銀の鎧を着込んだ男と対戦する。ミナカを追っていた男の1人だ。ジンライの見立てでは白銀の鎧の男と老人剣士はジンライと同等かそれ以上の実力者に見えるとのこと。ジンライも「だったら参加しておくべきだったか」と悔しがるほどである。

「ま、とりあえずはあいつの初戦でも見てやろうじゃない」

「そうだねえ」

 そして風音たちは南の闘技場へと赴くのだった。



◎リザレクトの街 南闘技場 控え室


「やっほー、見に来たよー」

「よう、姉貴」

 風音たちが直樹の下に行くと、そこには直樹だけではなく、他の大会参加者たちが集まって話をしていた。

(あれまあ)

 ティアラはそこにいた直樹がいつものおバカな弟という感じではなく、年齢相応、いや少し年上の雰囲気を持った男の顔をしていると感じた。好感度プラス3ぐらいである。ちなみに弓花は元々そうした直樹を知った後で姉パンツ地獄を見たので好感度は上がらない。


「おいおい、このこがテメエの姉だって?」

「ちょっと待て。どう見たって姉じゃあねえだろ」


 そんな声が直樹の周りから聞こえてくる。

 ちなみに今の直樹は風音よりも2歳年上だが、周囲の感想は元の世界でもあまり変わらない。いや、


「おい、このこ、いやこの人、さっきの召喚師の試合でえげつねえ勝ち方してた……」

「鬼殺し姫ってあの、まさかお前の姉ちゃんってそうなのか?」


 明らかに元の世界とは違う反応もあった。

 このリザレクトの街のあるハイヴァーン公国はミンシアナとは国二つまたぐほどに離れているが竜船経由により人・物・情報の流れは速い。特にエンターテイメントに飢えている人々は冒険者や吟遊詩人の持ち込むおもしろい話題に食いつくことも多いのだ。

 中でも鬼殺し姫と白き一団のお話はオーガ軍団からウィンラードの街を救う鬼殺し編、ツヴァーラ王女を助ける王女救出編、ミンシアナ王子とともにドラゴン退治をする竜殺し編に、最近では大猿との一騎打ちの温泉猿編が伝わっている。

 伝達早すぎであるが、これにはミンシアナ王子の物語を広めたい誰かさんが意図的に流している節がある。そして魔法温泉と双竜温泉からも広めたいという意図で情報が流れている。ついでにツヴァーラの某王様が対抗して物語を水増ししている疑いがある。


 さらにもうひとつ。

「お、俺、ファンなんです。素敵です。あの武装馬車」

「分かる人には分かるんだねえ」

 モヒカンがいた。風音は目を輝かせてモヒカンの人とサンダーチャリオットについて語り合っている。それを見た直樹が殺気立っていたが「あほっ」と弓花に叩かれる。なお、恋人関係解消後の弓花と直樹の関係は普通の姉と弟的な感じであった。見た目は風音と直樹よりもよっぽど姉弟っぽかったりするが、それを言うと風音が「お姉ちゃんは私なのになあ」といじけるのでみんな言わないようにしている。

「そんで、対戦相手はどうなの? 勝てそう?」

 風音がモヒカンと語り終わりモヒカンがヒャッハーと外に出ていくと、ようやく風音は直樹に尋ねた。

「知らねえ」

 それに対して直樹はムスッとした顔でそっぽを向いた。

「何いじけてんの?」

 風音がそういって弓花に尋ねるが弓花は「さあねえ」と返す。お姉ちゃん子も面倒だなと苦笑しながら。

「もう、じゃあ外で応援してるから勝つんだよ」

「了解。姉貴の見てる前で負けるわきゃねえだろ」

 顔を逸らしながらも、言うことだけは言う弟であった。

「はいはい。じゃあ頑張りな」

 そう言って風音と仲間たちは控え室から出ていった。



◎リザレクトの街 南闘技場


 控え室から観客席についた風音たちであったが、風音は控え室を出てからずっとそわそわしっぱなしであった。

「うーん、大丈夫かなあ」

 ああは言ったがお姉ちゃんとしては心配な風音である。対戦相手次第では命の危険もある。

「まあ大丈夫でしょ。あんた心配し過ぎ」

 対して弓花はかなり楽観的な感じであった。これは実際に直樹と手合わせをしている経験から直樹ならば『どうであれ』生きて戻ってくるであろうと体感的に理解しているからであった。実際ジンライも直樹の生存能力の高さは買っている。それは3年に及ぶ冒険者生活で得たものだろう。

 そしてティアラも風音同様にそわそわしていた。

『どうかしたか、ティアラよ?』

「え、いやですわお爺さま。なんでもございませんでしてよ」

 突然の質問にティアラがドキッとして早口で返す。

『む、そうであるか』

 その孫の反応に思うところあるのかないのか何も言わずにメフィルスはそれから口を閉じた。

 そして直樹の試合の開始の鐘が鳴る。

「ふむ。出たぞ」

 ジンライの言葉通りに直樹が姿勢正しく西門より中央に向かっていく。直樹は過去に闘技会には何度も参加している常連らしく、固定のファンもいるようだった。

 そして東門から対戦者も歩いてくる。

「なかなかやりそうな相手だな」

 ジンライの言葉に風音も相手をじっと見る。そして気付いたのだ。

「あいつ、悪魔使いの……ミナカを追ってた1人だ」

「なに?」

 その風音の言葉にはジンライも驚く。それは弓花もティアラも同様だった。風音は前日にルイーズに合流して老人剣士のゲンゾーと白銀の鎧のヴァニルのことは特定できた。だが残り二人についてはあまり印象がなく、写真もあるわけではないのでどの選手かまでは分からなかったのだ。

 風音はすぐさま叡智のサークレットを起動し、遠隔視でその男を詳細に確認した。

「持ってるのがなんだか黒々しい剣だね。あれ、悪魔が宿ってるんじゃない?」

「かもしれぬが、今は何もできぬな」

 悪魔使いを禁止しているわけではないのだ。警戒は必要だが無茶はできない。

「むう」

 風音は頬を膨らませるが、だが解決法はない。情報連携で伝えた場合には下手をすると戦闘補助で失格になるかもしれない。

(直樹、気を付けて)

 風音は今はただ弟を応援するしことかできなかった。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:29

体力:101

魔力:170+420

筋力:49+10

俊敏力:40+4

持久力:29

知力:55

器用さ:33

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv2』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv2』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化』『リジェネレイト』『背後の気配』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』


風音「ちなみに叡智のサークレットの遠隔視ってね。本来は千里眼みたいな遠いところが見える能力らしいんだけどゲーム的な制限のせいで実際に見える位置から座標を決めて見る能力になってるのね。ゲーム中だと座標軸をプレイヤーの背後より少し上に固定してFPS視点からTPS視点に切り替えみたいな遊び方をしてたよ」

弓花「へーそうなんだ(良く分かっていない)」

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