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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
悪魔契約編

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第百十話 新しい防具を買おう

 ゼラルの武具店を出た風音だが、その足はホテルへではなく、市場の方に向かっていった。魔剣やそれ以外の掘り出し物があるかもしれないし、単純にショッピングや買い食いがしたかったということもある。


「まいどーお嬢ちゃん、こいつはオマケだ」

「サンキューおっちゃん」

 風音がたこ焼きを購入するとおっちゃんがふたつほどオマケを入れてくれる。風音が買い物をするとよくある現象だった。

「ほふー、熱いね、美味いねえ」

 それをなんとも美味しそうに食べながら歩く姿を周囲の人間は微笑ましく見ている。「ちゃんと前見て歩けよー」とたこ焼き屋のおっちゃんの言葉に「はーい」と言いながら風音は武器市のほうへと進んでいく。

 そして風音はたこ焼きを食べ終わると不滅のハンカチを出してソースのかかった手を拭き綺麗にした。このハンカチ、きちんと汚れは落ちるがソースなどが染みることはない。なんとも不思議な仕様であった。

「さてと」

 目的である武具市にはたどり着いた。風音は纏っている不滅のマントのクォリティの高さが目を引くため、金を落としてくれそうなそこそこ良いとこのお子様に見られる傾向がある。

 だが、それが日常雑貨や食料などなら店の人も愛想を良くもするが、武器防具の類となると当然冷やかしにしか見られない。さきほどのゼラルも実は最初は体よく帰らせようと声をかけてきたのだった。

 なので風音はこの市に入ってからはマントをある程度開けて歩くことにした。風音の装備は見る人が見ればそのほとんどが高級な防具だと分かる。竜鱗の装備など早々見られるのではないが、だが制作者が制作者だ。素材が分からずともその出来の良さは隠しようがない。

「よお嬢ちゃん、大層な装備してるがどこで手に入れたんだい?」

 途中、歩いているとそうして声をかけられる。

「バトロア工房で作ってもらったんだあ」

 風音の言葉に「なるほどねえ」と露店防具屋の親父が頷く。最初はどこぞの金持ちの倅が親に過剰な装備を買い与えられたのかとも思ったが、よくよく見ればある程度使われた品なのは分かるし、足の防具が異常に使い込まれているのにも親父は気付いていた。

「胸当てに腕も竜の鱗装備か。足のそれも何かの魔物の角だろ。額飾りもマントもよく分からんがワケアリそうだしな。そこまで揃えてるお嬢ちゃんがこの市場で手に入れられそうなものなんてあんまあるとも思えないがね」

 親父が風音の装備を値踏みしたあと、そう口にした。

「掘り出し物があればと思ったんだけど」

「うん。まあ、そういう目的だろうがな。だったらこういうのとかどうだろうな」

 親父が露店の奥に置いてあるズボンを取り出してくる。

「随分とピッチリしたものだね」

「お嬢ちゃん、見たところ拳闘士の類だろ」

 その言葉に風音が眉をひそめるが、間違ってはいないので頷く。

「だが今履いてるズボンは防御力こそ高そうだが、よく動くことをサポートするような風にはできていない」

「確かにそうだね」

 風音の履いている甲殻牛のズボンは防御力重視ではあるが機動力を考えて作られているものではない。

「それでコイツだ。プラズマパンサーの足の革を繋ぎ合わせてな。俊敏力を高める効果もあるわけだ」

 プラズマパンサーとは地上にいる魔物のなかでは最速の一体とも言われる魔物である。ストリートガゼルなどを主食にしていたため、速くならざるを得なかったらしい。

「でもお高いんでしょう?」

「まあ、こんぐらいかな」

 そう言った親父の値段に風音は払えない額ではなかったが、あんまピチピチすぎるのもなあと思い、その横にあるスカートを指して尋ねる。

「こっちのヤツも買うから少し負けてよ」

「上手いな嬢ちゃん、まあでもこれはこれで高いんだがよ。つか、こっちのプラズマパンツよりもな」

 親父はそう言ってスカートを取り出す。

「シルフィンフライの羽を何枚も繋ぎ合わせて作られたスカートだ。高いところから落ちてもある程度は滑空して救ってくれるってえ魔法具よ」

 風音が指さしたのも当然のこと。この店で置いてある中でも目玉商品だったわけである。

「ちなみにお値段は?」

「プラズマパンツと合わせるとこれぐらいだなあ」

 親父の言う金額に風音はうーんと唸る。買えない額ではない。だがタツヨシくんドラグーンで半分に減った総資産がこれを買うことでさらに半分以下になる。もし望みの魔剣がこの先にあっても購入できない可能性があった。

「まあ、いいか。そんじゃあこいつをください」

 すでに充分な装備を持っている風音はまだ見ぬ魔剣よりも今のスタイルを伸ばす道を選んだ。

 滑空可能ということは空中跳びなどの滞空時間が延びるということでもある。それは魔法短剣の補助だけでは足りない可能性のあった現在考案中の『必殺技』を確実なものとすることができるかもしれない。ついでにピチピチの豹柄タイツみたいなズボンにスカート装備で女子力も上がる。むしろ、ここが重要だった。

「よーし、後で試してみようっと」

 風音は露店防具屋の親父に快く挨拶をして別れ、今度こそ魔剣や魔法剣の武具市に向かう。


「むう」

 その向かった露店市で風音は唸る。やはり予想していたとおり、特に気になる武器がなかったのだ。魔法剣は元々が職人の腕によるところが大きく、クォリティの高いものは普通に武具店で買った方がよいので掘り出し物というとなかなか難しい。魔剣の類も雷や炎の魔剣といったあのデュラハンと同系統、それも数段落ちるものしか置いていない。少し変わったものもあるにはあったが、購入までには至らなかった。

 むしろ風音の黒牙や粘着剣を売ってくれと言われる始末である。

「むう、なかなかないなあ」「なかなかないですねえ」

「「?」」

 いきなり言葉が重なったのでドッキリして風音が隣を見ると、そちらの相手も風音を驚いた目で見ていた。

「あ、すみません」

 そう最初に口にしたのは風音ではなく、相手側の長身の女性だった。

「いえいえ。こちらこそ」

 相手が丁寧な態度だったので風音も丁寧に受け答える。

「むう、刀だね」

 そして風音は頭を向けた拍子に、その女性の下げている武器が刀であることに気付いた。

「おや、これがカタナと分かりますか。もしや同郷の方ですか?」

 そう口にする女性は長い黒髪で日本人風の顔立ちをしていた。凛とした空気を持つ貞淑そうな、大和撫子を体現したような女性だと風音は思った。

「いや、違うと思う。ジャパネスの方だよね?」

「そうです。顔立ちもジャパネス人に似ていたのでおや?と思ったのですうが。違いましたか。すみません」

 礼儀正しい人のようだった。なお、ジャパネス人とは大陸の東にあるフィロン大陸から少し離れた島国ジャパネスに住んでいる黒髪の人族だ。ようするにゲーム内では日本に該当する国でサムライやニンジャ、リキシといった職業のあるトンデモ日本を体現したような国だった。

「いや、よく言われるから良いよ。お姉さんはここに剣を見に来たの?」

「そうですね。我が国では魔剣の類は余りなくて、なにか良い武器があればと思ったのですが」

「ふーん」

 ちなみにジャパネスには魔剣はないが退魔刀という武器が存在している。これは魔鉱が取れないジャパネスで生まれた技術で、剣に魔術の刻印を刻み、そこに自分の血液を混ぜた血墨というものを流し込んで魔力を通す剣である。

「ねえ、おっちゃん。もう少し強力なのないの?」

 風音は露店の店員に尋ねる。

「それがなあ。今目の前のやつが駄目ってんならここらじゃなくてゼラル武具店に行った方がいいぜ。こっちは竜船経由のものが多くてものがはいってこねえんだよ」

「竜船経由だと入ってこないの?」

「ああ。リザレクトの街で今、大闘技会の時期でな。いいやつはあっちで売っちまった方が売れるってんでこっちに流れてくるのは二線級のものばかりなんだよ」

 店員がそういって溜息を吐く。だが風音は初めて聞いた情報に目をパチクリさせる。

「ジンライさんが闘技会がいつもやってるって言ってたけどそれとは違うの?」

「別だな。闘技会は週単位で開かれてるが大闘技会は年一回だ。いつもならもうとっくに終わってるんだがな。でもちょっと前までミンシアナとソルダードが戦争しかけてただろ。そのせいで延期になってたのがようやく開催できるってことになってな」

「あーそうなんだあ」

 ジンライもそこまでの情報は得ていなかったのだろう。風音は戻ったらジンライたちにそのことを連絡しようと考えていると、横の女性が「ではリザレクトの街でならば良い武器もあるのでしょうか?」と尋ねる。

「そうだな。もしくはさっきも言ったがゼラル武具店だな。あそこはミンシアナのゼニス商会から仕入れてるからな。つってもいつもよりは少ないはずだが」

 そう言う店員に女性は「ありがとうございます」と頭を下げる。風音は女性にゼラル武具店までなら案内すると請け負って、来た道を引き返して再度ゼラル武具店に戻っていった。

 そして店の前で別れると風音はホテルへと戻り、大闘技会のことをジンライたちに告げた。



◎ウォンバードの街 ロイロホテル


「ということらしいんだけど」

 市場で聞いた風音の説明に、本日の訓練を終えて戻ってきたジンライが唸る。なお、神狼化弓花は今日も惨敗だったそうだが、弓花の表情から若干の手応えはあったようだった。

「ふむ。大闘技会が開かれるのか。それは迂闊だったな」

「この場合、どうするの?」

 どうするのとはユミカをどうするかということだ。元々は小大会的なものに参加するだけという話だったはずだ。

「まあ、ものは試しだ。ユミカ、とりあえず出てみるが良い」

 弓花はやっぱりかーという顔をしてから「分かりましたー」と答えた。

「それでお前はやはり出んのか?」

 ジンライの問いに風音は「出ないよー」と返す。

「正直、出てみたい気持ちがゼロではないけどさ。誰に対してってわけでもないけど、あんま手の内さらしたくないじゃんか」

「ふむ。まあ……な。だが大闘技会ならば召喚体による試合も組まれるはずだ。ユッコネエを出してみてはどうかな?」

「そんなのもあるんだ?」

 風音の問い返しにジンライが頷いた。

「召喚士の数自体が多くはないし普段は精々がエキシビジョンマッチとして用意されるだけなのだがな。優勝すると召喚体を強化するアイテムがもらえると聞くぞ」

 そのジンライの言葉に風音は目を輝かせて「それなら出ても良いかなぁ」と答えた。無論強化アイテム目当てである。


名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:29

体力:101

魔力:170+420

筋力:49+10

俊敏力:40+4

持久力:29

知力:55

器用さ:33

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv2』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv2』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化』『リジェネレイト』『背後の気配』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』


風音「ユッコネエ、パワーアップフラグ来たね」

弓花「この間、パワーアップしたばかりじゃん」

風音「女の子はいつだってパワーアップしたいものなんだよ」

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