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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
まのわアフター

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夢落ちぬ章 風呂部脳沸騰編

※恒例のやつです。深夜テンションでザラっと書いたものをどれだけ手直ししてもアレな感じにしかならない。そんなことを実感したエピソードをお届けします。

 その日、我らが主人公であるところの風音さん(2号)はハイテンションであった。

 十年ぶりとなる風呂部のアサルトセルの新作『アサルトセルVI 境界線の焔』が発売され、49時間というほぼ丸二日間をフルタイムで彼女は駆け抜け、つい先ほど全エンディングのコンプという偉業を達成したのである。鼻息が荒くなるのも仕方のないことだろう。

 そんな二徹の向こう側に突入した現在の風音さんの目は漫画的な表現で言えばハイライトの消えた目の対極である、お薬がキマってキラキラしている時の目をしていた。そこに充血とグルグル表現も加わっているため、さながらサイコパスちんちくりんといった風貌だ。

 そんな外見マジキチちんちくりんである風音さん、けれども現在の彼女の心の中は穏やかな春の陽気そのものだった。明鏡止水の境地(ニルヴァーナ)に到達したと言っても良い。脳内麻薬は合法であるので問題はありません。禁止したら(脳の活動が)死んでしまいます。


「ふぅ。糞難易度なエネミーも多かったけど。普通に50回ぐらいババハウスくんには殺されたけど。強化された社畜ハウスくんにも10回ほど殺されたけど。だけど、私は満足だよ。大満足だったよ。でもエンハンサー、貴様だけは許さん」


 エンハンサーとはボスの一機の大型機体で、風音さんはあと一撃というところまでゲージを削ったものの最後に返り討ちに遭ってしまうを10回以上繰り返した相手である。ラストの超必殺を喰らったとかそういうわけではなく、普通に戦ってギリギリで削り切られて殺されるを繰り返していたために風音さんも毎度「なんなんだよ、もーー、またかよぉぉお」と親指カミカミのブチギレ案件であった。

 ともあれ、心晴れやかと思い込んでいる寝不足時のマズいテンションの風音さんは、寝ればいいのにゲーコンを置いてマイPCを起動し、ッターンとキーボードを軽快に鳴らしながら叩いてネタバレ防止で禁止していたゲームの感想や評価を見るためにインターネット界隈をサーフィンしていく。

 そして、そこにあったのは彼女の予想通りの阿鼻叫喚の地獄だった。


 負けイベントかと思ったけど普通に殺された。

 100回死んでもボスが倒せない。

 強敵の先に鬼畜ボスを入れるな。

 クリアさせる気ねえだろ返金しろ。

 丼米ちゃん可愛い。


 等等、アサルトセルVIに対しての様々なコメントがリアルタイムで流れており、そんな中を古参勢を自称する厄介風呂部脳信者であり、すでに全エンドコンプ済みである風音さんは「クリアできちゃうんだよなー、これが」等と上位者マウントをキメつつ、栄養ドリンク『魔獣』をキメながら「ざーこざーこ」カタカタターンとキーボードを叩いてクソガキムーブをキメていく。外見はともかく三十路前後の女がすることではない。

 そんな自らの痛コメントのスクショを取られて後にババア無理すんな案件に発展する悲しい未来など知らぬ無垢な少女もどきは続いて開発ディレクターのマウント・ヴィレッジ氏の発売前インタビュー動画を見ながら「ああ、これのこと言ってたんだね魅矢ZAKI」「やるなあ魅矢ZAKI」「仕方がねえヤツだな魅矢ZAKIは」「最高だよ魅矢ZAKI。お前がナンバーワンだ」等と謎の上から目線で戯言を吐いているが、映っているのはマウント・ヴィレッジ氏であって、魅矢ZAKI氏は風呂部の別作品ポンデンリングのディレクターだ。つまりは別人である。なんとなく風呂部は魅矢ZAKI氏というイメージがあってにわかムーブをかましていた風音さんなのであった。

 その後、その事実に気づいたハイテンション風音さんが、風呂部(の本社ビル)に(全裸土下座で)謝罪に行って、(扱いに困った警備員さん(女性)が「ごめんなさいごめんなさい」と繰り返す風音さんに対して「分かりましたから許しますからお嬢ちゃんは一度事務所にね。ほらここでそんな格好してると色々と問題あるからね」と連行されながら)許されたり、その後(成人女性と分かってポリスメンにピーポーされた後に)正気に戻ったりもした等等、色々とあった。色々とあったのだ。どれだけの刻が経とうとも、具体的に言えば一万四千年ぐらい経っても変わらない人間の愚かさをその身で体現する風音さんである。まるで成長が見られない。行動力が大幅アップしたのでむしろマイナスまである。

 そんなこんなで、そうした経緯を踏まえて情緒不安定な状態になっていたものの、お医者様からは「もう落ち着いたようなのでお薬は今回から減らしましょう」「あい」と許可を得た後は落ち着いた生活を送っていた風音さん。そんな彼女に、とある日、お手紙が届いた。送り主はタツオ、彼女の息子からである。


「へぇ、あっちでロボットの大会があって優勝したと。なるほどなー。良いなー。見たいし出たいなー」


 風音さんには息子がひとりいる。

 色々とあって彼女の友人と一緒に遠方でお仕事をしているのだが、その息子からのお手紙によれば毎日がドッタンバッタン大騒ぎで、今回はロボット闘技大会で優勝したとのことだった。

 他にも色々と書かれていたが、ロボット同士で戦う大会ということに風音さんの心は騒ついた。最近はゲームは一日一時間と言われているので、コンシューマゲームは一時間、スマホゲーは別腹と考えてヴァソ鯖系を毎日九時間はやり込む禁欲生活中の彼女にとっては裏山過ぎるお話だ。そして少し考え込んだ彼女は……


「そうだね。タツオも頑張ってるし、私も止まらねーからよー」


 とある決心をしたのであった。




———————————




 三ヶ月後。


 とある企業から画期的な製品が発売されることとなった。

 高速機動人型車両。いわゆる人型ロボットのソレは謎の推進力によって最高時速150キロメートルという高速移動を可能とするも、積載量の問題や、それにともなう装甲の脆弱性がカタログスペック上では明らかになっており、兵器としてみれば欠陥品であった。また武装に関しても用意されたのはリアル兵器っぽい水鉄砲のみ。動力であるMASEKIバッテリーはその時点では同企業以外からは購入することができないなど運用上の問題もあり、「そもそも立って的になるだけの人型ロボットなど兵器としては不適当」「ジャパニーズアニメーションの見過ぎだよ。HAHAHA」等とネット上では揶揄されたが、分類上は競技用大型車両であり、そもそも戦闘を目的としたものではないのだ。なお、


 本品はジョーク商品ですので、他の目的でご使用された場合の責任は一切負いません。


 と表記することで開発者兼製造者兼販売者の脳内理論武装も完璧であった。


 潮目が変わったのは発売後のことだ。

 製作者曰く、安全装置と前置かれたリフレクションエアバッグという機能がいわゆるバリアと呼ばれるSF的なもので、その機動性と相まって近代兵器の攻撃の一切を通さないことが実際に利用した人間のレポートによって判明し、なおかつ初回特典で用意されたDIY用工具セットに入っている全長6メートルの単分子ハンドチェーンソー、複合装甲を容易く貫くパイルドライバー、岩をも容易に砕く巨大な安全鉄甲手袋等等の威力は凄まじく、米軍が試験的に購入して行った演習でこのロボットがエイ◼︎ラムスを一方的に破壊していく映像が界隈に流出したことで、軍事産業に激震が走ることとなる。

 また、その製造と販売が伝説的な死の商人カザーネサマーのペーパーカンパニーのひとつであったことがリークされたことも彼らに恐怖を与えた。何故ならばこの人型兵器への有効打を与えられるのは同じリフレクションエアバッグを搭載した人型兵器のみ。つまりはこの世界の兵器は死の商人カザーネサマーの足元にひれ伏したも同然だったのだ。

 こうしてカザーネサマーの名は再び世界に知れ渡り、旧世代の兵器を一掃して最新兵器を提供したという意味でウォーアップグレーダー、またはドローン兵器の台頭での広範囲かつ無差別になりつつあった戦術運用が見直されて人的損害の低下につながったことで慈愛の死神とも称されることになる。そして当の本人は……


「おかしい。私はただアサルトセルごっこがしたかっただけのはずでは?」


 時代のスピード感と増える仕事量についていけず、契約書、始末書、反省文等等といった大量の書類を前にひとり途方に暮れているのであった。

【用語集】


ボトラー:

「いつか私もその領域に至るかもしれない。けれども私はまだ人でいたい」

 少女は悲しげにそう語り、足早にWCに入っていった。



 ちなみにロリロボより後、ショタロボより前の時系列。関連性はあまりないです。

 まのわ世界の地球は魔力濃度が増し続けてたり、ダンジョンがポコポコできたり、ヤベー個人ががポコポコ出たりしていて世界のミリタリーバランスが崩れつつあったので、そこら辺に対して魔力のない人間が対抗するための手段のひとつとしてこのロボットを始祖とした機士たちが活躍する予定があったりなかったり。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりに1話から見直したけどやっぱり面白い 名作です [一言] やっぱりあやつは気持ち悪い
[一言] 私は社畜だぞ!と叫ぶ V.2 スライム氏
[一言] 生まれたものは、そう簡単には死なないからね。仕方ないよね。
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