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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
さるものの逆襲編

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第九十四話 試運転をしよう

◎宿屋リカルド 翌朝


「タケノコ……怖い……無理……オーガより酷い……でもクセに……いや、分からない……あたしが壊された……あたしが分からない……」

 朝、風音が起きるとルイーズが遠い目をしながら壁に向かってボソボソと何かを言っていた。

「何あれ?」

「さあ?」

 すでに起きていた弓花の質問に風音はそう答えた。ルイーズからジロー君の匂いがしたので昨日『夜の稽古』があったのだろうなとは予想したがルイーズの反応は風音にも意味が分からなかった。

『世の中にはいるものだな、化け物のような存在が』

 その風音の横でメフィルスはルイーズの様子を見て戦慄していた。

 デカければ良いと言うものではない。普通ぐらいがちょうど良い。愛があれば関係ない。サイズの話題になれば最終的にはそう落ち着くものだ。だが精魂尽き果て呆然としているルイーズの顔の中に確かに浮かんでいる女の喜びの笑みに、ただ大きいだけではない何かをメフィルスは感じていた。生前であれば一個の雄としての本能がジロー君の命を奪っていたかもしれない。まあ、なんの話でしょうか。よく分かりませんが。


「とりあえず今日はカザネ魔法温泉に行こうと思うんだけどどうだろうか?」

 全員起きたところで風音は道場に帰っているジンライを除いたみんなを呼んで今後の予定を話す。

「いいわね。ええ、あたしの未熟さを洗い落とすのには最高の場所だわ」

「わたくしもいいと思いますわ」

 陰のある顔のルイーズとティアラが頷く。弓花は少し悩んだ後「私は止めとくわ」と答える。それは風音も予想できていたので特に理由も尋ねない。ジンライとともに修業を行うつもりなのだろう。

「りょーかい。そんじゃあ今回はちょっと特別なヒッポーくんを用意してるので三人でそれに乗ろうと思うんだよね」

「ひっぽーくん、うま、うま、うまね。ええそうね。いいわねうま。ふふふ」

 そうブツブツと後ろでつぶやくルイーズがなんか怖かった。



◎ウィンラードの街 バトロア工房 多目的試験場


「で、できたのがこれだ」

 そう親方が風音に甲冑靴を渡す。以前よりもさらに刺々しく凶暴な形になっているがパーツのいくつかが竜の骨で強化されて靴底には仕込み竜爪がセットされている。踵からも突き出て、踵落としなどが捗りそうだった。

「だんだん悪魔系装備みたいになっていく」

 そうは言いながらも風音もそうしたデザインは嫌いではなかった。

 さっそくはいてトントンとジャンプ。履き心地は以前と変わりなく、軽く素振りの蹴りをした後「うん」と頷いてから訓練用の藁人形に蹴りを入れる。

 ズドーンととても少女の、というか大の大人でもあり得ない打撃音が響く。風音はスキル『身軽』を手に入れて容易に回し蹴りなどを出せるようになった上にキリングレッグLv2のパッシブ能力で通常の蹴りも威力が向上している。さらに仕込み竜爪を解放した状態で放った蹴りはキリングレッグを普通に使ったのと変わらない程度の破壊力になっていた。

 三発蹴り込んだだけで藁人形がズタズタになり、キリングレッグを発動したら根本から折れて壁までぶっ飛んだ。チャージしたら壁まで破壊するか、藁人形自体が衝撃で霧散するかという勢いだ。

「人を蹴る場合には竜爪は出さない方がいいね」

「ああ、殺したくなければな」

 親方も冷や汗が出る威力だった。

(こりゃドラゴンを倒すのも納得だわな)

 実際、標準的なドラゴン相手ならば勝負になるので過大評価でもない。

「そんじゃあ、こっちの方も紹介しとくか。おら、モンドリー寝ぼけてねえで持ってこい」

「ふ、ふあああい親方」

 奥でモンドリーが眠い目をこすりながらガラガラと台車を引っ張ってくる。徹夜したようだ。

 台車の上に載っていたのは全身甲冑の馬……のようなものだった。中に馬は入っていないが身体を支えるように全体の内側がフレームが固定されており、併せて前日に届いたマッスルクレイも馬型の形の袋に詰められて入っている。

「で、カザネの指示通り首の裏のところにちゃんとはめ込めるようにしといたぜ。しっかりと固定できて誰かに取られねえように鍵付きにしてある」

 親方が甲冑馬の首の部分を指さし風音に説明する。

「あんがと、親方」

 風音はそう言ってポーチからチャイルドストーンを取り出す。これはタイラントオークから手に入れたものだ。こちらはユッコネエとは違い、主として認められてはいないので召喚アイテムとしては使用できない。なので普通の使い道である魔力炉として使用する。チャイルドストーンに術者の魔力を込めると同質の魔力が生成されるようになるのだ。これは竜の心臓やダンジョンの心臓球よりは下位の出力ではあるがそれなりの魔力生成量はある。ヒッポーくんを動かせる程度には。

「よいしょっと」

 風音は甲冑馬の丁度乗り手の目の前辺りの首の窪みに魔力を込めたチャイルドストーンをはめ込み、固定し鍵をかけてからゴーレムメーカーを発動してマッスルクレイを動かした。

「おお、動きますね」

 さすがにモンドリーもそれが動き出してからも寝ぼけていた顔が引き締まってきたものに変わっていく。自分の作り出したモノが動き出したのだ。嬉しくないはずがなかった。

「そのチャイルドストーンがあればお前さんが魔力を込めんでも常時動いてくれるわけだな」

「うん、そうなんだよ。タツヨシくんを動かすにはちょっと瞬間の魔力生成量が不安だったし、使うならこっちに回した方が良いと思うんだ」

 タツヨシくんも通常起動ならば問題はないだろうが、例えばタイラントオークを組み伏せたときなどのような瞬間出力はチャイルドストーンでは出せない。通常時でなければ運用が困難であるならば、戦闘以外で使用しないタツヨシくんよりはヒッポーくんに使用する方が使い勝手が良いのである。もっともそれはチャイルドストーンが現状ひとつしかないためで、数が増えればまた運用も変わる。そしてその目処も風音は立ててはいる。

「早馬モードに乗ってるときの安定性を求めると形状維持に魔力消費が激しくなっちゃうけどこれならそんなこともないしね。少し大きいから3人乗っても平気そうかな」

「そんでそのまま温泉まで行くつもりか?」

「勿論です」

 風音は頷く。親方は少し心配そうな顔をして、だが風音の表情を見て大丈夫だろうと判断した。

「まあ普段作り慣れてるヒッポーくんだしな。問題はねえだろうがくれぐれも気ぃつけろよ」

「ラジャー」

 そう口にする風音だが、マッスルクレイの総量がタツヨシくん以上の自立型ヒッポーくんの出力と移動速度を甘くみていた。確かにさきほど書いたとおりチャイルドストーンは瞬間出力は高くない。しかし魔力を蓄積できるマッスルクレイは受け取った魔力を元に部位単位での出力比を計算し、他で蓄積した魔力を必要な部位に回すことで効率的な運用が出来る。だが、まさかトップスピードが120キロオーバーとは風音も思わなかった。

 元の世界でも違反切符を切られるような速度でぶっ飛ばし、昼を越えた頃にはコンラッドに付いたが、必死にしがみついていた風音達の身も心もズダボロだ。よく落ちなかったものだと褒めるべきなのは必死に掴まっていた風音達に対してかヒッポーくんの姿勢制御能力に対してか。



◎コンラッドの街 ギルド隣接酒場 昼過ぎ


 酒場に入るなりガタンとテーブルに倒れ込む女が二人。とりあえず水とだけ頼む。

「うん。ウィンラードからここまで来る時間の記録更新じゃないかと」

「もう挑戦はしなくていいですわ。死ぬかと思いました」

 さすがの風音教信者のティアラも擁護はできず、少し言葉にトゲがあった。やはり調整は大事である。

 そんなこんなで風音とティアラがぐったりとテーブルに突っ伏しているがルイーズは一人キョロキョロと見渡し、そして呟いた。

「あれ? あたしなんでここにいるの? お酒飲んでたはずだけど酒場が違う?」

 どうやら昨晩からの記憶が吹っ飛んでいるようだった。心がブレーカーを落とした結果かもしれない。自分から誘ってのことなので自業自得ではあるのだが。

「あれー風音とティアラじゃない。おっはー。どうしたのよ、二人もお酒? だめよー若いウチから飲み明かすなんてー」

 妙に明るいルイーズの声に、朝の状況を知っている風音とティアラが軽く戦慄を覚えるが、まあ元に戻ったのならそのままの方が良いと考え、ルイーズは酔いつぶれてたことにして今の状況を説明した。

「温泉、いいわねえ温泉」

 ルイーズがウキウキとしているので風音も気を取り直して、温泉地まで行く前に自立型ヒッポーくんの調整をしようと考えていると、バタンと扉が開いて、外からおばちゃんが走り込んできた。

「なんだろう?」

「さて?」

 おばちゃんはキョロキョロと回りを見渡しながら叫ぶ。

「こちらに、こちらに温泉伝道師のカザネ様がいらっしゃると聞きました! どうか私たちをお助けください!!」

 そう叫ぶおばちゃんに「だってさ?」と口にするルイーズの視線を見ずに風音はダンッと突っ伏した。温泉伝道師ってなんだろう?

「帰ろっかー」

 そうぼやく風音だがおばちゃんの視線は風音達にロックオン。ダンダンダンと近付いてくる足音に風音はため息を吐いた。また厄介ごとが迷い込んできたようである。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・白銀の胸当て・白銀の小手・銀羊の服・甲殻牛のズボン・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット

レベル:29

体力:101

魔力:170+300

筋力:49+10

俊敏力:40

持久力:29

知力:55

器用さ:33

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv2』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:二章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv2』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化』


弓花「結局ルイーズさんどうしたんだろうね?」

風音「さあね?」

ゆっこ姉「それはね……が、ジロ……下……が……凄く大きいです」

風音「ゆっこ姉とは距離が遠いから上手く繋がらないみたいだね」

弓花「何が大きいの?」

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