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超次元電神ダイタニア  作者: マガミユウ
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第七話「真昼の戦い」

【登場キャラクター紹介】

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

 まひるはよく「やってみなくちゃわからないよ!」と言っていた。

 今思えば、何とも前向きな言葉である。

 相手に対しても、自分に対しても、その行動が起こすであろう可能性に希望を見出している言葉だ。

 何事にも明るく、前向きな、実にまひるらしい言葉……


 僕たちがいた世界、ダイタニアは、まひるの世界で創られた遊戯の世界だと言う。何とも摩訶不思議な話だ。


 それも昨日までの話で、今何故か僕たちはまひるの世界にヒトの姿で顕現し、まひると一緒に在る…

 こちらもまた、何と摩訶不思議なことだろう。


 これがヒトが生きること、ヒトの言う《人生》というものなのだろうか。先が読めず、未知という愉しさに満ちている。


 確かにこれではまひるもよく口にしたくなるはずだ。


「ふ……いかなる事も、やってみなければわからない……!」


挿絵(By みてみん)

『超次元電神ダイタニア』

 第七話「真昼の戦い」



 マリンはそう呟いて、眼前に迫った《巨体の電神(デンジン)》を見据える。

 電神の全高は25mはあるだろうか。

 二足歩行で二本の腕、オーソドックスな人型だ。

 歩行速度もそうだが、さっきのパンチを見ても判るが動作は鈍い。


 電神の契約者、『ルナ』と言ったか。

 ルナは相変わらず余裕の笑みを浮かべて電神の肩に乗ったままだ。


 年の頃はまひるよりやや上。

 茶色の長いウェーブの髪が風になびいている。唇には紅いルージュを引き、まつ毛にはマスカラが塗ってある。

 服装は胸元が大きく開いた赤いスーツを着ていてボディラインがくっきりとわかる。綺羅びやかであり大胆な出で立ちだ。


「………下品」

「ああ……まひる様が服装のことをとやかく言うのが少し分かった気がするぜ…」

 ルナを見たマリンとファイアが各々の感想を漏らす。


「じゃあよ、マリン?まずは俺が行ってくるぜ!」

 そう言うとファイアが巨体の電神に向かって歩き出す。


「ファイア?解ってると思うけど、僕たちは飽くまでまひるの退避が完了するまでの時間稼ぎです。戦闘は極力避けて」

 マリンがファイアの背に声を掛ける。


「あいよ!んじゃあちょっくら行ってくらァ!!」

 そう言って走り出したファイアが電神の足元に潜り込む。

 そして思い切りジャンプすると一気に電神の頭上に跳び上がる。

 そのまま剣を精製し振りかぶると、落下しながら電神の首筋めがけて斬りかかった。


「《重力斬り》ッ!」

 ガキィィン!! 剣は電神の装甲に弾かれた。

「うおっ!?硬っ……」

 着地したファイアが驚きの声を上げる。


 それを離れた所で見ていたマリンは少し驚いた表情をしていた。

(ファイアの剣でも傷一つ付かないのか…!)


「あはははッ!私の《ベルファーレ》にそんな攻撃効かないわ!」

 ルナが電神の肩で高らかに笑う。


「…まったく、戦闘は極力避けろと言ったばかりなのに…」

 マリンはそうぼやきながら、その手は空中で複雑な動きを続けていた。指の動きはそろばんをするそれに似ている。

 マリンの人差し指がパチンと空を弾いた。


(仮想演算完了。設置開始…)

 マリンはその両手を地面に向けた。

 その手が青白く発光する。


 ズドンという轟音と共に地面に大きな亀裂が入った。

「なぁッ!?」

 思わずファイアが声を上げた。

「おいおいマジかよ…!こんなんありか?」

 ファイアが呟く。


 ベルファーレが地面に刺さった腕を抜くと、そこには拳と同じサイズの穴が開いていた。穴は見る見る内に元の地面の形に修復され戻っていった。

 やはり《地球》の物に電神やプレイヤーの物理干渉は出来ないらしい。


「硬いしデカいし…マリンっ!こりゃ中々にしんどいぜッ!」

 ファイアが電神の足元を走り回りながら泣き言を言う。

 しかしマリンはファイアの方を見向きもせずにこう答えた。


「流石のファイアでも弱音を吐くことがあるんだね。もう少し頑張ってくれないかな?」

「無茶言うなって!このデカブツをどうやって倒せってんだよ!?」

 ファイアが抗議の声をあげる。


 マリンの顔がいつもの顔より仏頂面になり、一つ溜め息をつく。

 そしてルナに向かって


「どうやら僕たちだけでは、ルナ、君が言うように力不足らしい。だから……降参しよう」

 マリンの下がっていた両手が顔と同じ高さに上げられる。


「……ふぅん?それはまた随分と潔いのね。もっと粘るかと思っていたのだけれど……そんなに私との勝負が怖いかしら?」

 それを見てルナが不敵に微笑む。


「そうだね。ここまでの力量差を見せられたら流石に怖いね…それに、君のターゲットはま…サニーなのだろう?」

 マリンがそう言ってルナを見る。


「生憎、僕らとサニーはまだ昨日会ったばかりで、それ程情が湧いているわけじゃない。ならここはサニーの為にも降参するのが最善手だと思うんだ……」

 マリンが淡々と言葉を紡ぐ。


「なるほど…それでアナタたちは命乞いをするのね。いいわ、許してあげる。さあ、早くサニーの居場所を教えなさい!」

 ルナが勝ち誇った笑みを浮かべながら言う。

 マリンとファイアは顔を見合わせ、肩をすくめてみせた。



 ――一方その頃、アースとウィンドはまひるを連れショッピングモールの中へと戻って来ていた。


「アース、降ろして……もう大丈夫だから……」

 アースの腕の中にいたあたしは細い声で言った。

 その声を聴いたアースは申し訳無さそうな顔であたしを降ろしてくれる。


 急に色々な事が起きて混乱してしまった。でもいつまでもアースに抱きかかえられている訳にはいかない状況だ……


「まひる殿、済みません…」

「まひるお姉ちゃん……」

 アースとウィンドが気まずそうな頭を向ける。


「…アースとウィンドが悪いんじゃないよ。だって二人はあたしを助けようとしてくれたんでしょ?あたしこそ、怒鳴ったりして、ごめん…」

 あたしはトーンの落ちた口調で言う。

 アースとウィンドはゆっくりと首を横に振る。


 あたしは現状を整理する。

 あたしのMPが切れたところに新しい敵?プレイヤーがやってきた。

 役に立たないあたしを逃がすためにマリンとファイアの二人が残って戦っている…

 二人の下に駆け付けて再度戦う?

 その為には……


 あたしは閉じていた目をパッと開いて

「二人とも手伝って!」

 そう言うとあたしは二人の手を引き、フードコートへと向かった。



 フードコートには色々な食べ物屋さんが並んでいる。普段ならどれを食べようか何周か見て周り、迷った末その日食べるのを決めるのがあたしの常だった。

 だが今日は状況が違っていた。


「ドーナツ!クレープ!たこ焼き!カフェラテ!それから…!」

 あたしは店から店へと次々に注文していく。そんなあたしの後ろでアースとウィンドが注文の料理を山にして抱えていた。


「まひるお姉ちゃん?これ、全部食べ物なの?」

 あのウィンドでさえ呆気に取られてしまっている。


「そうよ!あたしのMPの回復のさせかたが分からないから、まずは手当たり次第に食べてみるの!何でもやってみなきゃ分からないしね!」


 一通り注文を終え、あたしたち三人は山盛りの料理と一緒にテーブルに着いた。

 あたしはアースにスマホを突き付ける。

「アース!ここにあたしのMPが表示されてるから、何を食べた時一番数字が大きく動いたか教えてくれる!?ウィンドはメモをお願い!」


 アースはスマホを両手で受け取り、あまり分かっていない顔で

「しょ、承知しました…」

 とだけ言った。



「オールドファッション、15!フレンチクルーラー、13…!」

 あたしはもくもくと食べ続ける。

「ストロベリーチーズケーキのクレープ…38!おおッ!」


 食べるあたしの横でアースが回復数値をカウントし、ウィンドがそれをメモしてくれている。どうやらあたしの好きなクレープは結構回復したらしい。


「たこ焼き、一個で10ッ!これはコスパがいいッ!!」

 アースの驚き方が段々と変な方向に面白くなって来ている。

 あたしは着々とMPを回復していく。


「半分くらいまで回復してきたわね!もう、割りとお腹いっぱいなんだけど……」

 そんな苦しそうにしているあたしを横目で見てか、ウィンドがあたしに手を向けて

「《魔力分与(マジックパサー)》」

 とスキルを唱えた。

 スマホのサニーのMP表示は一気にMAX値の480まで回復した。


「え………?」

 あたしとアースの目が点になる。

 ウィンドがウィンクしながら言う。


「あー、なんかお姉ちゃん頑張ってたし、邪魔しちゃ悪いかなと思って……でも、大丈夫、だったよね?」

 上目遣いをしながらウィンドは続ける。


「ウィンドたち精霊は魔法量に関係なく魔法やスキル?が使えるんだ。精霊は存在自体が魔法と似てるところがあるしね。言ってなかったっけ?」


 いや聞いてないよ……

 アースの方を見るとアースは腕を組んでうんうんと納得している様子だ。

「さすがは我が主。先ほどまでの苦戦が嘘のように回復していっています。まさに魔法です。しかし、この回復量は一体……!?」

 アースは知ってか知らずか真顔で言っている。


「じゃあ何?みんなと一緒にいれば、あたしはMP切れを起こさないってこと…?」

 あたしはまだ信じられないといった様子でウィンドに訊き返す。


「お姉ちゃん自身が使うスキルは魔法量を消費するけど、電神の消費魔法量の優先度をウィンドたち精霊に紐付けたら、多分電神に乗ってる間は消費しなくなるんじゃないかな?マリンに訊けば解ると思うんだけど」

 ウィンドが少し遠慮がちに答える。


「あぁ〜〜〜ッ!!摂取したカロリーがあぁあーーーッ!!」

 あたしはその場に崩れ落ちた。

 そして直ぐ様顔を上げ前を見る。


「急ごう!マリンとファイア、無事でいて!!」



 ――モール外

「いいわ、許してあげる。さあ、早くサニーの居場所を教えなさい!」

 ルナが勝ち誇った笑みを浮かべながら言う。


「まあそう急かさないで。ルナ、一つ訊きたいのだけど、君はサニーと決闘をすると言ってたね?それは何故?」

 マリンが少しだけ表情を崩しながら聞く。


「当然よ。私はあの子を倒す為にここにいるんですもの。なのに肝心のあの子が見つからないんじゃ話にならないでしょう?」

 ルナはまるで当たり前のことのように答える。


「その前にまずは聞いておきたいんだけど……どうしてサニーを倒そうとしているの?理由を聞いてもいいかな?」

 マリンが質問を重ねる。


「だって、それがこのイベントの主旨でしょう?クリアすれば賞金が出るって言うし、だったらやるしかないじゃない!?てゆーかアンタ、一つ質問とか言いながら幾つ訊いてるのよ!」

 ルナがイラつき気味に答えていく。


「ああ、ごめん。僕の悪い癖なんだ。つい色々気になってしまって」

 マリンが申し訳なさそうな顔で言う。

(イベント内容が変わっている?サニーを倒せば賞金……前より食い付くプレイヤーは多そうだ…)


「ふんっ!とにかく、私がサニーを倒す理由はただそれだけよ。分かったらとっとと教えなさい!?サニーの居場所を!」

 ルナがマリンたちに詰め寄る。


「まあまあ落ち着いて。そんなに焦らずともちゃんと教えますから……」

 マリンが宥めるように言う。


「まどろっこしいわねぇ!じゃあさっさと教えなさいよぉ!!」

 ルナがその腕を振り上げると、電神の腕もそれに倣い上空に向かって振り上げられる。


「言われなくても教えてやるさ!僕たちの力をッ!!」

 マリンが叫ぶと同時に両腕を地面に向け振り下ろす!


「《光鎖拘束(チェーンバインド)》!!」

 マリンの手から青白い光の鎖が地中へと射出された。

 そして、ベルファーレの足下に幾つもの魔法陣が現れる。その魔法陣を通して先程の鎖が幾重にも飛び出して来た!


「何よこれッ!?」

 ルナが驚愕の声を上げる。

 しかし、既に遅い。

 ベルファーレの両足には無数の魔力の鎖が巻き付いている。

「あっ!?」

 更に全身に鎖が絡み付いていく。

 振り上げた拳が上を向いたまま拘束された。

「このっ!!離せぇ!!」

 ルナが叫ぶ。


「ルナ?操縦席に戻ることをお勧めするよ…!」

 マリンは涼しい顔で言う。

「ッ…!!」

 ルナは慌ててベルファーレの頭部の操縦席へと入って行った。


「流石だなマリン!これじゃあそう簡単に動けねえだろ!?」

 ファイアが嬉しそうな声を上げた。


「何、君が敵の足元で必死に戯けてくれたお陰さ。君にも下手な演技させて済まなかったファイア」

 マリンは微笑みながら言った。


「別に良いってことよ!お前の指示で動いただけなんだからな!まぁ、まさかあんなこと言うとは思わなかったけどな?あと“下手”は余計だ」

 ファイアが苦笑いを浮かべた。


「ふむ、一つ教えておこうファイア。嘘でも、まひるのことを裏切るようなことを言うとだね…」

 マリンがそこで言葉を区切り、苦虫を噛み潰したような顔をする。

「とてもとても、自分に対して度し難い気分になるよ…!」


 今まで見たことのないマリンの表情を見てファイアが少したじろぐ。

「あ、ああ。肝に命じておくぜ…」



「まあ、とりあえずこれで敵の動きを止められた。もう暫く拘束出来てると思うが、どうするファイア?憂さを晴らすかい?」

 マリンが不敵に笑う。


「そうだな!コイツにはちょっと本気を出してボコってみてえ!アウマフがいりゃあ尚よかったがな!」

 ファイアがニッと笑った。


「ふ…なら思う存分憂さを晴らせそうだよ…今アウマフの方からこちらに来てくれたようだ」

 マリンは向こうから駆け付けてくるまひるたちの姿を見て微笑みながら言う。


「ファイア?さっきのウィンドの意思は通じてるね?」

「ああ。俺たちをアウマフの燃料にして、まひる様の負担にならないようにするってやつだろ?」

「そう。もっと早く、気付いていれば…まひるに負担を掛けずに済んだのにな…悔しいよ」

 マリンが少し俯き言う。


「なあに!俺たちもまひる様もまだまだってことだろ?伸び代がある方がこの先面白そうでいいじゃねえか!」

 ファイアがニカッっと笑って言った。


「確かにそれもそうだ。だが、今回のことは僕にとっても大きな教訓になった。次からはこんなことがないように気を付けなければ……君のことも少し知れて良かったよファイア」

 マリンが嬉しそうな笑顔で応えた。


「俺もさマリン!お前はただクール気取ってる根暗じゃなかった!熱いよ、お前ッ!」

 ファイアが笑い飛ばした。


「根暗って……ああ、それとファイア?僕の分も残しておいてよ?僕だって今回の件でそれなりに鬱憤が溜まってるんだ」

 マリンはジト目でファイアに言う。


「わかってるって!まずはあのデカブツに精霊の中で最強の攻撃力を誇る火の力を見せてやる!」

 ファイアは胸の前で拳を握り締める。


 そこへ

「マリンッ!ファイアッ!無事なの!?」

 あたしたちは走って、ようやく二人の元へと戻って来た。息は切れているが、先程の様な気分の悪さはない。


「おお!まひる様!元気になったか?」

 ファイアが笑顔で応える。

「よかったぁ〜!二人とも無事だったんだね!」

 あたしは二人の安否を確認し安堵した。


「元気になったついでに、今から一緒にアイツを殴りに行かないか?」

 ファイアは後ろで何やら藻掻いてる電神を笑顔で指差す。


「俺とドライブだ。さあ、乗った!」

【次回予告】


[まひる]

MP切れの問題は何とか解決したけど、

さらなるカロリーの問題がぁ……

そんなこんなで無事マリンとファイアに合流!

さあ!鬱憤晴らしてよッ!


次回!『超次元電神ダイタニア』!


 第八話「水と炎の矜持」


ヤダっ!何このイケメンっ!?

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超次元電神ダイタニア[Data Files]
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