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超次元電神ダイタニア  作者: マガミユウ
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第四十話「船橋上空」

【登場キャラクター紹介】

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

「――してしまうだろう……今の君たちの魔力は無尽蔵どころか、宿主である相川さんを失って減衰するばかりだ。俺の立場からすると絶対に使うなとは言えない……が、君たちに少なからず情を抱いているのも事実だ」


 早朝のブリーフィングルーム。

 風待(かざまち)が四精霊を前にして何やら話し込んでいる。四精霊は皆真剣な面持ちで彼の話しを聴いていた。


「…だから、使用は君たちの判断に委ねる。くれぐれも、最善を尽くして欲しい……!」

「わかりました!」と四人から凛とした声が上がる。風待はそこまで言うとぐったりと自分の椅子に腰を下ろした。


「済まないな…君たちにばかり、辛い思いをさせて……俺は…こんなはずじゃ……」

 下を向いて両手を顔の前で組んで風待は項垂れる。

「誰も悲しまない世界を、作りたかったはずなのに……」


 そこにアースがゆっくりと歩み寄り、片膝を着き風待の顔の高さに自分の顔を合わせる。そして柔らかい笑顔で


「風待殿…顔を上げて下さい。あなたの創った『ダイタニア』がなかったら、私たちはまひるさんやみんな、あなたとも出会えていなかった…」

「そうだよ!風子(ふうこ)たちがこうしていられるのも、風待さんのおかげだよ!」

 アースに続くようにウィンドが膝を折り、風待に目線を合わせて言った。それに同調するようにマリンたちも言う。


「そう……あなたは多分、悪くない……僕たちのダイタニアは優しい世界だったからね」

「あたしたちだって、あんたのおかげで楽しいゲームをプレイ出来てるんだ!面白いゲーム創ってるって自信持っていいぜ?」


 そんな精霊たちに向き直るようにして立ち上がる風待は四精霊に詫びるように

「……俺は、『ダイタニア』を創ったことを後悔していないよ。君たちも、相川さんも……このゲームで出会った全ての人に……感謝しているんだ……!」

 そして「ありがとう!」と礼をする。


「……こちらこそ。風待殿、本当にありがとうございました!また一緒にまひるさんとも遊んでくださいね?」

 そう言って四精霊たちはブリーフィングルームを後にする。残された風待は一人椅子に深く腰を沈めると壁に掛かった時計を見上げるのだった。


「…午前七時、か。これで決着を着けてみせるぞ、SANY(サニー)…!」


挿絵(By みてみん)

『超次元電神ダイタニア』

 第四十話「船橋上空」



 風待が少し遅れてブリーフィングルームに顔を出すと、そこには先程の四精霊の他に流那(るな)、飛鳥、ザコタとそよ、全員が揃っていた。


「少し遅刻だぜ〜?風待さん!」

 ファイアが努めて明るく声を掛ける。その心遣いが風待にはありがたく、自分も自然と心持ちに余裕が出てきた。


「ん?そうか?あー、済まない済まない!ちょっとトイレが手強くてね!」

 風待も調子が出てきたのかいつもの様に戯けてみせる。


「もう何よ〜!イケメンなんだからもっとシャキッとしてよねー?」

「おいおい!俺のトイレ事情に顔は関係ないだろ〜?」

 流那の言葉に風待がノッて返す。その場に小さな笑いが咲いた。


 風待はみんなに真っ直ぐ向き直り

「おはよう。みんなちゃんと寝られたかい?」

 と一人一人の顔を見渡し声を掛ける。

「はい!」と一同に声が上がった。


 瞼が少し腫れ、眼も赤い…

 きっと、たくさん泣いたのだろう……

(泣かせてしまったんだな、俺が……俺の創った世界が……)

 風待は懺悔の言葉を飲み込み、真っ直ぐ全員の顔を見渡し口を開いた。


「今更俺から言うことは何も無い。みんな、絶対に勝つぞ!」

「「はいッ!」」とみんなが気合いを入れる。


「作戦開始だ。まずは船橋市街にある《異界の(くさび)》を見つけ破壊するぞ!みんな掴まれ!」

 風待の声に全員が近くにいた者に掴まり、最後にザコタが風待の腕を掴んだ。

「………」

 お互い無言だったが、視線が合うと風待とザコタはお互いニッと笑った。



「《瞬間転移(テレポータル)》!」

 風待がそう唱えると次の瞬間には先程までいた新宿とは違う街並みが目の前に広がった。高層ビルの屋上に皆が着地する。


「ッ!?気を付けろッ!!」

 風待が異変を察知し叫んだ。

 ビルの屋上に居るというのに、頭上に影が掛かった。咄嗟に皆がその頭上に視線を向ける。


「…やれやれ、向こうさんもお待ちかねだったようで……」

 風待が自分たちの立つビルの頂上に、その影を作っているものに視線を合わせる。


 そこには紅い狼の様な姿をした電神(デンジン)、『千紫(せんし)のヴォルシオン』の姿が在った。

挿絵(By みてみん)

「……やはり、相川まひるの姿は無い、か」

 そう声が聞こえ、声の方向に視線を送るとそこに一人の女が立っていた。

 着物に似た機械のバトルスーツに身を包み、頭の上の獣耳をパタパタとさせた。


「久方振りだな、風待」

『千紫のヴォルシオン』の操縦者、サラがそう呟いた。


「俺を知ってるようだが、俺は君とは初対面だ。その電神は前にぶった斬った気もするがな」

「………」

 風待のその言葉にサラは何も言わず、周囲を見渡し一人一人認識していく。


「…地球の子らと、精霊四人……貴様たちも自分の星を守る為に、我らの前に現れたのだろう?」

 サラは穏やかな口調で静かに語り掛けてきた。


「そうよッ!あんたたちが急に地球を乗っ取ろうとするから()む無くね!」

 流那がサラのその言葉に反論する。


「……皮肉な話だな。我らのダイタニアもサニーとシルフィに言わせれば、地球と同化しない限り、そこに生ける者の存続は難しいらしいのだ…」

 サラは哀しみの表情を浮かべ、視線を落とした。


「我もまたダイタニアという世界を構築する要素の一人。地球という星が我が同胞たちの生きる星として、相応しいのか、見定める為に訪れたのだ……」

「……なるほど、それで?お前たちはこの地球の何を見たかったんだ?ただ地球を自分の世界の資源として利用したかっただけか?」

「そうだな、初めはそうだった。でも、我は知ってしまった……この地球の素晴らしさを……」


 サラの言葉に流那が食いつく。

「何をよ!地球のいいところって!」

 サラは真っ直ぐ流那の瞳を見つめ返す。

「それは、生命の尊さだ」

「え?」

 流那はその予想外の言葉に思わず首を傾げた。


「この星で暮らす生命は弱く、儚いものだ。地球人によって造られた我らとは違う……そして、この星の生命は短い時間の内に次々と産まれては消えていく……その繰り返しの中にこそ、尊さがあるのだ」


「生命が尊い?」

 ザコタがサラの言葉を訝しむ。

「お前らはこの星に生きる命を自分の管理物の様に扱おうとしているじゃねえか!」

 ザコタの言葉にサラは静かに返した。

「それが自然の摂理だ。少年よ」


 サラがそっとヴォルシオンに悲しげな顔で触れる。

「今の我らは水と油……決して交わることはない……ならばせめて、正々堂々仕合(しあ)おうではないか…!」

 サラの体がヴォルシオンと融合していき、遂にはサラの姿は完全に消えた。


『貴様らの探している《異界の門の鍵》!それは我が電神ッ!このサラが名乗ろう!我が電神は千紫のヴォルシオン!いざ参るッ!!』

 ヴォルシオンと一体化したサラがそう叫び、頭上から飛び掛かってきた。


「《地殻障壁(グランバリア)》ッ!!」

 アースが瞬時に皆の前に回り対物障壁を貼る。が、電神の鋭い爪と牙により簡単に粉砕されてしまった。


「きゃああッ!!」

 その衝撃で飛鳥が吹き飛びビルの上から落とされそうになるも、(すんで)のところで風待がその手を掴んで引き寄せる。


「ちぃッ!やはり、容赦してくれるような相手ではないか!みんなッ!《異界の楔》はどうやら相手方の電神らしい!これで探す手間が省けたってもんだ!後はみなで一気にあいつを倒すぞ!」

 風待がそう叫んで自らの電神『ダイテンマオー』を召喚しようとその右手を空高く掲げた時だった。


 風待の足下から無数の光の鎖が伸び風待の下半身に巻き付きその動きを奪った。

(《設置拘束(トラップバインド)》か!?だがこんなもの、俺には何とも――)


 頭上に描かれた召喚紋からダイテンマオーの脚とその巨大な右腕が現れ始めたのを見て、風待はそのコクピットへと自身を転送しようとした。

 その瞬間、先程までまだ遠くにいたはずのヴォルシオンが風待の眼前で大きな口を開き、今まさに風待を飲み込もうとしていたのだ。


「なッ!ん…だとぉおーッ!!?」

 風待はその身を反射的に横に反らす。が、それでもヴォルシオンの牙は風待の首元をギリギリかすっていき、その傷口から血が滲み出た。


(こいつ!いつの間にこんな近くに!?)

 ヴォルシオンは風待の左半身をかすめ、その後ろのダイテンマオーの右腕に噛みつき、その鋭い牙で噛み千切った。


「くっそ!油断した!ダイテンマオー!早く俺を乗せろッ!」

 風待のその叫び虚しく、パイロットの居ないダイテンマオーは次々とヴォルシオンに噛み砕かれ、破片は光の粒子となり消えていった。


「う……そ……だろ……?ダイテンマオーが……」

 そのあまりにも突然な出来事に風待は動けなくなっていた。


『…ふふふ…よくやってくれましたサラ』

 その時、サラとは違う声がその場に響き渡った。


『貴方の電神は召喚に時間が掛かるのは前回見て分かっていましたよ。だから、乗るまでの少しの時間、貴方の注意を引くことが出来れば、サラならやってくれると信じていました』

 無機質な声だが多少気持ちが高揚しているようで、いつもよりは抑揚のあるその声に風待は


「…随分とご機嫌じゃあないか。ええッ!?シルフィ!」

 と、挑発するような口調で返した。


「風待さんッ!その腕ッ!?風子(ふうこ)ちゃんッ!!」

 風待の左腕はあらぬ方向にねじ曲がり、首から肩口に掛けて多量の出血が見られ飛鳥が青ざめて叫んだ。


 ウィンドが風待を《回復》させようと駆け寄る。が、その間にサラのヴォルシオンが割って入った。


『一つ良いことを教えてあげましょう。明日の朝までに私たち四人を倒さないと日本地図から千葉県が消えます』

 シルフィはそんな突拍子もない言葉を平然と口にした。


「ふ、ふざけんなッ!そんなこと出来る訳ないだろッ!」

 ファイアはすかさずそう返すが、シルフィは冷めた口調で続けた。


『出来ますよ。私たち精霊にとって地脈の操作くらい容易いこと、精霊の貴女たちなら解りますよね?』

 その声色には迷いなどなく、嘘を言っているようには見えなかった。


「…船橋市、八千代公園、印旛沼……まさか、その為の直線配置!地盤を断つつもりッ!?」

 マリンが驚きのあまり声を上げる。


『そう、この地点の地盤を切り取ってそのまま次元の狭間へ落とします。そうですね、とりあえず関東平野くらいまで切り取るとして……720平方キロメートルくらいでしょうか?』

 シルフィはさらりと言ってのけた。


「あ、あり得ない……そんな規模の空間操作など出来る筈が……!」

 マリンの声が震えている。どうやらシルフィの言うことは嘘ではないらしい。


「…万理(まり)、この声の奴が言ってることは本当なの?」

 流那が問いかける。考え込み、絶句しているマリンの代わりにシルフィの声が答えた。


『ええ、本当ですよ?まぁ、別に信じて頂かなくとも結構ですけれど。どうせ貴女たちは此処で消えるのですから』

 そう言ってシルフィはまた薄い笑い声を響かせた。


「くッ!そんな真似、させる訳にはッ!」

 アースがランスを構えてヴォルシオンに突撃するが、ヴォルシオンの左後ろ脚に弾かれてしまった。


 その間にも出血が続く風待は次第に自分の体に力が入らなくなるのを感じ、ビルの床に腰を着いてしまう。


 その姿を見たウィンドはハッとして、再度風待をはっきりとした眼差しで見つめた。ヴォルシオンを目の前に、ウィンドはゆっくりと歩みを寄せて行く。


『どうやら回復出来るのはその子だけのようですね?サラ?何が何でも風待に近付けてはなりません』

 シルフィの声が再度響いた。ウィンドはその言葉を聞いて歩みを止め、チラッとヴォルシオンに視線を向けると尚も風待に向かい歩き出した。


『そこの。シルフィの声が聞こえなかった訳でもあるまい?風待に近付く者を我は容赦なく排除するぞ!?』

 サラが最終警告と言わんばかりにウインドへ向け右前脚を掲げる!


「そんな……風子ッ!?いけないッ!下がって!!」

 マリンの声を無視し、ウィンドは歩みを止めようとしない!

 さっきまでウィンドが居た場所にヴォルシオンの右前脚が振り下ろされ地面に突き刺さり、轟音と共に砂埃を巻き上げた!飛鳥が堪えきれず目を背ける。


 段々とその砂埃が晴れていき、そこには窪んだビルの床と瓦礫が散乱しているだけであった。


「…これで大丈夫。止血は出来たけど、骨折まではまだ完全に治せてないかな…」

 誰もがその声の方を見た。

 そこには風待の前で膝を付き《回復(ヒール)》を掛けるウィンドの姿があった。


「…済まない……風子、くん…」

 風待はそう言葉を絞り出すと気を失った。


『貴女……今、何を……?』

 シルフィは驚きを隠せず、そう漏らした。

 ウィンドは尚も風待に《回復》を掛け続けながら立ち上がった。


「君たちのせいで日本地図から一つ県が消えて無くなるらしいけど、そんなことは絶対にさせない……!」

 ウィンドはそう言って、サラの方へ視線を向ける。その瞳には静かな決意の炎が揺らめいていた。


「飛鳥ちゃんッ!」

 ウィンドは飛鳥に向かって何かを投げた。飛鳥はそれを胸の前で両手でキャッチする。それはウィンドが風待から預かっていたフラッシュメモリーだった。


「え?…風子ちゃん…?」

 飛鳥は状況が解らずキョトンとしている。

「任務の引き継ぎ!お願いするね!」

 風子はウインクして笑顔で飛鳥に笑いかけた。

「え!?どうして…?どうして風子ちゃんッ!!」

 飛鳥は何か不穏な気配を察して風子に説明を求める。


「どうやらシルフィが言ったことは本当みたいなんだ。時間がない……そうだよね!?(たま)ちゃん!ほむほむ!万理りん!?」

 ウィンドのその言葉に三人は口を開かず、ただ歯を食いしばった。それはウィンドの言った言葉を無言で肯定していた。


「ここは風子が引き受けたよ。みんなは次の場所に急いで!」

 ウィンドはヴォルシオンを睨みながら言った。


「ダメだッ!それは許さない!君一人にそんな重荷を負わせられない!!」

 マリンが叫び、サラに向き直る。だが、それと同時にまたウインドが口を開いた。


「うーん…多分何とかなるよ!流那ちゃんは風待さんを病院まで運んであげて?まだ先のステージがあるんだよ?一面なんかでモタモタしてられないよお!」

 ウィンドはそう言って、ヴォルシオンに《風の刃(ウィンドカッター)》を放つとそれとは逆の方へ歩を進める。


「…風子……使ったんだ…」

 マリンがそのウィンドの背を見ながら小さく呟いた。それを聞いたファイアが皆に声を掛ける。


「行こうみんな!風子がやると言ったんだ!だったらあたしらは一刻も早く次の場所へ行かなきゃ!」

 ファイアが真っ直ぐ皆を見てそう言った。だがその瞳は悲しみの色を隠せていない。


「で、でも!ほむらさん!風子ちゃん一人でなんて無茶ですッ!」

 飛鳥がファイアに向かって叫ぶ。アースもウィンドの方へ視線をやる。


「…ウィンド、必ず追いついて来なさい……!」

 アースもウィンドの背中を見てそう言葉を呟いた。そして飛鳥に向かって言う。


「飛鳥ちゃん、次の八千代公園まで《瞬間転移(テレポータル)》を。事前に皆で飛んで場所は覚えてるはず。出来ますね!?流那さんは風待殿を病院までお願いします!ザコタとそよさんは流那さんの護衛を頼みます!」

「え!?私護衛なんて要らないわよ!」

 アースの突然の言葉に流那は戸惑いつつ答えた。


「何があるか分かりません!今、この地球にとって風待殿は何に変えても失え無い存在です。絶対に助けて下さい!」

 アースがそう言うと、流那もそれに納得して口を開いた。


「解ったわ…風待さんを病院へ連れて行く。ザコタ君とそよちゃん、ちょっとの間一緒にお願い…」

 アースはその言葉を聞いて少し口角を上げた。そして、視線をまたウィンドの方へ戻すと、ウィンドの姿はもうそこには無かった。


 ビルの遥か上空にウィンドの澄んだ声が響き渡る。その声を聞き終えることなく、それぞれが《瞬間転移》をし、その場から姿を消した。


「豊楽なるウィンド…超然たる風の申し子よ!今こそその力をこの大空に示せ!(いで)よ《アウマフ》!」

【次回予告】


[ザコタ]

馬鹿野郎ッ!!

何いきなりやられてんだよッ!?

[そよ]

心配だねッ、進一くん!

風待さん、大丈夫かなぁ…

[ザコタ]

おッ、俺はアイツの心配なぞこれっぽっちもだなッ!!


次回『超次元電神ダイタニア』


 第四十一話「アルティメットコード」


風子ちゃん、気を付けて… あの人は…

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