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超次元電神ダイタニア  作者: マガミユウ
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第四話「考察の乙女たち」

【登場キャラクター紹介】

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

 地上に降り立ち、アウマフを大気に返還した後、あたしとアースら四人はザコタを取り囲むようにして集まる。

 ザコタは片膝をつくも、顔だけは闘志を失わないよう精一杯強がっていた。



「まだだッ!俺はまだやれる!」

 ザコタが両手をつきながら立ち上がろうとする。

 あたしたちはそんなザコタを見おろすように睨む。


「今日のところはここまでよ!君の電神(デンジン)は破壊されたから、日付けが変わるまで再召喚出来ないわ」

 あたしは言い放つ。


「くそったれえぇーーッ!!俺がこんなところでぇええ……!!」

 ザコタが吠える。


「君にはまだまだ聞きたいことがあるの。君が知っていることを教えて?それが今回の君のペナルティ。オーケー?」

 そう言ってあたしはザコタに手を差し伸べる。

 ザコタはまだ何か言いたそうにしていたが、この人数の前に観念したのか、その手を払い除け、


「…いい!一人で立てる…」

 と言ってフラフラしながらも立ち上がった。

 その足取りはとても重そうだ。


「あ、ちょっと待って!ウィンド、《回復(ヒール)》お願い出来るかな?」

 あたしは慌てて回復スキルをウィンドにお願いする。

 あたしは『ダイタニア』において回復スキルを習得出来るクラスにはなったことがなかった。

 恐らく、ウィンドには出来るはずだ。


「え〜。お姉ちゃんの敵に〜?」

 ウィンドは納得いかないと言いたげにジト目であたしに訴えかける。


「そこをなんとか!ね?」

 あたしはウインクをし、顔の前で手を合わせ再度ウィンドにお願いした。


「むー…お姉ちゃんに免じて今回だけだよ?」

 ウィンドがザコタに向け、その手をかざす。

 すると、見る間にザコタの傷が癒えた。


「ありがとね、ウィンド!」

 あたしはウィンドに礼を言う。

 今度はウィンドがウインクしてサムズアップで応える。

 ザコタはそんなあたしたちのやり取りを難しい顔をして眺めていた。


「では改めましてザコタ君、君の知っていることを教えてもらうよ?」

 あたしは少し悪い顔でザコタに問いかけた。


挿絵(By みてみん)

『超次元電神ダイタニア』

 第四話「考察の乙女たち」



「ああ……俺もあんたらみたいなガキどもに負けて捕まるなんてなぁ…まあいいさ。俺にもまだ喋り足りないことが沢山あるんだ」

 そう言うとザコタはその場で語り始めた。


「俺のキャラ名はザコタ。主にシーフ職でプレイ中。レベルは26。電神の《ケンオー》とはまだ出会って間もないが、俺の相棒だ。今日は負けたが次は負けねえ!」

 彼は熱く語る。

 彼の瞳には熱い闘志が宿っていた。


「あたしはプレイキャラはサニー。何故か今回のイベントキャラと同じ名前なんだ。だから君はあたしと接触して来たんだろうけど、やっぱり報酬目当て?」


「そうだ。俺は報酬が欲しい!詰まらん現実を打破出来るほどのな!」

 あたしの言葉にザコタは即答する。

 思春期特有の虚無感から来る苛立ちとか、そういうのかな?と、その時のあたしは思った。

 あたしは更に質問を続ける。


「じゃあ次の質問ね?君にも『ダイタニア』の運営からのダイレクトメールとか、そういう連絡って来た?」

 ザコタは少し怪訝そうな顔になり、


「運営からメール?そんな直接的なものは来たことねえよ。新イベの情報を公式サイトで見て、ログインしようとしたらスマホが光って、生身の姿のままダイタニアに来てたってだけだ」

 と答えた。


 ふむ……

 運営から直接ではなく、スマホのアプリ経由でダイタニアに来たという訳か。

 スマホが光ってからこの変な世界に来たってところはあたしと似ている…

 それにしても運営はどうやってダイタニアにプレイヤーを呼び込んだのかしら?そもそも運営なんて存在するの? うーん……謎は深まるばかりだよ。

 でも今は目の前の少年に集中だ。


「変だとは思ったさ。生身の姿で、普段と同じ景色、同じ空気を吸っている感覚なのに、全く違う世界に居るっていう違和感が拭えなかった。だが今となってはどうでもいい!それよりも重要なことがある!」

 ザコタは捲し立てるように言う。


「重要なこと?」

 あたしは釣られて訊き返す。


「ああ。これでも俺は今まで無敗できてたんだ!このまま負けっぱなしってのは俺の信義にもとる。だが、今の俺とあんたの力量差は悔しいが歴然だ。だから俺はこの何だか分からんが現実になったダイタニアの世界で修行して、次こそはあんたに勝つッ!!」

 彼はそう宣言した。


 どこまで負けず嫌いなのよ…

 あたしは少し呆れながら、そんなことを大真面目に言う彼のことを嫌いにはなれなかった。


「そう。もう乱暴な事しないって約束してくれたら、再戦受けてあげてもよくってよ?」

 あたしは片目を閉じ、少しわざとらしく言った。


「ふん!俺は俺のやり方で強くなってやるさ。あんたの指図は受けねえ」

 と相変わらずヘソを曲げた返事しか返ってこない。

 あたしは少しムッとして言い返した。


「そんな態度ばかりだと、この次会っても戦ってあげないんだからね!?ふんだ!」

 するとザコタは少し本気に取ったのか


「うるせぇ!次にあんたと戦うまで他の奴とは無駄に戦わねえよ!それでいいだろ!」

 と言い返してくる。

 ふぅん。威勢はいいけど素直だし、気骨もありそうだ。

 あたしはそっと右手を差し出す。


「相川まひる。よろしくね」

 と優しく言うも、またピシャリと手を払われた。

 何よ!折角大人の態度で接してあげたのに、可愛くない!


「敵と馴れ合う気はねーよ!あんたは俺の宿敵だからな」

 そう言うとザコタはあたしに背を向ける。そして


「…迫田進一だ。次は勝つ!」

 と吐き捨てるように名乗るとそのまま去っていった。



 そんなあたしとザコタのやり取りを見守る四人。

 あたしは四人に向き直り


「初めて会ったというのに、ゴメンね、何かわちゃわちゃしてて」

 と謝る。


「いえ。彼からの事情聴取は必要な事柄と理解しています。お気になさらず」

 固い口調でアースがそう言ってくれる。


「あ〜、そうね。あなたたちにも色々訊きたいことあるんだけど、あたしの家でいいかな?」

 あたしは少し困ったような顔を作りながらみんなに提案する。


「お姉ちゃんち?行く行く〜!」

 ウィンドが真っ先に反応した。

 他の三人も特に異論はないようだ。

 あたしたち五人は一旦あたしのアパートに向かうことにした。



 あたしは四人を部屋に招き入れる。


「適当に座って〜」

 と言ってあたしはキッチンに立つ。お茶の準備をしなくっちゃ。

 それにしてもまさかこんな形で初対面になるとはねぇ。


「はいどうぞ。粗茶ですが。あとお菓子もあるから良かったら食べてね」

 あたしはお茶を出しつつテーブルに人数分のお茶菓子を出す。


「あ!お構いなく。自分たちはエネルギーを経口摂取せずとも存在出来ますので」

 と、アースが言うも


「コレ美味しいねお姉ちゃん!」

「うん!美味いッ!こりゃいい!」

「ヒトに顕現出来て、ようやくよかったと思えました…」

 アースの後ろでは既に三人娘がお菓子を美味しそうに頬張っていた。


「別に食べても問題ないみたいね。だったら一緒に食べられた方があたしは嬉しいわ」

 あたしは笑顔でその光景を見つめる。

 アースは一人、頭を抱え困った顔をした。



 それから、一人暮らしの部屋なので、アースとファイアはソファに腰掛けてもらい、ウィンドとマリンはそれぞれ床にクッションを敷いて座ってもらった。

 あたしはアースたちの向かいの床に座り話を切り出す。


「えっと……みんなのことは大体把握出来てると思うんだけど、やっぱりまずは自己紹介しようか。あたしは相川まひる。よろしくお願いします」

 あたしが頭を下げると、アースたちもそれぞれ挨拶してくれた。


「自分は地の精霊、アースです。こちらこそ宜しくお願い致します、我が(あるじ)

 ブロンドのカールさせたポニーテールがお辞儀と一緒に揺れる。アースは四人の中では一番年長に見え、あたしと同い年くらいに見えた。

 とても落ち着いていて、他の三人にはない大人の雰囲気を醸し出している。

 端正な顔立ちと凛々しい蒼い瞳、鎧を着ていても判る緩急のあるボディラインは女のあたしから見てもとても綺麗で羨ましい。


 続いてウィンドが元気よく声を上げる。

「ウィンド!風の精霊だよっ!よろしくねお姉ちゃん!」

 翠色のツインテールを輪っかに結った個性的な髪型のウィンド。四人の中では一番年下なのか、その見た目も言動も幼く感じる。その表情ははつらつとしていて、見るものを明るい気持ちにさせてくれる。会うなりあたしのことを“お姉ちゃん”と呼ぶが、またそれが嫌味を感じさせないくらい可愛いのである。


 次にマリンが名乗りをあげる。

「僕は水の精霊のマリン…よろしく、マスター」

 意外にもクールなマリンはボクっ娘なのね?端正な顔立ちにクールな切れ長の瞳、長い髪をサイドテールに結って可愛らしさもある。ウィンドに次いでまだ幼さが残るその容姿。表情は余り変わらないが、この先色々な表情を見せてくれると嬉しいな。


 そして最後にファイアが名乗る。

「俺は火の精霊のファイアだ。これからここで世話になるのか。じゃあお館様って呼べば良いか?」

 紅い長い髪を無造作にポニーテールで結っている。その言動もあってか、自信に溢れたその表情はどこか異性を想わせた。所謂イケメン女子だ。少し吊り目の眼には長い睫毛が添えられていて、伏し目がちになるとその瞳はとても魅力的だった。年の頃で言うと高校生くらいだろうか。アースに次いで背丈も態度もしっかりしていた。


 四人が好意的に挨拶をしてくれる。

 あたしはそれを満面の笑みで受け止めて。


「うん!思った通り。やっぱりみんな精霊だったんだね。ゲームではいつもお世話になってたから、何か他人な気がしなくてさ。みんなこれから仲良くしてね!」

 こうして新しい仲間ができたのであった。

 そしてあたしは本題を訊く。


「それで、あなたたち四精霊はあのゲーム、『ダイタニア』の中からあたしの世界に出てきたの?」

 あたしは直球に訊いた。

 するとアースが答える。


「自分たち精霊は同じ意思で繋がっています。ですので知っていることを自分が代表してまとめてお伝えします」

 アースはそう言いながら三人の顔を見渡す。三人は無言でそれに頷いた。


「助かるわアース。教えてもらえる?」

 あたしはリーダー然とした振る舞いのアースに感心しながら話の続きを促す。


 アースは話を続ける。

「まだ自分たちにもはっきりしていないことが多いのですが、まずこの世界は見た目こそ違えど、自分たちがいた世界の雰囲気とよく似ています。元々姿形を持たない自分たちが、何故主の様な人型の姿になっているのかは解りません。主が言うゲーム『ダイタニア』から出てきたという認識も自分たちにはなく、気が付けば自分たちはこの世界に顕現し、自分の意思で動くことが出来るようになっていました」

 そうアースは語る。


 その言葉を聞きながら私は思い出す。

 私がこのゲームを始めた時最初に出会った精霊も地の精霊だったな。そして私が初めて契約した精霊でもある。


「自分たち精霊は元々自然の中に存在します。その自分たちがいた世界の名が、先程から主が言っている『ダイタニア』です。なので恐らく、ここは自分たちの世界、ダイタニアなのだと思われます。しかし――」

 アースは少しだけ間を開けてからこう言った。


「なぜダイタニアと主の世界が繋がってしまったのか? またどうやって戻るかはまだ分かりません…」

 アースは申し訳無さそうに少し俯く。


 あたしはこんがらがる頭の中を必死に整理しようと試みる。

 ……えっとつまり、私たちが今いる場所は『ダイタニア』って世界の中で、あたしにとってはゲームの世界。でもアースたちにとってはゲームという認識はなく、元々いた世界ってことね。

 ここまでは認識したわ。


「アースたちの世界、ダイタニアは、モンスターがいて、剣や魔法で戦ったり、精霊の力を借りて電神を召喚出来たりする世界で合ってる?」


「はい、概ねその通りです。ちなみに、主の世界にある電気という概念はありません。あるのは地・水・火・風といった四属性だけです。魔法は魔力さえあれば誰でも使うことが出来ます。精霊は自然を司る存在であり、精霊は人の願いに応じて力を貸します。願いが自分たち精霊にとっての原動力なのです。

 いつも主が自分たちに、そうしてくれているように……」


 アースはそこまで言うと、あたしの顔を見て微笑んだ。あたしは急に向けられた優しい笑みに、頬を赤く染めて照れる。

 なるほど。少しずつ分かってきた気がする。


「じゃあ、あたしの世界にアースたちが来たのではなくて、あたしの世界がそのままダイタニアに来ちゃったってことなのかな?」

 でもそれだと、今あたしの部屋で電気を使えていることが矛盾する?

 あたしは首を傾げる。


「いえ、おそらくですが主の世界とこの世界の次元の壁が一部薄くなり繋がりやすくなっているのだと思います。我々精霊がこの世界に顕現出来るようになったのもそれが要因の一つではないかと……」

 アースも自分の推測を述べる。

 次元の壁…精霊の可視化…うーん…


「だから、スキルに対して当たり判定がある人とそうでない人がいるように、ダイタニアでの事象はあたしの世界に物理的に干渉出来ない?」


「はい。恐らくは」


「そして、あたしたちプレイヤーは『異世界転移』ではなく、『現実世界のダイタニア』と『ゲーム内のプレイヤー』として繋がっていると…そういうことかな?」


「はい。あくまで我々の想像ではありますが」

 アースがそう括る。


 その性で『ダイタニア』にログインしていたプレイヤーにだけ、この世界でゲームと同じスキルが使えるし、当たり判定が存在するのかも。だからプレイヤーではないその他のあたしの世界の住人は皆全てNPC扱いなのかな?

 まだはっきりしないことが多いので、事故にならない様、慎重に行動しないと。


 それに、あたしとアースたちの認識度に差はあれど、アースたちも現状を完全に把握出来ているわけじゃない。不確定要素の方がまだまだ多い…

『ダイタニア』の運営は何て言っていた?


 あたしは再度『ダイタニア』からのメールと公式サイトをパソコンで確認する。

 画面上の【イベントのお知らせ】をあたしは再読する。

 イベント、主役はサニー、サニーを見付ける、サニーはあたし?イベント参加条件、電神使い、専用マップ……


【イベント中はイベント専用のマップへ転移します。イベント専用マップではログアウトした場合死亡扱いとなり、再ログインは出来ません。】


【イベント中はイベント専用のマップへ転移します】


【イベント専用のマップ】!


「これかッ!?」

 あたしはその引っ掛かるワードについてアースたちに意見を求めた。


「さっき言った通り、あたしの世界では『ダイタニア』はテレビゲーム、ええと、仮想体験して楽しむ娯楽の一つなのね?」

 あたしはみんなに伝わるよう、言葉を選びながら話し出す。


「今回、その『ダイタニア』が広範囲のプレイヤーに《イベント》を開催したの。その内容は“()()()()()()”!」

 四人はキョトンとしている。


「みんなはサニーについて何か知っていることある?」

 あたしが訊くとファイアが


「サニーはお館様のことだろ?あ、本当の名前はまひる様だっけ?」

 続いてマリンも


「僕たちがサニーとして認識しているのはあなたのことだけです。容姿は随分と変わってしまっていますが…」

 淡々と、だが真剣にマリンが言う。


「ウィンドたちに名前を付けてくれたり、いつも一緒に遊んでくれてたのが、サニー。お姉ちゃんのことだよ?」

 ウィンドも空気を読んでか声のトーンを少し落として言う。


「その、テレビゲームとかいう娯楽は、電気の概念が無い我が世界、ダイタニアでは理解し難いものですが、主の世界とその電気の世界であるダイタニアが、何かしらの影響で現状の様なまぜこぜの世界になってしまった。理屈は未だ不明ですが、一先ずこの辺りが今日の時点での落とし所でしょうか?」

 アースがみんなの意見をまとめて言ってくれる。


「そうね。みんな意見ありがとう。そこに一つ、あたしの考えを付け足させてもらうならば…」

 あたしはみんなの顔を見回す。


「運営はメンテナンス中のお知らせを出したけど、ゲームとしての『ダイタニア』のイベントは今もなお継続中で、今回そのイベントマップに選ばれたフィールドが、あたしがいたこの世界だとしたら?」

 アースとマリンがハッとし、ウィンドとファイアがぽかんとした。


「みんながいたダイタニアでは、少なくともここにいる四人はサニーという存在を一人しか知らなかった。

 ザコタ君がさっきあたしをサニーと思って接触したけど、まだイベントが終わった様子は感じられない。ということは…」

 マリンがあたしの言葉の後を続ける。


「つまり、まだ僕たちが知らない、マスターではないサニーが別にいる。そして、そのサニーを見付け出すまで、この混ざってしまった世界は元には戻らない…」

 マリンが顎に手を当てて考え込む。


「もしそれが事実だとするなら、自分たちは一刻も早くサニーを見つけ出し、元の精霊で溢れたダイタニアに戻さなければ…存在、出来なく……」

 アースは言葉を濁した。


「アースの言いたいことは分かるわ。だけど今のあたしたちじゃあどうしようもないってことも分かった。確かに、焦るわ……」

 あたしは顔の前で両手を組む。


 何か、現状を打破する手はないのか。

 ザコタ君みたいに次も向こうから情報が来てくれるとは限らない…

 だったら……

 あたしは暫く考えていて無意識に固くなっていた表情に気付き、いかんと思い無理矢理笑顔を作る。


「まずは!今出来ることをしましょう!」

 あたしは胸の前でパチンと手のひらを合わせ、みんなに向かってニッコリと微笑んだ。

 みんなも視線を合わせて微笑んでくれる。


「さ〜て、あなたたちぃ!?」

 四人がキョトンとする。

「いつまでその硬くて重そうな鎧着たままでいるつもりなの!?」

 あたしは四人を指差して指摘する。


 そうなのだ。彼女らはそれぞれ西洋の騎士みたいな格好をしたままだった。

「これは自分たちの正装なのですが……?」

 アースが困った様な顔で首を傾げる。


「女の子なんだから、もっと柔らかそうで可愛いカッコしなさい!郷に入っては郷に従え、よ!」


 あたしはビシッと指差しで指示を出す。

「お姉ちゃんが言うなら仕方ないね〜」

 ウィンドが真っ先に身に纏っていた鎧を光の粒子に変換させ、地球で言うところの普段着へと変装した。

 大き目のパーカーをだぶっと着て、パーカーの裾から眩しい白い太ももが覗いている。

「お姉ちゃんみたいな服にしてみたよ!どう?」

 ウィンドがあたしにあざと可愛いポーズを向けてくる。

「たいへん、可愛らしゅう、ございます…」

 あまりの尊さに言葉が途切れてしまった。

 あたしの(ウィンド)がこんなにも可愛い。

 あたしはウィンドに親指を立てながらサムズアップをする。

 ウィンドは満足げにウィンクを返してくれた。


 次にマリンがウィンドと同じ様に着替えた。

 マリンはセーラー服っぽい衣装に身を包む。

 マリンは洋服を着ると背筋が伸びるタイプらしい。とても姿勢が良いお嬢さんがそこにいた。


「どうですか?マスター」

「とても似合ってるわぁ」

 あたしは目を細めながら褒めちぎった。尊い…


 次はファイアが着替えようとしたので、慌てて止めた。

 この子は何を着ても絵になる。

 だからと言って露出の多いビキニアーマーとかを着せるのは可哀想すぎる。

 そんな事をしたらきっと色んな所がポロリしてしまうだろう。

 それに何より、あたしが耐えられない。


 なので、あたしは妥協案として白のブラウスとデニムのパンツを推した。

 ファイアは余り解ってない様子で、鎧を洋服に変換し身につけてくれた。

「お!動きやすいなコレ!」

 ファイアは美少女だが、ボーイッシュな雰囲気が有るのでパンツルックがよく似合う。これまたご馳走さまです!


 最後にアースの番だ。

 アースはまだ甲冑の格好のままその場に立っている。

 不安気な瞳をあたしに向けてきては何か言いたそうにしている。

 その表情だけでもうご飯三杯はいける。


「あの……」

「うん?」

 アースは申し訳なさそうな顔をしながら口を開く。

「自分はこの世界の服装の情報など、まだ疎くて…三人の様に簡単に物質変換、出来ません…」


 あー、なるほどね。そういう事か。

 アースが困ってる事を察してあげる事が出来なかった自分が恥ずかしくなって来る。

 でも、一番頼りになりそうなアースが、着る洋服のことで悩むなんて、そのギャップがちょっと可愛らしく思えてしまうのだった。あたしはアースの隣に立ち


「あたしたち、割りと背丈近いね。これならあたしの服が着られそう!アース!こっちのあたしの服から何か選んで着てみて?」

 あたしは笑顔でアースに言う。

 アースは直ぐ様びっくりした様子で

「えっ!?自分は主に仕える者として、そのような!」

「いいからいいから♪」

 あたしはアースの動揺を他所に、アースの胸の前に洋服を充てがう。


「わ、わかりました!…で、では失礼します……」

 アースは諦めた様にあたしから渡された服を着るため、一度甲冑を粒子に戻す。

 あたしの目の前に美しい肢体がさらけ出され、あたしは何故か赤面してしまい、アースの裸を直視出来なかった。


 そしてアースはあたしの服を手に取り、その場で着替え始める。

 着替え終わったアースが声を掛けてくる。


「……い、いかがでしょう?」

「……ッ!!」

 アースの服装は白いワンピースに薄いベージュのカーディガンを羽織った清楚な出立ち。

 これはヤバいッ!めっちゃ似合うじゃん!可愛いすぎるよぉ~!しかもなんか超絶巨乳なのにウエスト細くない!?反則だよお兄ちゃん!!やっぱこの人美人すぎるぅッ!?


「ど、どうされましたかッ!?」

 あまりの衝撃に言葉を失うあたしにアースは心配そうに聞いてくる。

 ハッと我に返り

「あっごめんなさい!すごくよく似合ってます、はい。最高です!」

 あたしは慌ててアースに敬語で答える。

 するとアースは安堵した表情を見せてくれた。

「良かった……」

 女神かッ!!あーもうホント大好き! あたしは心の中で叫びながら、アースに抱きつきたくなる衝動を抑え込む。


「あ〜、アースいいなー!ウィンドもお姉ちゃんの服がいい〜」

 ウィンドが羨ましそうな顔でこちらを見つめている。

「あはは!今度みんなでお洋服見に行こう!」

 あたしはウィンドに笑顔で応える。

「やったぁ♪約束だからねっ!」

 ウィンドは嬉しそうだ。


「さて、それじゃあみんな着替え終わったところで早速……」

 あたしたち五人は顔を見合わせる。

 アースだけが緊張した面持ちだ。


「お夕飯の支度しようッ!」

 ワッとあたしの部屋で歓声が上がる。


 この日ここに、あたしは生涯忘れることはないだろう、最高のパーティーが誕生した。

【次回予告】


[まひる]

地球とダイタニアが混ざっちゃった!?

あたしと四精霊の日常系ほのぼの物語が幕を開けた!

世界の謎を解きながら

楽しい日々も堪能してみせる!


次回!『超次元電神ダイタニア』!


 第五話「迷宮ショッピングモール」


あなたたち、まずは下着を履きなさい…

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超次元電神ダイタニア[Data Files]
からご覧頂けます。
本作をお楽しみ頂く為にも実績が解除されたタイミングでの閲覧を推奨しております。
ご理解のほど宜しくお願い致します。
― 新着の感想 ―
[良い点] ザコタの本名が迫田。 もう少しキャラネーム捻るべきですね! でも意外とザコタみたいな熱い奴は嫌いじゃないです。 まひるも最高のパーティを結成したし、今後が楽しみです。
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