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超次元電神ダイタニア  作者: マガミユウ
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第三十八話「リロード」

【登場キャラクター紹介】

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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挿絵(By みてみん)

 まひるはその日、いつもより早目に出社していた。お盆休み前に異例の長期休暇をもらってしまった手前、休み明け最初の出勤くらいは誰よりも早く来ようと決めていたのだ。


 八日振りの朝のオフィスにはまだ誰も出社していなく、しんと静まり返っていた。


「よっと」

 まひるは両手のお土産の紙袋を自分のデスクへと置き、薄手のカーディガンを椅子の背もたれに掛ける。


「ふー。やれやれ」

 まひるは大袈裟な溜息を一つついてから、自分のデスクに座りPCを立ち上げた。電源ボタンを押して起動を待ちながら、この静けさを堪能するように目をつぶり、深く椅子に腰掛ける。


「さあ……溜まってた分の仕事、今日で可能な限りチャラにするよ!」

 まひるは両手を上に伸ばして背筋を伸ばしながら呟いた。


 そしてオフィスのドアが開く音に気付き、後ろを振り返ると、同僚で友人のやぶきが入ってくるのが見えた。


「やぶき先輩!おはようございます!長々とお休みありがとう御座いました!」

 まひるは立ち上がると小走りにやぶきのところまで行き、大袈裟に頭を下げた。


「まひるちゃんおはよー、久し振り〜。今朝は早いわね。休暇は楽しめた?」

 やぶきは、まひるの両肩を軽くポンと叩いてから椅子に座った。


「はい!それはもう!休み中の仕事、済みませんでした」

 やぶきは肩を竦めながら答える。

「全然大丈夫よお。優秀なののちゃんもいるしね」

「あぁ、ののちゃんにも悪いことを」

 まひるは苦笑いをしながら相槌を打った。それからやぶきにお土産を渡しつつ、本題の話題を振ることにする。


「あのっ、それでですね!仕事の勘をを早く取り戻したいなーと思いまして……」

 まひるの言葉を聞いて、やぶきは一瞬きょとんとしたが、すぐ納得したように手を打った。

「あ〜なるほど。それで今朝はこんなに早かったのね?」


 やぶきはいつも早目に出社して一人まったりコーヒーを飲んでいるのをよく見掛けた。きっとやぶきにとってはそれは大切な毎朝のルーティンなのだろう。


「済みません、やぶき先輩のコーヒーブレイクにお邪魔しちゃって」

 まひるは両手を合わせて軽く頭を下げた。


「全然いいわよお。まひるちゃんのコーヒーも淹れるわね?」

 やぶきはそう言うと給湯室へお湯を沸かしに立ち上がった。


「え!?それは申し訳ないですよ!」

 やぶきはニコっと笑って言葉を続ける。

「いいのいいの、ほら、座って待ってて。もう少ししたらののちゃんも来ると思うから、始業前に久々のぷち女子会しましょ」


 やぶきは給湯室の隅にあるコーヒーメーカーの所まで行き、手早くコーヒーを淹れ始める。まひるは断ることも出来ずに椅子に腰掛けた。

「ありがとうございます」とお礼を言い、まひるはバッグから手帳を取り出し今日の仕事を確認することにした。


 手帳には溜まっていてこなすべき仕事のスケジュールがギッシリ書き込まれていた。昨日までの日付の所には『実家に帰省』と書かれており、その日あった出来事がメモ程度に書き残されていた。


『海水浴。みんな水着可愛い。流那(るな)ちゃんも可愛かった。』

『給仕の手伝い。ウィンドと飛鳥ちゃんのエプロン姿可愛い。』

『流那ちゃんとマリン、仲良くなったみたい。良かった。』

『ファイア、お兄ちゃんに空手も習ってるんだって!』

『アースのスイカの食べっぷり笑えた。』


 などなど、自分で書いたメモが所々に散見される。そこでまひるは違和感を覚えた。この流那ちゃんと飛鳥ちゃんの他に書かれている片仮名の名前と思しき記載は何なのだろう?

 間違いなく自分で書いた字のはずなのに、聞き覚えのない名前が混ざっている。


 まひるが「う〜ん」と頭を悩ませているとやぶきがカップを二つ持ってきてまひるに一つ差し出した。


「はい、まひるちゃん」

 やぶきはコーヒーのカップをまひるの前に置きながら微笑む。

「あ!ありがとう御座います!」

「それで?どうだった休暇は?女の子ばかりだったんでしょ?ナンパとかされなかった?」

 やぶきはまひるの前の椅子に腰掛けながらカップに口をつけ、まひるににこやかに聞いてきた。


「え?あ、はい。そんな、ナンパなんてされないですよ!」

 まひるは顔を赤くしながら手を左右に振って否定した。


「またまた〜、まひるちゃん可愛いんだしスタイルいいし、男の子がほっとかないんじゃない?」

 やぶきの言葉にさらに恥ずかしくなり顔が熱くなるのを感じた。まひるは誤魔化すように手帳をパタと閉じテーブルに置いてコーヒーカップを両手で持ち口を付ける。すると爽やかな香りが口いっぱいに広がり、緊張も幾分か解れたような気がした。


 やぶきはそんなまひるの様子を見てフフっと笑うと、カップを再び口元に運び、一口飲んだ。

「ごめんなさい。まひるちゃん、こういう話題苦手よね。反応が可愛いから、つい、ね?それで?風子(ふうこ)ちゃんは元気?」

「え?」

 やぶきの口から突然自分の知らない名前が飛び出し、まひるは目を丸くして驚く。


「あの元気を体現してるような風子ちゃんだもの、元気に決まってるわね!」

 やぶきはそう自己完結させて笑顔でまひるに話しかける。

「え、えーと…」

 まひるが返答を言い淀んでいると


「ん?新しい恋バナのよかーん」

 そう言いながら能乃(のの)がドアを開け入ってきた。

「あ、ののちゃん」

「ののちゃんおはよー。ののちゃんもコーヒー飲む?」

「おはようございます。ども、コーヒー頂くっす」


 能乃は軽く会釈をしてまひるの隣に腰掛ける。

「おはようののちゃん、お休みありがとうね」

 まひるは能乃にもお礼を言うと能乃は笑顔で応える。


「いえ。何かさっき早乙女先輩と恋バナしてる風に感じましたけど、それを聞かせてくれればチャラでいいっすよ?」

 能乃の申し出にまひるは苦笑いを浮かべながら小さく首を振る。


「そんなんじゃないよ。ただ休みがどうだったか聞かれただけだから」

「なーんだ、残念っす。まあ、この話は後で詳しく聴かせてもらうっすけどー」

 と能乃はテーブルに突っ伏しながら言った。


 そんな能乃を見てまひるとやぶきはクスクスと笑ったのだった。そしてコーヒーを飲みながら三人で他愛ない話をしているうちにいつの間にか始業の時間となった。


挿絵(By みてみん)

『超次元電神ダイタニア』

 第三十八話「リロード」



 午前午後と時間を忘れて集中して仕事をこなしたせいか、気付くと溜まっていた仕事の大半を消化し就業時間となっていた。

 まひるは椅子に座りながら一つ大きな伸びをした。


「ん…んーーー……ッ!」

 背筋を伸ばしたせいで余計に大きな胸が強調される。そこに


「わお…相川先輩、ナイスバスト」

 突然能乃に声を掛けられ咄嗟に前屈みに両腕で胸を隠すまひる。


「な、な……ッ」

 顔を真っ赤にしてまひるは能乃を睨み付けた。能乃は楽しそうに笑っている。


「あれ?そんな格好で睨まれるとなんかこっちまでドキドキしちゃうっすね?」

 能乃はワザとらしく胸を両腕で隠しながらまひるに言った。


「ちょ、ちょっとやめてよののちゃん!」

 恥ずかしそうにもじもじするまひるを見て、能乃はますます調子に乗った。

「相川先輩可愛いっすねー」と言いながら能乃が近寄ると今度は能乃の後ろからやぶきがその襟を掴み能乃を制止させる。


「さあさ、ふざけてないで帰りますよ?ののちゃんは残業してくのかしら?」

 やぶきがニコニコと能乃に問うと

「あ、すみません。すぐ帰ります」

 と言って能乃は慌ててパソコンをシャットダウンし帰り支度を始めたのだった。そんな能乃を横目に見ながらやぶきはフフっと笑い、まひるは少し恥ずかしそうに頬を染めたのだった。



 帰宅途中、スーパーに寄り、まひるは晩御飯の買い出しをする。

「今日は何にしようかな?」

 まひるは買い物籠を持ちながらあれもこれもと必要そうな食材を次々に籠へと入れていく。


「あ、卵も買ってこ!みんなオムライス好きだし結構使うからね!ねえアース、今夜は――」

 そこまで言うとまひるは自分が発した言葉に違和感を感じ口を噤んだ。


「……みんなって、誰のことよ…?何だか今日のあたし、変だな」

 まひるは苦笑しながらも卵を籠に入れてレジへと並んだ。


「ありがとうございましたー!」

 会計を終え、食材が入ったエコバッグを両手に持って店を出ると空はオレンジと紫の混じったような夕焼け空だった。


 それを観たまひるは「綺麗」と思うも、どこかいつもより心が動かされないことに相変わらずの違和感を拭えずにいた。



 自分のアパートに着く。

「ただいまー」と誰もいない部屋に声を掛けるのは普段通りだ。だが、当たり前に返ってこない「おかえりなさい」がないことに、何故だか今日は一抹の寂しさを覚えた。


 着替えをし早速夕飯の支度に取り掛かる。今晩のメニューはオムライスだ。


 先ず、バターで玉ねぎと鶏肉を炒める。鶏肉に火が通ったらそこにご飯を加えさらに炒める。そしてそこにケチャップではなくカレー粉で味付けしご飯とよく混ぜ合わせるのがまひる流だ。

 カレーの風味が食欲をそそり、仕事で疲れた体に元気が戻ってくる。


「美味しそう。いただきます!」

 出来上がったオムライスを見てまひるは微笑むと、スプーンを手に取り一口口に運ぶ。その瞬間、まひるの口の中に幸せが広がる。


(ん!美味しい!やっぱり自分の作った食べ慣れたご飯は美味しいよね)

 久々の仕事終わりに食べる自らの手料理に舌鼓を打ちながら、まひるはオムライスを残さず全て食べきったのだった。


「ごちそうさまでした…」

 両手を合わせたまひるに今日何度目かの違和感がまた襲った。

「あれ……?あたし……やっぱり変だ」

 美味しい食事をして満足したはずなのに、どことない寂しさを感じている。一人暮らしを始めた頃のホームシックにも似た感情……


 食卓に使っていたテーブルを見ると、先程空にした皿や食器がある。何故かその空間にあるべき食器の数が少なく感じるからなのか、いつもよりテーブルも大きく感じられた。


 まひるは自分の部屋を見渡す。いつもと変わらないアパートの部屋。一人暮らしには十分な大きさのソファ。シングルのベッドに小さな食器棚。

 実家に帰省する前と何も変わらない部屋のはずなのに……


「…この部屋、こんなに広かったっけ?」

 と、一人呟いたまひるは妙な胸騒ぎを覚えていた。



「仕事……疲れたのかな?少しゲームでもしようかな?」

 まひるは入浴を済ませ着替えるとソファに沈み込んだ。

 明日も仕事があるので据え置きのゲーム機より、こんな時はサクッと出来るスマホのゲームに限る。

 そう思いまひるは自分のスマホをソファに寝そべりながらいじり始めた。


 課金要素の強いソシャゲは殆どやらない。何だったか、この前まですごくハマって遊んでいたゲームがあったはずだ。

 確かバーチャルエクスペリエンスにも対応してて。でも今日は軽くスマホだけでプレイしよう。


 そう思いながら自分のスマホをいじっていると、『DITANIA』と書かれたアイコンを見付けた。


「ダイタニア……?こんなゲーム入れたっけ?」

 入れた覚えのないゲームのアイコンに、まひるは首を傾げた。


(まあいっか)

 大した意味も無さそうなので、まひるは深く考えずそのアイコンをタップすることなく、その隣のパズルゲームを起動しやり始めた。



 一方、『箱庭』では――


「あハッ!これが新しい鎧かいシルフィ!体の奥から力がみなぎってくるようだよ!」

 ディーネが新しいバトルスーツに身を包み、その湧き出る力に喜び打ち震えた。


「そうですわね。確かに、今までの鎧とは根本的な構造が違うようですわ…」

 ノーミーも新しい鎧に身を包みその違いを実感していた。


 サラもいつもの着物姿から今は戦闘時のバトルスーツへとその身を変身させていた。


「この鎧は、電神(デンジン)に近い造りなのか、シルフィ?どことなく異界の性質を感じるが…」

 サラが自らの纏った鎧に不可解な感想を呟く。


「これは、とても動きやすい」

 今まで着てきたバトルスーツは見た目だけで重かった。しかしこの新しいスーツは見た目も軽いし、それでいてとても防御力が高いようだ。これならかなり長時間戦えそうだとサラは思った。


「あァ!なんだかいつもより調子がいい気がするよ!さすがシルフィ!最終戦前にしっかり士気を上げてくれるね!」

 ディーネは嬉々として新しい鎧を着こなし、軽快な動きを見せる。


「わたくしもですわ!いつもの鎧よりとても軽く、機動性に優れている気がしますわ!」

 ノーミーもその見た目にそぐわないパワフルな動きで新たなバトルスーツを試す。


SANY(サニー)からの贈り物です。私たちの脅威となる相手は少ないですが、それでも相手はこのダイタニアを創った地球人です。気を引き締めて行きましょう」

 シルフィも新たな装いでどこか誇らしげに胸を張った。


「うむ。今回の戦は一筋縄ではいかぬだろうからな……しかし、我のこの力で、みなを護り通し、勝たせてみせる!」

 サラの言葉に呼応しその身を鎧で輝かせるディーネ。ノーミーも殊更気合いを入れた発言をした。そして改めて全員の顔を見回すと各々が頷き合い、これから赴く戦場へ目を移したのだった。


「アウマフ無き後、私たちが狙うは向こうの精霊四人と電神三体。それらを打ち倒すことが出来れば『ヘラクレスの柱』の扉を封じている七つの鍵は開き、地球とダイタニアの融合は最終段階に入るでしょう」

 シルフィがダイタニアの未来を見据え、この戦争に賭ける熱い想いを皆に伝えていく。


「風待たちと戦うと同時に、SANYの居城でもあるこの『箱庭』を護らなければなりません。風待のこと、きっとこの『箱庭』とそれを維持する為の要所の三箇所を狙ってくるでしょう。

 これから私たちはそれぞれその場に留まりやって来た風待たちを返り討ちに

 しながら鍵を七つ揃えていくのです」


 シルフィの言葉に全員が頷くと、サラが高らかに声を上げる。

「では行こう!新たな力を携え、我らは『ヘラクレスの柱』の扉を開く!」

 一同がその声に呼応すると一斉に散り散りになって行ったのだった。



 新宿、BREEZE(ブリーズ)――


「要所となるのはこの三つの赤い点、船橋市街、八千代広域公園、印旛沼。この三箇所にある《異界の(くさび)》を絶つ」

 風待(かざまち)が四精霊と流那を前に作戦会議をしている。


「あ、その場所なら私遠足とかで行ったことあるから《瞬間転移(テレポータル)》で行けるわよ?」

 流那が風待の提示した場所を聞き声を掛ける。


「助かる。移動の際はお願いするよ」

 風待はいつもの余裕ある口元に弧を作る。


「今《異界の楔》と表現したけど、その実態は?」

 マリンが風待の言葉の合間合間に質問を挟む。


「《異界の楔》は文字通り、この地球とダイタニアを繋ぐ為の扉みたいなもんだ。その場所は土地その物ではなく、特定の地点でそれが発生している」

 風待の言葉に一同が頷く。


「でもその発生場所ってのが何か悪さをするから、《異界の楔》を壊すことが地球とダイタニアの融合を防ぐことになる、と」

「まあ、そういうことだな。そして恐らく、それらはシルフィたち精霊が護っている」

 風待のその言葉に五人は息を呑む。


「つまり、シルフィたちとの直接対決は避けられないってことだね…」

 マリンが皆の気持ちを代弁するかのように、重い言葉を紡いだ。


「そうだ。その為こちらも最大戦力で行く。手代木さん、アスクルに連絡を取ってくれるか?俺はザコタとそよ君に連絡をする」


「え〜。ようやく親元に返して来たばかりなのに、私たち大人だけでもう少しどうにかならないわけ?」

「今は猫の手でも借りたい状況だ。アスクルは割と上位のプレイヤー、申し訳ないがこれもシルフィたちに対抗するためだ」

 風待の物言いに流那も渋々納得したように頷いた。


「……じゃあ、一応飛鳥ちゃんにも連絡しとくけど、子供に危ない事させるのはやめてよね」


「ああ、可能な限りフォローはする。ではそちらの連絡は頼んだ。作戦概要の説明を続けるぞ」

 風待は説明を再開する。


「こちらは電神使いが四人と君たち精霊が四人。それぞれ一人二組の二人体制(ツーマンセル)で行く。制覇していく順はここ新宿から直線上にある船橋市街、八千代公園、印旛沼の順で《異界の楔》と向こうの精霊を撃退していく。三つの紅点をクリアーすれば残り二つの黄色い点のどちらかにSANYが出現する可能性が高い。ダイタニアと地球との繋がりが薄くなるからな。SANYが表出したところで相川さんに《繋がる想い》を使ってもらいダイタニアに復帰してもらう。そうすれば彼女の電神も使える様になり形勢は大分俺たちに有利になる」


「で、そのSANYが姿を現したところを倒せば地球とダイタニアの融合は止まるの?」

 流那が風待に質問をぶつける。


「ああ、恐らくね。ダイタニアを制御し生成しているのはSANYだ。そのSANYの動きを止められれば、元の地球とゲームの世界のダイタニアに戻るだろう」


「…じゃあ、SANYを倒したその時、この子たちも消えちゃうってこと?」

 流那はマリンたちの方に向き直り、伏し目がちにそう問い掛けた。


「…恐らく、な」

 風待はそう短く答える。


 マリンは流那の肩に手をやり

「流那?僕たちは消えるんじゃない。元いた世界に戻るだけだよ。悲しいことじゃないんだ」

 と、諭すように語り掛ける。


「あんた……」

 流那はマリンの手をそっと退けると、再び俯いてしまった。

 そんな二人を見ながら風待が続ける。


「じゃあ、もう一つ伝えておくことがある」

 その言葉にハッと顔を上げる流那に風待は言葉を続ける。


「精霊の君たちにそれぞれ相川さんの電神のレプリカを託す。これにより君たちは一時的に電神の能力を使えるようになるはずだ」


「え!?電神の制御プログラムはSANYに握られてるんじゃ?」

 風待のその言葉に直ぐ様マリンが反応する。


「このプログラムは本物ではない。追加のパッチだ。だが一時的に俺たちの制御下における」


「僕たちが、アウマフを……」

 突拍子もない展開に皆驚きを隠せない。


「そうだ。このプログラムでは元々のアウマフの性能を十分には引き出せない。アウマフの一番の強みでもある臨機応変な四属性それぞれの形態への変形はオミットされている。それにメインパイロットの相川さんが居ない状態だ。電神の出力は通常の半分くらいには落ちると思ってくれ」


「アウマフの本来の力を発揮できないということですか?」

 アースが風待にその真意を問うた。


「そうだ。君たちの力を最大限発揮できる状態ではなくなる。それでも、少しでも君たちの力になってくれればと、開発していた」


「……それでも、あたしたちはアウマフに乗るよ!アウマフはまひるちゃんとあたしたちの絆なんだッ!」

 ファイアはそう言って力強く頷いた。


「まひるちゃんと今までずっと乗ってきたんだもん。きっと何とかなるよ!」

 ウィンドも明るく笑いながらそう言った。


「フッ、みんな、いい顔になったな。手代木さんが暗い顔の君たちをこぞって連れて来た時はどうなることかと思ったぜ!?」

 少し戯けて風待が皆に言う。


「じゃあ、あとは二組を振り分けだな。なるべく同じ属性で組み、対極になる属性の敵とは当たらないように。俺とマリン君、手代木さんとアース君、アスクルとファイア君、ザコタたちとウィンド君で組む。攻略の順番は船橋市街、八千代公園、印旛沼だ!作戦は全員が揃い次第決行する」

 一同が頷く中、流那だけはまだ少し下を向いていた……

 そんな流那に風待が声をかける。


「最後に言っておくことがあった」

 その言葉に全員が反応し、彼に注目する。


「俺が絶対に悲しみのない世界を作ってみせる!だから、理不尽な物事やぶつけどころの分からない怒りは全て俺が引き受けてやる!君たちは君たちの輝かしい未来のためだけに闘ってくれ!」

「「「「はいッ!!」」」」

 威勢よく返事する四人に満足そうに頷くと、風待は最後に流那の方を向いた。


「……まったく。それこそ勝手な言いぶんよ…」

 流那が風待に向き直りその顔を真っ直ぐ見据えて言い放つ。流那の顔には自信に溢れた笑みが浮かんでいた。


「言われるまでもなく、私は端からそのつもり!私は私の為にしか動かない!手代木流那を安く見ないことねッ!!」

【次回予告】


[やぶき]

わぁ、ののちゃん!まさか私たちにも

この大役が回ってくるなんてね!?

[能乃]

早乙女先輩、そう思うなら

ちゃんと次回予告してくださいよー。

[やぶき]

あ!いけない!

じゃあ、いっせーので行くよののちゃん!

いっ――


次回『超次元電神ダイタニア』


 第三十九話「家族」


風子ちゃん、また遊びに来てくれないっすかね…

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