第二十一話「交差する情念」
風待は自分の目と耳を疑った。
先程まで大きな喜怒哀楽を示さなかった眼の前の相手が、急にその声と顔に柔らかな笑みを浮かべたからだ。
それだけではない。彼女は今自分のことを名前で呼んだ。それはつまり
「…お前、まさか……!」
そう言って彼女の顔をまじまじと見詰めると
「うっ!」
シルフィはまた頭を押さえ苦しみだす。
「おいっ!どうしたんだ!?」
コクピットから降り、慌てて駆け寄るも、シルフィは片手でそれを制止し
「近寄らないで下さいッ!」
と苦しそうな表情で呟いた。しかし明らかに様子がおかしい。
「あなたを見てると、気分が悪くなります…」
シルフィは元の口調と表情に戻っていた。
(頭が痛い…この男の顔を見た時からだ……それに、先程自分の意思に反して私は何かを口ずさんだ…あれは一体……?)
シルフィは後退りをしながらアルコルのコクピットへと戻り、操縦席にもたれ掛かった。
「…私を討つなら、今かも知れませんよ?」
シルフィは肩で息をしながら風待に向け尚も強がる。
風待はまだコクピットには戻らず、アルコルの目の前にいた。
「そういう君こそ、俺を仕留めるなら電神から降りてる今この時かも知れないぜ?」
風待は余裕の姿勢を崩さず言う。
「シルフィと言ったな?俺のことを何か知っているのか?」
風待はシルフィに質問した。
「……ええ、知っていますよ。あなたはとても強いということ。そして、今日ここで私を取り逃がしたことを必ず後悔するということを…!」
シルフィはそう吐き捨てるとアルコルのコクピットハッチを閉じ、体勢は斜めのままホバーを吹かし、風待から遠ざかって行く。
『皆さん、今日のところは撤退です。電神を粒子に戻し、私の下へ…』
シルフィが言うと、ノーミーたち三人は素直に従う。
そしてアルコルのコクピット内に四人が揃う。
そこには先程風待に電神を大破させられたサラの姿もあった。
「サラ、無事ですね?」
シルフィが訊く。
「ああ…なんとか。ヴォルシオンは数日は喚べないだろうが」
サラも安堵の表情を浮かべる。
「サラ、よかったぁ〜」
ノーミーは心底安心したようだった。
「さあ、戻りましょうか。我々の居城『箱庭』へ。ダイタニアを救う為にも、一時退き、作戦を立て直しましょう。未だ我々の優位は変わりありません」
そう言って、シルフィは機体を転送させた。
『超次元電神ダイタニア』
第二十一話「交差する情念」
その場に残された風待は、ダイテンマオーを粒子に戻し、サングラスを掛け直す。
そして自らの城、BREEZEのビルへと戻るべく歩き出す。
「…………」
だがその足取りは重い。
それはまひるたちが心配だからではない。
彼は今、悩んでいた。
「……ふぅむ……」
顎に手を当てて考える風待だったが、
「う~ん、糖分が足らんッ!その辺で何か食ってくか。丁度贔屓の店の前だしな」
そんなことを言いながら、近くのオムライス専門店へと入って行った。
昼時ということもあり、店内は割りと混み合っていた。
風待は入口に出迎えに来たウェイトレスの娘に声を掛ける。
「一人だけど、入れるかな?」
「すみません、二人なんですけど」
すると、隣にいたらしいカップルの男の声と被ってしまった。
「お!?」
風待は一つ声を漏らし、その声の方に顔を向ける。
高校生くらいの目力のある少年と、それよりは少し年上に見えるスラッとした長身の少女がそこにはいた。
(んッ!?んん〜………?)
風待はその少年と少女の顔を交互に見ながら何か思案している。
(こんなこともあるんだなあ…手間が省けた)
「あ、先どうぞ…」
少年から先にそう声を掛けられた。
風待は何かを考えながらニヤッと笑ってその少年に言った。
「初めまして。俺は風待。飯食った後、ちょっと付き合えるかい、ザコタ君?」
少年は目を見開き、驚いた様子で
「風待ッ!?風待進次郎ッ!?」
と叫んだ。
「ん。俺のことを知ってるようだな。まあ、まずは飯食ってからだ!お姉さん、こちらのお二人を先に」
「かしこまりました。では二名様、テーブル席へご案内します」
風待は近くに来ていたウェイトレスにそう声を掛ける。
「ちょっ!」
少年は慌てていた。
「大丈夫だ。俺は消えたりしやしない。俺も積もる話がある。まずは飯を食わせてくれ。ほら、彼女も不安気にしてるぞ?男ならちゃんとエスコートしてやれ?」
そう言って、風待は少年と少女を席に促した。
「ッ!………」
ザコタは渋々黙って彼女と共にウェイトレスに着いて行く。
「一名様、こちらへどうぞ」
他のウェイトレスが風待ちにも声を掛ける。
「ああ」
風待はザコタたちの姿を微笑みながら見つめていた。
案内された席に着くなり
「いつものを頂こう」
「かしこまりました。いつもありがとうございます!」
ウェイトレスも慣れた対応で直ぐにオーダーを完了させた。
ザコタとそよも、案内された席に着き、メニューに目を向けていた。
「う~ん…どれにしようかなあ……」
そよは真剣な眼差しでメニューを睨んでいる。
ザコタはまだ風待のことを考えながら
(風待進次郎…!これは偶然なのか?)
難しい顔をしていたザコタに、そよが声を掛ける。
「進一くん?さっきの人も言ってたけど、まずはお昼にしよ?他の事考えてるとご飯美味しくないよ?」
そよは微笑みながらメニューをザコタに差し出す。
「あ、ああ。済まない。そうだな…」
ザコタはそよに向き直り、メニューに目を向け、注文するものを選び始めた。
「食べる時は食べることに集中。俺がいつも言っていることなのにな。まさかそよに注意されるとは」
ザコタはそよを見ながらそう笑顔で返した。
食事を終えたザコタとそよは満足気に席を立つ。
「美味しかったです!進一くんご馳走様です」
そよがザコタに笑顔で頭を下げる。
「ああ。確かに美味かったな。俺が知ってるオムライスとはまた別の美味さがあったというか…」
ザコタも食事の余韻に浸りながら、そよの言葉に返す。
ザコタたちが会計のためにレジに向かうとそこに先程の、自分のことを風待と言った男がニヤつきながらこちらを見ていた。
「ここのオムライス、美味いだろう?俺のお気に入りなんだ。あ、お会計、二人も一緒ね」
風待はそう言って、ザコタたちの静止をよそに、さっさと会計を済ませてしまった。
「さて、君たちも俺を訪ねて来てくれたのかな?俺からも話しがあるんだが、食後のコーヒーはウチで出させて頂いてもいいかい?」
風待が穏やかに提案してきた。
ザコタとそよはお互いに顔を見合わせ、無言で頷き合い、
「はい。いいですよ。あと、ご馳走様、です…」
とザコタが言った。
風待はニヤリと笑い、
「そう来なくちゃな!さあ、こっちだ!」
そう言って、二人を案内し、歩き出した。
(この男、何者なんだ……!?)
(進一くん……?)
ザコタもそよも不安げに互いを見つめ合ったが、やがて意を決したように風待の後ろを付いていったのだった。
「さあ、着いたぜ!」
そう言って風待は、とあるビルの前で立ち止まった。
「ここは?」
ザコタが問うと、風待は振り返り、笑顔で答える。
「ここ?俺の家であり、『ダイタニア』の制作会社BREEZEのオフィスさ。さあ中に入ってくれ」
そう言われてザコタは、その建物の中へと案内されるのだった。
(この男……!自分の仕事場に俺たちを連れてくるなんて!何を考えているんだ!?)
そんなザコタの心の声が聞こえたかのように、風待はニヤリと笑って告げた。
「まあそう緊張しなさんな。これから君たちに大事な話があるんだ。君たちも俺に聴きたい事があってここまで来たんだろう?」
風待はそう言いながら、オフィスの中に入っていく。
それを見て、ザコタとそよも慌てて後を追った。
(俺たちを罠にでも嵌めるつもりなのか……!?だとしたら何としてもこの場を切り抜けなければ……!)
「そこのソファにでも掛けてくれ。今コーヒーを淹れよう」
そう言って案内された部屋は、会議室にしては堅苦しくなく、リビングと言うには整然としていてお洒落な空間だった。
そよも物珍しそうにキョロキョロと部屋の中を見回している。
風待は奥の給湯室でどうやら本当にコーヒーを用意してくれているようだ。
「楽にしててくれ。ああ、今朝まで客人が来ていてね。君も知っている人だ。相川まひるさん」
「ッ!相川まひる!?」
ザコタは驚きの声を上げ、そよはビクッと身体を震わせた。
「な?興味出て来たろう?手代木流那君も居たぞ?」
「てし、ろ…?ソレは知らない…」
「そうか……」
「まあいい。君たちが俺を訪ねてきたからこうして話しているわけだが、俺も君たちに同様に訊きたいと思っていることがあるわけさ」
そう言って風待はザコタとそよの前にコーヒーカップを置き、向かい合わせに座る。
「……相川まひる、さんは、確かに俺たちの知り合いです。が、何故あなたが知ってるんです?」
ザコタは警戒心を強めながら聞く。
「彼女たちも俺に聴きたい事があってここまで来た。今のこの現状や、今後の指針についてなど、お互い有意義な情報交換が出来たよ」
そう言って、風待はコーヒーを傾ける。
「…あなたは一体何者なんです?その…俺たちに訊きたいことって?」
ザコタが不安そうにしながら問いかけると、風待は静かにコーヒーを一口飲む。そして大きく息を吐くと語り出した。
「うん。まずは君たちが訊きたい事から答えよう。俺の話しは少し長くなりそうだからね。いいかい?」
風待がそう言うと、ザコタはコクリと頷いて答えた。
「…分かりました」
隣に座っているそよの顔を一瞥すると、ザコタは風待に向き直り話し始めた。
「俺たちは風幸寺って寺の爺さんに言われて、何かあれば新宿にいる風待って人を訪ねろと言われたんだ。別に何かあったわけじゃなかったが、夏休みに旅に出て来いと言われ、特に目的もなかったからあなたに会うことを最初の目的にした…」
「そう、か。親父さんは相変わらず豪快な人だ。でもまあ、あの人らしい」
風待は懐かしそうに笑い、コーヒーを啜って一息つく。
「俺が訊きたいのはそこなんだ!何で爺とダイタニアの開発者のあんたが知り合いなんだ!?」
ザコタは身を乗り出して問い詰める。
そよがそれを見て驚いてビクッとする。
「ん、あぁ。俺とあの寺の住職は古い知り合いでね。この会社がまだ駆け出しの頃からのスポンサーの一つだ」
「寺が?スポンサー!?」
ザコタがそう呟く。
そよは状況が分からないので2人の顔色を伺うだけだ。
(何か凄い会話をしてる気がする…!邪魔だけはしないようにしないと!)
そんなことを思いつつ、真剣な眼差しで2人を見つめる。
「ああ、この会社は俺が作った。その縁でな。個人の弱小ソフトウェア会社だったからな、知り合いという知り合いに掛け合ってスポンサーになってもらっている」
風待はコーヒーカップを傾けて、話を続ける。
「それと、まだ君たちにちゃんと名乗っちゃあいなかったよな?改めて自己紹介をしようじゃないか」
風待は姿勢を正し、ザコタとそよを見る。
「あっ!驚くことばかりで忘れてました!ごめんなさい」
そよがとっさに口に手を当て思い出し、謝る。
「俺の名前は風待進次郎。この会社の代表取締役をしている者さ。そして、ご存知の通り『ダイタニア』の開発者でもある。ゲーム内のプレイヤーネームはブリーズ」
「…迫田進一、高一。ゲーマー。ダイタニアではザコタって名前でアサシン系クラスでプレイしていたが、最近ファイター系に転職したばかり。風幸寺の住職の爺さんが里親です…」
ザコタは簡潔にまとめて自分のことを話した。その様子を風待は笑顔で眺めている。
「私はそよです。ダイタニアから来ました!風の精霊として進一くんのお供をさせてもらってます」
そよが元気よく自己紹介をする。
風待の表情に一瞬驚きが見えた。
「君は、精霊なのかい?」
風待はそよに質問した。
「はい!進一くんのご褒美として私がプレゼントされました!」
そよは胸を張って言う。
「そうか……」
すると風待は何かを考え込むように黙ってしまった。が、直ぐに二人に向き直り
「ザコタ君とそよ君だな。紹介ありがとう。さて、他にも訊きたいことがあるだろう?相川さんたちに話したことも伝えておきたい。お互いに情報交換といこうじゃないか」
風待は二人に礼を言って話しかける。
「はい!よろしくお願いします!」
そよは元気よく返事をする。
ザコタもそれに続いて「よろしくお願いします」と言った。
三人はお互いに情報交換を始めた。
風待はザコタの事情を説明されて、何かを察したような表情を浮かべ、ザコタたちはまひるたちと話したというスケールの大きな話しに驚愕した。
「…地球が、ダイタニアに…!?」
ザコタは流石に驚きを隠せなかった。
「私、どうなっちゃうんでしょう?」
そよは頭にハテナマークを浮かべながらキョトンとする。
「そうだ。SANY側の連中に今日初めて会ったが、中々肝が座った連中だった。あれは、やるぞ…」
風待がどこか確信めいた様子で話す。
「この地球がダイタニアになったら、その世界に抵抗する力を持たない一般人は新たな権力により統治されるのか、それとも、駆逐されるのか…SANYに会って聞き出さない限り解らなそうだがね」
風待はコーヒーカップを口につけた。
「あの、ひとつ気になったことが…」
ザコタが風待に質問する。
「ん、なんだい?」
「もし、そうなったら爺さんや兄弟子たちの日常が危ないってのは何となく解った。でも、元々ダイタニアから来たそよはどうなるんだッ!?そよッ!そうなったらもう一緒にいられなくなるのか!?」
ザコタはそよに向き直り慌てて質問する。
「ちょっと、ちょっと待って!進一くん!落ち着いてー!」
そよも急な質問に驚きながらも、いつものおっとりした調子で答える。
「えーっとね、私は元々精霊さんだから、ダイタニアに戻るだけだよ?今のこの姿のままいられるのか、それとも元の姿形のない存在に戻るのか、私にも分からない。でも、こっちの世界には進一くんがいるし、出来たらこのままの姿でいたいな…」
そよは、そう答えて恥ずかしそうに顔を下に向けた。
「そよ……」
ザコタはそよの答えに納得がいかず、複雑な表情を浮かべる。風待はその様子を黙って見つめていた。しかし、急に椅子から立ち上がると、
「さぁ二人とも、小難しい話ばかりで疲れたろう?ほら、甘い物でも食べて頭の疲れを取るといい!」
そう言って風待は二人に茶菓子を勧めた。そよとザコタはありがとうございます、と言ってそれを食べる。
「甘くて美味しいです!」
そよが嬉しそうに声を上げる。
風待がその様子を見て微笑みながらザコタの隣まで来た。
「…良い子だな」
「ぶッ!?」
ザコタは思わず飲んでたコーヒーを吹く。
「なッ、なななに言ってッ!?……風待、さん?」
ザコタは驚きながら、風待に声をかける。
「君がそよ君を大切にしているのが良く分かった」
風待は優しい口調でザコタに話しかける。
「そ、それは、俺は爺さんに……」
ザコタは赤面しながらしどろもどろで話す。風待はそんなザコタの様子を見て、更に言葉を続けた。
「君に折り入って頼みがある。少しの間だけそよ君と二人で話しをさせてくれないか?」
風待は真剣な眼差しでザコタに言う。
「あ、ああ……別に、俺が決めることでもないし…」
ザコタは戸惑ったように返事をする。
「そうか」
風待はやれやれと言った感じでザコタを見やる。そしてそよに
「そよ君。少し二人で話しをさせてもらってもいいかい?」
そよはザコタを一瞥する。それにザコタが無言で頷き返した。
「じゃあ、済まんがザコタ君。少しだけそよ君を借りるよ。適当にくつろいでいてくれ」
そう言いながら、風待はそよを連れて隣のミーティングルームに向かった。
風待は椅子を引き、そよに着席を促す。そよはそこに座り、風待ちとは対面になるような形となった。
「風待さん、お話しって……?」
部屋に入ると、そよが不安そうに尋ねる。
「ふむ……何から話したらいいものか。正直今日の俺は少し混乱していてね。君と冷静なまま話せるかどうか…」
風待は困ったように頭を掻くと、そのままサングラスを外した。
「えっ!」
そよが風待の素顔を見るなり驚きの声を上げた。そよはその顔をまじまじと見つめながら、
「…進一、くん?」
と小さく呟いた。
――場所は変わり、千葉県風幸寺。
あたしたち六人はまだこの寺にいた。
風待さんの《瞬間転移》でお寺の境内に飛ばされ、もしかしたらここが風待さんのご実家かも知れないとマリンが言い、折角だからと、その真意を確かめようとあたしたちは本堂の隣にあった一軒家の玄関の前にいた。
「…本当に、行くの?」
あたしがインターホンを押すのに戸惑っていると、隣にいたルナさんが
「えぇいッ!ここまで来て行かないでかッ!」
ピンポーン。
勢いよくインターホンを押した。相変わらず行動力があるなぁ。
「はーい」家の中から声がする。
玄関のドアが開き、白髪を短く丸めたおじさんが出て来た。
「こ、こんにちはッ!あの、あたしたち近くまで来た者ですが」
あたしがしどろもどろに挨拶をしようとするが、おじさんは怪訝な顔をして
「君たち、もしかして……あのゲームをしている子たちかいッ!?」
と、興奮した様子でいきなり聞いてきた。
「えっ?」
あたしたちが困惑していると、おじさんは続けて
「さっき息子から連絡があってな。もし女の子の団体が見えたら迎え入れてあげて欲しいとな。さ、上がった上がった!」
え!?息子?じゃあやっぱりこの人は風待さんの?え?戦闘中にハンズフリーで電話したの!?余裕ありすぎ!
少し混乱しているあたしに変わり、マリンが前に出て挨拶をする。
「初めまして。僕は万理。僕たちは風待氏に助けられここまで来ました。同じゲーム仲間と思って頂いて構いません。突然の来訪失礼しました」
マリンが小さく会釈をする。それに倣いみんなも軽く頭を下げた。
「風待?ああ、あいつの芸名か!」
おじさんは納得したように手を叩く。
「芸名?」
その言葉にマリンがすかさず飛び付く。
「芸名、というのとは少し違うのか?ペンネーム?義名、と言えばいいのかのう?君たちが言う風待ってのは風待進次郎のことじゃろう?」
「ええ。そうです」
マリンの瞳が輝きに満ちている。
「その風待ってのは、うちの息子の義名での。本名を迫田進一と言う。聞いとらんかの?」
「えッ!?迫田進一!?」
あたしは突然出てきた聞き覚えのある名前に驚き、大きな声を上げてしまった。
「まひるん、知ってるの?」
ルナがきょとんとした顔で聞いてくる。
「え、あ、うん……知り合い、というか……」
あたしはみんなの顔を見渡す。流石に予想外の名前が出てきたことに、みんな驚いたようだ。
「…えっと、これは面白い、いや、興味深い展開になってきたね…」
マリンは好奇心を隠しきれず、困惑しながらもその顔は笑顔だ。
「二週間程前に、ここにもう一人の迫田進一と名乗る少年がいたんじゃ。その辺りも息子からは君たちに全て話して構わないと言われておる。儂も全てを知るわけじゃないが、知ってることはお教えしよう」
おじさんは人の良さそうな顔でニコッと笑ってそう言ってくれた。
「おっと、まだ名乗ってなかったな。儂は進一の父親、迫田源信。いつも馬鹿息子が世話になってます」
【次回予告】
[まひる]
何だか最近主人公のあたしの出番が少ない気がするけど、気のせいだよね!?
新宿ではザコタ君とそよちゃんに、
お寺ではあたしたちに真実が告げられる!
次回!『超次元電神ダイタニア』!
第二十二話「ザコタとそよ」
え!?ザコタ君、いつの間にッ!?
――――achievement[合流]
※風待とザコタが合流した。
[Data08:進一とそよ⑤]がUnlockされました。




