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超次元電神ダイタニア  作者: マガミユウ
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第十一話「旅立ちの日」

【登場キャラクター紹介】

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

 月曜日の帰宅時に強襲されたあたしは、その後、再度誰かに戦いを挑まれることなく金曜日を迎えた。


 火曜日はファイア、水曜日はマリン、木曜日はアースがそれぞれあたしの仕事に付いてきてくれた。

 みんなそれぞれあたしの職場や仕事風景を見て色々な感想や意見を話しては、慌ただしく日々は過ぎていった。


 そして、今日の金曜日は一巡周ってウィンドが仕事に付いてくると言い出した。

「まひるお姉ちゃん!今日はウィンドがお仕事に付いてく日だよ!」

 そう言ってウィンクしてみせるウィンドは、昨日の晩御飯の時に決めた通りあたしの出勤時間に合わせて起きてきた。


 ウィンドがあたしの顔を見たままニコニコしている。

「ん?あたしの顔に何か付いてる?」

「ううん」

「じゃあなんでそんなに見てるのよ?」

「だって、お仕事に行くときのまひるお姉ちゃん、お家に居るときと違ってキレイなんだもん!」

 ウィンドが相変わらずの満面の笑みで応える。


「なっ…!?」

 あたしは突然の褒め言葉に動揺した。


「何を言うのよ、もう…ウィンドったら…」

 あたしは頬が熱くなるのを感じながら呟いた。


「そりゃ、普段は髪もセットしてないし、メイクもしないし、普段着はパーカーばかりだけどさ…」

 自分で言っといてちょっと凹んだ。


 でも、ウィンドは全然気にしていないみたいだ。

「んーん。そういうことじゃないんだけどね。なんかこう、いつもと違う感じがして新鮮っていうか……とにかくまひるお姉ちゃんが格好良く見えるの!」

 ウィンドが両手を胸の前で握りしめ力説する。


「そっかぁ。ありがとう。ところで今日の風子(ふうこ)ちゃんは大人しくしてられるのかな?」

 あたしは少し戯けて言うもウィンドは


「大丈夫だよ。やぶきお姉ちゃんとののちゃんと一緒にお昼食べるまではおとなしくしてるよ!」

 と屈託なく言い放つ。


「四人でお昼食べることは確定なのね?」

 あたしは苦笑いしながら言った。


挿絵(By みてみん)

『超次元電神ダイタニア』

 第十一話「旅立ちの日」



 今日は七月二十一日の金曜日。

『ダイタニア』の《今回のイベント》が始まってから一週間が経とうとしていた。


 あたしたちはこの一週間で、ザコタ君と戦い、ワイバーンを倒し、ルナさんを懲らしめ、二人組の男に襲われたりと様々な出来事があった。


 だが実際のゲームの『ダイタニア』は未だメンテナンス中で、イベントが実は現在続行中なのを知るのは、あたしたち含め、あの時ログイン出来たプレイヤーのみ。


 暫くはSNS上で色々な話題が出ていたが、一週間もすればログアウトする人も多かったのか、ほぼほぼ目立った話題には上がらず“ゲームはメンテナンス継続中”という声で溢れていた。


 そんな中、以前送ったアスクルさんのメッセージに最近になって返事が来た。


【ごきげんようサニーさん。私もまだ『ダイタニア』はログイン中です。でもサニーさんとは現在ゲーム内でお会い出来ない状況が続いています。宜しければ今度リアルでお会いして、現状の異変についての意見交換を兼ねた交流会など如何でしょうか?】


 アスクルさんはあたしと同じ社会人らしく、夏季休暇で子供と東京に出るので良かったらオフで会わないかとメッセージにはあった。


『ダイタニア』では一緒に遊べないけど現実でなら一緒に遊べるって事なのかしら? まぁ現実世界で会うのは少し怖い気がするけれど…


 少しお互いのことについてメッセージでやり取りして分かったことは、アスクルさんは男性で、良かったら娘さんを連れて一緒に会えたら、とのことだった。

 あたしが女性であることも伝えたので、娘さんを連れてくるというのは、もしかしたらあたしに変な気を遣わせない為なのかもしれない。


 あたしは四精霊と相談し“あたしたちも友達と一緒でいいなら”と送信したところ、向こうは快く了承してくれた。



 今日の出社では、あたしも夏季休暇に少し有休を付け足して、ちょっと長めの休みを貰えないか相談しようと思っていた。

 朝一で上司と同僚のやぶき先輩とののちゃんに相談したところ、上司からは


「休みなさい休みなさい!あなたたち若いのに働き過ぎなのよ。若い内は色々遊んだり旅したり、見聞を拡めなさい。結婚して子供でも出来たらそんな時間中々取れなくなっちゃうんだから!」

 と女性の上司らしいお言葉まで頂いてしまった。


 そして、お昼休みになり、今日もお昼に来ちゃった体で風子とあたしたち四人は近場の喫茶店でランチをしていた。

 流石に今日は社食は避けたよ…


「今日も来たんすね風子ちゃん?」

 ののちゃんが普段はクールな顔を少し崩し、笑顔で風子に言った。


「うん!ののちゃんとやぶきお姉ちゃんとまた一緒にお昼食べたくて来ちゃった!」

 そう言いながら満面の笑みを浮かべる風子。


「風子ちゃんは可愛いわねぇ〜もう」

 とやぶき先輩は風子の頭を撫でている。


「ありがと。やぶきお姉ちゃんとののちゃんも可愛いよ!」

 と言って二人に向かい風子はウィンクをした。


「なんか、この前一緒にお昼させてもらってから、やたらお二人に懐いちゃってさー、あはは」

 あたしが少し引きつった笑顔で言う。

 すると、ののちゃんが


「まぁ良いじゃないっすか。別に減るもんじゃないし。それに、うちらも相川先輩の姪御さんと仲良くなれて嬉しいですし。ねぇ?やぶき先輩?」

 とやぶき先輩に向かって言うと


「えぇ、そうね。私もまひるちゃんの姪っ子ちゃんとお話出来て楽しいですよ。特に風子ちゃんはまひるちゃんみたいに明るくて元気が貰えますし」

 とやぶき先輩が笑顔で返す。


「ほんと!?まひるお姉ちゃんと一緒?」

 と目を輝かせて聞く風子。


「はい。とっても。だからもっと私たちにも甘えて来ても良いんですよ。ね?まひるちゃん?」

 とやぶき先輩があたしの方を向いて聞いてきた。


「そ、そうですね。うん。もっと気軽に接してくれても大丈夫だよ。あはは……」

 とあたしは苦笑いしながら答えた。


 それからはいつも通り、風子があたしら三人に色々質問したりして会話を楽しんでいる。


「あの二人とも、急な有休申請済みませんでした。あと、ありがとう」

 とあたしが二人に頭を下げると


「いいのよぉ。気にしないで。それよりも、風子ちゃんと会わせてくれてありがとう。とっても楽しいわ。若いって良いわね」

 とやぶき先輩が言ってくれて


「自分も全然構わないっすよ。相川先輩の日頃の行いがいいせいっすよきっと」

 と茶化してくるののちゃん。


「で、真夏のロングバケーションということはやっぱり、新しい男すか?」

 とニヤッとして聞いてくるののちゃん。


「違うよ!風子の、えと、四姉妹と一緒にちょっと東京見学と、出来たら帰郷しようかなと思って」

 とあたしが答える。


「へぇ。風子ちゃん、四姉妹なの?」

 やぶき先輩がおっとりと風子に訊く。


 すると風は

「そうなの?」

 とあたしの顔を見て「(ハテナ)」という顔をする。


「そうなの!長女の球子(たまこ)に次女のほむら、三女の万理(まり)に四女の風子の四姉妹!」

 とあたしが咄嗟に言うと


「そうだったんだぁ。じゃあ今度みんなにも会えるかもねぇ」

 とやぶき先輩が笑顔で返す。


(ごめんやぶき先輩!実はこの子たち全員既にお二人には会ってます!)

 と、あたしは心の中で謝罪をした。


「四姉妹引き連れて東京見学とか、賑やかで楽しそうすね〜。たまにはあたしたちとも遊んでくださいよ?相川先輩」

 とまたもや茶化してくるののちゃん。


「うん。もちろんだよ。またみんなで遊びたいね」

 と言うと

「約束っすよ〜?」

 と言ってくれたののちゃん。


 そんなあたしたちのやり取りを見ていた風子が

「…うん。約束……」

 と少しトーンの落ちた声で言ったが、続けて


「約束するよ!ウィンドはまたののちゃんとやぶきお姉ちゃんたちに必ず、必ず会いに来るから!」

 と言い切った。

 そしてウィンドは少し瞳を煌めかせながら続けた。


「…だから、また、風子と遊んでね?」

 と可愛らしいウィンクをしながら言った。


 その風子の表情を見たののちゃんとやぶき先輩は顔を見合わせて微笑んだ。

「そうだね。また一緒に遊ぼう」

「風子ちゃんならいつでも歓迎っすよ」


 ウィンドの瞳を煌めかせたものが、人が言うところの“涙”だと、ウィンド自身が知るのは、もう少し先のことだ…



 職場の了承も得られ、あたしたち五人は東京にある『ダイタニア』の制作会社『BREEZE(ブリーズ)』のあるビルと、そこに居るかも知れない風待(かざまち)進次郎氏を尋ねる計画を練る。


 そして、アスクルさんと娘さんが東京に遊びに来るというので、落ち合う日程を調整している。

 今日はその待ち合わせ場所を四精霊と『東京ガイドマップ』を開きながらワイワイしながら見ている。


 待ち合わせ場所として選ばれたのは秋葉原にある喫茶店『カフェ・オリンポス』。

『BREEZE』がある新宿からはちょっと離れるが、アスクルさんの娘さんの希望で決まった。

 アスクルさん曰く

「娘は可愛いものが好きなんですよ。きっと喜ぶと思います」

 とのことだった。


 そんなこんなで、みんなで見て回りたい所を話し合っていたら、あっと言う間にアスクルさんたちと会う約束をした七月二十九日になり、あたしの夏季休暇も始まった。


 あたしたち五人一行は、二十九日はアスクルさんたちと秋葉原探索、三十日は東京見学し、三十一日に新宿にある『BREEZE』に行き、風待氏に会うという大まかな計画を立てた。

 この間、何度か風待氏にアポを取ろうと制作会社に電話を掛けたが一度も繋がることはなかった。



 そうして今に至る。

 アパートから最寄りの駅のホームには、あたしたち五人の姿があった。


 誰でも掛かってこいと言わんばかりに、四人とも新調した服に袖を通している。

 その面持ちもどこか頼もしく見えた。


 あたしたちがいるホームに電車が来て停まる。

 あたしは四人の顔を見渡し


「さあ!楽しい旅にしよう!」

 と元気よく言った。

 四人もそれぞれ元気よく返事をしてくれる。


 あたしたちは電車に乗り、目的の駅に着くまでの間、みんな思い思いの話を楽しんでいた。

「楽しみだね。まひるお姉ちゃん!」

「そうだねぇ。あたしも東京なんて久し振りだからワクワクだよ~」

「自分も初めてのことばかりです。とてもドキドキしています。まひる殿」

「俺はそのゲーセンってところでもっと色々なヤツと戦ってみたいぜ!」

「秋葉原はダイタニアにはない電気を使う物質に溢れていると聞きました。僕も興味がありますね」


 各々がこの二週間余り地球で生活してみて興味を持ったものについて話が盛り上がる。


 アースは料理の腕も大分上達し、あたしが仕事に出てる間などは今ではアースが調理担当になっていた。

 最初は包丁で野菜を切るのにも四苦八苦していたが、最近は手慣れてきたのかスムーズに切ることが出来るようになっていた。


 ウィンドはファッションに興味を持ち、毎日違う服を精製してはお洒落に磨きを掛けている。最近では他の三人のコーディネートも担当するようになっている。

 今日着ている服もガーリーで可愛らしいものだ。


 マリンは相変わらずパソコンで色々と調べ物をしているみたいで、時々キーボードを打つ音が聞こえてくる。

 読書も好きで、あたしの部屋にあった本はあらかた読破してしまったようだ。

 中でも少女漫画は四人の中で大ブームが到来していて、みんなして何度も読み返していた。


 ファイアはテレビゲームにハマったらしく、主に格闘ゲームに熱中するようになった。

 ゲームの腕的にはマリン、ウィンド、ファイア、アースの順で強い。

 格ゲーはあたしもそれ程得意じゃないのでファイアとはいい勝負になることが多くなった。


 何だかんだで、四人とも今の地球フィールドでの生活を楽しんでくれているようで何よりだ。


「みんな、そろそろ着くわよ。忘れ物はない?」

「大丈夫だよ!」

「問題ありません」

「ああ。いつでも行けるぜ」

「はい。ご心配なく」

 電車が目的地で停車し、あたしたちは秋葉原駅のホームへと降り立った。


 駅を出て少し歩くと、目的の建物が見えてきた。

 あたしたちが今いるこの辺りは所謂オタク街と呼ばれる場所であり、その筋の人たちにとっては聖地として崇められている場所である。


 ここに来るのは初めてではないが、やっぱりこうして実際に目の当たりにすると圧倒されるものがある。


「うわぁ~! ここが秋葉原なんだね!」

「すっげーな! こんなに人がいるなんて思わなかったぞ!」

「確かに凄まじい活気ですね。まるでお祭り騒ぎです」

「ふむ…僕には些か刺激的過ぎるようです……」

 各々が感想を漏らす。


 あたしたちはビルのテナントの一つに待ち合わせ場所の『カフェ・オリンポス』の看板を見つけると早速店内に入った。

 店に入ると可愛らしいメイドの格好をしたウェイトレスさん?が出迎えてくれた。


「お帰りなさいませお嬢様!団体様でしょうか?」


「えっと…七人で予約した相川と言いますが……」

 あたしは少し圧倒されて応える。

 あたしにとってもメイド喫茶は初めての体験だった。


「少々お待ち下さい…はい!承っております。こちらへどうぞ!」

 そう言うとウェイトレスさんはあたしたちを席まで案内してくれた。


「あの、あと二人連れが来る予定になってます」

 あたしがウェイトレスさんにそう告げると


「かしこまりました。お帰りになられましたらこちらにお通し致しますね。ではごゆっくりおくつろぎください」と言って去っていった。


 こういった場所に慣れていないあたしは少し気疲れしながらメニュー表を開くとそこには色々な種類のドリンクやケーキの写真が載っていた。

(これはどれも美味しそうだなあ)


 見ると四精霊たちもそれぞれ瞳を輝かせながら店内やメニュー表を覗き込んでいる。

 みんながこんな表情をしてくれるなら、あたしの疲れなぞどうってことない!

 あたしは笑顔でそれらを眺めていた。


 しばらくするとお店の扉が開き、誰かが入ってくる気配がしたのでそちらを振り向く。

 入ってきたのは男女の二人組。


 男の人の方はTシャツにジーンズ姿で眼鏡をかけて髭を生やしたガタイのいい大男。

 女の子は対象的に小柄では上から下まで黒で統一された服装のボブカットの子だった。

 男性の後ろに隠れるようにして付いてきている。


 二人はキョロキョロしながら歩いてきて店員さんの誘導であたしたちのテーブルの前までやってきた。


 そこで二人の視線が止まる。

 男の人の方はあたしを見つめて申し訳無さそうに口を開いた。


「いやぁ、遅れて済みません。サニーさんですね?初めまして。『ダイタニア』ではいつもお世話になってます。アスクルです」

【次回予告】


[まひる]

あたしたちの夏休みが始まった!

初めて会ったリアルのアスクルさん、

連れの黒髪の美少女はもしかして!?


次回!『超次元電神ダイタニア』!


 第十ニ話「アキバの七人」


メイド喫茶にマッチョ旋風!

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