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一緒に頑張っていこうと思います

「せんぱい、この子固まっちゃってますよぉ。怖がらせちゃってるんじゃないですか」

「む、それもそうなの。あれほどの魔法を展開できるからどんなやつかと思ったけど、普通の女の子みたいなの」

「警戒は解かないでね…この子、そうは見えないかも知れないけど、悪魔だから。多分、パリカー」



三人は勝手にカノンを囲んだ後、勝手に解散してカノンの前に立った。

「わたしはデイジー・ティナトなの!氷と炎を混ぜた魔法とこの"レーヴァテイン"で、魔物なんかイチコロなの!」

赤と青のツートンカラーの頭をツインテールで結んだデイジーは、木の棒のような杖を掲げてそう言った。っていうかそれそのへんに落ちてる木の枝だよね、とカノンは思った。あまりにも、魔力の"音"が小さい。

「あの、それただの木の枝だと思います、けど」

「何を言ってるの!これこそが伝説に伝わる禁じられた封印の杖、"レーヴァテイン"なの!」

言うとデイジーは、レーヴァテインとやらをぶるんぶるんと回す。伝説に、伝わるって。それと同じような木の枝、森でいっぱい見たんだけどなあ…とカノンは思う。



「私はルーティ・ルクサント。うちのうるさいのがごめんなさいね、お嬢さん。闇属性魔法と、探知魔法を得意としているわ。ここ一帯の知識には自信があるから、任せて」

デイジーの数十倍は頭の良さそうな人はそう自己紹介する。紫髪のボブカットは、前髪が几帳面に切りそろえられている。杖も先端に魔力があるっぽい玉が付いていて、高そうだ。



「あたしはぁ、リリカ・リューベックって言いますう。最近、光魔法を使えるようになりましたあ。回復なら、私に任せてほしいですぅ」

リリカはそう自己紹介した。金髪のくるくるした頭と、胸につけたデカいボールがぼよんぼよんと揺れる。前の世界に居たら友達一人もできなさそうだなあ、とカノンは思った。浮いた人から叩かれるというのは、女子の社会では常識であった。



「それで、私に一体、何を…?」

カノンは三人の圧に怯えながら、そう言った。

「もちろん、私達のパーティーに入って、一緒にダンジョンを攻略してほしいの!」

カノンは、少し考える。なんか、断れなさそうな雰囲気だけど。私がダンジョンなんかに行ったらほとんどの確率で死ぬでしょ、とカノンは予想していた。でも、この人達が万が一すごい人だったら…けっこう、得するかも知れない。

「ちょっと、考える時間をください」


そう言ってカノンはキーボードの蓋を開くと、三人の「ステータス」を参照する。




デイジー・ティナト


HP 300/300

MP 11980/12000

SP 50/53


スキル


氷炎魔法LV10




ルーティ・ルクサント


HP 430/430

MP 980/980

SP 80/82


スキル


闇魔法LV3

探知魔法LV4

杖LV3




リリカ・リューベック


HP 120/120

MP 700/720

SP 5/7


スキル


光魔法LV2








リリカが極端に弱そうなのは置いといて、ほかは強そうだな、とカノンは思う。たぶん、何らかの事情があるのだろう。ヒーラーが少なくて引っ張りだこだとか。

というか、あのデイジーとやらの魔力は、文字通り桁違いであった。なんだか、いいえと言えば氷炎魔法とやらで跡形もなく消し去られそうだった。


「あ、あはは…頼りになりそうですし、ご一緒させていただきます。ただ、私体力に自信がないので、裏でひっそりと応援する係ってことで…」

「それでいいの!あなたの演奏を聴いた日は、なんだか氷炎魔法の調子がとってもよかったの!」

こんな奇抜な人は投げ銭の列で見てなかったけど、聴いてお金くれなかった人だったのか。と、カノンは少し表情が曇る。

「あ、はい。そうですか。私、カノンっていいます。よろしくおねがいします。職業は、…吟遊詩人です、たぶん」

「『たぶん』?あなた、ギルドで職業登録を済ませてないのかしら。まあ、まだそういう年でもないのかも知れないけど…」

それに対して、このルーティって人は30ドゥカをくれた人だ。カノンは投げ銭をくれた人の顔を、一人残さず覚えている。ファンへの感謝の気持ちを忘れては、アイドルは務まらない。

「そうですね、これから登録したいです!ご一緒してくれますか?」





早速、「ギルド」とやらに向かう。そこには、大小様々の魔族や、色々な武器を持った人間が居た。カノンのように楽器をふよふよと浮かせているようなのは、一人も居なかったが。

「あの、ギルドの新規登録っていうのがしたいんですけど。ここでお願いできますか?」

窓口の順番が回ってくると、パーティーメンバーになるらしい三人同伴でカノンはギルドの人に声をかける。

「はい、こちらで承っています。こちらの水晶玉に、魔力を流し込んでください」

言われるままに、カノンは少しの魔力を水晶玉に流す。

「わぁ、きれいな譜面の魔力ですね。吟遊詩人として、登録させていただきます」

営業スマイルを浮かべながら、ギルドの事務員はそう言った。水晶玉には、五線譜…というより、八線譜?のような模様が、ぐるぐるしていた。この世界の譜面は、やっぱり地球とはちょっと違うらしい。

「では、ギルドカードを印刷しますので、しばらくそちらに掛けてお待ち下さい。『雪解けレーヴァテイン』のお三方と、同じパーティーをご希望でしょうか?」

「そ、そうなりますね…はい、そうです」

パーティー名のセンスがまるで感じられなかったが、仲が悪そうではないというのはカノンにとってプラスのポイントであった。また、カノンは生前孤立しがちだったことから、三人がカノンに好意的な"メロディ"を流していることもパーティー加入をしぶしぶ決めた理由の一つであった。


10分ほどすると、ギルドカードが作られた。名前「カノン・ベネデッティ」と、職業「吟遊詩人」と、「パーティー:雪解けレーヴァテイン」というパーティー名と、「格付けポイント:0」というよくわからない数字と、「パーティー格付けポイント:32032」というすごそうな数字が並んでいた。




「それじゃあ、今日はもう暗いから帰って、明日からダンジョンを破壊して回るの!楽しみなの~」

「デイジー。ダンジョンの中では魔力を抑えなさいって、何回も言ってるでしょ」

「治すのはあたしなんですから~。勘弁してくださいよぉ」

「わかったの。ほどほどに破壊して回るの!明日の、8ティモにこのギルド前に集合なの!」

「ティ、ティモ?」

カノンは、聞いたことのない単語に疑問を覚え、即座に質問する。

「感覚で生きてると、わからないのかしら。一日は30ティモ、それが300日過ぎて一年が終わるの」


カノンは、ここが異世界であるということを忘れていた。一日が、30時間くらいある世界っていうことなのかな…とカノンはしばし頭の中で計算をする。どうりで、外が明るいのに23:00という表示が出るわけだと、カノンはアラームの時間と外の明るさとの違和感に納得する。


「わかりました。8ティモに、ここで。私は『ブルネルスキの家』に戻ります。ではっ」

言うとカノンは、振り返り、早歩きで宿に向かっていく。


「ブルネルスキの家、ですかぁ。あたし達もそういう所に一回泊まってみたいですねぇ」

「お金がないなら仕方ないの。ダンジョンでデカい魔物をふっ飛ばして、素材を売って一儲けすればすぐなの!」

「カノンちゃん…なんだか、申し訳ないことをしたような気がするわ。私が、見守ってあげなきゃ」


三人の思惑はバラバラだが、ダンジョンに行ってお金を稼ぎたい、という思いは一つだった。各自が取った宿に戻り、明日に備えていくのだった。




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