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最終的には仲間になってくれそうだなと思います



デイジーは、普段なら木の枝のように軽快に振り回していたレーヴァテイン・ノヴァを全身の力で支えながら、フェーベを睨みつけていた。デイジーには、やっとの思いで掴んだレーヴァテイン・ノヴァとの一体感を、手放したくないという思いがあった。


「…そう。なら……こちらから行かせて貰うわ」


フェーベは右へ左へフェイントを交えながら、目にも留まらぬ動きでデイジーに迫っていく。


「こっちなの!…くぅ!?」

デイジーのレーヴァテイン・ノヴァは空を切った。その直後、フェーベのレイピアがレーヴァテイン・ノヴァを弾き飛ばし…無防備になったデイジーの腰に、フェーベは手を回した。


「"稽古は終わりでございます、お嬢様"」


デイジーとフェーベの稽古は、フェーベの母国「フォレンティーナ帝国」の言葉によって、終わりを迎えた。

デイジーは突然自分の手元から武器の無くなったことと、聞き覚えのない言葉を浴びせられたことに驚き、ぽかんとしていた。いつの間にか稽古場に集まっていたギャラリーは、固唾を飲んでその現場を見守っていた。

カノンは"調律"の力で、その全部を聞き取ることができた。稽古の最後までかっこいいなあ、とカノンは思った。

外国語も少しかじっていたルーティは、「終わり」というような単語を聞き取ることができていた。デイジーがこれ以上消耗しないらしいということに、ほっと胸を撫で下ろしていた。


「よく頑張ったわ、デイジー。あのフェーベにあそこまでの一撃を当てられるようになるなんて…レーヴァテイン・ノヴァも、ちょっとは成長したようだなって褒めてるわ」

ルーティは我が子の成長を喜ぶような口調でそう言った。偶然か本当にそう聞こえていたかはわからないが、レーヴァテイン・ノヴァの言葉はカノンの耳にも同じように聞こえていた。


「そうね……一日でこれほど成長をするとは、予想外だわ。私も、帝国で稽古を受けてたときのことを思い出しちゃって……師匠側になるって、こんな気分なのね……案外、悪くないかも。あの師匠、今でも勝てるかどうか、わからないなぁ……」

フェーベは、帝国で「師匠」に修行を受けていたことを振り返っていた。帝国にはこれよりも強い人が居るのか…とルーティは戦慄していた。


「あの、ふたりともすごかったです!大変だろうなって思って、差し入れ持ってきました」

カノンはデイジーから離れた所に刺さっていたレーヴァテイン・ノヴァを抜いて、デイジーとフェーベの元に向かう。


「…気が利くね。ありがとう……ギルドの休憩室に行って、みんなで食べようか」

「今日のところは、負けにしておいてやるの。明日も、また相手してくれるの?」

「…ええ。私の方も、いい練習になりそうだから……ここがもう少し頑丈なら、魔法を使ってくれても構わないのだけれど。あいにく、それだとここが穴だらけになりそうね」

「デイジーさんの魔法、すっごいんですよ!ぜったい壊れないって思ってたダンジョンの壁が、くり抜かれちゃったんですから」

「あなた達、ダンジョンに行ってきたの?……この辺りにも出現したって聞いたけれど」


一行は休憩所に入ると、ベス火山ダンジョンでのレーヴァテイン・ノヴァを入手するまでの冒険をフェーベに話していた。フェーベはそれを、興味深そうに、3人の顔を見回しながら聞いていた。


「へぇ…あなた達、魔法使いと吟遊詩人だけってすごくバランス悪いように見えるけれど…協力して、ダンジョンの最奥部にたどり着いて、ドラゴンまで倒してしまうだなんて。あなた達なら…どこまでだって、行けそう……」

「わたしは元々強いけど、カノンの不思議な魔法でとっても調子が良くなって、ドラゴンだって倒せちゃうようになるの!」

デイジーは肉の串を3本ほど平らげると、元気いっぱいという様子でレーヴァテイン・ノヴァを掲げながら、ダンジョンの武勇伝を語っていた。

「それは…すごいね。私もドラゴンに会ったことはあるけれど…攻撃しても攻撃しても、ダメージが通らなくて。全速力で逃げたらなんとかなったけど…倒すことなんて、考えもしなかった」

「そう。私達は四人で一つで、誰にも負けない…かはわからないけれど、すさまじい力になるのよ。私の探知魔法で敵の行動を予測して、ここには居ないけどリリカが何かあった時は回復してくれるの」

ルーティは自分が支えてきたパーティを誇らしげに語る。ルーティは様々な術を使うカノンの加入でより一層安定感の増した「雪解けレーヴァテイン」に、フェーベも加えようと様子を伺っていた。

「ふぅん……パーティ。私は帝国を出てからずっと一人でなんとかなってきたから……だいたいは、めんどくさいって理由で一人でやってきたけど…強い敵を、どーんとやっつけるのにも、憧れる、かも…」

「あの、私っ!人の動きをもっと速くできる魔法を研究していて…これで、フェーベさんの力になれるとおもいます!」

言うとカノンはまだ練習中の「広野を渡る風」を、フェーベを包み込むように"調律"を使い、演奏する。昨日はBPM126の六連符が続くというその楽曲に疲労困憊だった右手は、すっかり回復していた。粒の揃った、激しく、それでいて優しい演奏を繰り広げた。

するとフェーベの周りに風が吹き──"調律"の制御のレベルが上がったのか、テーブルの上のお菓子は微動だにしなかった──フェーベは、不思議な感覚を全身に覚えた。


「体が…軽い。」

「やった!どうですか?これで、フェーベさんのお役に立てますかね?」

カノンは攻撃手段として使う予定だった「広野を渡る風」をフェーベに使ったこと、そもそも「広野を渡る風」は未だに練習途中であったことで非常に緊張していたが、なんとかやり遂げたことで心の中で一息ついていた。


「この状態なら……本当に、誰にも負けないかも。……めんどうだけど、ちょっとだけ、仲間になってもいいって思った」

フェーベが仲間になってくれるかもしれないということで、ルーティの心の中は歓喜に満ち溢れていた。


やっとまともな前衛が、このパーティに入ってくれる……!





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