7 皇妹たちの平和なひと時
前々回と前回がキャラクタ紹介だったので、今回が実質的な2024年初投稿です。
7
「ジェーにゃんがわたしの配下だったらよかったのに…」
「イルミナお姉ちゃん…それ、何回目ですか…」
エリスが侍女たちを連れてイルミナの隠居地であるリオグランデ州を訪れているこの日、畑仕事に従事するジェーニャを見て、イルミナは何度となく繰り返された羨望の言葉を呟く。
ちなみに1回目の時、エリスは
「ジェーニャを私のティーアクライスに加えたのは、イルミナお姉ちゃんのためでもあります。
国家レベルの敵勢力が存在しない今、ノクスお姉ちゃんやリリスの直臣になっても動きづらいだけです。
また、イルミナお姉ちゃんが手に入れた場合、争いの火種になってしまうおそれがあります。
私の配下であれば、いろいろと面倒なことを避けられます」
と言葉を返した。
専属侍女のドリッテやフィアーテ、それにジーベンヴァイゼンであれば特権によって臨機応変に動けるが、女帝の配下や第1皇女の配下でそれより低い地位だと、戦時ではない今、ジェーニャの能力を生かせる場所はあまりない。
イルミナの配下になってもほぼ同じであるほか、"海の支配者"と相性の良い能力を持ったジェーニャがイルミナやその後継者の配下に加わると、それによる戦力の増強がノクスやリリスに"疑われてしまう"かもしれない。
周囲の者が暗躍し、そう仕向けることもありえる。
エリス配下であれば、専属侍女やジーベンヴァイゼンでなくてもいろいろな意味で動きやすく、ジェーニャの能力を存分に生かせる。
だが、エリスの思惑はそれだけではなかった。
「それに…いつかイルミナお姉ちゃんがアビュススから去る時が来ても、必要に応じて私がジェーニャをイルミナお姉ちゃんの所に連れて行く、という風にすれば、イルミナお姉ちゃんに会いに行けるから…」
「エリスちゃんったら、そこまで考えて…」
エリスの言葉を聞くと、イルミナはかわいい妹をぎゅっと抱きしめ、唇や頬に何度もキスをする。
イルミナの頭の中がエリスのことだけでいっぱいになってしまったため、この時はそれ以上ジェーニャについて言われなかったが、やはりイルミナは未練があったようだ。
それでも、イルミナがジェーニャを手に入れるために強引な手段を使うことはなかった。
----
エリスがヒンメルスパラストに帰るまでの間に、彼女はイルミナの第1専属侍女であるフェブラの姿を一度も見かけなかった。
フェブラはイルミナがアビュススから去って以降、頻繁に幼馴染であるユノの元へ通うようになり、この日もユノに会いに行っているため不在だった。
エルステが担うべき任務は第2専属侍女のエイプリと第3専属侍女のフェーベが代行し、第4専属侍女のキルシュはイルミナの護衛が必要な時を除き、上位の専属侍女のように拘束されない立場を利用して度々ヒンメルスパラストに遊びに来ている。
イルミナが引退する前であれば、このような専属侍女たちの動きはありえないことだが、イルミナがすでに隠居して、ヴェルトヴァイト帝国における"扱い"が変わったからこそ許されている。
また、フェブラはイルミナの許可を得た上で独自にティグリ大陸各地の調査を行い、その結果をユノに報告していた。
ただイチャイチャするだけであれば、たとえ幼馴染でも女帝の第1専属侍女と気軽に会うことなどできないが、そういった役割を果たす代わりとして特別に許されている。
女帝の最上位の側近という重責を担ったユノにとって、幼馴染とイチャイチャできる時間は貴重な心休まるひと時だった。
エリスの第2専属侍女クロエとイルミナの第3専属侍女フェーベは生まれた時から付き従う幼馴染に近い存在だが、次代の女帝として育てられたノクスにはそのような侍女がいなかった。
そのため、ノクスはずっと幼馴染たちの親しげな様子を羨ましがっていたが、嫌がらせなどは決してしなかった。
なお、2024年1月14日現在で8話と9話は同時並行で執筆中ですが、本業やプライベートでいろいろよくないことがあったため進捗が芳しくないです。
8話の投稿はとりあえず2月11日頃予定としておきますが、繰り下がる可能性は十分ありますので予めご了承ください。




