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空のエリス  作者: 長部円
第2部 3章
84/98

44 最後の光が潰えた後

予告通り、2部の最終回です。

44


エリスはロロットとデジレをマリーネの援軍として派遣しながら、旧マルテル王国内部および周辺に残っていた人間(アントロポス)たちの小勢力を潰していった。

マリーネによるリオグランデ地方の征服が完了して、ロロットとデジレが帰ってきた頃には小勢力の平定は済んでおり、サンゴ帝国による侵攻に対して必死に抵抗するシエロ王国が、最後に残った人間(アントロポス)の国となった。


シエロ王国はリオグランデ地方がヴェルトヴァイト帝国に奪われてから3年後、王都シダーデ・ヴェルデをサンゴ帝国に攻められ、2か月にわたる籠城戦の末陥落。

王都以外はすでにサンゴ帝国の手に落ちており、サンゴ帝国軍から逃れてきた者全員が王都に押し寄せたため、食糧が予想以上に早く不足するようになり、それが王都の落城を早めた一因となった。

シエロ王国の滅亡によって、事実上ヴェルトヴァイト帝国の傀儡であるテストゥド大陸のチュンヤン王国を除いて、人間(アントロポス)の国は完全にこの世界から姿を消した。


旧マルテル王国領にはノクスの指示でアマージエン島やアヴァロニア大陸、テストゥド大陸からヘーアや文官たちが続々とやってきているが、ノクスのドライヴァイゼンは、ヴェルトヴァイト帝国による統治体制の確立に相当の年月がかかると見込んでいた。

一方、旧シエロ王国のリオグランデ地方はすでにイルミナの配下によってテストゥド大陸のプレヤーデン州と同等の制度が整備され、各種手続きが済めばヴェルトヴァイト帝国領の"リオグランデ州"となる予定である。


エリスはノクスに旧マルテル王国領を引き渡した後、ティグリ大陸に自分の"所領"を持たなかった。

ノクスは"ズーセ・インゼル"を与えるつもりだったが、エリスは固辞。

その代わり、元宰相アデール・ヴィラールをはじめとした旧マルテル王国の人材を多く貰い受けた。


アデールは後にエリスの手でディアボロスにされてアデーレと名を改め、空席だった"フィーアゾイレン"の4人目に就任。

かつて諜報部隊ティーグル・ノワールのリーダーを務めていたペルネル・プティジャンも自ら願い出て、人間(アントロポス)からディアボロスへ姿を変えた。

ユヴェーレンたちの育成・指導を担当しつつ、たまに教え子と共同で諜報任務にあたることもある彼女の、ディアボロスとしての名はペトロネラ。


すでにディアボロスになっている元王女のロロットは、アヴァロン王国の元王女ラヘルと同等に扱われ、ラヘルのほうが年長であることから、ロロットがラヘルを姉のように慕う形で疑似姉妹に近い関係を築いた。

デジレは記憶を代償にして疾風の女神ブリゼアから授かった力によって、"ティーアクライス"のメンバーに匹敵するとの評価を得ていたが、既存メンバーの誰かを外して代わりにデジレをティーアクライスに加える予定はなく、デジレ本人も肩書が立派になることよりも"エリスおねえさま"に尽くすことを無上の喜びとしており、形式的にはある程度の特権を与えられた、専属侍女よりも格下の侍女といった扱いにとどまっている。


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リリスからノクスへ皇位を禅譲する手続きや儀式の日取りが決まった後のある日、エリスはパンゲーアにリリスを訪ねた。

ヴェルトヴァイト帝国の皇帝として働く母の姿を見られる機会はあと何回もないと思ったため、1日リリスと一緒に執務室にいてお手伝いをしたエリス。

そんなエリスの様子を姉2人は何度も見に来る。

たまたまその日にリリスへ書類の決裁をお願いしに来た官僚は執務室で動き回るかわいいエリスの姿に見惚れ、リリスも一緒に見惚れたため、その場だけ見た者に決裁が滞ったのではと思われてしまったが、むしろリリスはそれでやる気を出して事務処理のスピードが上がり、結果的には帝国の政治への影響は皆無だった。


「一軍を率いるほどまで成長したエリスが手伝ってくれて、しかもエリスのかわいいところがたくさん見られてよかったわ…」

「母様に喜んでいただけたのなら、私もうれしいです」

結局、リリスが譲位するまで何度も、この日と同じような光景が執務室で見られることとなった。

最終行は「この日がエリスにとって、女帝リリスを見た最後の機会だった」にしようと思ったこともありましたが、女帝暗殺フラグからの鬱展開っぽくなってしまうため没にしました。


7月に毎週投稿しているので、その分の代休を兼ねて10月の投稿はお休みします。

何事もなければ11月中旬に3部の第1話(もしくはキャラクタまとめ回)を投稿する予定ですが、音沙汰がなかった場合は何かあったとお察しください。

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