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空のエリス  作者: 長部円
第1部 2章
21/98

21 親衛隊の人材確保

21


「エリ…できました…」

メイがやや疲れた様子ながら、満足そうな顔をしてエリスのもとにやってきた。

メイに先導されてエリスとアンネが"とある部屋"に入ると、部屋の中央に置かれたベッドに"1人の女性"が横たわっている。

「"今度は"見た目も問題ないようね…次はアンネが"仕事"をする番よ…」

「はい…」

アンネは緊張した面持ちで女性に近づくと、首筋に咬みついた。


----


エリスがアヴァロン王国の都セントメアリへの侵攻を自身と"デー・クラフト"の初陣と定めたことにより、それに向けた準備が加速していったが、一番の問題は飛行ユニットを使いこなせる"人材"の確保だった。

それほどの人材となると一兵卒として扱うわけにもいかないため、(かね)てから構想のあったエリスの"親衛隊"のメンバーとして処遇することにした。

最終的な選考にはエリスも加わるが、予備選考はドライヴァイゼンに任せている。


それと並行して、人材がいなければ"創ればいい"、ということで、メイとアンネのトイフェライで親衛隊員を"創る"ことになった。

まずは前段階としてメイに小さな人形(プペ)を"創らせた"ところ、エリスそっくりの愛らしい人形が出来上がった。

次に、エリスやメイと同じくらいの身長で、かつエリスそっくりでないものを"創らせた"が、なかなかうまくいかなかった。

「エリそっくりなら確実にうまく"創れる"のですが、最初に"創った"プペと本物のエリとエクレア様以外に、エリそっくりの存在を創るべきではないと思うのです…」

そう言いながら試行錯誤を続けていたメイの"完成品"がベッドの上の"女性"だった。

なお、エリス人形は普段メイの部屋のベッドで、エリスにつきっきりである主の代わりに留守番をしており、たまにメイが帰ってくると、メイにぎゅっと抱かれたり頬擦りされたりしている。


一方、アンネの役目はトイフェライ"ガイスターシュピーレライ"で、メイが創ったプペを動かせる"霊"を"造る"こと。

こちらも、まずは霊だけを試しに造らせて、少しずつ"高性能"な霊に挑戦していった。

霊を身体に憑依させる段階では、眠っているメイの身体に、予め造っておいた霊を憑依させる方法と、首筋に咬みついて傷口から"造りたて"の霊を送り込む方法を実施し、後者のほうがいいという結果を得た。

その際に、霊に憑依されたメイが「アンネさま…」といってアンネに甘えたりちゅーしたりといった、普段は見られない言動をしている様子はエリスを大いに楽しませていた。


----


アンネによって霊を送り込まれたプペはしばらく経ってから瞼を開いた。

漆黒の瞳が、同じ色の瞳で自分を見つめるエリスの顔を認識する。

「"エマ"、私のことがわかるかしら?」

「はい…エリス様…エマの主様です…」

「その通りよ、いい子ね…」

エリスはエマと名付けた、自分と同じくらいの背丈のプペを褒め、黒いセミロングのストレートヘアを撫でた。


----


エマが最初のメンバーとなった戦闘専門の親衛隊"シュヴェンツェ"は、メイとアンネが創ったプペだけでなく、ドライヴァイゼンの選んだディアボロスも少しずつ加わり、戦闘訓練を重ねていった。

メンバーは全員、戦闘の邪魔にならないよう、髪型をポニーテールかツインテールにしている。

「あの子たちのポニテやツインテもかわいいけど、私はメイのポニテが一番好きよ…」

エリスは戦闘訓練を見ながらメイのポニーテールにじゃれつき、メイも大好きなエリスに髪を触られてうれしそう。

そんなエリメイのイチャイチャを見守るロリコンたちが興奮していたことは言うまでもない。


----


ある日、ノクスに呼ばれたエリスがメイとアンネを伴って指定された部屋へ行くと、ノクスとエルステのユノ、それにフィアーテのミネルヴァが待っていた。

「エリス…以前、人間(アントロポス)の女子を一緒に壊す約束をしていたでしょう?

 ようやくそれが叶うのよ…。

 そのために、ユノが前線まで行って、"グナーデ"持ちの双子ちゃんを手に入れてきてくれたの…」


ノクスが先導して全員が隣の部屋へ移動すると、そこには双子らしく体毛と瞳の色以外そっくりな2人の人間(アントロポス)が拘束されていた。

1人は黒髪で瞳の色はマゼンタ、もう1人は青みがかった黒髪で瞳の色は水色(ヘルブラウ)だが、2人ともその目は虚ろでどこにも焦点があっていない。

「双子ちゃんはユノのトイフェライ"トラウム"によって、目を開けたまま眠っているのよ。

 それでも、万が一目を覚ましてしまった時に備えて拘束しているの。

 まずは私が…黒髪の姉のほうをやるから、やり方を見ておきなさい」

「はい、ノクスお姉ちゃん」

「ところで、私が先に姉のほうを選んでしまったけど、エリスもこっちのほうがよかった?」

「いいえ、どちらかと言えば…イルミナお姉ちゃんに少し似てる妹のほうが好みだったので、ノクスお姉ちゃんが先に選んでくれてよかったです…」

「そう…それなら私もエリスと揉めなくてよかったわ…」


ノクスが双子の姉の唇を奪い、魔力を送り込んで"壊している"最中、ユノとミネルヴァは不測の事態に備えていた。

ノクスの"作業"が問題なく終わると、双子の姉の閉じていた瞼が開く。

拘束が解かれると、双子の姉はノクスに臣下の礼をとった。

「これからあなたの名前は"ブロムベーレ"よ」

「はい…私は、ブロムベーレ…ノクス様の"兵器"です…」

「いい子ね、ブロムベーレ…」

「ところで、この人間(アントロポス)は処分対象でしょうか」

ブロムベーレは双子の妹を"処分対象の人間(アントロポス)"として見ている。

「その子は私の妹であるエリスの"兵器"になるから、手を出したら駄目よ」

「はい…申し訳ございません…」

ノクスに止められ、(はや)ったブロムベーレは素直に謝罪した。


今度はエリスが双子の妹を壊す番。

エリスは唇を重ねると、メイをディアボロスにした時と違って、徹底的に双子の妹の中にある人間(アントロポス)の要素を壊し、"無"の魔力で染め上げる。

目を覚ました双子の妹は、額と瞳にエリスへの隷属の証である紋様を刻まれ、

「わたし…エリスさまの"兵器"として生まれ変わったのね…うふふ…」

完全に人間(アントロポス)としての人格を失い、エリスの兵器となった。

「そうよ…そしてあなたはこれから"ブラウベーレ"と名乗りなさい…」

「はい…エリスさま…兵器であるわたしにすてきなお名前…ありがとう…」

表情は変えなかったが、ブラウベーレはエリスに感謝の言葉をかけた。


「ところで、この者もどなたかの兵器?」

「そのブロムベーレはノクスお姉ちゃんの兵器よ」

ブラウベーレもブロムベーレをもはや自分の姉だと認識していなかったが、額と瞳に紋様が浮かんでいたため、誰かの兵器であることはわかっていたようだった。

「そう…」

「エリス…あなたが嫌じゃなければ、この兵器たちを戦わせてみない?

 もちろん、今後の作戦行動に支障がないよう、力は加減させるけど」

「はい…ブラウベーレはやる気満々みたいですし…面白そうですね…」

こうして、双子の姉妹だった2人の人間(アントロポス)はノクスとエリスに壊され、彼女らの兵器となった。

そして、模擬戦闘とはいえ何の躊躇もなく、血を分けた姉妹同士で攻撃しあった。

模擬戦闘の最中、エリスはノクスの隣にいたユノに声をかける。

「ユノお姉ちゃん…ありがとう…」

「…」

自分の主の妹である愛らしいエリスからお姉ちゃんと言われて気が動転したユノは、"どういたしまして"と言いたかったが、顔を真っ赤にして口を動かすだけで声が出せなかった。

"エマ"という名前は3人の名前の頭文字(エリスのE、メイのM、アンネのA)を合わせたものです。

ブラウベーレに刻まれた紋様はギリシャ文字のシグマ(Σ)のような形です。

<2022/ 2/11修正>グナーテ→グナーデ

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