表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空のエリス  作者: 長部円
第1部 2章
20/98

20 共同作戦計画と出向

今回はこれまでの1話分より文章量が少ないです。

1話の分量を維持するか、それとも週1回の投稿を維持するかで迷いましたが、後者を選択しました。

20


ある日、パンゲーアのノクスの部屋で皇女3姉妹がおしゃべりしていると、ノクスが唐突に話題を変えた。

「エリス…専属侍女が揃って、戦闘訓練も順調なようだし、そろそろ私と一緒に実戦に出ましょうか」

「だめです、お姉様…かわいいエリスちゃんと一緒に戦いたい気持ちは分かりますが、まだこんなに小さいですし、お姉様の"ベヘモト"やわたしの"レヴィアタン"のような専用武装もない状態では、お母様の許可は出ないでしょう…」

「エリスはどう思う?」

「私もイルミナお姉ちゃんと同じ考えです…。

 私がレア様と母様から与えられた役割を考慮すると、強力な"グナーデ"持ちの人間(アントロポス)と戦うには、いろいろと不足しています…。

 専用武装をはじめとした、私の実戦経験不足を補える様々な要素が揃ってからでも遅くはないです」


イルミナとエリスがノクスの提案を否定した理由はエリス個人の準備不足だけではない。

エリスの"デー・クラフト"も未だ準備段階であり、現状"ただの第3皇女"でしかないエリスが参戦すると、ノクスが率いる"ヘーア"の下では、特に軍事的な肩書を持たない"一兵卒"の立場になる。

このような形で初陣を飾った場合、将来にわたってエリスや"デー・クラフト"が"ヘーア"やゲネラールより格下として扱われる恐れを危惧したためである。


「私もレア様の代弁者という立場から、エリスの初陣は時期尚早と言わざるを得ないですの。

 ただし、エリスの代わりに専属侍女以外でエリスがお気に入りにしている侍女をもう1人参戦させればいいですの」

突然姿を現したエクレアはエリスの参戦には反対したものの、ノクスへ代案を提示した。

「ならば…エリスの代わりに魔女(ヘクセ)のカリナを連れていきたいのだけど…」

「おそらく拒否はしないと思いますが、念のためカリナに尋ねてみます…」

「いい返事を期待しているわ…」

ノクスはひとまずそれで納得したのか、エリスの初陣についてはそれ以上話されなかった。


----


翌日、"図書館(ビブリオテーク)"から持ってきた本を読み漁っていたメイが、とある本を読み進めるに従って興奮の度合いを高め、読み終わると、緋色の目を妖しく光らせながらエリスに迫ってきた。

「エリ…王都攻めの準備を急ぎましょう…」

「王都に何か面白いものでも見つけたの?」

「はい、これを…」

メイが、持っていた本をエリスに見せると、

「うふふ…それは確かに面白いわね…。

 その内容が真であっても偽りであっても、利用価値は十分にあるわ…。

 クロエたちやドライヴァイゼンを集めて、カリナの"出向"についても含めて話し合ってからノクスお姉ちゃんと交渉する」

エリスは不敵な笑みを浮かべ、早速メイを従えて"D-Kraft準備室"へ向かった。


カリナの"ヘーア"への出向は本人の承諾を得たため正式に決まった。

それを踏まえて、専属侍女"フィーア・テュヒティヒステン"と三賢女(ドライヴァイゼン)を集めて会議を開き、ヘーアとの共同作戦となる王都攻めとその"前哨戦"の計画書をまとめた。


----


会議の翌日、エリスはノクスの部屋を訪れた。

「ノクスお姉ちゃん…この前は…ごめんなさい。

 私もいつかは、ノクスお姉ちゃんと一緒に戦いたいですけど…今の私はノクスお姉ちゃんの妹でしかないので…」

エリスはそこで一度言葉を切ってから、手に持っていた紙の束をノクスに差し出す。

「あの後、専属侍女とドライヴァイゼンを集めて相談し、私が戦場で問題なくノクスお姉ちゃんと一緒にいられるための、"共同作戦計画書"を作ってきました」

ノクスはエリスから"共同作戦計画書"を受け取り、一通り目を通してから、不安そうに自分の顔を見上げていた妹をきゅっと優しく抱きしめた。


「エリス…私こそ…いろいろと先走りすぎて…ごめんなさい…。

 それに、エリスからこのような提案をしてくれて…とてもうれしい…。

 エリスの初陣として王都攻めを行うというこの作戦…私個人の意見としては、妹への贔屓目もあるけどかなりいい内容よ。

 "ヘーア"内部で作戦の内容を精査して、詳細は双方のドライヴァイゼンで詰めることになるけど、私は作戦実行の日が今から楽しみになったわ…。

 エリスも準備は抜かりなく進めてね」

「はい…ノクスお姉ちゃん…」

ノクスはかわいい末妹に、エリスは大好きな長姉に笑顔を向け、そのまま顔を近づけると唇を重ねる。

年の離れた姉妹による、愛情の籠った口づけが終わった後、エリスはカリナの出向について問題ないことを忘れずに伝えた。


後日、エリス配下のドライヴァイゼンであるマグノーリエ、バルザミーネ、クラウディアとノクス配下のドライヴァイゼンとの間で定期的な作戦会議が設置され、エリスの初陣に向けた軍レベルの準備が正式に始動した。

"図書館(ビブリオテーク)"はメイが幽閉されていた塔にあったもの(主に書物)を収蔵した場所です。

書物に書かれている内容はエリスによってメイの頭の中に叩き込まれていますが、何かのきっかけがないと"思い出せない"ものもあるため、メイはたまに図書館を訪れています。

<2021/ 9/10修正>後書きに"図書館"についての補足説明を追記しました

<2022/ 2/11修正>グナーテ→グナーデ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ