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【書籍化】オルクセン王国史 ~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~【コミカライズ】  作者: 樽見 京一郎


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参考資料:オルクセン王国の経済

 ベレリアント戦争時オルクセン王国貨幣一覧

挿絵(By みてみん)


 ベレリアント戦争勃発時のオルクセン王国は、金銀複本位制を採っていた。

 同体制への移行はデュートネ戦争後の星暦八二〇年であり、それまでは銀本位制である。

 オルクセン北西部には星欧屈指の銀鉱山があり、また星欧の殆どは銀本位制下にあったため、これは自然なことであった。

 そのオルクセンが金銀復本位制に移行した理由は大きくわけて二つあった。

 ひとつは、金本位制を採っていたキャメロット王国との正式な国交樹立と、それまでも非公式には存在した交易が本格化しそうであったこと。

 いまひとつは、デュートネ戦争で獲得した賠償金から保有金地金が増大したことである。

 

 <デュートネ戦争第二次講和条約によりオルクセンがグロワールから得た賠償金>

  直接賠償金:一億五〇〇〇万グラン(六〇〇〇万ラング)

  要塞建設費:四〇〇〇万グラン(一六〇〇万ラング)

  首都駐留軍経費:二五〇〇万グラン(一〇〇〇万ラング)

  占領地駐留経費:一六七三万グラン(六七〇万ラング)※ただし物納

  現金合計:二億一五〇〇万グラン(八六〇〇万ラング)


 これら「賠償金」の全てが金貨決済されたわけではないが、これは当時のオルクセンとしては相当な「臨時収入」であり、オルクセンの本格的近代化を招来させた。

 またオルクセンが採用した金銀交換比率は「一対一五・五」という「大陸式」のもので、キャメロットでの相場より銀の集積が起こりやすく、銀本位制国もしくは金銀復本位制の多かった星欧諸国家と、金本位制下のキャメロット王国との貿易中間国となることで、コボルト商人たちによる金融業、わけても利鞘商売を発展させることになった。

 このためキャメロット首都ログレスは「金決済における国際金融の中心」となっていったが、オルクセンは「銀決済における国際金融の中心」という立ち位置を手に入れた。

 やがてこの立場には、混乱期から回復したグロワールも加わることになるが、先鞭をつけたのはオルクセンであり、第二帝政下のグロワールを常に苦々しく思わせるほどの地位を占めた。

 オルクセンの南方にあるアスカニア王国とオスタリッチ帝国はこの状況に危惧を覚え、八二八年にテオディス関税同盟を結び、オルクセンからの経済的影響の排除にかかったが、却って商業取引及び物流の停滞を招き、やがて域圏内の自由都市や構成小規模王国とオルクセンとの関税協約が八三三年に締結されたことで切り崩され、実質的にこの経済圏は自壊することになる。

 金銀交換が、政体の安定したオルクセンの影響下に留まり続けるというこの状況は、幾度かの世界的な銀相場の変動影響を受けたものの、その度にオルクセンは銀貨鋳造量を調整し、第一次星欧大戦の勃発まで、星欧の通貨を安定させる効果を齎した。

 ベレリアント戦争終結後、戦時生産体制の縮小によりオルクセン経済は一時停滞するものの、同戦争はのちの時代の「国家総力戦」と比べると遥かに「小規模な戦争」であり、国内総生産比で八パーセントの戦費しか要していない。

 再び国内投資に転じたオルクセンは、近代化からほぼそのまま継続するかたちで「第二次産業革命」に突入。

 第一次星欧大戦勃発まで、工業生産は年率四パーセントの割で上昇を続け、八九三年には鉄鋼生産量でも銑鉄生産量でもキャメロットを凌駕することになる。

 化学工業分野も発展し、原材料がどちらもオルクセンで開発された化学肥料及び合成染料の生産量はとくに増大し続け、八七八年には化学肥料は世界生産量の七割に、合成染料では五割に、九〇〇年代を迎えたころには後者は九割に達した。

 この間、空前の「起業ブーム」も起こった。

 八一六年、オルクセン王国ヴィルトシュヴァイン株式市場で扱われている銘柄は僅か七社であったが、八二六年には約五〇社となり、ベレリアント戦争勃発の八七七年には四〇八銘柄、取引総額一三二億ラングに達している。

 これはこの間に、従来採られてきた所謂「特許主義」ではなく、「準則主義」の採用へとグスタフ王が舵を切り、オルクセン国内における株式会社創設のハードルが大幅に引き下げられたことも影響している。

 同時に、センチュリースター南北内戦勃発時期の以前よりオルクセン国有銀行及び民間資本を中心に行われていたキャメロット王国、ロヴァルナ帝国、センチュリースター連合国(南部連合)等に対するオルクセン資本の海外投資は増え続け、特に連合国へのものは同国の工業発展に寄与し、八六五年から八七二年の間においてさえ投資総額六億六七二〇万ラングに及んだ。

 その内容は南部連合土地開発公社に対する二億八〇〇万ラングを筆頭に、鉄道、有力銀行、縫製及びガス事業、鉱山・工業と多岐に渡り、ファーレンス社は南部連合パスクア燐鉱山を取得、最盛期には同地方の鉱石産出額のうち実に九〇パーセントを供した。

 南部連合に対する投資額は、八九六年には一二億六四〇〇万に到達している。これはセンチュリースター連合国における外資の首位であり、同国に依る保護貿易と鉄道債券はオルクセンへ莫大な金融利潤と直接利益を齎した。

 


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


 <八七六年外国為替相場(一ラング=一〇〇レニ当たり)>

  〇・一クィド(キャメロット)

  二・五グラン(グロワール)

  〇・六二五ターラー(アスカニア及びオスタリッチ)

  〇・五モルガン(南北センチュリースター)

  〇・五圓 (アキツシマ)

  二・〇ティアーラ(エルフィンド)

 


挿絵(By みてみん)


 ベレリアント戦争勃発時のオルクセン陸軍給与一覧である。技能兵資格等の手当は除く。

 当時の社会環境として下士官兵と将校の格差が非常に大きく思えるが、これでも他国よりかなりマシだった。

 また、下士官兵は衣食住全てが軍隊持ちであり(当時、一般社会における収入の約半分は食費になった)、僅かとはいえ酒の配給もあり、無駄使いをしなければ幾らか貯蓄も可能な水準である。

 対して、いきなり跳ね上がるように思える将校以上は、基本的には軍服、拳銃、サーベル等の装備は自弁であり、陸軍将校会などにも幾らか年会費を治めなければならない。それら負担を行いつつ、品位品格も保たなければならない若い尉官、とくに負担額の多い騎兵科などは、むしろカツカツの状態に陥りやすい。

 また高額収入の将軍級は、ある程度社会奉仕のため寄付等を行って当然とされていたので、オルクセンの場合、慎ましく暮らしている者が多かった。

 当時のオルクセン一般社会でいえば、月収約六〇ラングで職人の親方並。熟練職工で三〇ラングから四〇ほどである。郵便配達夫、役所の庶務係等の下級官吏もこの辺りで、年収にすれば四八〇ラングほどになった。

 妻を専業主婦に出来て、召使の一名を雇えるくらいの階層(中級役人並)で年収約八〇〇ラングである。

 これを思うと、軍で曹クラスまで行けばかなりの収入になることが分かる。一朝ことあらば、長命長寿不老の魔種族社会で生死を賭することになる軍人ゆえに、一般官吏等よりも「優遇」されていたわけである。

 

 <当時の社会における物価例>

 ・学生向け食堂の定食:一・三ラング~三・三六ラング

 ・ビール一リットル:〇・五ラング

 ・ビール五〇〇ミリリットル:〇・三二ラング

 ・安葡萄酒七五〇ミリリットル:〇・五ラング

 ・ホットジン一杯:二ラング

 ・食堂肉料理一皿:〇・四八ラング

 ・最高級ホテル一泊:一・六ラング~

 ・最高級ホテルのコース料理:一・六ラング~四ラング

 ・最高級レストランのコース料理:二〇ラング

 ・屋台のヴルスト:〇・〇八ラング~〇・一六ラング

 ・鉄道三等車短距離切符:〇・四ラング

 ・首都ヴィルトシュヴァイン内蒸気船一区画:〇・〇八ラング

 ・卵一個(都市部):〇・〇八ラング~〇・一六ラング

 


 ベレリアント戦争が終結してから星暦九〇〇年代に突入するまでに、オルクセンからは周辺国のような極度の貧富の差は、解消されていった。



(続)

 

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― 新着の感想 ―
大生ビール0.32=320円くらいとか考えると 二等兵の月給12,000円、職人親方60,000円って大丈夫?ってなる
[気になる点] ・学生向け食堂の定食:一・三ラング~三・三六ラング に対して ・最高級ホテル一泊:一・六ラング~ 多分食堂定食値段の小数点の位置がずれたと思いますが…
[気になる点] 大陸の全周陸続きでこんな米帝プレイしたら全部敵にまわりそう、というか周辺国は自国産業保護対オルクセン同盟必至では?
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