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お友達

「白蓮様、正面の警戒を交代してもらってもいいですか?」


 林の入り口の方で見張りをしていたらしい世恋さんが、白蓮に声をかけた。白蓮は世恋さんの言葉に軽く頷くと、


「ふーちゃん、ゆっくり休んでいてね」


と私に声をかけると世恋さんから短弓を受け取り、背をかがめて入り口の方へ小走りに去っていった。その後ろ姿は結社の裏手で父の遺品で、冒険者らしい恰好をしようと言った時に比べて、はるかに冒険者(それ)らしい姿に見えた。


「風華さん、お加減はいかがですか?」


 世恋さんが私の顔を覗き込んで、手の平を私の額に乗せながら聞いていきた。


「熱はないみたいですね」


 暗闇の中でも、その超絶美少女の顔が目の前にあると思うと、女の私でもちょっと戸惑ってしまう。


「ご迷惑をかけたみたいですいません。女の子の日が近いんですかね? 本当はもうちょっと先なはずなんですけど」


 苦笑いでごまかす。世恋さんの怪訝そうな顔。世恋さん、こういう話は無視しないでください。『本当にたいへんですよね?』とか言ってくれないと困ります。


「こちらのお薬で、少しは倦怠感が和らぐと思いますので、苦いけど飲んでください」


 世恋さんはそんな自爆気味の私に、薄い油紙に折り込まれた薬を渡してくれた。昨日のお茶といい、この人はこういうのをいったいどこに隠し持っているのだろう。


 そういえば百夜ちゃんは、マ石を世恋さんの胸元から取り出していた。もしかして全てそこにしまっているんですかね? 私には決してまねできません。


 胸元から目が離せなくなっている私に、世恋さんが薄い竹筒の水筒を差しだしてくれた。もらった薬を口に放り込む。うわなんだろこの味。めちゃくちゃ苦い。でもめちゃくちゃ苦いから効きそうな気がする。


「苦いですよね」


 世恋さんはそう私に告げると、ちょっとむせ気味の私の背中をさすってくれた。世恋さんはどうしてこんなに私達に親切にしてくれるのだろうか?


「世恋さん、どうして世恋さんは、私達にこんなに親切にしてくれるんですか?」


 思わず口から心の声が出てしまった。世恋さんが、私に向ってちょっと驚いた顔をして見せた。


「だって、風華さん、白蓮様、百夜様は、私が生まれてはじめてできたお友達ですから、当たり前の事です」


 本当ですか?


「世恋さんなら道を歩いているだけでお友達になりたい方が、山ほど寄ってくると思うんですけど」


「信じられませんか?」


 角灯を手に、世恋さんが暗がりの中、私の顔を覗き込んだ。


「でも本当の事ですよ。お兄様にはお兄様で、考えがあるみたいですけど。私にとって風華さんは間違いなく、大事なお友達です」


 覆いを下した角灯から、微かに漏れる光の向こうで、世恋さんがにっこりと笑う。なぜか私は素直にその笑顔に、笑顔で答えられなかった。本当に私は彼女の()()()になれているのだろうか?


 そして()()に居てもいいのだろうか?

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