白蓮の覚書
「冒険者になりたいんですか?」
やめておいた方がいいと思いますけど、僕が山さんという冒険者の大先輩から聞いた覚書で良ければ、お渡ししましょうか?自分、あまりこの世界の事よく分かってなかったので、もしかしたら知っている事だらけかもしれませんが、、どうぞこちらにお座りください。
【マナ】
人の体にたまるらしい力の根源との事。
これを元に、自分の肉体だけではできないような力の発揮やら自然に対して何らかの影響を及ぼしたりできるようになるそうです(自分は使えないからよく分からない)。発揮できる力にはいろいろあって肉体を強化できる「内なる人」と自然や物に働きかけられる「外なる人」の二種類に分かれるそうです。両方を持つ人は絶対ないとは言えないそうですが、山さんはあったことがないと言っていました。
「黒い森」の中などではそのたまり方や発揮される力は強く。内地のような「黒き森」から遠いところではたまり方や力も弱くなるそうです。それでも内地のようなところでもたまるし、力を全く発揮できないわけではないので、昔の森の後やマ者の屍骸が地下にあってそこからも出ているんじゃないかというのが山さんの推測です。
別に僕たち冒険者だけでなく、日常的に火を起こしや水の取得などでも普通の人たちでも使えるみたいで冒険者のような使い方がが特殊なんだと言っていました。ふーちゃんもたまに使っているみたいですが、使った後にマナ酔い(倦怠感や頭痛)が出るそうで、人によって向き不向きがあるようです。マナ酔いはマナが体内にたまりすぎた状態でも起きるとか、、実はよく分かりません。
「マナ」が上手に使えるかどうかは親から子には引き継がれないそうで、もし親子でマナ使いだとしてもたまたまだそうです。でもマナを使う訓練をずっとすると最初はうまく使えなくてもそのうち使えるようになる人もいるそうです、つまり僕にも少しは希望があるという事ですね。
【黒き森(森)】:くろきもり
僕ら冒険者の仕事場ですね。
復興領の人間が「森」と呼ぶとこの「黒き森」の事を指します。理由はその地の「マナ」の影響を受けて植物の葉の裏などが黒く変色して全体的に真っ黒に見えるためだそうです。確かに見れば一目瞭然、普通の森とは違う、ただものではない雰囲気を持っています。中も普通の森に比べると暗くなりますしね。もっともすべての植物が黒くなるわけではないので、全く別世界という訳でもありません。
「黒き森」の中や周辺の「マナ」の密度はとても高く、マナに慣れていない人間が近づくと一発でマナ酔いするそうです。人によっては急性のマナ酔いを引き起こして命に係わる人もいるとか?その点ではマナがとてもたまりにくいかたまらない(そんな人はいないと山さん言っていましたけどね)点ではそこだけは安心です。
もう一つ、「黒き森」が普通の森と違う事は、この森の中には「マ者」なる普通の生き物とは別の生き物たちが住んでいる事。この「マ者」は普通の鹿とか兎とかとは別の種類の生き物で、どうも「マナ」がふんだんにあるところに住んでいるというより、「マ者」がいるところに「マナ」ありという感じです。黒き森」にも鹿と兎など普通の森にいる生き物の生きていますが、「マ者」はこれらの生き物にはまったく興味がないというより居ても気にしていないみたいです。実際、「黒き森」から「マ者」を駆逐するとマナ密度が下がるのか、植生が普通の森とほぼ同じになります。
【追憶の森】:ついおくのもり
「黒き森」というのはマナの影響をうけた森全般に対するいい方で、各地域にそれぞれ固有の名前がついています。僕らがすむ復興領から南へ広がる「黒き森」は「追憶の森」と呼ばれています。これはここがもともとは黒の帝国の中心地で、黒き森を切り開いた領土だったそうですが、300年前に黒の帝国が滅んだ時に「マ者」がこの地を占拠して「黒き森」へとまた戻ったことからこの名がついたと山さんが教えてくれました。
【とび森】:とびもり
「黒き森」と続きになっていない「黒き森」の事を言います。「とび森」には大きく二つあって、洪水などの自然災害で他の森と地続きにならなくなったものと、耕作地を広げる為に、マ者を駆逐しつつ、黒き森から木を切り倒して切り出した「とび森」の二つがあります。切り出した「とび森」からマ者を駆逐することで、その森を切り開いて耕地や牧草地などに変えていく。そうしてこの復興領の耕地は200年以上をかけてちょとずつ広げて来たそうです。
このマ者を駆逐する作業こそが冒険者の主要業務ですね(僕は違いますけど、、)。
【マ者】:まもの
「黒き森」に住むマナの力をもつ生き物です。基本的にその力はとても強く危険な生き物です。狩る物、狩られる者や、マナの影響を受けた植物を食べたり、寄生したりするものや、その死骸をあさる物など「黒き森」の中で「マ者」どうしで生き物の世界を作っているようです。基本的にマナを持たないものには興味がないとうか存在するか気にしていないようで、普通の動物達を襲ったりすることはありません。ある地域に住んでいる「マ者」はその種など特徴があるそうです。
残念なことに人は葉の裏が黒くなる植物と同様にマナの影響を受けるため、この「マ者」の狩の対象になります。というか、どうも大型の「マ者」の大好物に近いようです。なので人がいると基本我先に襲ってきます。なので、僕たち冒険者は「マナ除け」という液体を体にふりかけ、マナの気配をなるべく消して森に入らないとすぐに「マ者」に捕まってその餌になってしまいます。「マナ除け」を使っても多くの人数が狭い地域にいるとその時点でバレバレになるらしく、その辺りの「マ者」が一斉に襲ってくる(僕らは「崩れ」と呼んでいます。)という非常にやっかいな性質をしています。
そのため、同時に森に入る人数は基本的に5人以下と制限されています。人数が多いと「マ者」に探知される可能性が高くなるのと、あまり多くの人数がいると、「森」の外までも人を襲いに来るようになります。
【マナ除け】:まなよけ
ある種の草を組み合わせて水に浸し、その液を煮詰めたものです。森に入る時の必需品。あと、虫よけとかも混ぜて作ったりもします。意外とそれぞれ工夫があるみたいですね。でも空気に触れると効果がすぐに失われていくので、これを山ほど持って森に入ります。この独特の匂いで胸の証なんか見せなくても分かる人には冒険者だって一発で分かるみたいです。いい匂いかと言われるとちょっと土臭さがあって微妙ですけどね(あまり近くによるとふーちゃんが引くのはそのせいかな)。
でも実はそれほど前からある物ではなく、黒の帝国が滅んだあとの最大の発明品だそうです。黒の帝国より以前はこれなしに森に挑んでいたというんですから「どんだけ?」という感じです。
ある薬師の家が発明してその家の秘伝ですっごい金持ちだったそうですが、あるときお家騒動で家のだれかが作り方を公表したところ、実はその辺に生えている草で作れることが判明。実はもったいぶって作っていたなんかよくわからない珍しい草花は隠れ蓑で、それを植える前の雑草みたいな草が本命だったそうです。
でも、森で採取したものの方が持ちがよく、強力(マナ使いの人でもいけます!)なので森生まれの方が高級品ということで僕の最終的にはふーちゃんの主力商品でした。
【マ石】:ませき
主に大型の「マ者」からとれる「マ者」しか持っていない黒い結晶体です。大型の強力なマ者ほど大きな「マ石」を取ることができます。マ石はとても高い値段で卸すことができ、冒険者の成功譚には欠かせない一品です。ほぼすべての冒険者を志す若者は、この「マ石」で一発当てることといっても過言ではありません(実際はちまちまとマ者を駆除する地味~~な仕事です)。ただ小物からはこの結晶体は取れないので、まさに一握りの冒険者が森の奥までいって命がけで大型の「マ者」を狩ることで入手できるものです。
マ石は、自然に体内にたまるマナ以外でマナのを得る唯一の手段です。呪符師と呼ばれる職業の人がこの「マ石」を使ってマナの知から「炎を出す」、「光を出す」等を行わせることができるそうです(とても高価なので、一般人には決して手がでないそうですが、、)。黒の帝国を含め、古の王国はこのマ石を大量に使用することで今とは比較にならない巨大な建造物や見事な品々を生産していたようです。
また、マナ使いがマナを使うときの触媒としても作用するため、マ石を使う事でより大きな力を発揮できるようになるそうです。ただ山さんが言うにはあまりマナを急に使用すると人の方が耐えられなくなるし、慢性のマナ病(非常に多くのマナの利用を何度も繰り返すことによる病気)を引き起こすそうなので使わないに越したことはないと言っていました。
僕は森の中の採取専門なので全く縁はありません。
【マナ使い】:まなつかい
マナの使い方にたけている方全般の呼び方です。
冒険者になろうというのは大概がなんらかのマナの力が上手に使える人が多いので、僕たち冒険者への隠語としても使われるそうです。その時はあまりいい意味では使われないと山さんは言っていました。誰かがこそこそマナ使いと言っているときはその飯屋や酒場はすぐに出た方がいいそうです。
【結社】:けっしゃ
僕の仕事先ですね。
森に入る冒険者の管理を行っているところです。そういう仕事(森にいるマ者を駆逐する、森じゃないと取れない何かを採取してくる)を頼むとき、受けるときはこの「結社」を通して行う事になります。勝手に入って森の中で鉢合わせなんてことになったらその時点で「マ者」さんの餌ですから、とても大事な規約管理と調整管理を行っている組織です。基本的に「結社」に属していないと森には入れません。
管理している対象の森毎に「~の森の結社」と呼ばれています。なので、僕が所属している結社は、「『追憶の森』の結社」という事になります。大きいところだと支部があったりするそうですが、ここは一つだけです。
ですが、復興領では森を切り開くの日々の大事な仕事なので、事後承諾だったり、こっそりと各街や村で森に入っているようです。「黒き森」に接している村なので結社を通さずに森に入っている人たちは「森人」と呼ばれているみたいです(もぐりですよ)。
最近ある件で知ったのですが、結社に入るには結社の一員の推薦か、結社の審査のいずれかが必要だそうです。推薦の人数は推薦する人の功績によって変わるみたいですね。僕が入った時は山さんが鼻歌まじりで書類もっていって終わりだったので、なんか紙書いて申し込めば入れる程度に思っていました(すいません山さん)。
結社の一員になると胸にその証(目の紋章)が刻まれます。これは特殊な染料と方式で書かれたもので見る人が見れば一発で本物か偽物か分かるそうです(僕は普通の刺青と何が違うかはよく分かりません(ふーちゃんも書かれているはずで一度見てみたいけど絶対無理だろな。。)。
一度結社の一員になれば別の森の結社に行っても結社の一員としてはやっていけるみたいです。山さんは城砦にというところにある「『嘆きの森』の結社」からこっちに移ってきたと言ってましたから。
【組】:くみ
森に入れるのは最大5人までという制約(マナが少ない新人なんかを連れていく場合は例外があるそうですが、、)があるので、森に入る単位を「組」と呼んでいます。ほぼ面子は固定です。山さんが仕事できなくなってから僕はどの「組」にも入れず、お呼びもかからなかったのでとても寂しい思いをしていました。
この「組」で生死を共にするので普通はとても固い絆で結ばれていて、各冒険者はおの「組」の中で決まった役割を持ってマ者の駆逐作業に当たります。一般的には「探知」、「勢子」、「守り」、「打ち手」などで組を構成しています。
【英雄持ち】:えいゆうもち
マナ使いの中でも特にマナが上手に使える人を指すみたいです。狭い意味では森の外でもマナがうまく使える人。広い意味では、ともかくマナが強力に使える人全般だそうです。山さんが言うにはなんで「英雄もち」なんて名前になっているかというと、戦になった時などに森の外でもマナが使える人が活躍できる。黒の帝国時代にそういう人たちをほぼ強制的にあつめて軍隊を作っていたからだそうです。
狭い意味での英雄持ちの人たちは森で冒険者みたいな仕事でなく、偉い人の警護役やどっかの街の衛士隊長等の職に就く人もいて、冒険者の人が「英雄もちが、、」という言い方をしたときはやっかみ半分だと山さんは言っていました。
【二つ名持ち】:ふたつなもち
一般的には英雄持ち方のについている別名です。これには二種類あって、結社によって正式につけられたものと仲間内から勝手に呼ばれる(たまに、自分でつけて自分で言いふらす人もいるみたいですが、、)ものとあるそうです。
「森」の中の仕事も「森」の外の仕事も得られるお金が一桁は変わると言っていました。そのためか、二つ名持ちを騙る詐欺師も多くいるそうです。特に結社の目がとどかないところで田舎町の護衛役あたりを狙ったり、あげくに何か盗んで逃げたりとか、なので二つ名持ち(特に非公式)になると知らないところで勝手に恨まれていたりするので、基本的には、こんなものがつくとろくなものじゃないと山さんは言っていました。
山さんの話ではある詐欺師には、仲間内でわざわざ二つ名持ちに退治される寸劇もどきまで披露して田舎の店の商家にとりいろうとしたのを見たことがあるそうです。でも最近はほとんど騙される人はいなく、結社の一員については、結社の本部や支部までちゃんと問い合わせして人を派遣してもらうのが当たり前だそうです。山さんはその為にわざと野放しにしているんじゃないかとかすら言っていました。
【黒の帝国】:くろのていこく
300年前に人が住む世界の全てを支配していた国だそうです。これまで興っては消えていった「マナ」の力による王朝ではもっとも力を持った国だったそうです。マナ使いを集めてそれで軍を編成。森を切り開きマ者を駆逐して人間の生活圏を大きく南に広げたそうです。
またマ者から取得した「マ石」による「マナの強化」にも努めてマ者を森で狩るのではなく、人の築いた城砦の中で人工的に増やすなどすら行ったとんでもない国だそうです。マナの研究も進んで、これまでのマナ王朝とは比較にならないほどの強力な力を持っていたそうですが、黒、赤、白の三匹の竜によってほぼ全土を焦土とされて滅びたそうです。またその時に帝国が培った「マナ」に関する多くの知識や技術も失われてしまったとか、、その時に辛うじて残った周辺部が「橙の国」、「高の国」「壁の国」などになって今に至るそうです。
また黒の竜によって焦土された中心部には再び黒い森が再び広がり僕らがその周辺部をうろちょろしている「追憶の森」になりました。なのであくまで噂ではありますが、「追憶の森」の先にはかっての黒の帝国の帝都、黒紫宮があり、赤の竜によって溶かされたその廃墟の地下にはかって黒の帝国が集めた大量のマ石や財宝が眠っていると言われています。もし、それ見つけて持ち帰れたら一生左団扇ですね。
【橙の国】:とうのくに
僕とふーちゃんが住んでいる国です。
かっての黒の帝国の周辺部の領主達によって建てられた国だそうです。そのため国政としては国王はいるが領主達の連合国家のような様相でなんでも腰が重い国だと山さんは言っていました。。黒の帝国が様々な部族から強制的にマナ使いの能力がある物を集めて軍を編成していたなごりで、多種多様な部族がまじりあい、髪の色、肌の色、目の色ともに多くの組み合わせがあるまさに人種のるつぼのようなところでもあるそうです。
最近、その国旗や軍旗に描かれているお互いに尻尾に食いつこうとしている赤、黒、白の三匹の竜の紋章は、自分たちが滅びかけた原因を忘れないようにと書かれているという事を知りました。
以前は、「高の国」と国境をめぐる争いをしていたそうですが現在は休戦中らしいです(この辺りは興味がなくてあまり聞いてないのでよく分かりません)。
【復興領】:ふっこうりょう
僕とふーちゃんが住んでいる地域です。
かって黒の帝国の中心があった南方の地帯で広がった黒の森「追憶の森」に対して入植できた地域で、最近は新しい領主様が来て、「なんとか辺境伯領」に名前が変わったそうですが、よく分かっていません(山さんがなくなった後は聞ける人もいなかったですしね)。
基本的にこの「復興領」もふくめて森に近いところを全般を「辺境」と呼んで、黒の帝国時代から残った北側の土地を「内地」と呼ぶそうです。
【一の街】:いちのまち
僕とふーちゃんが住んでいる(住んでいた?)街です。
復興領で最初に築かれた街でそのため「一の街」と呼ばれています。「復興領(最近は辺境伯領??)府」も兼ねており、領主様の館や各種役所もある街です。最初に築かれた街で、当時のマ者に対する恐れによるものか結構立派な城壁で周りが囲まられていますが、一の街のすぐ近くには森が無くなったせいか、最近は城壁の手入れなどはされていくて結構ボロボロです。そこそこ人も住んでいるのですが、先代の領主と新しい領主が厳しい人だったせいか、他の街に少なくない人が流れました。
「追憶の森の結社」もここにあります。正直、森から遠いのでもっと森に近い場所に移った方がよさそうな気がするのですが、基本あまりやる気のない結社なようで移る気配はありませんでした。
【魁の街】:かいのまち
ふーちゃんが、小麦や大麦を仕入れている問屋がある街です。一の街にもっとも近い街で馬車でいけば4~5日というところでしょうか?二番目に入植された街で、ここの領主様の家の名前の街です。他にも街はいくつかあるんですが、割愛させていただきます。
【高の国】:こうのくに(ハイランド)
「橙の国」の北方の山岳地帯に向けて広がる国だそうです。そこに住む人は色白で金髪系の方(美男、美女)が多いそうです。山さんの昔美人の冒険者がいてという話のついでに出てきた国です。
その大部分は耕地というよりは牧草地帯であり放牧業が盛ん。山岳地帯の先は氷に閉ざされた非常に高い山々(橙の国の呼び名で氷結連山がひろがり、人が住めない地帯になるそうです。
【壁の国】:へきのくに
黒の帝国の生き残りが作った国の一つだそうですが、よく分かりません。辺境伯領から見ると北西にあるそうでうす。
【城砦】:じょうさい
復興領から見ると西の端にある街(?)だそうです。詳細は不明です。山さんが一の街に来る前に冒険者をやっていたところで、黒の帝国以前からの森「『嘆きの森』に面した街(?)だそうです。
ここには大型のマ者を狩って一発あてようという本格志向の冒険者の方々が集まっているところだそうですが、詳しくは知りません。山さんもあんまり教えてくれませんでした。あんまりいい思い出がないのかな?
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常識? どこの田舎者?、、まあそんなとこでお恥ずかしい限りです。マナの力の種類についての覚書があったんだけど今は見当たらないので、また、機会があればお渡ししましょうね。
「お嬢さん。」




