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青い血

「兄さん、ともかく奴に膝を折って許しを請うしか方法はないんだ」


 知念は兄の知良に必死に訴えた。彼の右目にまかれた包帯には血が滲み、まだ一向に下がらない熱にその顔色はひどく悪い。


 だが彼は自分の右目の苦痛になどかまっている場合ではなかった。ともかくなんとしても兄を説得して、紫王弟殿下に許しを請わねばならないのだ。


 父の知覧と母が暗殺された事は塊家のみならず、他の子爵家全部に衝撃を与えた。


 特に領主の妻として、全く非の打ちどころがなかった母が殺されたことは、紫王弟からのお前たちの家族の命も無事ではないという明確な通告として受け止められた。


 四家で合同軍を起こすなどという話は一瞬で消え去り、塊家を除く各子爵家はいかに王弟の怒りをとき、彼に取り入るかという事に腐心している。


 他家がすぐに送った最初の使者は全て、王弟に会うまでもなく追い返されてしまったらしい。


 この塊家だけが、正しくは知良だけが父の仇を取ると言い続けて抵抗の姿勢を続けている。そしてそれに従わない周りの反応にひたすら苛立ちを隠せずにいた。


「知念、お前はその怪我で臆病風にふかれたのだ。俺達は父と母の仇を何としても取らねばならない!」


 知念は詰め物入りの椅子に沈めていた体を起こすと兄の腕をつかんだ。


「兄さん。父さんは逆らう相手を間違えたんだよ。兄さんはすぐに誰かと結婚して子供を、いやそこまではとても待てない。兄さんの子供を腹にいれた女を人質として僕と一緒に辺境伯に差し出すべきだ。そこまでしても魁家が生き残れるかは分からない。でもそれをすることが領主としての僕らの義務なんだ」


「お前には、領主としての青い血を持つ者の誇りはないのか!」


 知良は、知念の腕を強引に振り払うと、荒々しく居間を出ていってしまった。


 何で分かってくれないんだ兄さん!このままだと僕は兄さんの首を持って、あの紫王弟の下に膝を折りにい行かねばならなくなる。魁家が生き残る為に。


 お願いだ兄さん分かってくれ。知念は残った左目からあふれた涙を拭った。


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