風華の新種に関する報告書
【神もどき】かみもどき
嘆きの森から現れたとんでもないマ者です。こいつに私の職場である、左2の監視所は完膚なまでに破壊されました。旧街道の湖畔で島の巨木と同化していた奴の親戚みたいなやつですが、こちらの方がはるかに手強かったです。
形は大きな幹がとっても太く、しかも枝分かれした楡の木が数本合体したような感じで、一本の木というよりは一つの森のように見えます。色は全体的に黒に近い褐色のような色をしていました。木のような姿をしていますが、枝に葉っぱはなく、節くれだっており、触手のようにうねうねと動きます。最悪です!
また主根の様なものも地面に対して広がるように生えており、そちらも枝と同じようにうねうねと動きます。旧街道で会ったやつは動きはしませんでしたので、この時点でこちらの方がはるかに格上ですね。というか別物に近いです。
根に相当する部分の触手と、幹に相当する部分をひねりながら進んでいると思うのですが、意外と早いです。馬車なら逃げられますが、走って逃げようとすると、どこかで疲れて休んでいたりしたらすぐに追いつかれそうです。あの水量があって、流れがめちゃくちゃ早い黒青川ですら簡単に渡って来ました。
動くときにはまるで油をさしていない扉を1000枚も開け閉めしたかのような音を立てていて、それを聞いているだけで気が狂いそうになります。本当に迷惑です。
この触手の威力たるやとんでもないもので、行く手を阻む森の木々や監視所やらも、その一振りで全てなぎ倒されてしまいました。人なんてまともに当たったら、空まで飛んでいきそうです。
先は細くなっていて、監視所ではこの触手の先っぽに足を掴まれ、川に引き込まれそうになりました。どうやらやろうとすれば、細かい事も出来そうです。この点は要注意です。
触手だけでも十分にやばいのですが、こいつが真にやばいのは、目に見えない黒い触手を伸ばして、人を支配できることです。湖畔の奴は私でも見えたんですけどね。こいつのは私では見えませんでした。
同僚の百夜には見えた様です。まあ百夜はアレなやつなので、一般人には見えないのだと思います。彼女の力を借りたら見える様になりました。詳細は後述しますが、個人的には見ない事をお勧めします。
支配という点でもこっちは別格でした。支配された人間は完全に奴の支配下でこちらを襲ってきます。しかも支配された人はマナまで使って、こちらを襲ってくるという凶悪さです。
この見えない触手ですが、なぜか私と百夜と白蓮には効き目が無いようです。といっても見えないくせに触られたりすると、とてつもない気持ち悪さです。見えないのにですよ!白蓮に聞いたら全く感じられなかったとの事ですから、人によって差があるのかもしれません。まあ、白蓮は元から鈍感なので、きっとそのせいだと思います。
私は触れと言われたら、ナ●ク●を百匹手に乗せる方がまだましなくらいです!
私や百夜のように支配されない人は、支配されかかった人から、この見えない触手を払ってあげることで、意識を取り戻してあげられるみたいです。実季さんや香子さんは気持ち悪さを我慢して払ったところ、意識を取り戻しました。
監獄でも百夜のマ石を借りることで、私でもこの見えなかった触手が見えるようになりましたが、正直なところ見たのを後悔しています。もうとんでもないを通り越して、地獄にでも落ちたかと思うような光景でした。
奴の本体から黒光りする血管のようなものが地面にも、監獄の壁にも一面に伸びていて、まるで黒い血液の生き物の内臓の中にでも落ちてしまったみたいでした。しかもそれが本物の血管みたいに脈打っているんですよ!
しかもその黒光りする奴もまたうねうねと動いて、人にからみついてこようとします。どうもそれに絡みつかれると支配されてしまうようです。その黒い触手と言うか血管というか、何とも言えないやつは、本体の周りを巻くようにも囲んでいて、本体がまるで羊膜につつまれた胎児みたいに見えました。
今まで見たどんな悪夢よりもひどい奴でした。思い出すと夜にお手洗いに行けなくなりそうです。
だけど旧街道に居た奴と同じで、火には弱いみたいです。白蓮が最初に火を着けた時点で、人に対する支配力が少し落ちました。実季さんはそれで意識を取り戻せました。また実季さんになぐられた伊一さんや、伊一さん、実季さんに殴られた桃子さんや念次さんもそれで意識を取り戻せたみたいです。
続けて角灯の油で火をつけて、薪をくべたところ大変よく燃えてくれました。最後は逃げ出したのでよく分かりませんが、後で聞いたら塵も残らなかったそうなので、やっぱり火には弱いみたいですね。
今度現れた時には穴に落として火をくべてやりましょう。
もっとも二度と会いたくないですし、会いません。
以上、新種のご報告になります。
警備方付き警備補/左2監視所勤務
風華




