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探索組

 既に森に入って3日目。僕は、無限さん、仁英(じんえい)さんの他に用哲(ようてつ)さん、創晴(そうせい)さんの合わせて5人で森に潜っていた。


 仁英さんは「探知使い」、用哲さんは「閃光使い」、そして創晴さんは「隠密使い」だ。年齢的には、用哲さんが仁英さんと同じくらい。創晴さんがちょっと若いがそれでも30前後ぐらいだろうか。無限さんと限界線まで潜るという事は、この人達は探索組の精鋭という事なのだろう。


 実際のところ、僕を除く4人とも3日目になるというのにまったく集中力が切れない。いや奥にいくほどより集中力が高まっていく感じだった。


 僕はと言えばもうへろへろだった。僕には予知能力としか思えない無限さんの観察と、仁英さんの探知を使い、うまく緩急をつけながらやっているんだろう。この3日目になって、かなり限界線に近づいたここでも、彼らは何気ない態度で雑談をしている。


「用哲とこの餓鬼はいくつになった」


 無限さんが飲水の煮沸をしていた用哲さんに問いかけた。用哲さんは少し背が高い中肉中背の人で、冒険者というよりは事務官が似合ってそうな人だった。


「無限さん、本当に同じことを何度も聞きますね。上はもう14で、下は10ですよ」


「お前みたいな一穴主義はおれには信じられないね」


「一度でも、嫁さんをちゃんともらってから言ってください」


 用哲さんが、無限さんの方を振り返る事なく答えた。


「俺みたいな人気者が嫁さんをもらったら、大勢泣くやつがでるじゃないか」


 その態度が気に入らなかったのか、無限さんがムキになって用哲さんに突っかかった。


「いや、驚いて心臓が止まるやつが続出ですよ」


 それを見た仁英さんがそう答えると、用哲さんも右手を上げて同意して見せた。


「なんだ仁英、お前は俺に喧嘩を売っているのか?」


 仁英さんが無限さんに両手を上げて、降参という態度を示した。まるで組の事務所での休憩時間か何かのやり取りを見ているみたいだ。ここは本当に嘆きの森の奥、それも限界線に近い所だよな。


「それよりどっちに出ます。ここが最後の補給点です。ここから先は他の組は何処も居ませんから無限さん次第ですよ」


 仁英さんの声の調子が急に変わった。この人達はこの辺の切り替えがとても素早い。さっきの雑談中も、それぞれが担当する方向を常に監視するのを忘れていたりはしない。


「そんな事を言って、俺の意見に頼っているから、お前達は俺を出し抜けないんだよ」


「でも全部止めて正解でしたね。この辺りがこんなにも静かだなんて」


 弩弓を肩に担いだ創晴さんが、気味悪そうに首をすくめた。


「この俺なんかでも、このやばそうな気配ぐらいは分かりますよ」


「そうだな。子持ちの針熊の面も見ない。そいつを狙う黒犬もいない。この辺りに居るはずの牛蛙はもっと手前に出てやがる。いつもは北の渡りが南だ。夜は帳の鳴き声もしない。やっかいな顎が地面の下をはいずる音も無し。むしろ奥に来るほど静かだ」


 そう答えた無限さんの顔も厳しい。


「火蜥蜴とか、やっかいな奴がでてきているんでしょうか? そういう奴がでると他の奴は逃げ出すと山さんから聞きましたが」


 僕は気になっていた事、彼らが何をやばいと言っているのかについて聞いてみた。


「そうかもしれない。だが火蜥蜴だとすれば、奴が餌をあさった焦げ跡があるはずだが、そんな匂いもしない」


 無限さんが火に手を当てながら答えた。確かにそうだ。マ者だって餌をとる。その跡もないということは違うという事か。


「最近出た新種ですか? 確か黒い甲羅の奴と、地面から出て来た黄色だか、白い奴でしたっけ?」


 その件については僕は噂話しか知らないが、この人達なら僕が知らない何かを知っているかもしれない。


「あれか、結局ちらっと見ただけで正体は何も分かっていないからな。だがそいつが見つかった時も、他のやつらは普通に居た」


「新種じゃなくて変種かもしれませんね。たまにいる、足が一本多い奴とかと同類のね」


 創晴さんが無限さんに答えた。


「創晴、見てないものを勝手に判断するなよ。想像力を働かせるのと空想は違うぞ」


 無限さんに指摘された創晴さんが、肩をすくめて見せた。


「いずれにせよ、方針と段取りが必要ですね」


 仁英さんが判断を求めて、無限さんの顔をじっと見る。


「右とか左とか言わずにまっすぐ先だ。ともかくこの状態が何処まで続いているのかは可能な限り確認する。マナ除けが持つなら限界線を越えるぞ。気配が見えた時点で、可能ならそこにいるやつを確認して撤退だ。この辺りには何もいないと分かっただけでも、俺達は十分には仕事はしているさ」


 無限さんの言葉に全員が頷いた。


「どうやら俺の力は、今回はあまり役に立ちそうにない。仁英、今回はお前が頼りだ。指揮を取れ。お前に従って動く」


 仁英さんが、『了解』と手信号で返した。


「前衛と斥候は、俺と白蓮でやる。創晴がつなぎで、用哲が殿だ。いざとなったら用哲の目くらましでひたすら逃げる。その時は創晴は隠れて用哲の支援だ。用哲が閃光を打つ間隔を間違えるなよ。視力を失って迷子になる。各自閃光弾と音響弾はいつでも使えるように用意しておけ。ただし使う時の合図の笛は忘れるなよ」


 無限さんはそこまで言うと僕の方をふり返った。そうかここまでの説明は僕のためという事か。他の人は十分に分かっている事なんだな。


「白蓮、間違った合図なんかしたら、てめえの●●●を切り落とすからな。それになにを今からへばってやがる。ここからが本番だぞ。マナ除けの量は細かく報告しろ。残量だけじゃない、使った時間、消費量もだ。お前の運が試される時だぞ。無かったら……」


 なぜか無限さんはそこでニヤリと笑うと、


「あの子にはもう会えないな」


 そう僕に告げた。


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