発令
「君のような、優秀な人は本当に大歓迎だよ」
狩手組の副組頭と名乗った男は、そう言うと私に右手を差し出した。
「確か君は査察方や、監督方にもいて、書類仕事も早いと聞いていたけど本当かね?」
「はい。仕事はしてきました」
「できれば、私の補佐という事でそれも手伝ってくれるとありがたい。もちろんその分の手当ては出す。ここの人間は、上も含めて、ともかく書類を書きたがらない人達ばっかりでね」
そう言うと、彼は執務机の上に山と積まれた書類の束を、ぽんぽんと叩いて見せた。書類から上がった埃が、彼の背後の窓から差し込む光の中に舞い上がる。
私のところの上も、書類をこちらに押し付けるのが上手な人でしたから、そのお気持ちはよく分かります。
「しばらく森から離れていただろうから、勘を取り戻すまでの間は、こちらの指示で大店組に属してもらう」
「はい、副組頭」
あなた達からしたら、私に自由に動かれるのは困るから、そう言う事になりますね。
「新種騒ぎの混乱は知っているね?」
「はい、副組頭」
「あれは、探索組だけが混乱している訳ではない。うちも巻き込まれて大混乱さ」
それはそうだろう。探索組が適切な獲物を見つけてくれないと、狩手組は動きようがない。
「これは非公式な話だが、大店組は特にやばくてね。古参組、特に大人達は、まあ、昔のやり方を思い出すようなものだが、大店組しかしらない連中は、指示無しでの狩りなんて経験してないからな。まさに右往左往という感じだ」
彼はそう言うと、手を組んで私を見つめた。
「それで君に白羽の矢が立った。大店組にも二つ名持ちが居ないわけではないが、狩り手、特に打ち手は居ない。君のような優秀な打ち手が是非に必要だという話しになった訳だ」
「はい、副組頭。状況は分かりました」
副組頭が頷く。
「入り給え」
先ほどから人の気配があった、執務室の入り口の扉に向かって、彼が声をかけた。
「失礼します」
四人の大柄な男達が部屋に入って来て、私の横に並んだ。
「では、君に面倒を見てもらう組を紹介しよう。各自、夢落卿に挨拶をしたまえ」
男達は副組頭に一礼すると、私の方を向いて一列に並んだ。見覚えのある顔ばかりだ。なるほど、彼らは慎重なだけでなく、芸も細かいという事か。私の行動を制限するにはうまいやり方だ。
目の前にいる男達は、全員、私が酒場で痛めつけてやった男達だった。




