表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/440

勘違い

 すでに薄暗くなった中、馬車は行きと同様に快調に走っていく。


 だけど私の心は行きと帰りでは大違いだった。今は、明日あの人にあったら何を話そうか、そして私があの人に、友達としてしてあげられることは何だろうか、という事を考えている自分がいる。


 前の男の子達は、今日会った人々の事を興奮気味に語り合っている。私もあの人と、この子達みたいに、こうして他愛もない話を出来るようになるだろうか?


「実季さんも驚いた? まさかあの旋風卿が風華さんの彼氏だったなんて」


 私の視線に気が付いたらしい、おとなしい方が私に語り掛けて来た。旋風卿? 彼氏?


「だよな。いいかげんな奴なら、なぐってやろうと言っていたけど、あの北壁戦役の英雄じゃなぐるわけにもいかないよな」


 うるさい方も私に話しかける。この子達は何をどう勘違いしているんだ?


「まあ、これですっぱりあきらめがついたな」


「うん、しょうがないね」


 本当に勘違いも甚だしい。もう我慢できない。


「はははは、はははは……!」


 革張りの椅子の上で、笑い転げる私を見て、二人がきょとんとした表情をしている。


「おい、お前。何を笑っているんだよ。俺たちが旋風卿には敵わないって言ったのが、そんなにおかしいか?」


「まあまあ、才雅。その言い方は良くないよ」


 この人達は全く分かっていない。もうこれだから、女を知らない男というのは始末に負えない。


「風華さんの彼氏は、さんざんいじられていたあの色白の男よ」


 二人が驚いた顔をして、お互いの顔を見ている。


「本人、あの白蓮という男から聞いたから、間違いない。あの男が風華さんをだまして、結社に入れた張本人よ」


「え、ええ?」


「あれが!」


 残念。二人には、あの女たらしの男をぜひ殴って欲しかった。


「もしかしたら、俺達にも機会はあるかな?」


「ありそうな気がする」


 がんばれ、少年達。私の大事な友達が、「いい(ひと)ほどだめな男に(みつぐ)って」やつにはなって欲しくない。それと、殴るなら遠慮せずに思いっきり殴って。


* * *


 あの友達は大丈夫かい?


 少なくとも宿舎までは、護衛をつけてあるから大丈夫でしょう。あの者達はそれなりに腕が立つ人達です。それに一応は手は打ちました。


 あんたがそう言うなら大丈夫だろう。何かあったらあの子は壊れるよ。


 長い手を使うと、この件が研修生同士のいざこざじゃなく、裏があると宣伝するようなものですからね。それに大人たちは教官を抑えているから、尻尾のあの子を、今殺すのは得策じゃないでしょう。後のことは……まあ分かりません。


 本当は監督官に、さっさと始末してもらいたかったんだろうけどね。裏は?


 多分、私達に死んでほしかった人達と同じ人達ですな。


 どこかで先手を打たないとじり貧だね。


 そのためにもあの子は必要です。私達の切り札ですよ。


 あの子を何かの道具みたいに言うのはやめておくれ。いくらあんたでも許せないことはあるよ。  


 失礼しました、監督官殿。でも勘違いはしないで頂きたい。これでも私は真剣に、あの子達の事は心配しているのですよ。


 それはもうとっくに首だよ、特別監査官殿。それにあんたの性根の曲がり具合も相当なもんだね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ