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お終い

 死人喰らいが発生しないように解体組によって黒犬の屍骸が森から運び出される。


 きっと打ち手の訓練の担当者からは相当な文句がでるだろう。何せ計画的にマ者を森において置くというのはかなり難しく限られた条件でしか行えない。


 それよりもあの子供は何なの。見かけが変わっているだけじゃないのは分かっていたが、これだけの黒犬を一気に屠るなんて。どのような力を発揮したらこんな事が出来るのだろうか?


 少なくとも私の知っているマナの使い手に、このような力を持つ者は居ない。


 ここは実績と経験がすべての場所だ。その出自や家柄などは基本的には考慮されない。出自に至っては保証する兄弟姉妹が居ればよく分からなくても結社はそれを受け入れる。ただし兄弟姉妹には重い責任がかかる。


 あの旋風卿が保証人になったのだ。ただの子供なはずはない。しかし、あの子にはそれ以外の情報が何もない。


 私の目の前には、拘束された理朝が天幕の下でうなだれて座っている。狩のやり方の都合上、城砦にはある種の定員みたいなものがある。いきなり数が増えられても困るのだ。基準さえ超えればいいというものではない。


 最近は貴族の息がかかったものが多くここに入ってきてると思ったら、どうやらここの匙加減という奴だったのね。十人委員会が本来の役割を超えて、その力をふるうようになっていたのも納得できる話だ。


 だがあの基準外の二人を、あの特別枠の二人を舐めすぎたのか今回はやりすぎた。


「美亜、あんただって分かるでしょう? 私達はいつまでも冒険者なんてものを続けられるわけじゃない。私達の人生は長いんだ」


 確かに最近の城砦の冒険者の人生は長くなっている。事務方による管理は以前に比べて事故をはるかに減らした。一方でその力が衰えた者が森に入ることは許されない。


 少数の森に入らないでここに職を得られるものを除けば、その間にその後の人生を賄えるだけのものを稼がないといけない。あるいは、ここ以外の結社に身を寄せるかだ。


 だがそれとこれは話は別だ。そのために研修生を殺めてまで自分の将来の何かを確保していいなどという事はない。


「長いかどうかなんて誰に分かるというの? それにあなたは将来を気にする必要はもうないわ」


「美亜!」


 彼女の目から一筋の涙が流れた。


「同じ組だったじゃない。お願い!多門さんに頼んでくれない。あの人なら上にも顔が効くでしょう?」


 あの人が一番嫌いな事だ。私がそんな事をすると思っているの?


「お終いよ、理朝」


 あなたはいつも少し計算高い人だった。それが組として有利に働くことも無かったとは言わない。でもそれ以上に組を維持する上では邪魔でありすぎた。だからあなたは力があってもここに来ることになった。結局、貴方はそれを最後まで理解できなかったという事なのね。


 そして私も何かが足りない人間なんだろう。だから、あの人は私を森にいれたがらない。いつか私もあの人と本当の組として森に入れる日が来るのだろうか? 入れる日が来ることを切に願う。


 あの子達みたいに。

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