台無し
「ここに居る者を全員下げさせて。今すぐ!」
何がどうなったら、あの子達が打ち手の訓練用の森に迷い込むなんて事になるの。美亜は狼煙玉の煙をにらみつけた。
理朝の多少の妨害があったにせよ、探索路をまっすぐ進んで先行役から物資を受け取るまですればそれで終了の訓練だ。指示票だって西へ進めと書いている。どうして南に進むの?
いくら目測を誤ったって、方位石が壊れでもしない限り南になんて進むはずはない。
「もう狼煙玉が上がってから半刻だ!美亜、あきらめな!美亜!」
もしかしたら開始時のマナ除けがまだ効いているかもしれない。片手ぐらいなら私一人で何とか出来る。いや両手ぐらいの黒犬だって私一人で何とか出来るかもしれない。
「全員下がって。理朝、あなたもよ」
理朝が信じられないという顔で私を見る。
「いくらあんたが二つ名持ちだって、一人じゃ絶対に無理だ!」
うるさい理朝。どの面下げてあの人の前へ出れるんだ。
* * *
どうしてこの女は融通が利かないんだ。昔からそうだ。
あんたまで死んでしまったら、証人というやつがいなくなってしまう。
せっかくのきれいな絵がだいなしじゃないか!




