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余裕

 倫人さん達が先行組として森に入る。


 その指示は普段は大店組を見ている、理朝さんがおっさんと呼んでいた教官が出した。美亜さんと理亜さんの姿は見えない。おそらくどこかから私達の行動を監視しているのだろう。


 私達への指示票は彼らから半刻後に入って、彼らが設置する最初の私達への指示まで一刻(二時間)以内にたどり着く。そこで私達への指示を確認後、特に問題がなければ先に進む。何も問題が無ければ先行組は探索路沿いに移動することになっている。


 私達が探索すべしとなっている領域までは最低限二回は先行組の指示を確認して進み、探索に入る前に物資の補給を受ける。それには私達のお昼ご飯も入っている。


 指定された領域を探索してその地に居るマ者の数、種類を確認して戻る。基本的には座学で行った事務方の指示と前を行く組の指示に従っての行動を実地で行うための訓練だ。


 指示を見落としたり、自分達の位置を見失ったりしない限りは特に問題ない。もしも見落としたりしたら、美亜教官からのそれはそれはつらい罰が待っているに違いない。罰ぐらいで済むならいい。才雅君と朋治君はその時点で関門の向こうに送り返されてしまうかもしれない。それはちょっと悲しすぎる。


「百夜、周りは?」


「先に行ったつまらないやつしかいないぞ」


「今回はあんたが頼りだからね」


「今回は餌はないのか?」


「この間おごってもらったばっかりだからね。明日の朝は倍は白麺麭くすねてくるからお願い」


 とりあえず百夜に頭を下げる。不満そうな顔をする百夜。


「よかろう。お前は我の餌係としてよく働くのだ」


 はいはい。これがうまく行ったら、明日はあなたの言う事をなるべく聞いてあげることにします。


「では、探索組も出発してください」


 今日は曇りで日が差さない。日時計は使えないと思った方がいい。時間を確認する手段が一つ欠けるのは厳しいな。才雅君と私が長時間を管理するための砂時計の砂を落とす。お互いに手信号で最初の方向と目標の確認を行うと久しぶりにマナ除けを被って森へと入った


 この森には整備されたのものか、多くの人が歩いてできたものかは分からないが探索路があった。私達は探索路沿いを才雅君を先頭に少し距離をあけて、私、百夜、朋治君の順で進む。


 私は目標となる他のより高く目立つ木を決めて、他の木の高さからその木の高さを推測し、拳と指を使って見かけの角度を求める。また方位石の目盛りからその方向を記録する。


 しばらく進んでその見かけの高さと方向を確認しながら砂時計の時間と合わせて記録して、どれだけの時間でどの方向にどれだけ距離を進んだかを記録していく。


 森の中では当然樹木の関係から目標が常にみえるとは限らないというか、見えたら確認するという感じになる。本当は目標は複数あった方が確実かつ正確になるのだけど、まだ慣れていない私達が複雑な事をやりすぎるとそもそも前に進まなくなるので、とりあえず目標は一つだ。


 私の頭は目標から自分達の位置を割り出すための三角形で一杯になる。だが何故か、この手の計算が得意な百夜がすぐに答えを出してくれる。さすが便利娘。その結果から才雅君がこちらに出してくる方向と速度が指示票の目標に照らして問題ないか確認して合図を返す。


 先頭の才雅君も同じことをやっているはずだが、いまいちというより、かなり信用できない。まあ、今のところは探索路を進んでいるだけなので、途中で路を間違えるなんて事をしない限りはあまり問題にはならないですけどね。


 そのせいか、先頭を進んでいる緊張感からか、はたまた周囲警戒に気を取られているのか、こちらを確認する回数が少し少な過ぎに思える。まあ、多すぎても進めないから今はあまり問題にする必要はないかも。あの単純男にあまり多くの仕事をやらせすぎると、全てが破綻する気もする。


 一亥に満たない時間が過ぎた時点で先行組の最初の印を問題なく見つけることが出来た。百夜に周囲の警戒をお願いして才雅君も含めて全員で確認する。


 前触れの印に少し距離を置いて本印。どちらも同じ内容だ。次の行き先と彼らが認識しているこの位置と彼らが森に入ってからここに着くまでにかかった時間、ここを出るまでにかかった時間が記録されている。自分達と彼らの時間差を入れて計算するとだいたいこちらが認識していた位置とそうずれはない。


 だが才雅君はもっと手前だと思っていたらしい。それでお前はあんなに急ぎ気味だったのか? いくら探索路沿いに進むだけで行けそうだからって、もう少しまじめに計算しなさい。


「ここまでは順調だね」


 印を見ながら朋治君が安心したようにつぶやいた。百夜はすでに地面で寝ている。


「ああ、問題無しだな。指示票見る限りは探索領域に入るのに遅れないように、ただ進めばいいだけじゃないのかな? 前の奴らも思ったより早く進んでいる」


「前が居ない想定だからね。道なりに進める限りはさっさと進んでしまおうとしているのかな?」


 何も問題はないのだけど、先行組が想定よりすごく早く進んでいるのは確かだ。彼らは荷を持っているはずなんだけど、体力的にも私達はまだまだ彼らとは差があるという事だろう。


 でもなんだろうこの順調すぎる展開。以前に何度か感じたなんかいやな予感がする。


「美亜教官が、マ者が待っているとか漏らしてなかった? これ道なりに進んでいくだけで本当に大丈夫かな?」


 あの口ぶりは絶対何か仕掛けてきますよ。


「それはきっと探索領域に入ってからの話じゃないのか? 前のやつらも予定より早く進んでくれているし、俺らも早めに進んだ方が探索時に何かあっても時間的な余裕は取れるよな」


 おやおや、才雅君。君にしては考えていますね。確かに葉っぱを見ても裏にはほとんど黒ずみはない。ここには大したマ物がいるようには思えない。


「うん、確かにせっかく前も急いでくれているし、探索に時間が取れる方がいいね」


「では、前に追いつかない程度で急ぐ方針で行くぞ。いいな?」


 起きろ百夜。


「それと足を引っ張るなよ」


 方針はいいですけどね。才雅君、君の態度はちょっとでかすぎですよ。


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