美亜組
美亜さんもさすがに百夜に恐れをなしたのか美亜組はそこでお昼ということになった。さすが美亜さん、素晴らしい判断です。ここで何か追加したら百夜は絶対に暴れます。
おかげでお昼は研修所内の食堂でちょっと早めに頂くことができました。あれだけ走らされたのですからお腹ぺこぺこです。
料理はというと鶏肉と野菜の汁に浅漬けの葉っぱに、なんとお米を蒸したものです。これって東の湿地帯の方で取れるやつですよね。鶏肉の汁をかけて食べると絶品です。城砦の研修所最高です。でも午後の事を考えたら食べ過ぎは禁物ですかね?
「さっきの投擲すごかったね。妹さんってもしかして必殺使い? あんなの見たことないよ」
二人組の腰が低い方が私の前に座って声をかけてきた。あの、誰もそこに座っていいなんて言っていないですよ? 女性と同じ卓に座る時はちゃんと先に声をかけて許可を取ってください。
「妹は少しは使えるみたいだな」
おい、そこの態度がでかいやつ。お前は誰も同席していいとは言っていないぞ。それにお前達は一つも的に当たってないだろう。地面に頭をこすりつけて私に感謝の意を示してからお昼を食べなさい。
「誰だ、この本当につまらない奴らは?」
百夜が口にご飯を一杯詰めたままで私に聞いた。ちょっと、口の中の物が飛んで私の汁にはいっているじゃない。
「昨日会ったでしょう。私達の前にいた人達」
「覚えてないな。まあ、我の邪魔をしなければそれでよい」
腰が低い方(確か朋治さんだったかな?)がくすりと笑った。この人は愛嬌がありますね。
「妹さんておもしろい子だね。風華さん達が居てくれて本当によかったよ。いや周りの人達がすごすぎてどうしようかと思っていたんだ」
それって、ぜんぜんほめていないこと分かっています?
「それに風華さんの赤毛って、本当にきれいな赤毛だね。こんなきれいな赤毛のかわいい子なんて、僕の村にはいなかったからびっくりだよ。そう思わない才雅?」
これはほめていると思っていいんですかね? 振られた才雅という男がびっくりした顔で腰が低い方を見ている。
「そうですかね? 美亜教官もきれいな赤毛ですよ」
どうせなら私もああいう大人っぽい色が良かったな。
「ああ、そうだね。美亜教官も赤毛だったね。でも怖くてとても眺める気にはならないよ」
その気分は少し同意です。君は態度がでかい方と違っていい奴じゃないですか。
「風華さんて、ちょっと温香ちゃんに似ているよね?」
「温香さんですか?」
「才雅の思い人でね。僕の村の一番の美人だよ」
態度のでかい方の顔が真っ赤になる。君も少しはかわいいところがあるじゃないですか? それに村一番の美人に似ているなんて朋治君、君も意外とお世辞が上手ですね。
「才雅は、昔から温香ちゃんが大好きでね。ここに来たのも彼女と一緒になるためなんだよ」
あら、態度がでかい男も根は純情なんですね。
「え~、その子にちょっとでも似ているというのは光栄ですね」
才雅君(これからは君付で呼んであげます)の顔がもっと真っ赤になった。
「朋治さんは、どうして城砦まで?」
「才雅に誘われたのもあるんだけど。僕はずっと才雅に頼りっぱなしで、ここに来たら少しは誰かに頼ってもらえる人になれるかなと思ったんだけど、どうかな? ちょっと自信がなくなってきたところさ」
彼はそういうとちょっと恥ずかし気に水を口にした。
全然恥ずかしがることなんかないですよ。すごく立派で素敵な理由です。きっといつか、あなたのことを頼りにする素敵な女の子に出会えます。私が保証してあげます。才雅君も彼女の為に城砦を目指すなんてかっこいいじゃないですか?
才雅君も、朋治君もそれぞれ城砦を目指した理由があるんだね。私みたいにここしか行く宛てがなかったのに比べたらはるかに素敵で立派な理由だよ。見直した!
「才雅さんも彼女と早く一緒になれるといいね。朋治さんも絶対に頼られる人になれます。私が保証します。研修中の間だけど私達は一つの『組』だね。『美亜組』だ」
私は皆に水をもって席を立つように即した。百夜、お前もだ。今回は無視は許さん。
「では皆々様、『美亜組』の未来を祝しまして、『乾杯』!」
金属の器が合わさりきれいな鈴のような音を奏でた。彼らの笑顔が見える。きっと私も同じ顔をしている。どんな時でも仲間がいるというのはいいな。
「うるさいぞ駆けだし共!ここは酒場じゃないんだ」
すいません……。




