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危険な奴

『どうして私が御者台に、こいつと座っていないといけないんだ?』


 美亜はとなりに座る少し色白の男を見た。童顔なのだろうか? 年齢もよく分からない、いかにも頼りなげな男だ。見かけの雰囲気だけはあの人に少しだけ似てなくもない。愛想はこちらの方があるだろうか? 特に何も話しかけても居ないのに、にこにこして御者台に座っている。


 それにお偉いさん達が『山さん』とか言っていた冒険者は何者なんだろう? 穿岩卿と同世代の間では有名人らしいが、そんなすごいマナ使いがいたという噂はあまり聞いたこともない。少なくとも二つ名持ちではなさそうだ。今度、時間があるときに調べておこう。


 それにあの娘。ただの町娘にしか見えないのに……。


 あの子は危険だ。絶対に危険だ。見かけは全然違うけど、あの子はどことなく少し姉さんに似ているんだ。


 だからあの人はきっと私を追い出して下にいるんだ。もうなんなんだろう。あの子はもちろんこの男も森に潜ってマ者とやりあうようにはとても見えない、ただの一般人にしか見えないのに……。


「あなた、本当に冒険者なの?」


 書類上は分かっている。


「一応は。それにまだなって二年ほどしかたっていませんから。駆け出しも駆け出しです。そういえばまだ名乗っていなかったですね。『白蓮』と言います」


 馬鹿ね。それはこっちだって書類で分かっている。普段どんなものを狩っているかとか専門は何か等を聞いているに決まっているでしょう。


「それは、こちらも分かっています。書類には何も狩った履歴が残っていないのだけど。二年間何をやっていたの?」


「僕は採取専門です。葉っぱとかですよ。おかげで八百屋と呼ばれていました」


 採取専門? 二年間も?


「まあ、そんな奴はいないですよね。おかげで山さんが動けなくなってからは、どの組にも相手にしてもらえなくて一人でした」


 確かに、こいつの書類には狩猟歴も無かったけど組歴もなかった。まるで誰かが架空の冒険者でもでっち上げたかのような内容だ。こいつは本当に見かけ通りの男なのだろうか? それともどこかの誰かが用意した何かだろうか? 不用意な事は聞けない。


「あ……呆れますよね」


 あの人が言うように顔にすぐ何か出るなんて私はまだまだだ。


「いいえ、ただ珍しいなと思っただけです」


 話を変えた方がいい。


「あの赤毛のかわいらしいお嬢さんとはどのようなお知り合いですか?」


「師匠の娘さんです。居候させてもらっていました」


「居候?」


「はい。僕は二年前より前の記憶がないんです。それで師匠のところに居候させてもらってました」


 そんな馬鹿なことがあるの?


 間違いない。その山さんとかいう冒険者に絡んでこれは何か裏がある。絶対にこの男は見かけ通りじゃない。私がもっとちゃんと調べておけばよかったんだ。何で私はこうだめなんだろう。そうすればあの人だって首にならずに済んだかもしれない。

 

「どんなお嬢さんなんですか? どうやらお父様のお知り合いがこちらには沢山いるみたいですけど」


「ふーちゃんですか? そうですね、周りを照らす太陽みたいな子とでも言うんでしょうか?」


「太陽ですか?」


「一緒にいると周りも明るく、元気になる。そんな子です」


「べた褒めですね」


「はい。とても人気がありました。本人はぜんぜん気が付いていませんでしたけど。若い男で彼女の店に買い物に来るのはみんな彼女目当てでした。結社の若手も僕をいじりに来てるんだと言ってましたけど大嘘です。ふーちゃんに会いに来てましたよ。僕はみんなからの嫉妬で大変でした」


 この男だけじゃない。あの娘もやっぱり危険だ。絶対に危険だ。お姉さまに相談しないと……。そういえばお姉さまはどこに行ったんだろう?


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