情報収集
「結社が統治している街だよ。普通の宿なんかは無理じゃないかな?」
もう日が暮れかかっている。酒場を探すにはむしろ遅い方がいいのかもしれないが、白蓮に私と百夜ちゃん付きの一行が、酒場を探して聞いて回るのはちょっと目立ちすぎる。今夜の宿も探さないといけないという話になって今に至るだ。
それにお店の人も長時間陣取っている私達が、かなりうっとうしくなっているような気もする。すいませんね、行くところを探しますから、もうちょっとだけ居させてください。
百夜はお腹が一杯なったのか、食卓にうつぶせになって熟睡している。君のその寝方は誤解を生むから、寝るなら寝るで生きているのが分かるように寝てくれると嬉しいのだけど……。
「でも、ここは商人の街でしょう? 山ほど宿があると思うんだけど、それ全部だめなのかな?」
「僕達3人の組み合わせは目立つしね。全うなところはだめだと思うな。今日の件でも向こうの手際があまりに良すぎるんだよ。僕らがいつ入ってくるのか完全にばれていたとしか思えない。こちらを追ってきた時だってまっしぐらという感じだったしね」
「というと?」
「多分、昨日の宿の時点でばれていたんだと思う」
「さあ、宿の者で出ていくものが無いかはずっと見てたんだけど、先触れとか使われたらもうお手上げだからな~」
「つまり……」
「全うじゃない宿しか無理という事になるね。僕達、二人はいいとして。困ったな百夜ちゃんをどうするか考えないといけないな」
お前が頭の中で何を考えているのかを考えると、頭が痛くなりそうなので横に置いておくとして、全うでない宿屋というのはどのあたりにあるものなんでしょうかね?
「まあ、これは結社じゃなくても分かる話だから僕が聞いてくるよ。ふーちゃんが聞いて回るわけにもいかないしね」
当たり前です。
* * *
あ、お嬢さん。お水を頂いてもいいですか? 長々とすいませんね。
あの子ですか?
ご両親と田舎からこちらに越してきたばっかりでしてね。幼馴染です。僕は、冒険者なのであちこちうろうろしてたんですが、最近こちらの方に移って来ました。本物ですよ。胸の証をおみせしましょうか?
いえいえ、冗談ですよ。やっと両親から許可を頂いて、こうして二人きりになれそうだったんですが、妹をつれてこられました。
まあ、冒険者というのは信用してもらえないんですね。でもここで色々決めないと、もう二度と機会はないのかもしれません。妹はあの通りに寝てますしね?
そうですね。人生色々決断しないときはありますね。住み込みですよね。その彼氏とお会いになるときは? そうなんですか。それは残念ですね。貴方でしたらまたいい人がすぐに現れます。
ええ、絶対ですよ。他のお知り合いの方とかは? 右手の先の市場の横ですか? 狭い通りですかね? なるほど、表札などは?
目印は口に人差し指の表札ですか? いや~助かりました。人生の大事な賭けですので。ちなみにお代はどれくらいなんでしょうか?
なるほど。ちなみに一晩借りるという事は可能でしょうか? だいぶ遅くなりましたし、何分向こうは初めてでしょうから……。
そうですか。交渉になるんですね。
うんうん、そのお友達はなかなかのもんですね。ありがとうございます。大変助かりました。また寄らせていただきます。少ないですけどお釣りは取っておいてください。
ええ、知り合いでですか? 今度聞いておきます。でも冒険者はあまりお勧めしませんよ。お嬢さん。




