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作戦会議

 私達は側溝を伝って別の出口からでた。


 子供の時のように屈んで走り抜けるなんて事はもちろんできない。服も泥だらけになるが、マナ除けの匂いに比べたらこんなものは楽勝だ。それにこちらには秘密兵器百夜がいる。腹が減ったと言おうが、文句を言おうが、ともかく追手がいるかどうか確認しまくりで何とか難を逃れた。


 この子確かにめちゃくちゃ便利。みんながずっと居眠りしていても、文句の一つも言わないのがよく分かった。


 ただし彼女が分かるのは力のあるもの、つまりマナ使いやマ者だけらしいので、私や白蓮のような一般人や、それを偽装している何かには役にたたないらしい。もちろん動物とかはまったく分からないそうで、一の街の近くで野犬に襲われたときに、『あれは分からん!』と叫んだ意味がようやく分かった。


 こういうことは、もっと早くちゃんと説明して欲しい!


 どうやら追手を巻いたらしい私達は、市場の近くの目立たない飯屋の目立たない席に座って、小声で今後の方針を確認していた。辺りはすでに夕方の気配だ。ともかくこれ以上食事を与えないでいると、百夜ちゃんに腕の一本ぐらい本当に食べられかねない。


「うん、まあまあおもかろいな」


 食事を与えて少しは機嫌が直った百夜ちゃん。


「白男。食べないのなら我がもらうぞ」


「だめですよ。すぐに他人の食料に手をだしちゃ。食べ物の恨みは怖いんです」


「当たり前だ!干し肉は忘れてないぞ!」


「ふーちゃん、少しまじめに考えよう」


 何言っているんだお前は? ずっと真面目に考えているだろうが? お前達がそれを邪魔しているんでしょう!


「百夜ちゃん、みんなが捕まったのは間違いないんだよね?」


 白蓮が百夜ちゃんに確認した。


「そうだ、我が最後に探った時にはまだ生きてたぞ。まあ、そのあとは知らんけどな」


「困ったな。正直なところ、ここがどこかもよく分かってないんだよ。もう一度結社まで行けるかどうかすら怪しいところなんだよな」


 白蓮が右手でおさまりの悪い髪をより悪化させる。


「やることは決まっているでしょう。みんなを助ける」


「とんでもない奴が一人いたぞ。あいつらでも無理だった。我は人相手にはつなげられない」


 大丈夫、今回は切った張ったは無しだ。


「うん、方法はもう決めている」


 白蓮と、百夜ちゃんが一斉に私を見る。百夜ちゃんに至っては、相当疑わしそうな顔をしているのは何?


「城砦に行って、偉い人達にお願いする」


「お願い?」


 白蓮がびっくりした顔でこちらを見る。


「世恋さんが城砦の上と交渉して、何とかすると言っていた。捕まってもすぐには殺されないって。でも今回、私達を捕まえに来た人達は、きっとその交渉自体をさせたくない人達だと思うの。だってこっちは抵抗する気もなく、わざわざ出向いたんだよ」


「ふーちゃんにしては珍しく正論だ」


 お前、私の事をいつもどう思っているんだ?


「だから、みんなが何かされる前に私達が城砦に出向いて偉い人達と交渉する。無罪放免と行かなくても時間は稼げるはずよね。世恋さんが言っていた。歌月さんの叔父さんは偉い人だって。それにもしかしたら父の知り合いとかいて、その人達を頼れるかもしれない」


 父が誰かに売ったかもしれない恩を娘の私が返してもらうんだ。


「問題はどうやって城砦に行くかだね」


 城砦って隣町ですよね?


「馬車の定期便とか出てないかな?」


 白蓮が首をひねる。


「お尋ね者がそれに乗って行けるのかな? 見る限り普通の人達は行き来しているようには見えないけど。確か、城砦って冒険者か、許可された人しか行けないって話を聞いたことがある。それにいったいいくらかかるんだろう。歌月さんから預かったお金に僕のへそくりを足してもせいぜい銀貨3枚というとこなんだけどね。追剥でもするかい?」


 私は白蓮の足を蹴っ飛ばした。冗談でも物騒な事を言うんじゃない。私達はお尋ね者なんだぞ。自覚無さすぎ。


「ふーちゃん、痛いよ。ともかく僕らは情報も知識も無さすぎる。聞いて回りたいところだけど結社にいって聞くわけにいかないしな。どこかに冒険者が集まる酒場とか……あっ!」


 白蓮が急に手をうった。まばらな客の注目をおもいっきり浴びる。お前もう一度、足を蹴られたいか?


「百夜ちゃん、ぼくの料理を全部食べたよね。勘弁してほしいな」


 お前はさっき、私にまじめに考えろって言ったよね?


「ふーちゃん、まじ痛いって。違う違う、ご飯の話じゃなくて山さんから弟子希望の人の話を聞いたことがあって、確かその人は今は冒険者を引退して関門で酒場をやっているという話だったんだ」


「なんでも一の街に越して来てからも、何度もしつこく弟子にしてくれって言ってきたらしくって、最後は山さんが八百屋に婿入りしたので、やっとあきらめたという話だった。まあ、僕が弟子になれたことを感謝しろと言いたかったと思うんだけど……」


 それは今はどうでもいい。


「その人の名前とか店の名前とか憶えてないの?」


「名前は確か……」


 がんばれ白蓮。いつも使っていない頭を使うんだ!


「でも店の名前はぜったい忘れない。だって『緑の三日月』という名前なんだよ」

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