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面倒

 私、風華が今、何をやっているかと言えば、草原の中の湧き水でお洗濯です。自分の肌着をじゃぶじゃぶと洗っていると、緑香ちゃんのことを思い出して目頭が熱くなります。なんで洗濯しているかと言うと、


『今度こそ城砦に向かってはいほ~ですね』


 と言った私に対して旋風卿はあのかわいそうな生き物を見る目で、私の頭のてっぺんから足の先まで見た挙句、


『そんな姿で街に入るつもりですか?』


と言い放ってくれました。今思い返しても耳の後ろが熱くなるどころではありません。燃えています。18(もうすぐ19だけど)の乙女に向かって、『そんな姿』だと!


 たとえそれが事実だとしても、言っていいことと悪いことがあるだろうが!


 確かにマナ除けの土臭い匂いに、ろくに体もあらっていないから、酸っぱい匂いもしているとは思いますけどね……。でもだからって、そんな言い方はしなくてもいいじゃないですか? 泣いちゃいますよ。本当に泣いちゃいますよ。同じ台詞を世恋さんに向かって言えます? きっと二度と口きいてもらえないですよ。 


 私の横では世恋さんが胸下着を外して、私よりはるかに豊かな胸を腕で隠しながら、何やらそれを布のようなもので巻いている。その横には男性向けの目立たないゆったり目の木綿の上着がおいてあった。


 ちなみに白蓮は目隠しをして後ろ手に紐で縛って転がしてあります。お前が教えたとおりに結んだからそう簡単にははずせんぞ。


「世恋さん、その上着と下穿って男物ですよね?」


「そうですね。男性用のものですね」


 その長い髪を頭の上に器用にまとめていた世恋さんが答えた。布できつくまいたらしくその豊かな胸もあまり目立たなくなっている。でもこれって相当苦しいだろうな……。


「重罪人ですからね。一目で冒険者と分かる出立は避けないと、色々と面倒なことになりますし……」


 すいません、思いっきり忘れてました。そうですね。私達『重罪人』でした。マ者相手では関係ないので忘れていました。


「風華さんも、結社に居た時の服はまだありますよね? それを着てください。復興領からの難民あたりに見えるのが一番安全だと思います」


 確か背嚢の一番奥にしまってあったはずだ。あれも洗わないと……。髪も洗わないといけないけど、森から出たからマナで起こした風で乾かせるかな?


『人の住むところに近づくのはめんどくさい』


 父が言っていた言葉だ。昔聞いたときには何を馬鹿な事を言っているのだろうと、気にも留めなかったが、確かにとても面倒なことなのかもしれない。実際、私達はとても面倒な事になっている。

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