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あべこべ転生!?~あべこべ世界での僕は新しい出会いに飢えている~  作者: あだち りる
第三章「未来ある小説家に出会いを求めて」
28/43

25「忘れてましたよ」

「どうして氷室さんが…?」


「え、えっと…それは私の台詞と言うか…何と言うか…えっとぉ…」


改めて紹介しようと思う。

この、あたふたと可愛くテンパッているのが、氷室ひむろ 氷柱つららさん。


不定期に行われる時雨君朝のお散歩コーナーの時に出会った人だ。

その時は彼女の美しい美貌に目を引かれ、ただ見惚れていた。


美貌もそうだが、何よりも彼女が書いた小説の物語が美しかったのだ。

まるで物語と風景が共にあり、その場でその物語に立ち合っている様な感覚。


彼女が作り出す物語に魅了されないものはいない、そう断言できる。


おっと、つい熱弁しすぎてしまった。

まぁ僕は彼女の小説の信者なので、そこは許して貰いたい…えっと、一度語るときりがないので、ここらで彼女の紹介は終わりにしとこう。


それよりかこの状況だ。


「えっと、僕は新入生としてこの学校にきて、それで僕が入れる部活がここしかないって聞いて…それで氷室さんは?」


「私はこの文系部の部員です…この学校の二年生…です」


………年上でした。


この見た目でか、とつい思ってしまう。

氷室さんの身長は百五十もないと思う…そのせいで勘違いしていた。


けど一つ安心した…僕ロリコンじゃなかったぁ…!そこけでも知れて良かったよ。


ん?見た目で見惚れていた時点でロリコンだろって?


………勘のいいガキは嫌いだよ。


「すみません、今まで年上だと思わなくてタメ口を聞いてしまって…」


「い、いいですよ!全然!そう全然大丈夫ですから!だ、だから今まで通りタメ口…で」


「わかった、それじゃあ今度は氷室さんがタメ口にする番じゃない?」


「へ?」


「だってそうでしょ?僕は敬語禁止なのに、氷室さんがありなんてズルくない?」


「え、で、でもぉ…」


「でも?」


僕は氷室さんに近付き、じ~っと見詰める。

すると、段々と氷室さんの顔は赤くなって行き、ぐぎぎ、とゆっくり視線をずらして「…わかった」と、やっと観念してくれた。


「うん、それじゃこれから同じ部員としてよろしくね!」


「ぶ、部員?」


「そう、僕ここに入るから」


「え…えぇ!?」


「まぁそんなことは置いといてさ、この部活って正式に部活動登録されてないよね?」


「えっと…経緯を話しますとーー」


氷室さんの口から聞いた話をまとめよう。


まず、この部活が作られた経緯としては、氷室さんが静かに執筆できる場所が学校にも欲しく、それを天塚先生に頼んだ所「この教室を文芸部として使っちゃえー!」と先生が言っていたから、有り難く使わせて貰っているらしい。


なので、ここは文芸部と言う名の氷室さん専用の執筆場になっているらしい。


なるほど、と僕は納得した。


てことはーー


「僕の役目は氷室さんの作品を読んで感想を出すことかな?」


「い、いいんですか?」


「いいもなにも、僕は君の小説が大好きだから、むしろこっちから土下座してお願いしたいくらいだよ」


なんなら僕の第三の秘技『圧倒的謝罪』を見せようか?ふっ…僕の土下座に震えろ。


「な、何してるんですか!?土下座はしなくていいですから!」


あ、いつの間にか体が勝手に土下座の体制に入ろうとしていたのか…クッ…つい久し振りに土下座が出来る喜びにうち震えたせいか…気を付けないと。


「それじゃお願いしてもいいかな?」


僕は立ち上り、平静を装いながら聞く。


「わ、わかりました…」


氷室さんは参ったと言わんばかりにそう言った。


僕って以外に頑固なんだよね。


「それと氷室さん、タメ口」


「あ」


忘れさせた、とは言わせない。


「なんなら僕の事を下の名前で呼んでくれてもいいんだけどな~?」


「ッ~!は、灰原くんはいじわるだ!」


氷室さんは赤面しながらぷいっとそっぽを向いた。


な、なんだろう…前も思ったけど、氷室さんと接しているとこう…いじりたくなっちゃうと言うか…や、ヤバイ、本格的に僕の中に眠るS君と友達になってしまう。


『僕と契約して、Sになってよ』


やめて!それ完全に悪魔のお誘いだから!


僕は全力でそのS君に風穴を空けまくって、契約を阻止した。


ふぅ…危なかった。


その後、なんとか氷室さんと仲直りして、僕は家へと帰ったのだった。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄

「ただいま~」


と言うと、トトト、と階段の方から聞こえてきた。


「お帰りなさいお兄ちゃん!」


そこには晴が天真爛漫と言う言葉が相応しい笑顔で僕を迎えてくれた。


はぁ…可愛い。


そして、ふと疑問に思う。


「あれ、晴部活は?」


「テスト期間中だから休みなんだ~」


「あ、そうか、テスト」


僕は合点の行く回答に一人納得する。


「そんな事よりお兄ちゃん!」


「ん?」


「例のあれはまだなんですか!?」


「例のあれ?」


何を言っているのかよくわからなくて、僕はつい晴に聞き返してしまう。


「そんなの決まってるじゃん!膝枕!!」


「……あぁ」


そう言えばそんな約束してましたね…すっかり忘れてましたよ。


「私はもう我慢の限界なのです!」


この世界の膝枕って本当に国宝級だよね。


いやそう思うのも理由がありまして、母さんのパソコンを借りて『男性 膝枕 価値』で調べたんですね。


するともう消化しきれない程のスレがバンバンとーー


『膝枕って女のロマンだよな?』

『男に膝枕してもらったらもう死んでもいいって奴挙手』

『男の膝枕?なにそれ、美味しいに決まってるよな?』

『自分の息子に膝枕してもらったとか言う妄想女発見wwwwwwww』


祭り状態してたね。


てか膝枕一つでなんでこんなに話を広げられるんだろうか…膝枕、恐ろしい子。


はぁ…もうあのスレ思い出すだけで疲れが。

いやもういい、あのスレの事は忘れよう、そうしよう。


それよりーー


「わ、わかったから…そんなキラキラした目で見つめないで」


「やっっったーーーー!!」


凄く喜んでいる晴の姿を見ていると、不思議と微笑みがこぼれてしまった。


晴を見てると、なんだがいつもつい笑っちゃうんだよなぁ…妹パワーかな?


そして、僕と晴はリビングへと。

僕はカーペットに座り、ぽんぽんと膝を叩き「さっ、おいで?」と、晴れに言った。


「そ、それじゃあ失礼します…」


晴は顔を赤く染めると、ゆっくり、緊張した面持ちで僕の膝に頭をやった。


「どう?」


「最高…だよ」


感触としては制服越しだし微妙だと思うけど、きっと、この状況が晴にとっては嬉しい事なのだろう。


久しく触れあって来なかった僕と、こうやってまた触れ合えてる事実。


今まで晴を避けていた僕、けれどようやくその関係が戻った今、段々とまた紡がれている。


一つまた、思い出が増えて行く。

そんな当たり前のように見えて、出来なかった事は…それはきっと、晴にとって、幸せすぎる事なんだ。


「ありが…っとう…おにぃ…ちゃん」


「どういたしまして」


僕は優しく、晴の頭を撫でた。

リビングに、鼻のすする音がした。


こうやってまた一歩、僕と晴は昔に近づくのだった。

兄妹愛…素晴らしい。

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