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49.黒いモヤ、靄が蠢く!前半

虫、注意報が発令中です。苦手な方は、退避して下さい!

 私は実験成功の後数日たって迎えに来た七郎八郎九朗十郎と一緒にストロング国に帰ることにした。


「「「「御主人様、お待たせしました。」」」」


「久しぶりね。七郎八郎九朗十郎。」

 私の呼びかけに四人は嬉しそうに尻尾を振った。

 彼らの尻尾は今にもはちきれそうに揺れている。


 四人は待ち合わせ場所であるセンが経営する宿屋で馬を預けると昨日のうちに用意してあった私の荷物を見送りにきた一郎たちと一緒に馬車に積み込んでくれた。


 トンボ帰りになるが私がこれ以上ここにいると契約違反になってしまうので仕方がない。


 私は宿屋の主人でありストロング国のスパイであるセンに魔道具が入った箱を渡した。


「これは?」

 センが怪訝な顔で箱を受け取った。


「本当は直接渡したかったんだけど完成したのが今朝方だったんで代わりにマッツに渡して頂戴。」

 センは目を瞠った後頷いた。


 私はここに残ると言い張った一花たちと抱擁を交わすと馬車に乗り込んだ。

 御者席には八郎が座り両脇に九朗と十郎が馬に乗って馬車にピタリと張り付くように並んだ。


「じゃ行くわね。くれぐれも無理はしないように。」

 私の言葉に一花たちは素直に頷いていた。


 本当は迎えに来た四人と一花たちを加えた八人で帰る予定だったが昨晩になって急に残ると言い出した一花たちと一悶着した後最終的に迎えに来た七郎をこちらに残すということで今回は私だけが向こうに帰ることになった。


 私の心配そうな顔に一花たちの後ろにいた一郎と七郎が無言で頷いていた。


 はぁー仕方ないか。

 まっ彼らがいるから大丈夫だろう。


「でもいいわね。今度私が戻るように言った時は迷わず帰って来るのよ。」

 私の言葉に頷いた一花たちを後にして私たちは一路ストロング国に向かった。


 馬車は見慣れた街を通り過ぎ郊外にある王都の門に向かった。

 なぜか私の気持ちは慣れ親しんだ故郷を去る寂しい感じではなくなんでか第二の出発の地であるストロング国に戻れる喜びの方が大きかった。


 何時の間にこの国が故郷でなくなったのか。

 やはり両親を殺された時からだろうか?

 それともあのバカ王子に裏切られた時か・・・。


 そんなことをつらつらと考えているうちに馬車は王都の門を通り過ぎていた。

 王都の門を通り過ぎると周囲の風景は様変わりしてすぐに荒涼としたものに変わってしまった。


 そんな中をしばらく走っていたら急に御者台にいた八郎が武器を構えながら馬に鞭を振るって速度を上げた。

 両脇についている九朗と十郎も鞘から剣を抜いていた。


 前の小窓を開けた八郎が嫌な感じがするのでこのまま駆け抜けますと言うと小窓が閉まってさらに馬車の速度が増した。


 どうやら何かがこの馬車の後を追ってきているようだ。


 最初訪れた時にオアシスを襲った盗賊だろうか。

 王都の近くなのに大胆なことだ。


 人数によっては私も攻撃に加わることを覚悟して馬車の中で武器を手に持った。


 一応念のためにと後方に探査魔法をかけた私の顔は逆に真っ青になった。

 なんだかわからないが探査魔法にかかる数が小さくて逆に数が多すぎるのだ。


 無数に小さなものがこっちにグングン迫ってくる感じがした。


 いったいなに?

 何が起こっているの?


 私は馬車の小窓を開けると遠くを見ることが出来る魔道具を取り出して後方を見た。


 背筋がゾワリとして鳥肌が立った。


 モウモウと黒い靄のように広がった塊がこちらに物凄い勢いで向かって来る。


 なにあれ!


 もう一度遠くを見ることが出来る魔道具に送る魔力を多くしてそれを見る。


 そこには小さなバッタもどきが無数に映っていた。

「バッタ?なんでそんなものがここに・・・。」


 私の思考はその蠢く異様な集団を見たことで一瞬にして現実逃避に陥った。


 あんなものがあるわけがない・・・。


 真っ白になった頭がしばらくして働き出したのはそれらが出す羽音がブンブンと近づいて来たからだ。


 こんなものに近寄られたら目も当てられない。


 私は魔力で作ったシールドを後方に出現させた。

 しかし私の張ったシールドは飛んでいるバッタを一時的に止めはしたがすぐに彼らはそれに噛り付き食べ始めた。


 えっシールドを食べてるの!

 なんで?


 ちょっ・・・ちょっ・・・待って・・・。

 こんなのどうすればいいの。


 魔法で作ったシールドを食べるってことは魔法が通じないってことよね。


 あんな小さなものに剣が通じるはずもない。


 うそぉー。

 やだぁあんなのに喰われて人生が終わるなんていくらなんでも・・・。


 いくらなんでも悲しすぎるぅー。


 いやよぉー。

 こんな最後なんてまだ・・・まだ・・・復讐だって・・・。


 ギャァー!


 私の悲鳴を乗せて馬車は砂埃を上げながら走って行った。


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