14.難問
騒ぎを起こしたダン王子たちを五郎は離れに案内すると”お寛ぎください”の言葉を残して部屋から下がった。
「ダン王子。」
レッドは使用人が下がったのを見届けた後、彼に厳しい口調で詰め寄った。
「なんだレッド。」
ダン王子は足元の板ではない何かを編み込んだ床に興味津々で足先をグニグニさせていた。
「あの変態なヴォイですら手をワキワキさせながらも我慢したのになんですか、あなたは!。」
レッドの叱責にダン王子はキョトンとした顔で見返してきた。
「なんでそんなに怒っているんだレッド。そりゃいきなり触ったのは悪かったけど別にキスしたわけじゃないし問題ないだろう。」
ダン王子の言にレッドは頭を抱えた。
まったくこの人は。
レッドはこめかみを押さえながら獣人にとって耳を触られるのがどういう行為になるのかをとっくりと説明した。
「へっ耳に触るというのは求愛の意味があるの!」
それじゃ知らないうちに彼女じゃない六花に求愛したっていうこと。
ストロング国ってどうせ歴史も浅いから正妃が獣人でも問題ないよな。
レッドの隣でダン王子が恐ろしい独り言を呟いていた。
その呟きをしっかり聞いてしまったレッドは気がつくと声に出してダン王子の妄想に突っ込んでいた。
「いくらストロング国でも正妃が獣人じゃ問題あるだろ。」
心の中ではその後に馬鹿王子を付け加えた。
「いい加減にしてうるさいわ。」
隣で騒ぐ二人にヴォイがピシャリと言い放った。
「ヴォイ?」
いきなり何ごとかブツブツと独り言を呟くヴォイにレッドはとうとう頭がいかれたのかとダン王子を見た。
見るとダン王子もしまらない顔でどこか空想の世界に飛んでいた。
俺この国の将軍辞めようかな。
レッドはそんな事をぼんやりと考えた。
そこに引き戸の向こうから声がかけられた。
「夕餉をお持ちしました。」
ダン王子がその声にすかさず許可を与えると引き戸をスッと開いて猫耳の美少女がお盆を手に部屋に入ってきた。
「六花!」
ダン王子がそう叫んで猫耳美少女のふさ耳に飛びついた。
「ダン王子。」
慌てたレッドが動くより早く彼女の後から入ってきた犬耳の美少年がダン王子の手をパシッと叩き落とした。
「申し訳ありませんお客様。鍋が熱いのでお座りになってお待ち下さい。」
そう言ってダン王子を席に促すとその前に熱々の鍋を置いた。
レッドは止めに入った彼に頷くとダン王子が猫耳美少女に何かよからぬことをしない様二人の間を遮るように座った。
その後入ってきたもう一人の犬耳の美少年とも協力して配膳の間ダン王子がイランことをしないように目を光らせた。
三人は食事を運び終えると引き戸の所で失礼しますと言ってお辞儀をすると部屋から下がっていった。
レッドは何ごともなく配膳が終わりホッとすると置かれていた箸を持った。
「ダン王子そう拗ねてないでおいしそうですし食べましょう。」
レッドはふさぎ込んでいるダン王子に声をかけた。
「お前はショックじゃないのか?」
ダン王子はレッドに声をかけられて顔を上げると熱い鍋に箸をつけているレッドを恨めしそうに睨んだ。
「何がですか?」
レッドは汁を啜りながらダン王子に目を向けた。
「だってさっきの彼女の言葉ひどすぎないか?」
「どこがですか。もっともだと思いますけど。」
ダン王子はさらにレッドを睨み付けた。
「お前はあの猫耳美少女を見分けられるのか?」
もちろんだとレッドは頷いた。
「なんで見分けられるんだ。全員があんなに可愛いいんだぞ。それを見分けるのなんて不可能だろ。」
そりゃダン王子だけですよ。
どう見たって全員が髪型髪の長さ瞳の色が違うのに見分けられない方がおかしい。
やはりこれは病気だな。
レッドは嘆きながらいつの間にか器用に鍋をつついているダン王子に飽きれた目線を送った。
俺一刻でも早く金稼いでこいつらと縁をきろう!
そうしないと常識が何か忘れそうだ。
レッドはそう思いながら熱い鍋をつついた。
うまっこの鍋うまっ。
絶品だ!




