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第9話 嘘つきは食べられてしまうよ……



 疑う事もせず、これで決着がつくと能天気に喜んでいらっしゃるようですが、残念ながらそちらに有利に働くとは限らないのですよ……。


 何故なら貴方達が心の底から信じ、守ろうとしているそのベビーピンクの砂糖菓子さんは、分け隔てなく双方に嘘をついているのですから。


 守護聖獣様相手ではもう、お得意の泣き落としは通用しませんし、都合よく誤魔化すことも出来ません。


 さて、ここからどう切り抜けるおつもりでしょうか?


 随分と険しい表情をされるようになってきましたが、いつもの手段が通用しなくなる事に焦っておいでのようですわね。虚偽が暴かれ、不利になりつつある事に漸く気づかれました?


 ――おお、怖い。


 そんなに睨むと、貴女の背後にいらっしゃる崇拝者の殿方達にも気づかれてしまうのでは……? せっかくの()()()が台無しになりましてよ。




 ――ふふふっ。これは、もう一押しで、可憐な少女の仮面も剥がれ落ちそうですわねぇ。 





「幸いドリー男爵令嬢、貴女も僅かながら聖魔法の力をお持ちと伺っています。一度は神竜様に直接、お会いになった事がある筈。あの方は心の内まで全てを見透かされる。隠し事など、ましてや嘘など一切つけません。そのことは、身をもってご存知でしょう? 今おっしゃったことが正しいと主張なさるなら、彼の方の前で公平に決着をつけると致しましょう」


「言われるまでもないっ。白日の元に晒して彼女の身の潔白を証明する事は、こちらも望むところだっ。殿下っ、ご決断を!」


「……いいだろう。貴女こそ、後で後悔する事になっても知らないからね。ほらユーミリア、行こう……ユーミリア?」


「ひぃぃぃっ、いやぁぁっ!?」


「ユーミリア嬢!?」


 カタカタと震え、怯えたようにその場に座り込みそうになるのを、ロバート王子が咄嗟に腰に回していた手に力を入れて支えた。


「おや、どうされたのです? お顔の色が真っ青ですが……まさか神竜様の前で虚偽が詳らかになるのを、恐れていらっしゃる……とか?」


「えっ……あっ」


「何を言われるっ。言いがかりはやめていただこうっ」


「そうだそうだっ。彼女は優しくて、とても繊細な令嬢なんだ。これは、貴女の高圧的な態度に身が竦んでしまっているだけだ!」


「まぁ……そうですの。まさか今更、自作自演の罪の重さに怖じ気づいた……とかではありませんのね?」


「勿論だっ。彼女には貴女と違い、後ろ暗いところなど何もないのだから。そんな脅しで、ユーミリアを怯えさせるなっ」


「貴方様には聞いておりませんわよ、殿下。いかがですの、ドリー男爵令嬢?」


「わ、私、あんな恐ろしい所へなど行きたくありませんっ」


「恐ろしい? この国で一番安全な守護聖獣様の元が……ですの? あり得ません。殿下もよくご存知ですわよね、()()()()に、あの方は決して危害を加えられませんことを」


「当たり前だろう。ユーミリア、君は嘘をついていないのだから、何も恐れなくていいいんだよ」


「ロ、ロバートさま……わ、私っ」


「大丈夫だ、私がついているだろう?」


「で、でも……」



『嘘つきの子は、神竜様が食べてしまわれるよ……』



 そこへ追い討ちのように、アンドレアがそっと囁く。


「ひぃっ」


 呟かれた内容が耳に入った途端、ビクリと肩を振るわせ、恐怖を顔に貼り付かせる。


 ――過敏に反応したのは、彼女一人……。


 砂糖菓子さん、貴女、分かりやす過ぎでしてよ。これでは自ら嘘だと認めたようなものではないですか。


「御伽噺だと思っておられましたか? 彼の方は偽りを何よりも嫌われますの。万が一、神竜様の御前で貴女の偽証が暴かれた場合、その罪は言い伝え通り己の命で購うことになりますわねぇ……」


「何故!? 何で私が、そ、そこまでする必要があるんですかっ。貴女がさっさと今ここで、悪事を認めればいいだけの事じゃないっ」


「殿下に婚約者がいると知りながら近づき、不貞を働いた令嬢の言葉など、客観的にみて信憑性が無いでしょう? それに国王陛下自らがお決めになった婚約を軽んじる殿方達も、貴族社会では信用されません。これは、ドリー男爵令嬢、貴女の為でもあるのですよ」


「そんなの嘘よっ。ロバート様に愛されている私に嫉妬して、神竜への生け贄にするつもりなんでしょうっ。ロバート様、私、怖いっ。どうかお助けください!」


「……彼女がこれ程行きたくないと言うんだ。きっと守護聖獣様にお会いするのが畏れ多くて遠慮しているに違いない。無理に連れて行く必要はないのではないか?」


 ――何て早い手のひら返し……。


 第一王子殿下……貴方、ユーミリア嬢の言葉にコロコロ転がされ過ぎではありませんこと?






読者の皆様、いつもお読みいただきありがとうございます。

1/12(日)、『ヒロインに悪役令嬢呼ばわりされた聖女は、婚約破棄を喜ぶ』の第3話と第4話の間に、『素質』というサブタイトルで一話、加筆しました。それに伴い、第3話も大幅に加筆、修正済みです。(多分、お読みにならなくても、話の内容に影響はないかと思われます)


これからも分かりやすい文章を目指して随時、加筆、修正をしていきます。よろしくお願いします。

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