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「分かったわ!あなたってもしかして……」
「あっ、いや!こ、これには深い事情が」
「あなた、ご主人様のご家族かご親戚の方ね!」
「……え?」
「だってそうじゃなければ、私に会いにここまで来れないないはずだもの。うん、そうだわ!」
私がそう考えた理由は、ご主人様の瞳と同じ色をしていたこと。それにここにたどり着けたこと。この家には十年住んでいるが、これまでこの家を訪ねてきた人は、年に一度予算を持ってきてくれるあの御者くらいだ。
今までは特段気にしてはいなかったが、ある日町で仲良くなった友人を家へ招こうとしたことがあった。友人も快く了承してくれて、その日を楽しみにしていたのに、いくら待っても友達がこの家にやって来ない。
もしかしたら友達の身に何かがあったのでは?そう思いすぐさま友人の家に行くと、友人に特に変わった様子はなくとても元気だった。だから私は尋ねたのだ。
『どうして家に来なかったのか』と。
すると帰ってきた返事は、
『行ったけど、家なんてなかった』
それを聞いて驚いた。
家がないはずなんてない。間違いなく私が住んでいる。でも友達が嘘をついているようにも見えない。
どういうことだと不思議に思いながら、家に戻り周囲を確認してみた。すると今まで気づかなかったが、家を囲むように四方に何かが置かれていたのだ。
よく考えてみればここはこの国で一番の大貴族、ペンゼルトン公爵家が用意した家。そして私は肩書きだけのお飾りの妻。
公爵様は、認識阻害の魔道具を使ってでも私の存在を隠したかったのだと思う。
その事実に少し寂しい気持ちになったが、それがご主人様の望みなら従うまで。
それからは友達を招くことなどはせず、大人しく暮らすようにした。ごく稀にこの家に気づく人もいたが、それはすべて道に迷った人だけ。どうやらここに家があることを認識していなければ、正確にたどり着けないようだ。
だから今日この人が私に用事があると言ってここに来たということは、初めからここに家があると知っていたことになる。
しかし公爵家が高価な魔道具を使ってまで隠していた場所を、簡単に教えるとは考えにくい。だけどこの人が公爵家の人間だとすれば納得できる。というかそれしか考えられない。
ご主人様がわざわざここに来ることはないから、きっとご兄弟か従兄弟に違いないと思ったのだ。




