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召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~  作者: さとう
第六章

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報告

「新たな魔人……?」


 メテオールの元に入った報告は、信じられない話だった。

 この話を持ってきたのは、白い教皇服を着た十代半ばにしか見えない少女。『審判』のガブリエルだ。メテオールの戦友であり、最強の二十一人の一人なのだが、メテオールはこのガブリエルが昔からどうも好きになれない。

 現在、メテオールは王城の一室で仕事をしている。そこにガブリエルが『遊び』に来て、この報告をしたのであった。

 ガブリエルは、白い髪をかき上げ、紅茶のカップを口元へ。


「……ふぅ。メテオール、紅茶の質に気を配った方がいいわね。ああ、私から伝えておくわ。明日からはもう少しまともな紅茶が飲めるはずよ」

「ガブリエル。そんなことより」

「ええ。魔人ね」


 ガブリエルはカップを置く。

 メテオールと同年代であるはずなのだが、ガーネットと同じく外見が若々しい。昔、その理由を聞いたがはぐらかされた。

 ようやく、ガブリエルは語る。


「最近、小さな集落や村が頻繁に襲われ、いくつも滅ぼされていると報告があったの。その襲撃方法が独特でね。金品は無視、ただ住人の命だけを奪う……何の目的もない『殺し』が続いている」

「…………」

「目撃情報では、襲撃者は合計二人。それぞれ、白い髪に褐色の肌、頭部にツノが生えていたそうよ」

「……魔人か」

「ええ。特徴からして間違いない。でも、その魔人の細かい特徴が、私たちの知る魔人と一致しないのよ……残りの魔人は『色欲』と『強欲』だけど、容姿がどうも違うのよね」

「つまり、別人だと?」

「ええ。恐らく、魔帝が新たに『召喚』した魔人……」

「ふむ、なるほどの」


 メテオールは顎鬚を梳く。


「……調査が必要じゃな」

「ええ。ですので……A級召喚士を使います」

「なに?」

「学園にいるでしょう? A級召喚士リリーシャ……ふふ、あの子は手柄を欲しがっている。この辺りで魔人討伐なんてどうでしょう?」

「馬鹿な。相手は魔人、A級召喚士では」

「なら、S級を?」

「……王国にも人材はいる。等級が高くても、生徒はまだ未熟じゃ」

「ふふ……知らないのですね? アースガルズ王国の召喚ギルドに所属している召喚士は全て、アースガルズ王城の依頼を受けました。王城と貴族の護衛に、ギルド所属のA級召喚士は回ります。調査などで動かせるのは、学園所属の召喚士だけ」

「……馬鹿な」


 メテオールは驚愕した。

 つまり、魔人は王国に近づかない。その王国を守るためにほとんどの召喚士が国の警護に回る。

 魔帝の調査なども遅れているのに、守ることばかり考えている。


「決まりましたね。学園所属のA級召喚士に命令を出します。魔人調査の命令をね……」

「ガブリエル。なぜお前は等級にこだわる?」


 それは、全く関係のない質問だった。

 メテオールは立ち上がり、ゆっくりと窓際へ向かう。

 ガブリエルはクスっと笑うだけだった。


「べつに、等級にこだわりなんてありません。私は……楽しければいいのです」

「…………」

「ねぇメテオール、昔はよかったわね。魔人と戦って、魔獣もいっぱいいて……私だけじゃない。仲間も大勢いて、毎日が新鮮だった。でも、今はとっても退屈。少しでも面白いことが起きそうなら、面白おかしくして楽しみたいじゃない?」

 

 ビキッ──と、メテオールの触れたガラスに亀裂が入る。


「退屈なら、わしが相手してやってもいい。ただし……生徒を、この国を巻き込むな」

「あら怖い。こんな老人の相手をしてくれるのかしら?」

「……必要なら、な」


 空気が重苦しくなった。

 だが、ガブリエルは笑った。


「とにかく。今動けるのは学園所属のA級召喚士とS級のみ。それ以下の等級は学園の護衛に回ってもらう……ふふ、連絡しなきゃ、ね?」


 ガブリエルは立ち上がり、ふわりと流れるように部屋を出た。

 その姿を見送り、メテオールは大きくため息を吐く。


「わしは、こんなところで何をしているのか……無力じゃの」


 ◇◇◇◇◇◇


 生徒会室。

 リリーシャの元に報告が入った。


「魔人の捜索任務か……ふふ、手柄を挙げるチャンス。と言いたいが……チッ、S級との合同任務とはな」


 王城から、正式に届いた依頼だった。

 新たな魔人が現れた可能性あり。S級召喚士と合同で調査せよ。

 学園の守護もあるので大勢では行けない。S級は全員参加するだろう。リリーシャは生徒会役員と使えそうなB級召喚士を思い浮かべる。


「ふん。ここで手柄を挙げてやる」


 リリーシャは、届いた依頼書を強く握りしめた。


 ◇◇◇◇◇◇


 S級校舎、教室にて。

 授業後のHRで、ガーネットから驚きの話があった。


「ご、合同依頼?」

「そうさね。A級召喚士とS級召喚士の合同メンバーで、新たに現れたと思われる『魔人』の捜索、および可能なら討伐をする」

「新たな魔人って……」


 アルフェンは、レイヴィニアとニスロクを見る。だが二人は特に気にしてなさそうだ。


「魔神様が召喚したんだろ。うちとニスロクの代わりか、アベルとヒュブリスの代わりか。それかオウガの代わりか……魔神様、うちらの世界から好きな召喚獣を呼べるし、たぶん強い奴が召喚されたと思うぞ」

「くかぁぁ~~~……」


 レイヴィニアは購買で買ったクッキーをもりもり食べ、ニスロクは突っ伏して寝ていた。HR中の飲食と昼寝を堂々と行う辺り、この二人はまだ常識がない。

 すると、ガーネットが特に気にせず言う。


「ま、そんなところだろうね。最近、王国外領土で、いくつもの町や集落が壊滅させられる被害が起きている。被害人数は千人以上……アースガルズ王国に、魔人の調査と討伐命令が下った」

「質問! あのー……そういうのって、生徒のあたしたちがやるべきことなんですか?」


 フェニアの質問はもっともだ。

 アースガルズ王国の領土外にも大きな国はある。それこそ、召喚士部隊や騎士隊などがいるはず。中にはA級召喚士、もしかしたらS級に匹敵する召喚士だっているはずだ。

 ガーネットは、首を振った。


「周辺国は自国の警備を強化するため、強力な召喚士は派遣できないそうだ。さらに、この国は最強の二十一人、さらに魔人を三体も討伐したS級召喚士がいる……二十一人がこの国から離れられないことを知らない周辺国は、戦力が集中しているこの国を頼るのは当然のことさね」


 かつて魔帝を封印した最強の二十一人が、アースガルズ王国から出ることができない『呪い』にかかっていることを他国は知らない。

 恐らく、面白くないはずだ。世界の恐怖であった『魔帝』を封印した二十一人が、アースガルズ王国だけを守護している状況に。

 だからこそ、こういう事態が起きた時に強く言える。『アースガルズ王国には最強の二十一人がいる。我が国は弱小故、自国を守るのに精一杯だ。魔人討伐は任せた』と。

 ウィルは、首をコキっと鳴らした。


「『色欲』……そいつが出てくる可能性は?」

「あるだろうね。滅びた町や集落の生き残りの報告を聞いたが、かなりの美形らしいよ」

「…………」


 ウィルの雰囲気が変わる。

 すると、アネルが挙手した。


「あの、合同依頼ですけど……詳細は?」

「……そうだね。説明するよ」


 アネルが軌道修正したことに、ガーネットは少し驚いた。

 ガーネットは煙管を取り出し咥える。口元が寂しいようだ。


「学園の警備もあるから全員は行けないね。S級からは五名、A級から四名、B級から三名、計十二名の調査・討伐隊を結成する」

「あの、おばあ様……少なくないですか?」

「S級が五人いるんだ。十分だろう?……って言われてるのさ。実績がありすぎるのも困ったねぇ」


 サフィーががっくり肩を落とす。

 メルは挙手し、ガーネットを睨むように言った。


「人選は?」

「……S級はアルフェンを筆頭に、ウィル、アネル、フェニア、サフィーの五名を考えております」

「わたしは? ……ああ、ふーん、そう。じゃあわたしは引率で付いて行くわ。どうせあのクソ親父が『メルは連れて行くな』って言ったんでしょ?」

「お察しの通りです」

「ガーネット。わたしも行くから」

「……王族の命令でしたら」

「ふふ、そういうこと」


 ガーネットは、メルを連れて行くことに反対しているわけではない。ただ、国王の命令でメルを連れてはいけないのだ。だが、メルも王族。王族の命令には逆らえないガーネット。国王の命令はメルの新しい命令で上書きされた……屁理屈だったが。

 アルフェンは、嫌そうな顔で挙手。


「あの、A級って……」

「説明する必要あるかい?」

「いえ、わかりました」

「ふふ、そういうことさね。A級からはリリーシャ、そしてサンバルト殿下、A級班引率のオズワルド、そして学園所属のA級召喚士ウルブスの四人さ。B級からはダオーム、グリッツ、キリアスの三人がA級召喚士の補佐に入る」

「え、グリッツ? あいつ、そんなに強かったっけ?」


 フェニアは首を傾げた。

 グリッツは一期生の中でも上位の成績を持つエリートだ。将来はA級召喚士になれるかもしれない逸材……と言われている。

 

「とりあえず、明日の放課後に合同会議がある。いいかい、もめ事を起こすんじゃないよ」


 恐らく無駄だろうけどね。ガーネットは誰にも聞こえないようボソリと呟き、ようやく煙草の火を点けた。

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