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召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~  作者: さとう
第八章

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モグとジャガーノート

 自らの意志を心の内側へ向けた。

 なんとなく、できるような気がしていた。

 ドレッドノート、そしてニュクス……二人と戦ったときから、妙な感覚があった。

 そして、アルフェンは目を開けると、そこはイザヴェル領地の領主邸裏庭。ではなく、リグヴェータ家の裏庭だった。

 アルフェンが見たのは、柔らかくなった地面だ。

 地面が盛り上がり、小さなモグラがひょっこりと顔をのぞかせた。


「モグ……」

『…………』


 モグは地面から這い出ると、ふわりと浮き上がる。

 アルフェンは手を伸ばすが、触れることはできなかった。


『……すまない、アルフェン』

「え、何が……?」

『ニュクス。彼女が復活した……私がちゃんと彼女を倒せていたら、こんなことには』

「それは違う。モグ、お前はドレッドノートや魔帝の召喚した召喚獣を大勢倒したんだろう? お前がヒトのために戦わなかったら、世界は終わってた」


 アルフェンがそう言うと、モグはぷるぷる身体を揺らす。


『だが、結局アルフェンが苦労することに……』

「大したことない。だって、お前がいるからな。俺とお前なら、どんな奴だって……」


 と、アルフェンはここまで言って口を閉ざす。

 モグにはすぐわかった。


『私の『第三の瞳(マクスウェル)』だが……アルフェンには使いこなせない。人の身である以上、私の眼は強すぎてアルフェンの身体を蝕む……でも、ニュクスは身体を作り変えた。召喚獣の素材を使って『第三の瞳(マクスウェル)』に適応できる肉体を作り上げた。全てにおいてアルフェンより上、それにドレッドノートの能力もある……『王』の能力は『女王』に通じない。私の『終焉世界』も『硬化』も、ドレッドノートには通用しない』

「それでも、戦わなくちゃいけない。ニュクスと戦えるのは俺だけだ。モグ、この世界を守るために、力を貸してほしい」

『…………』


 モグは俯いてしまった。

 召喚獣の王ジャガーノートでも、召喚獣の女王ドレッドノートを宿したニュクス・アースガルズには敵わない。そういう態度だった。

 だけど、アルフェンは諦めない。


「なにか、何かないのか?……どんな方法でもいい。俺は、あいつを倒さなきゃいけない」

『……すまない』

「モグ……」

『私は、アルフェンを死なせたくない。私は……アルフェンが大好きだから』

「え?」

『すまない、アルフェン。私は……』

「……あるんだな? あいつと戦う方法が」

『…………うん』


 モグは、アルフェンと目を合わせた。

 つぶらな瞳に映るのは、悲しみ……そして、迷いだった。

 

『ニュクスは、この世界で初めて召喚獣を寄生させて武器として使った。装備型の召喚獣じゃなくて、自分の身体を武器にして……それが発現したのは、私とドレッドノートが戦っているときだったの』

「モグ……?」


 モグは、語りだす。

 アルフェンは黙って聞くことにした。


『私は、相打ちに近い形でドレッドノートを倒した。でも……ニュクスはドレッドノートを失うことを恐れて、自分の身体を媒介にドレッドノートを再召喚したんだ。そうして生まれたのが、ドレッドノートを宿したニュクス。でも……不完全だった。不完全だったけど、手負いの私を倒すには十分だった。私の肉体が滅びて召喚獣の世界に還り、不完全だったニュクスは二十一人の英雄に倒され、封印された』

「…………」

『その時、私は聞いたんだ。ニュクスは『召喚獣と一つになる。全く新しい姿、寄生型』って……戦ってわかった。その名の通り、寄生型は人間に寄生して身体能力を極限まで高めている。でも、あくまで『寄生』なんだ。もしかしたら、ドレッドノートを引き剥がせるかも……』

「そ、そんなことが?」

『わからない。可能性はある。ニュクスに寄生しているドレッドノートを引き剥がすことができれば、もしかしたらニュクスを倒すチャンスはあるかもしれない』

「…………」

『でも、私やウィル、アネルもだが……寄生型は肉体に寄生しているんじゃない。魂と魂に寄生している状態だ。召喚獣の魂は意志が消えて、力だけが残されてる。私は少し特別だから、こうして会話できるが……きっと、それも長く続かない』

「…………」

『魂と魂を引き剝がす。そんなこと、できるかどうか……でも、可能性はそれしかない』


 アルフェンは頭を押さえる。

 だが、勝機は見えた。ニュクスとドレッドノートを引き剥がす。これが勝利への道だ。


『それと、もう一つ……』

「え、まだあるのか?」

『ああ。でも、これは最後の手段。今は言えない』

「……なんだよそれ?」

『……怖いんだ。【これ】はきっと、やっちゃいけない手段だ。私はやりたくないし、アルフェンにもやってほしくない。でも……もしかしたら、もしかしたら』

「モグ?……一体、なにを」

『すまない。アルフェン……仲間たちと考えてみるんだ。ニュクスとドレッドノートを引き剝がす方法を』

「ぁ───あ」


 すると、モグの姿がかすれ、景色が歪み始めた。

 モグはにっこり笑ったような気がした。


『恐らく、あと一回……こうして会話できるのはあと一回だけだと思う。アルフェン───また───』

「モグ!!」


 モグに手を伸ばすアルフェン───。


 ◇◇◇◇◇◇


「ひゃぁぁ!?」


 もにゅん、と……柔らかい感触がした。


「んあ……あれ?」

「あ、あ、アルフェン……あんた、なに掴んでるのかしら?」

「え……」


 目を開けると、アルフェンはフェニアの胸を右手で鷲掴みしていた。

 柔らかく、右手に収まらないサイズだ。風呂上りで薄着なのか、シャツ越しでも形や大きさがよくわかる。フェニアはどうやら寝ているアルフェンを起しに来たようだ。

 寝ぼけ眼だったアルフェンは、すぐに青くなり……手を離す。


「あ、フェニア……え、いや、その」

「…………」

「あ、あはは。わ、わるい───」

「ふんっ!!」

「おぶぅっ!?」


 強烈なビンタを喰らい、アルフェンはベンチから投げ出された。

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