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召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~  作者: さとう
第八章

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イザヴェル領地へ

 アルフェンは、久しぶりに自宅へ戻った。

 自宅と言ってもリグヴェータ家ではない。アースガルズ王国で購入した自宅だ。

 ここは、メルの部下に管理を任せている。ここに来たのは、報奨金の金貨を取りに来ただけだ。

 アルフェンは、自宅の地下室に保管されている山のような金貨樽の一つを開け、適当に財布に入れた。

 地下から出ると、三人のメイドが出迎えてくれる。


「用事は終わった。引き続き、管理よろしくな」

「「「かしこまりました。ご主人様」」」

「あ、ああ。えーと……ヨハンナ、ルイーナ、マイン」


 アルフェンに忠実なメイド三人は、お辞儀したままだった。

 三人に見送られ、玄関まで向かう。すると、執事のヘイムダルがいた。


「旦那様。いってらっしゃいませ」

「うん。たまにしか帰ってこないからさ、みんなも自由にしていいよ。ほい」

「こ、これは……」


 アルフェンは、金貨の入った袋をヘイムダルへ渡す。

 平民が二年間は何もせず遊んで暮らせるくらいの金額だ。だが、家の地下にある金貨の数千分の一もない。適当に袋に入れた金貨だった。

 

「好きに使ってよ。ま、追加給金ってやつだ」

「旦那様……ありがとうございます」

「うん。じゃあ、あとはよろしく」


 そう言って、アルフェンは外へ。

 外には、フェニアたちS級が勢ぞろいしていた。

 フェニアは、腰に手を当てて言う。


「遅い」

「悪い悪い。じゃあ、行きますか」


 マルコシアスの背には、特注で作らせた背負い型の頑丈な箱が取り付けてある。ここには、アルフェンたちS級の荷物が入っていた。

 そして、大きな取っ手付きの揺り籠がある。揺り籠の中は円形で、ぐるりと囲むように椅子が取り付けられている。籠の一部が引き戸になっており、全員が座った。

 フェニアは、グリフォンに言う。


「グリフォン、かなり重いと思うけど……無茶しないでね?」

『キュルル……』


 グリフォンは軽く鳴き、フェニアに甘えた。

 そして、全員が揺り籠に乗り込むと、取っ手部分をグリフォンが掴み空を飛ぶ。

 さらに、グリフォンはマルコシアスを見て目で嗤った。


『はぐれるなよ?』

『貴様がな』

 

 アルフェンには、そんな風にやり取りをしているように見えた。

 グリフォンとマルコシアスは仲がいい……だが、この時ばかりは互いに燃えていた。

 フェニアとサフィーは互いに顔を見合わせる。


「やば……グリフォン、火が付いちゃったかも」

「ま、マルコシアスもです……」

「おい、まさか」


 アルフェンが二人に確認しようとしたが、遅かった。


『グルォォォォーーーーーーンッ!!』

『キュアァァァーーーーーーッ!!』


 それぞれが競争するように飛び、走り出した。

 マルコシアスとグリフォンは、『どちらが先にイザヴェル領地に着くか勝負』しているようだ。

 揺り籠は恐ろしく揺れ、中にいるアルフェンたちも揺れる。


「「うおぉぉぉぉーーーーーーッ!?」」

「「「「「きゃぁぁぁぁーーーーーーッ!?」」」」」

「おいフェニア、グリフォン止めろ!?」

「むりむり止まんないーーーーーーッ!?」

「マルコシアス、ちょっとぉぉぉーーーーーーッ!?」

「ゆれるゆれるぅ~~~」

「あっはっは!! なんか楽しいぞー!!」

「う、き、気分が……お、王女たるわたしが、吐くなんて、だめ……」

「早いけど、アタシのが早いかも……みんな大丈夫?」


 アネルとレイヴィニア以外、地獄の数時間を味わうのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 イザヴェル領地。

 いくつかの集落と、やや大きな町が一つだけの小さな領地。

 主な産業は農業、畜産業、養蚕業。特に畜産業が盛んで、イザヴェル領地で育てられた乳牛のミルクは絶品である。

 チーズ、バターなど、他領土に出荷しており、その評価はとても高い。

 アルフェンたちは、たった半日でイザヴェル領地に入り、『中心都市イザヴェル』に到着した。

 町の入口でグリフォンとマルコシアスは停止。街中でも普通に召喚獣が闊歩していることから、大した注目は浴びなかった。

 アルフェンは、グリフォンの揺り籠からようやく解放される。


「こ、ここがイザヴェルか……うっぷ、気持ち悪い」

「グリフォン……あとでお仕置きね」

『キュルル……』

「マルコシアスもですよ……」

『きゅぅん』


 二匹とも反省していた。だが、かなり急いだのでたった一日で到着した。

 メルの顔色は悪い。絞り出すような声で言う。


「りょ、領主代理にご挨拶しましょ……ちなみに、領主代理はわたしの協力者だから……うぷ」

「おい、吐くなよ。腹黒お姫様」

「は、吐かないわよ!! まったくもう……」

「おっおー!! なぁなぁ、遊びに行きたい!! 行くぞニスロク!!」

「う~ん……ぼく、眠いよぉ」

「こらこら、行っちゃ駄目!」


 アネルがレイヴィニアの襟を掴んで止めた。

 アルフェンは、町を眺める。

 アースガルズ王国王都ほど栄えているとは言い難いが、それでも人の往来は多く、飲食店や商店も多い。


「領主の館は町の一番奥。あの小高い丘の上にある、木々に囲まれたところよ」


 メルが指さしたのは、入口からでもよく見える小高い丘。そこにチョコンと建つ館だ。

 かなり遠く、ウィルが言う。


「おい、グリフォンに運んでもらおうぜ」

「駄目。せっかく町の入口で降りたんだから、歩くわよ」

「……チッ」


 ウィルは舌打ちするが、アルフェンがその肩を叩く。

 

「まぁいいじゃん。せっかくだし町を見て回ろう。それに、ウィルが気に入る酒場とかあるかもよ?」

「……行くぞ」

「あ、待って!」

「おい、うちも行くぞ。ニスロクも!」

「う~ん……まってぇ」

「アルフェン、あたしたちも!」

「お、おお」

「あ、まってください!」


 メルを残し、全員が町に向かって歩き出した。


「ふぅ……少しは気を抜かないとね」


 たぶん、これが最後の休暇になるから。

 メルはそれを言わず、小高い丘に建つ館を眺めていた。

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