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召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~  作者: さとう
第七章

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そのころのA級

 リリーシャは、生徒会室で執務に追われていた。

 やることがたくさんあり、休む暇もない。

 魔人討伐の総指揮官としての功績と報酬は得たが、それ以上にオズワルド逮捕の方がインパクトが強く、A級の監督でもあったため、リリーシャも事情聴取を受けるという屈辱も受けた。

 リリーシャは、小さくため息を吐き背筋を伸ばす。


「んっ……はぁ」


 目頭を揉み、長い黒髪を耳にかけ、何度か目を開いては閉じる。

 気休めだが、ほんの少しだけ疲れが取れた気がした。

 すると、生徒会室にダオームが入ってきた。


「姉上、姉上!! 大変だ!!」

「騒々しい……なんだ」

「あ、あの野郎……アルフェンの奴が、報酬で爵位をもらうって!! それに領地も!!」

「……なに?」

「学園内で噂になってる。アルフェンの奴、魔人討伐の功績で土地と爵位をもらったって……」


 ダオームは息を切らせていた。

 それほどショックだったのだろう。リグヴェータ家の功績ではなく、アルフェン自身の手でつかみとった功績が爵位と領地なのだ。どんなに金を積んでも手に入らないモノだった。


「フン。領地といっても、あの王女殿下が与えられるのはせいぜい僻地だろう。爵位を得たところで、辺境伯のリグヴェータ家のが上だ。それに、少し考えればわかる……アルフェンはまだ未成年。リグヴェータ家の庇護からは抜け出せない。それに、爵位を受けられるのは十八からだ」

「そ、そうだよな……チクショウ、あんなガキが爵位だと?」


 確かに、リグヴェータ家は伯爵。それも広大な領地をとりまとめる辺境伯だ。

 だが、爵位を持っているのは父アルバンだ。リリーシャもダオームも、辺境伯の長女、次男という肩書でしかない。

 リリーシャはいずれリグヴェータ家を継ぎ、爵位を受ける。だがダオームは爵位をもらえることがない。ダオームは、完全にアルフェンの下だ。

 アルフェンに対する態度次第では不敬罪に問われるかもしれない。それは貴族であるダオームはよく知っていた。

 リリーシャは、ダオームに言う。


「気にするな。奴はもうリグヴェータ家には寄り付かんだろう。だが、リグヴェータ家に名を連ねている以上、功績だけはいただける。フン……せいぜい利用してやる」

「お、おお。そうだな、うん!」


 ダオームは何が嬉しいのか、上機嫌だった。

 そして、リリーシャは追加で言う。


「ダオーム。お前もだいぶ力を付けた。そろそろA級召喚士の昇格試験を受けてみたらどうだ? 推薦なら私がしてやる」

「お、オレがA級に!?」

「ああ。もうお前はそれだけの力がある」

「……やる!! 姉上、オレはやるぜ!!」

「わかった。では、推薦しておこう」


 と、ここでダオームは少しだけ表情を曇らせる。


「その、姉上……オズワルド先生のことだけど」

「……そのことはもう忘れろ」

「……ああ。じゃあ、新しい監督教師は誰になるんだ?」

「それなら心配いらない。次の監督教師は大物だ……ふん、メル王女殿下め。次は好き勝手できないぞ」

「?」


 ダオームは首を傾げた。

 リリーシャの手元には、新しくA級を監督する教師の資料があった。

 そこに書かれた名前は、二名。


 ◇◇◇◇◇◇


「……どういうことですか。お父様」


 夕食時。

 メルは、父であり国王のゼノベクトからとんでもない話を聞いた。

 

「聞いての通りだよ。オズワルドが逮捕され、不正行為の証拠がわんさか出たようだからね。次のA級監督教師は、二人付けることにしたんだ」

「それは聞きました。その二人です……もう一度、名を聞かせていただいても?」

「?……お前も知っているだろう? 我が兄上と姉上、ヒルクライムとユウグレナだよ」

「…………」


 メルは、頭を抱えそうになった。

 ヒルクライム、ユウグレナ。その名は……父ゼノベクトの兄と姉であり、元王候補の二人。そしてメルしか知らないことだが、等級至上主義者の組織『仮面舞踏会』のトップでもあった。

 そんな二人が、A級の監督教師?……メルにとって頭が痛くなる話だ。

 この父は、本当に無能な善人。いや偽善者だ。


「明日、A級召喚士たちを王城に招いて挨拶をするそうだ。姉上と兄上が監督してくれるなら安心だろう」

「…………ははは」


 つい、乾いた笑いが出てしまった。

 無駄だと知りつつも言う。


「お父様。その人選を変えることは不可能でしょうか?」

「む? 何を言うんだ?」

「……いえ、なんでも」


 無理だった。

 すると、黙っていた兄サンバルトはにこやかな笑みを浮かべる。


「叔父上と伯母上が監督教師か……これは気が抜けないな」

「む? サンバルトよ、オズワルドの時は抜いていたとでも?」

「あはは。冗談ですよ父上」

「そうかそうか。ははははは」

「あははははっ」

「…………あはは」


 頭がお花畑の兄と父に対し、メルは乾いた笑みを浮かべていた。

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